シリーズ最高のローンチを果たした新たな金字塔の誕生 – 「シヴィライゼーション VI」レビュー

2016年11月26日 23:50 by katakori
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「 Sid Meier’s Civilization VI」

先日、当サイトにてプレビュービルドに基づくプレイレポートをご紹介した“Sid Meier’s Civilization”シリーズの最新作「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」が2016年10月21日に国内外で世界的なローンチを果たした。

プレイヤーを“あともう1ターン……”という終わりのない永劫回帰へと誘う人気シリーズの最新作は、親しみやすいビジュアルスタイルやマップデザインの刷新、Baba Yetuを生んだ作曲家クリストファー・ティン氏による新しいテーマ曲、都市管理を大きく刷新する“区域”システム等の導入を以て、シリーズのファンのみならず新しいプレイヤーへの訴求を図る6年ぶりのナンバリングタイトルとして注目を集めている。

前回のプレイレポートでは、“区域”を基盤とする様々な新要素がさらなる奥深さをもらたす一方で、デモの内容に制限があったことから、製品版が初心者や新規ユーザーを含む幅広いオーディエンスにどうアプローチするか、その発売を待ちたいと締めたが、満を持して発売を迎えた製品版は果たしてどんな作品に仕上がっただろうか。

結論から言えば「シヴィライゼーション VI」は、発売時に幾つかの問題を抱えた4作目以降のナンバリングに比べて、まるで既に幾つかの大型パッチと拡張パックを導入し終えたかのような完成度と幅広いコンテンツを備えた見事なローンチを果たし、2015年の“Civilization: Beyond Earth”以降、特に“XCOM 2”に顕著なFiraxis Gamesの卓越したブラッシュアップとパッケージング力を遺憾なく発揮した人気シリーズの最高傑作となった。

「シヴィライゼーション VI」最大の変化は、都市の成長とパネルの拡張を刷新した“区域”にあり、これはシリーズの中核を担うプレイ経験そのものを革新する見事なゲームチェンジャーとなったが、本作は同時に文化や宗教、外交、スパイ、都市国家、偉人、社会制度、政府、観光、考古学など、過去作の主立った要素をほぼオミットせずに網羅したシリーズ史上最も包括的なベースゲームでもある。(※ 僅かに世界議会と外交勝利が削られた)

前述した“区域”や数々の要素には、微細な改善や再整理、意義深い調整が数多く施され、それぞれが広範囲かつ有機的なシナジーと調和を生み出すことに成功しているが、なかでも“都市国家”と“スパイ”、前作の社会制度を大幅に刷新した“政府”と“政策”が、以前よりもさらに深く掘り下げられ楽しい要素となったほか、技術ツリーと社会制度ツリーそれぞれに用意された“ブーストシステム”は、ゲームプレイに新鮮なペーシングの変化をもたらし、リプレイ性の高さやプレイスタイルの幅を見事に底上げしている。

一方で膨大な要素の中には、やや孤立したものや調整不足な面も幾つか残されている。一部UI/UXの僅かな不備や情報不足、遷移の一貫性をはじめ、想定したゴールと個性化を十分に果たしていないと思われるAI指導者のアジェンダと好戦性および勝利へのアプローチ、ややバランスが取れていないと感じられる一部の勝利条件といった箇所が挙げられるが、こちらは今後の改善と調整に期待しよう。

また、快適性と高級資源のメカニクス、移動/進入先のタイルに設定された移動コストに基づくユニットの移動ポイントシステムなど、重要度の高い要素ながら、少々の慣れと理解を要する仕組みに変化したことは留意しておきたい。

新規プレイヤーから見た「シヴィライゼーション VI」の障壁

初めてのプレイヤーに向けて、入門に最適な公式解説映像シリーズも用意されている

筆者はほぼ20年近くシリーズを継続的にプレイしているため、残念ながらナンバリングを全く白紙の状態で迎えることはできない。

前回のプレイレポートでは、最新作がシリーズのファンをうならせる濃厚でより本質的なストラテジー体験をもたらした一方で、Firaxis Gamesが“誰もが楽しめるシヴィライゼーション”と掲げた目標の1つをどう達成するのか、そのアプローチを確かめるべく製品版の発売を待ちたいと締めたが、丁寧なナレーションやチュートリアルの導入、UIとナビゲーションの最適化など、新規プレイヤー向けに改善された様々な取り組みとその効果を頭で理解はしつつも、これを本質的に体験することはもはや無理なのだ。

という事で、今回は当サイトのスタッフであるおこめに、事前の説明を一切行わず製品版のチュートリアルをプレイさせてみた。彼女は子供時代にプレイした“スーパーロボット大戦”以外に、本格的なストラテジーやシミュレーションの経験は全くない。もちろん、当サイトの記事作成を通じて本作の概要こそ把握してはいるものの、ジャンルそのものへの興味は薄く、その第一印象は“なんだか難しそう”という、いかにもな反応。ジャンルそのものに疎い全くの新規/初心者プレイヤーに対して、本作のチュートリアルやナビゲーションが果たして十分な導入を担うのか、これを計るこれ以上の被験者はいなかった。

プレイに全く口出しせず、その過程を観察したところ、一先ず基本的な仕組みをぼんやりと踏まえつつ、助言者のオススメに沿いながら敵シュメールの都市をいよいよ攻めるぞという段になって、複数の都市へと攻撃を分散させたことにより、ユニットがじわじわと各個撃破された。破城槌を単体で移動させるなど、都市への効果的な攻撃手段が分からず、エジプトとシュメール双方の不毛な消耗戦が続き、ようやく1つ目の敵都市を陥落させたものの、最適化不足とユニットの維持費によって国庫が枯渇し、戦闘ユニットがほぼ全て解体されるという憂き目にあう。

