「 Mafia III」

前回、新たな特集記事の一環として、1968年のアメリカ南部で「マフィア III」という物語が誕生する要因を積み上げた1950年代のアメリカにスポットを当て、新しいルールをもたらしたメディアの誕生やゼネラルモーターズの繁栄、郊外化が生んだ社会と都市の変化に関する話題をご紹介しました。

Mafiaシリーズにおいて、1950年代のアメリカは空白の10年間であり、この10年に生じ蓄積された様々な変化や矛盾が1968年のニューボルドーとアメリカを襲う爆発的な混乱に深く関係しています。

という事で、今回は最も大きなトピックの1つである公民権運動の話題に先駆けて、ロックンロールの誕生、そして50年代に本格化した東西の宇宙開発競争に端を発するキューバとアメリカ、マフィアの意外な関係にスポットを当て、「マフィア III」の物語と悲劇が起こった歴史的背景を掘り下げてみたいと思います。

エルヴィス・プレスリーとロックンロールの誕生

40年代後半のアメリカを描いた前作“Mafia II”は、ジャンゴ・ラインハルトやベニー・グッドマンのジャズをはじめ、ジョン・リー・フッカーやボ・ディドリーのブルースなど、著名なオールディーズの名曲を起用し、当時の文化と雰囲気を忠実に再現していました。

来る「マフィア III」は、これまで以上に当時の世相を反映する名曲達の利用に力を入れており、混沌とした世相を象徴的に描いたローリング・ストーンズの“黒くぬれ!”と“悪魔を憐れむ歌”を筆頭に、ジョニー・キャッシュやオーティス・レディング、アレサ・フランクリン、クリームなど、101曲に及ぶ60年代の傑作がずらりと並ぶ超豪華なサウンドトラックを用意し、(従来のラジオだけでなく)本編のストーリーが大きな盛り上がりを見せる際に一部の楽曲が流れるなど、音楽の重要性が著しく増しています。

“Mafia II”と「マフィア III」で大きく異なる楽曲や無秩序な社会の印象は、やはりロックンロール誕生以前と以降の違いであり、ロックンロールもやはり空白の50年代に生まれた重要な社会革命の1つだったと言えます。そしてこれを象徴するスターこそ「マフィア III」の舞台でもあるニューオーリンズにほど近いミシシッピ州で生まれ育ったエルヴィス・プレスリーその人でした。(※ マフィア IIIのサントラはエルヴィスの“A Little Less Conversation/おしゃべりはやめて”を収録済み)

1956年に発売され驚異的なヒットを記録したエルヴィス・プレスリーの名曲“Hound Dog”

黒人音楽の強いビートと力強い歌唱、腰をくねらせセックスを想起させる動きなど、生命力に満ちあふれた黒人文化を白人の音楽に融合させ(同時期、静かに勃興しつつあった潮流と相まって)革命を起こしたエルヴィス・プレスリーですが、当時のミシシッピ州を含む南部は、完全な人種分離政策によって黒人と白人の文化と生活、社会は徹底的に隔絶されており、特にソウルフルなゴスペルを含む黒人音楽は存在そのものが“罪深い”音楽とされ、白人用のラジオ局ではこれを放送することすら許されず、若きエルヴィスは黒人専門のラジオ局やゴスペルに傾倒しビートの洗礼を受けたことが知られています。

また、同時期に白人のDJとして活躍しながらも、黒人音楽、特にメンフィスのブルースに魅入られたサム・フィリップスは、安定した職と生活の全てを投げ打って(当時では異例とも言える白人が)黒人音楽を録音し売り込むメンフィス・レコード・サービスを設立。ここで、「マフィア III」にも登場するお馴染みジョニー・キャッシュやロイ・オービソン、そしてエルヴィス・プレスリーが発掘されるのです。

1950年代初頭に活躍した著名なラジオDJアラン・フリードが提唱した“ロックンロール”とエルヴィスがもたらした文化的な革命は、これを批判し糾弾する大人達の社会をよそ目に、汚れ一つない理想的なライフスタイルや、これを築き上げた親世代の習慣と決別する若者達を中心に爆発的な広がりを見せ、社会への参加と不参加で混迷する60年代のオルタナティブ、ひいては70年代のヒッピームーブメントに代表される“若者主導の文化や経済”を生む大きな要因の1つになりました。

大きな時代の流れと運命に翻弄される2人を描いた“Mafia II”にブルースが似合うように、巨大な権力と体制に対して自分自身の戦争を始めるリンカーン・クレイの戦いは、反逆の武器であるロックンロールの名曲と見事に融合しており、「マフィア III」の激しい物語を忘れがたい体験にしてくれるでしょう。

宇宙開発競争の本格化と「マフィア III」の意外な関係

「Mafia III」
参考:左がゲーム内に登場するポスター、右は実在するもの

「マフィア III」において強化された要素の一つに、プレイボーイ誌やアルベルト・バーガスのセクシーなピンナップ、60年代のアルバムジャケットなど、1968年当時のアメリカと密接な関係にある収集物の存在が挙げられます。このうちの1つに共産圏のポスターが存在しており、ハンズオンイベントの際にはロケットを象徴的に描いたポスターが確認できました。

このロケットは、1957年10月4日にバイコヌール宇宙基地でソ連が打ち上げた人類初の人工衛星“スプートニク1号”と、これを搭載した史上初の大陸間弾道ミサイル“R-7”を描いたものです。

