「Blackguards 2」

今月20日、デーダーリックエンターテインメントが日本への本格参入を果たす新作として、人気ストラテジーRPGの続編「ブラックガーズ 2」(Blackguards 2)の日本語版が発売を迎えました。

本作は、ドイツの人気TPRG“ザ・ダーク・アイ”のゲーム世界と第4版のルールをベースに繰り広げられる緻密な戦闘とキャラクターの成長、そして前作を遥かに上回るダークで狂気を孕んだプロットを特色とする新作で、意欲作ながら幾つかの問題点を抱えていた前作を踏まえた多くの改善と自由度の高さ、魅力的なストーリー、“ザ・ダーク・アイ”ルールの厳密な採用を一部緩和することで向上したプレイのしやすさが高く評価され、現在MetacriticではMetascoreが“76”(※ 前作の68から8ポイント増、GameSpotが80、IGNは7.8を提示している)、User Scoreが“7.8”となかなかの高評価を獲得しています。

今回は、発売以前に英語版プレビュー用ビルドの提供を受け、ローンチ後も引き続き日本語版の製品ビルドをプレイすることが出来たので、全体的な作品のインプレッションや日本語化の仕上がりを含むプレイレポートをまとめてご紹介します。

「ブラックガーズ 2」の概要と続編としての位置づけ

参考:先日公開された日本語版の公式トレーラー

スクリーンショットやトレーラーからも分かるとおり“ブラックガーズ 2”は、ヘックスベースのマップとターン制の戦闘を特色とする所謂オールドスクールなストラテジーRPG作品で、戦闘を通じて成長するキャラクターと主人公グループ、任意のマップをクリアしていくことで展開するストーリーによって構成される作品の全体像は、国内作品に例えると“ファイアーエムブレム”シリーズのそれにかなり近いと言えます。

本作は前述した“ザ・ダーク・アイ”第4版のルールをかなり忠実に再現した初代“Blackguards”の続編となるものの、初代に寄せられたフィードバックを大きく反映し、シリーズ作品としてより広い層のゲーマーに訴求すべく、ストーリーは基本的に前作のプレイをほぼ必要としない独立した内容に刷新され、オリジナルに忠実すぎたことから複雑化していた戦闘ルールを大胆に簡略化するなど、オールドスクールな外観とは裏腹にカジュアルさとプレイしやすさを念頭に置いたややマイルドな調整によって、初めてプレイするユーザーにも安心して勧められる直接的な続編らしからぬ新作となっています。(※ 筆者は初代もプレイ済みですが、新たにシリーズをプレイするならば、ルールを平易にアレンジした続編をプレイした上で、ストリクト且つハードコアな初代を前日譚としてプレイする方が自然ではないかとも感じました)

余談ながら、本作は“ザ・ダーク・アイ”のユニバースである“Aventuria”の南部を舞台とする作品ですが、この“Aventuria”世界はデーダーリックのアドベンチャー作品“The Dark Eye: Chains of Satinav”や“Memoria”とも共通するユニバースで、かつてTHQやEidosが販売していたシングルPRG“Drakensang”シリーズに加え、往年のSir-Techファンには懐かしい“Realms of Arkania”シリーズも同じ“Aventuria”世界の物語を描いた作品だったことが知られています。

こういった重厚な歴史と世界観を出自としながらも、“ブラックガーズ 2”が新規のプレイヤーに広く門戸を開いた作品である最大の理由は、前述したルールの簡素化ではなく、“ダーク”という一言では片付けられない本作特有のストーリーと主人公“カッシア”の狂気に依拠しています。

「Blackguards 2」
主人公として強烈な個性を放つカッシア、ラスボスではありません

本作の物語は、ある理由で地下の牢獄に捨てられた主人公カッシアが、かつて夫であった王マーワンへの復讐を果たすため、その玉座の転覆を謀るストーリーが軸となり展開しますが、主人公であるカッシアの精神は、4年に及んだ投獄のなかで、共に暮らす蜘蛛の毒によって徐々に崩壊を続け、唯一心の拠り所とする一冊の本に記された“支配者としての在り方”への妄執にも近い傾倒を深めることで、ゲームの本編がいよいよ開始されるその時には、前述した復讐さえもはや重要としない完全な狂人と化しており、カッシアを強く駆り立てる動機を精神の奥深くに閉じ込めたまま物語が進行します。

