正式ローンチを迎えた「Onlive」、使い勝手は?プレイ感は?気になるあれこれをひとまとめ!

2010年6月23日 12:15 by katakori
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「Onlive」 オンライブ

6月18日からいよいよ正式サービスが開始されたゲームストリーミング或いはクラウドゲーミングサービスの「Onlive」、クライアントからの操作を基にクラウドなサーバ側でゲームを実行、映像を圧縮しストリーミング配信するという夢のようなサービスですが、タイトルラインアップや料金体系、そしてインフラ品質やレイテンシ(ラグ)等の問題から懸念されるプレイアビリティが、実際にはどのようなクオリティで運用開始されたのか、多くのゲーマーから、そしてビジネス的な意味でも大きな注目が集まる期待のサービスです。

18日の正式運用開始と共にNDAも解除され、その全容がようやく見え始めてきました。今回は運用開始以降に公開されたOnliveの利用レビューやフォーラムの情報等を基に、そのサービスの現実的なアウトラインをまとめてお知らせしたいと思います。

■ クライアントプログラムとサーバやレイテンシについて

まずOnliveのクライアントソフトのサイズはMac版とPC版共に8MBしか無く、セットアップも標準的な物。インストール後に起動するとまずデフォルトブラウザが立ち上がり、そこから改めてOnLiveを起動すると新しいウィンドウでOnlive本体が起動する事になります。ブラウザはIEでもFirefoxでも動作する事が確認されている事から近年のモダンブラウザであれば動作については問題なさそうです。

起動時にはいくつかのIPにリクエストを行っており、診断ルーチンを経て複数あるサーバの中から自動的に最適なサーバを選択している様です。

「Onlive」 オンライブ

ストリーミングのデータサイズは700~900k/秒前後で、1.5Mbpsの回線であれば一先ずストリーミングサイズはクリアと考えられ、データサイズの理論値だけを考えれば、ある程度のADSL回線でもプレイ可能なサイズだと言えそうです。

さらにベータ時の情報ですが、クライアントが使用するメモリサイズは平均的に60MB程度で、実行するゲームによって可変するものの、多い瞬間でも71MB程度だったとの報告がされています。さらにCPUの利用率はCore i7-860で4~7%と、やはりクラウドサービスの恩恵が大きく数値として表れた結果になっています。

「OnLive」
OnLiveのデータセンターがカバーする北米エリアの分布

気になるラグについてはサンフランシスコ周辺の恵まれたプレイヤーは14ms程度に収まっている様子。OnLiveの公式情報によるとデータセンターは1000マイル(約1600km)をカバーしており、データセンターからの距離によって生じるラグは地域によっては40msを越える箇所も発生しているようです。

なお、14msは14/1000秒ですから60fps程度のゲームであればネットワークに依存するレイテンシは1フレーム以内となる訳ですが、実際にはサーバ側でのプレイヤーの入力処理と映像の圧縮アルゴリズムが数ms加えられ配信が行われる事になります。

また北米では契約プロバイダによってOnLiveサーバまでに経由するホスト(traceroute)もボトルネックになる可能性が挙げられています。

さらに、現状ではWi-Fi接続がサポートされておらず、ユーザー側で色々と工夫する事で無理矢理Wi-Fiプレイを行う事は可能なもの、数msのjitterが発生する事から有線接続でないとOnLiveは起動できない制限が設けられています。この辺りはiPadなどでのプレイデモが行われている事からも、いずれサーバ運用の状況を見ながら制限が解除される可能性もありそうです。

■ 実際のプレイ感

「Onlive」 オンライブ
World of GooをOnLiveで起動させたスクリーンショット
「Onlive」 オンライブ
World of Gooをローカルで起動させたスクリーンショット

実際のプレイ感については液晶モニタが最初に登場した頃のレイテンシが気にならない程度であれば、ほぼ問題無いレベルと評価されていますが、今もブラウン管でプレイする0レイテンシに慣れたプレイヤーにはやはり違和感が無いとは言えないようです。