一見「マフィア III」と関係なさそうなこのポスターですが、実は本作の仇敵マルカーノファミリーがニューボルドーを牛耳り、コミッション※の影響から距離を置くことさえ視野に入れるほどの権力を手にする一方で、過激な犯罪を急進化させリンカーン・クレイの悲劇と復讐を生んでしまった背景にも深く影響する興味深い1枚だと言えます。

※ 過去作にも度々登場する“コミッション”は、アメリカ全土の有力ファミリーが集まる会議を指すもので、後継者の問題や有事の対応に様々な決定を下す強い影響力を持っている。Mafia IIにおいても、主人公の目には見えない場所で様々な決定を下し、ヴィトとジョーの運命を翻弄した。
余談ながら、ヴィトが「マフィア III」の舞台ニューボルドーに送られたのもコミッションの決定によるもの。

第二次世界大戦後のアメリカは、原水爆の保有やNATOによる封じ込め政策、高高度偵察機の登場、そして史上初の弾道ミサイルであるV2ロケットを生んだドイツの天才ヴェルナー・フォン・ブラウン博士を獲得したことから、ライバルであるソ連をあらゆる面で凌駕していると考えていました。

しかし、1957年当時のアメリカがまだどちらも実現していなかった人工衛星の打ち上げと大陸間弾道ミサイルの発射成功は、すなわちアメリカ本土が核ミサイルの射程範囲に入ったことを示唆するもので、アメリカ政府と国民に計り知れない衝撃と自信喪失、パニックにも近い危機感を与え、今も危機的な状況の大きさを示す際の比較として引き合いに出される“スプートニク・ショック”として知られています。

“スプートニク・ショック”は、両国のミサイル技術と規模に大きな格差が生じているのではないかと考える疑念と論争“ミサイル・ギャップ”を生み、アメリカ政府は急遽この懸念を払拭する対抗措置として人工衛星の早急な打ち上げを宣言。ここに東西の本格的な宇宙開発競争が幕を開けたのでした。

実際のところ当時のアメリカは、衛星打ち上げの技術を十分確立していたフォン・ブラウン博士と陸軍に新型弾道ミサイルの開発を任せる一方で、人工衛星の開発と打ち上げは海軍に任せており、軍内部の軋轢や予算配分といった些細な問題から、みすみす史上初の偉業を逃していたのです。

一方、ソ連は“スプートニク1号”の打ち上げ成功に続いて、57年11月3日にライカ(犬)を乗せた“スプートニク2号”の打ち上げと、1号よりも高い軌道の周回に成功し、もはや有人飛行の成功は目前だと考えられていました。

後塵を拝したアメリカは、急遽グレープフルーツ大の試験衛星を搭載したロケットの発射を一大イベントとして大々的に公示し、1957年12月6日に打ち上げを実施したものの、海軍製のロケットは詰めかけた報道陣の眼前で発射2秒後に爆発。世界中のメディアに嘲笑されたこの歴史的な失敗によって、アメリカの威信回復はようやくフォン・ブラウン博士の陸軍チームに任せられ、1958年1月31日にアメリカ初の人工衛星エクスプローラー1号の打ち上げに見事成功したのです。

ミサイルギャップの実態とキューバ危機、そこから浮かび上がるマフィアとCIAの関係

前述した“ミサイル・ギャップ”の懸念は、アメリカの焦りと本気を引き出す要因となりましたが、実際には多くを犠牲にスプートニクを打ち上げたソ連に対して、ミサイルの質量共に勝るアメリカが圧倒的な優位に立っていた、というのが実情でした。

アメリカが大陸間弾道ミサイルの大量配備によりソ連を射程圏内に捉える一方で、ソ連はICBMの量産と実用化で大きな遅れをとっており、この大幅な不均衡の挽回を試みたソ連のフルシチョフは、フィデル・カストロに接近しキューバ革命を支援しただけでなく、ついにはアメリカ本土を射程内におくキューバへの核ミサイル配備に踏み切りキューバ危機を引き起こすのです。

説明が長くなりましたが、1958年にカストロが革命を起こすまでのキューバは、表裏一体と言っても過言でないほど深い関係にあったCIAとマフィアの傀儡であるバティスタ政権が支配しており、麻薬の密輸やマネーロンダリング、カジノの運営といった活動を行っていたマフィアに巨大な富と力をもたらしていました。そして、地理的な条件から密輸ルートの中継点として特に重要な役割を果たしたのが、まさにニューボルドーのモデルとなったニューオーリンズであり、当時ニューオーリンズを拠点としていたカルロス・マルセロに圧倒的な政治力を与えたことで知られています。

そしてもう1つ、この巨大な利権とキューバ問題を巡るCIAとマフィアの関係は、アイゼンハワー大統領が1961年の退任演説にてその存在を明かした制御しがたい軍産複合体(※ ここでは当時政府すら実態を掴めない状況にあったペンタゴンとCIAを指す)の台頭にも関係しており、リベラルな政策を進めたケネディ大統領の暗殺がCIAとマフィアの陰謀だとする疑惑の直接的な要因の1つにもなっています。

今のところ、「マフィア III」がこういった背景をどこまで掘り下げるか、その詳細は不明ですが、キング牧師とロバート・ケネディ(ケネディ大統領の実弟で、マフィア撲滅を掲げた人物)の暗殺は既にゲーム内で語られており、マフィアとCIAを巡る黒い関係の大ネタとも言えるケネディ大統領の暗殺に全く触れないことはやや不自然にも感じられます。この辺りの話題や背景がどう掘り下げられるか、その背景を追うことも「マフィア III」の大きな楽しみの1つだと言えるのではないでしょうか。

イメージ:Visual News

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