自分はまだ狂っちゃあいないと執拗に言い聞かせながら、蜘蛛の毒で醜く膨れあがった顔を隠すことさえ忘れ、裸足のまま国家の平定を掲げるその姿は、所謂ビデオゲーム的なプレイヤーの感情移入を微塵たりとも許さないもので、強力な排他性を宿すことによって強制的に“ブラックガーズ 2”全体を1つの独立した作品に完結させているのです。

ロマンチックでフィクショナルな狂気ではなく、普通であることを取り繕うことによって、日常的な一言でさえ意図や真意が全く掴めないリアル且つ静かな狂気によってドリブンする本作の物語は、今にも崩壊しそうな危うげな気配を常に漂わせながら進行する非常に珍しいもので、ダイアログの選択肢や会話に一切共感できないばかりか、前作と同様にマルチエンディングまで採用しており、主人公とプレイヤーの間に深い断絶を挟んだまま進む物語には一見の価値があると言えます。

プレイヤーが“誰”なのかを意識させるストーリー作品には幾つか優れたギミックを持つタイトルが存在しており、何れも最初はありふれた“正しい”主人公キャラクターであることを装うことで、ドラマチックな剥離やサプライズを生むケースが多いものですが、本作は最初から主人公が明確に狂っていることを前提としているという点においても珍しい作品だと言えるのではないでしょうか。

「ブラックガーズ 2」のゲームプレイにおけるストラテジーRPG要素とローカライズの品質について

「Blackguards 2」
ストラテジー要素の細かなルールについては詳細なヘルプが用意されている

ここまで、“ブラックガーズ 2”が色々な意味で独立した作品であることをご紹介しましたが、物語が強烈な個性を放つ一方で、ゲームプレイを支えるストラテジーRPG要素は非常にオーソドックス/オールドスクールなシステムを採用しています。

基本的に、ゲームの流れはアイテムの売買やスキルの取得、仲間を含むキャラクターのスキル調整に加え、ゲームを進めるためのNPCとの会話を行う街や拠点スクリーンと、移動/侵攻先を決定する2Dワールドマップ、ヘックスベースの3Dマップ上で展開されるターンベース戦闘フェーズを繰り返しながら進行する形式をとっていますが、リニアな章立て構成だった前作に対して、“ブラックガーズ 2”はチャプターを廃し、ワールドマップを自由に往き来できるオープンなものに変更されており、キャラクターのディープな能力カスタマイズと併せて、かなり自由度の高い展開を特色としています。

また、ターン性の戦闘システムは、前述した通り非常に標準的な内容ながら、マップ毎に様々なバリエーションを誇るオブジェクティブとギミック、インタラクションが用意されており、登場した敵を全滅させるだけの単純な内容ではなく、(前作に比べて)オブジェクティブの達成を念頭においた緊張感溢れるパズル的な側面を大きく強化した戦いを楽しむことが可能です。

なお、本作のキャラクターカスタマイズは“ザ・ダーク・アイ”第4版のルールを色濃く反映したもので、総合的な成長ポイント“AP”を以下のようなカテゴリの能力に割り振る(一部キャラクターによって制限有り)ことで、多彩な成長とビルドの構築を実現しています。

  • 近接用から遠距離武器まで、9カテゴリ用意された“武器技能
  • 罠を感知する知覚や肉体的な耐性強化、素早さといった基本的なステータスのパッシブな向上を図る“能力”(全8種)
  • 戦闘用から回復、Buff/Debuffまで揃う“魔法”(全24種)
  • 持久力を消費し発動するスキルや機会攻撃といったスキル(一部ツリーとパッシブ)を含む“特殊回避”(全14種)
  • 魔法や体力を含む基本ステータス、攻撃、回避等、様々な強化を図るパッシブスキル(一部ツリー)を含む“特殊技能”(全38種)