しかし興味深い事に実際のプレイ感ではBatman: Arkham AsylumやBorderlands、F.E.A.R. 2といった3Dタイトルの方がプレイしやすく、World of Goo等のカジュアルタイトルでマウスカーソルのトラックが必要なタイトルなどの方が返ってプレイに違和感を感じるとの報告も見られています。

■ ゲームタイトルのルックス

「Onlive」 オンライブ
OnLiveで見るF.E.A.R. 2
「Onlive」 オンライブ
ローカルで見るF.E.A.R. 2

OnLiveでストリーミングされるゲームの映像は720pで、ローカルで動作させた同じタイトルと比較をすれば明らかな圧縮による劣化が見られます。こちらも先ほどの例と同じくWorld of Goo等の2Dタイトルの方が劣化を感じやすく、動きが激しい3Dゲームの方が映像の劣化を認識する事が難しいとされています。

また、多数のタイトルで確認できる事として、ゲーム側の映像設定は最大で行われてはおらず、サーバ側で設定バランスが決められており、デフォルトセッティングで動作しているタイトルが多く見られる様子です。

「Onlive」 オンライブ
OnLiveで見るBurnout: Paradise
「Onlive」 オンライブ
ローカルで高設定にしたBurnout: Paradise
「Onlive」 オンライブ
OnLiveで見るTom Clancy’s H.A.W.X
「Onlive」 オンライブ
ローカルでのTom Clancy’s H.A.W.X

■ OnLiveが手軽なプラットフォームである事

ここまで挙げてきた内容の数値的な評価を並べていくと、日本国内からではベータテストへの参加も出来ずしばらく身近なサービスとは言えない事もあり、やはり想定通りのサービスといった印象を受けます。先日お知らせした価格設定についても、GOGやSteam等で見られるセールを考えれば少し躊躇する絶妙な金額設定だと言えます。

しかしこれらの問題をトレードオフとしてもなお魅力的なOnLiveのメリットは、まず1つにハードウェアの制限から放たれる事にあります。最新のAAAタイトルを旧式のPCやMACでも簡単にプレイでき、かつ気になる最新タイトルが3日間5ドル程度の費用でレンタル期間以外の制限が無い状態で楽しむ事が出来る事、トレンドを押さえておきたい社会人ゲーマーにはかなり魅力的なメリットだと感じられます。

またMacユーザーが最新のゲームをプレイできる事も大きなメリットと言えそうです。また今後Linuxクライアントなども登場する事になれば、最早OnLiveが1つのプラットフォームとして認識される可能性さえ出てくるかもしれません。

■ 現在発生しているOnLiveの問題

「Onlive」 オンライブ
MacではMass Effect 2が起動できない

正式運用を迎えたOnLiveですが、いくつかの問題も抱えています。一見小さなブラウザクライアントプログラムとして動作しているかに見えるOnLiveですが、MacではMass Effect 2がプレイ出来ない問題が発生(ブートキャンプを利用すれば可能)しており、今後のタイトルでも同様の問題が発生する可能性があるのではないかと議論されています。

もう一つの側面はゲームタイトルはあくまで”レンタル”であって、プレイヤーが所有権を持たない事でしょうか。実際に利用する際には、プレイヤー側に思考の転換が必要になると考えられますが、Steamが登場した時にも同様のパラダイムシフトが発生したように感じます。

OnLiveの運用モデルは近年のマイクロトランザクションモデルの採用などが見られる映像コンテンツビジネスなどが近いのかもしれません。払った分映像を見るpay-per-view方式のビジネスモデルでは利用者はDVD等の物理メディアを所有するという期待値を持ち合わせてはいないと言えます。

また、OnLiveの登録にはリージョン毎の登録者数制限が設けられており、既に登録者に対して承認待ちが発生している状況にあります。クオリティを保持しながらサービス規模を拡大させる事も今後の課題1つとなりそうです。