ここにきて金策の必要性をようやく理解した彼女は、その後いくつか商業ハブを建てながら、社会制度を慎重に選ぶ様子を見せ、自力で赤字をなんとか解消。再軍備を進める過程で数台のカタパルトも生産し、およそ9時間ほどプレイを重ねたところで遂にシュメールを駆逐してしまった。

シリーズの経験者から見たプレイの内容は、主要なリソースの役割や重要性、土地タイルの特性が把握しないまま、UIの理解やユニットの運用もおぼつかない惨憺たるものだった。しかし、本人の満足感と達成感はかなり大きかったらしく、初プレイながら“あそこはこうだった、ああだった”と失敗を悔しそうに省みながら、次はたぶん上手くやれる!とそのままシングルプレイヤーに突入しようとした姿は、完全に中毒患者のそれであり、“あともう1ターン……”という原初の欲求が現実に発露する、まさにその瞬間をはっきりと目撃することができた。

率直に言って、筆者は「シヴィライゼーション VI」の新たなチュートリアルについて、以前よりも多少丁寧に作られた程度の仕上がりだろうと高を括り、その効果を疑問視していたが、これは見当違いも甚だしい。本作のチュートリアルとナビゲーションはオーソドックスな作りだが、説明と構成がしっかり要点を押さえているだけでなく、作品そのものの奥深さと柔軟さがプレイヤーを迎え入れ、やる気を駆動させる実に見事なものだと言える。

シリーズの経験が長くなれば、とかく高難易度の攻略や細かな仕様、最適化、セオリー化といった方向に目が行きがちだが、今回は例え細かなルールを熟知していなくとも、なんとなく都市が成長し探索済みの地域が広がり、ポチポチと1ターンずつ時代が進んでいく、そんなのんびりしたプレイにも“シヴィライゼーション”体験がしっかりと宿っていることを改めて思い知らされた。

そもそもジャンルへの興味と期待が薄かった未経験の新参者でさえこの有様であることを鑑みれば、名高いシリーズの話題を聞きつけ、楽しそうだなと興味を持つ未経験のゲーマーがこれに臆する必要は全くない。今から「シヴィライゼーション VI」にその身を投じれば、そこには分け隔てのないFiraxis品質の4x体験が待ち受けている。

長年のファンから新規ユーザーまで、幅広い層にマッチする“シヴィライゼーション”シリーズの新たな金字塔

結論として、「シヴィライゼーション VI」は25年におよぶシリーズの長い歴史において、“Civilization III”以来最も包括的なナンバリングのローンチを果たすと同時に、戦場の霧を廃して古地図と古い羊皮紙をモチーフに採用したアートスタイルや親しみ易いキャラクターデザインの刷新、単なる技術的な進化に留まらないビジュアルやアニメーションの改善といった取り組みを含め、新規ユーザーへの訴求まで両立するシリーズの新たな金字塔となった。

「Sid Meier’s Civilization VI」万人に勧められるカジュアルさとプレイ体験の本質的な楽しさ、懇切丁寧なチュートリアルを兼ね備えた「シヴィライゼーション VI」は、シリーズのみならず、ターンベースストラテジージャンルの入門としても非常に優れた作品であり、ビデオゲーム史上に名を残す傑作の一つになるだろう。

11月18日には、早くも大規模な秋アップデートが配信され、ホットキーの拡張や次に獲得できる都市パネルの明示など、かゆいところに手が届く改善やエクスプロイト対応、一部不自然だった“設備”の日本語訳を“快適性”に置き換えるなど、意欲的な運用が進められている。

今後は、Steamワークショップ対応や多数の新コンテンツを導入する4つのDLC配信も控えており(シナリオの再登場にも期待したい)、本編のローンチは同時に長い旅と眠れない夜の始まりでもある。拡張と改善の道のりを作品と共に歩むこともまたシリーズの醍醐味であり、これから幾度となく重ねるゲームプレイが本当に楽しみでならない。

  • ※ 評価の各項目とレイヤーの詳細については説明ページを参照のこと。
  • 基本的な機能性:ローンチの段階で十分な完成度。経験を損なうようなクリティカルな問題は見受けられない。
  • 動作の信頼性:パフォーマンスや操作性は十分。一部のUIにデザイン的な問題や情報不足を僅かに抱えているが、一部は既に秋パッチで改善済み。ロード時間はやや長め。
  • プレイしやすさ
    • +:ゲームプレイに恩恵をもたらす優れたアニメーションとビジュアル。
    • +:豊かなナレーション。
    • +:新たなテーマ曲“Songo di Volare”と国別に用意された素晴らしい楽曲の数々。
    • +:柔軟なカスタマイズと広範囲なオプション設定。
    • +:意義深い技術ツリーと社会制度ツリーの分離と再整理。
    • +:日本語吹き替えを含む高品質なローカライズ。詳細かつ素早い国内向けパッチ情報の告知。
    • +:初めてのプレイヤーにも十分な役割を果たすチュートリアル。
    • +:さらに強まった中毒性。
  • 上達と奥深さ
    • +:新規ユーザーからシリーズのベテランまで、幅広い層にマッチするラーニングカーブと無限にも思える奥深さ。
    • +:“区域”による新しい都市管理。
    • +:広範囲に散りばめられた不確定要素。
    • -:AIの挙動と外交、宗教にはまだ改善の余地が見られる。
  • 独創性:Firaxisの続編開発における独自の“33/33/33”ルール(既存の優れた箇所を33%残し、残る33%を改善、さらに33%の新しいメカニクスを加える)を維持した上で、33%の新要素がゲームプレイ経験の中核まで刷新した点は驚くほかない。文字通りシリーズ後期の10年を革新した25年目のアニバーサリーにふさわしい新しいスタートだ。

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