こういった要素を軸に展開する“ブラックガーズ 2”の戦闘は、ゲーム開始当初に1桁だった与ダメージが終盤に万単位を超えるような作品ではなく、ダイスをロールするTRPG的な感覚に近いもので(※ 前作はルール通りのダイスロールを行っていた)、装備の更新やスキルの成長をパズルのように細かく詰めることで1桁から2桁までなんとか引き上げる類の、文字通りオールドスクールなチャレンジがたっぷりと用意されています。

ゲームプレイについては、オールドスクールであることの良い点がいくつか挙げられる一方で、特にUIや移動システム、可能な行動を網羅するサークルメニューといったHUD周りの不便さや煩雑さにまでオールドスクール感を継承している点が多く見受けられるほか、幾つか大きめのバグも残されており、システムの理解には一定のプレイ時間と慣れが必要となるでしょう。なお、致命的なバグについては、ローンチ後のパッチにより徐々に対応が進められています。

また、戦闘マップのレベルデザインが、オブジェクティブやギミックのバリエーションを優先したことからか、前作に比べて幾分か大型化しており、UIや操作周り、視点変更の仕様と相まってやや冗長な造りとなったことがある種のストレスを感じさせるかもしれません。

日本語ローカライズについて

多くのプレイヤーにとって要とも言える日本語ローカライズについては、端的に言えば及第点に一歩及ばずといったクオリティで、フォントサイズや表示のかすれ、句読点、表記の折り返し、台詞における性別の逆転といった不備が幾つか散見されますが、ある程度プレイヤー側が汲み取ることで十分にプレイ可能な品質は確保されています。

ただし、1つ重要な点として、ダイアログに登場する口語表現の雰囲気を含め、ローカライズの質は初代から大きく向上しており、前述した不備についても既に幾つかの改善を適用するパッチがリリースされるなど、今後さらなる改善が待たれる状況となっています。

という事で、“ブラックガーズ 2”は非常にオーソドックスなゲームシステムとややブラッシュアップが求められる外箱に、工夫を凝らした様々なコンテンツや突出した魅力を宿す一部のダイアログ(ボイスアクト含む)とストーリー展開を詰め込んだ良作だと言えます。また、全く感情移入できない主人公カッシアと仲間達の過剰な物語に魅力を見出すある種のゲーマーにとっては、全ての不備がほつれに過ぎない貴重なカルト作となるポテンシャルを秘めているとも感じました。

今回のプレイレポートは、シリーズを未経験の方に向けた紹介にほぼ終始しましたが、“ブラックガーズ 2”には前作をプレイした方にも魅力的な多くの変更と改善が導入されており、能力パネルのスキルにマウスオーバーした際に表示される解説テキストのスクロール対応をはじめとする細かなUI周りの改善、クエストジャーナルの分類と表示の改善、第4版ルールに忠実ながら、やや煩雑だった荷重量要素の廃止、紛らわしい統計情報の整理、忠実さを優先したことによる戦闘時の極端なランダムさと相対的な難易度の向上の緩和、能力の統廃合を含むオーバーホール、武器スキルのスケール増(20から100/4tierに変化)、持久力の導入に伴う一部強力なスキルのスパム的な利用の廃止、魔法の微調整といった様々な改善に加え、プレイヤーによって是非が分かれる変更点として、ゲーム開始時のクラス選択廃止、ベース値やキャラクター固有の魔法抵抗値の廃止に伴う戦闘システムの簡略化など、多くの刷新が施されており、全体的なプレイアビリティは大きく向上したと言って間違いありません。

余談ながら、デーダーリックエンターテインメントは昨年から明らかに作品のリリース規模や取り扱いが拡大しており、今後は先日海外でアナウンスされたばかりの可愛らしいアドベンチャー作品“Silence”をはじめ、スチームパンクアドベンチャー“The Devil’s Men”、Fictioramaのハードな新作アドベンチャー“Dead Synchronicity”、既に日本語化対応が決定している新作パズルアドベンチャー“Fire”といった作品に加え、人気小説家ケン・フォレットの代表作“大聖堂”(The Pillars of the Earth)のアドベンチャーシリーズといった注目の大作が控えており、“ブラックガーズ 2”を以て本格参入を果たした国内対応が今後より充実したものとなるか、ローカライズのさらなるブラッシュアップと向上に大きな期待が寄せられるところです。

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