■ ゲームのタスクが非常にコントローラブルな事

Mac Mini 2.26Ghzを利用しながら録画を行った映像、VGAはNVidiaの9400m

PCゲーマーであれば多くBotを登場させた時のフレーム落ちや大量の爆発エフェクトが起こった際の処理落ち等パフォーマンスの上下を体感した事が少なからずあると思いますが、OnLiveではサーバ側でゲーム処理を行っている事からプレイ中のパフォーマンスの上下が発生しません。

さらにウィンドウサイズはリアルタイムでリサイズ可能でタスクを切り替えるだけでゲームは完全にポーズされます。近年のトリプルAタイトルなどで、フルスクリーンプレイ中に別のタスクに切り替えられない状況などを経験した方も多いと思いますが、あのモニター前から離れられない非占有感から完全に解放されるのも大きなメリットと言えそうです。

■ デモ版のプレイがとにかく容易

さらに大きなメリットとしてデモ版のプレイがとにかく容易に、そしてクリーンに行える事が挙げられます。例えば”Unreal Tournament 3″のデモ版をプレイしようと考えれば、プレイヤーはデモ版のファイルを探す事から始め、ダウンロードを行う必要があります。UT3のサイズは758MBですが、Batman: Arkham Asylumなど、ギガサイズのデモ版も近年は多く見受けられます。

10~30分程度をかけてダウンロードした後にはセットアップが必要になります。インストールに5分、コアなPCゲーマーの場合にはほとんど無いと思われますが、DirectXやらにPhysX、ランタイム関係のインストールが並行して必要な場合も多々存在し、ローカルの環境に依存する問題に出くわすプレイヤーもやはり多く見られます。

Unreal Tournament 3のデモをOnLiveで実際に行った映像

これがOnLiveでは全くなんの用意もなく、まさに言葉通り”すぐ”にデモのプレイが可能です。インストールとアンインストールの手間もなくローカルのPCはクリーンなままです。さらにMacにはUT3のデモ版は存在しません。このインパクトはかなり大きい様に感じられます。

また起動メディアの不在とDRMの悪夢から解放される事も非常に大きなメリットと言えそうです。

■ OnLiveの可能性はどうだろうか

上記で挙げてきた事を総合し1ゲーマ視点から考えると、やはり圧倒的な手軽さというメリットとゲームプレイのクオリティに見られるトレードオフをどう捕らえるかに尽きると言えそうです。

常に最新のハードウェアを調達し最高のスペックでゲームをプレイする事を楽しんでいるプレイヤーへのメリットは薄そうですが、カジュアルゲーマーながら話題の最新ゲームも気になるといったプレイヤーには選択肢の1つと言えそうです。

なかなか楽しそうな他プレイヤーのゲームプレイ鑑賞モード
なかなか楽しそうな他プレイヤーのゲームプレイ鑑賞モードその2

さらにOnLiveの機能として他プレイヤーのゲームプレイを鑑賞するモードが用意されており、いつでも気に入ったタイトルのプレイ映像を閲覧する事が可能です。デモ版のプレイと他プレイヤーのプレイ鑑賞を組み合わせればタイトル購入前の検討材料としては非常に有用であると考えられます。

またこのプレイ鑑賞にはソーシャル要素も盛り込まれており、鑑賞中のユーザーをフレンド登録したり、応援を送ったり、また鑑賞中のプレイヤー数が表示されたりと、近年ニコニコ動画などで見られるプレイ動画コンテンツとして楽しめる要素も持ち合わせています。

北米でサービスが開始されたOnLiveですが、来年にはヨーロッパへと進出する事がアナウンスされています。残念ながらアジアでのサービスなどについてはまだ語られていませんが、そう遠くない未来に日本国内でも類似のサービスが楽しめる時代がやって来る事は間違いありません。その大きな指標として今回のOnLiveローンチは私たちにとっても興味深い出来事だと言えそうです。

WindowsでOnliveを起動する様子

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