「バイオショック インフィニット」

先日、「バイオショック インフィニット」の特集記事第1弾として、同シリーズが辿ってきたこれまでの流れを軸に、来る新作が前作と直接的なストーリーの繋がりを持たない全く新しいタイトルである事をご紹介しました。

2回目となる今回の特集では、前回触れることが出来なかった“バイオショック インフィニット”そのものの魅力や、シリーズ前作から大きく変化したプレイ要素、そしてビデオゲーム史に残すであろう革新性など、本作のゲームプレイをより楽しむ為の特徴的な要素を大きく6つに分けてご紹介します。

饒舌に喋り、多くの会話を交わす主人公ブッカーとエリザベス

2011年のE3で公開されたデモ、目の前の物全てに興味を示すエリザベスが可愛らしい

前回の特集でもご紹介した通り、これまで2作品が発売された“バイオショック”シリーズは何れも寡黙な主人公を描いてきました。この描き方は主人公キャラクターに特定の考え方やスタンス、カラーを持たせないことで、プレイヤーの没入感を“阻害しない”ことから多くの海外ゲームで採用される一般的な手法だと言えます。

しかし、強力なストーリー性を持つタイトルにおけるこういったタイプの主人公は、基本的に前述した手法を前提とした巻き込まれ型のキャラクターとして機能し、ある程度の没入感を担保した上で、物語は主人公の外部で発生する事件や、他の登場人物達の動機と行動によって駆動されるやや距離感のある内容となるケースが多く見られます。(※ 但し、初代BioShockでは、この一定の距離感を逆手に取り、後半で一気にプレイヤー本人の物語へと無理矢理に急接近するトリッキーな手法が忘れ得ない体験を成し遂げました)

一転、今回の“バイオショック インフィニット”で主人公を務めるブッカーとエリザベスは、とかくリッチな近年のシューターやアクションアドベンチャージャンルと比較しても、類を見ない程よく喋り会話を交わすキャラクターとして登場します。(※ 1万行を超える台本のうち、実に32%ものダイアログが2人の音声によって占められている)

この辺りの配分からも判る通り、“バイオショック インフィニット”は主人公2人が強い動機を持って自らの運命を切り開く作品であり、プレイヤーはブッカーの視線を通じ、1人称視点のビデオゲーム以外では成し得ないインタラクティブなプレイ体験や、エリザベスとの豊かなやり取りを没入感たっぷりに楽しむことが出来ます。

恐怖は閉塞感の強いダークな都市ではなく、開放感溢れる明るい都市を舞台に描かれる

開放感溢れる活気に満ちたコロンビアの街並

シリーズの前身である“System Shock 2”を含め、いわゆるサバイバルホラー感が特色の1つとされるバイオショックシリーズですが、今作では強い閉塞感を伴う宇宙船や海底都市から一転、空中に浮かぶオープンで光に満ちた空中都市コロンビアへと舞台を移します。

また、社会構造の断末魔とも呼べるディストピア感と狂気に満ちた敵だらけの海底都市ラプチャーに比べ、今作の舞台コロンビアは、生活感と活気に満ち、プレイヤーに敵対しない市民も多く登場するなど、古き良きアメリカを体現した目に麗しい都市となっています。

ただし、これによってサバイバルホラー感が失われるわけでは無く、今作では明るく輝かしい舞台の下で恐怖を描くという新しいチャレンジが行われています。なお、以前OXM誌のインタビューに登場したKen Levine氏は、お気に入りのホラー映画としてキューブリックのシャイニングを挙げており、暗闇だけが恐怖を描くに足りる環境ではないことを強調していました。

アメリカ合衆国が抱える闇にスポットを当てる成熟したテーマ

初代BioShockでは、昨今多くのゲームで見られる“モラル選択”の要素が新たに導入され、リトルシスターを通じて多くの現代社会で禁忌とされる幼児殺しが登場し、厭世的な芸術家が建設した理想郷の背景にはアメリカの著名な作家アイン・ランドに代表される客観主義的なリバタリアニズム(他者の権利を侵害しない完全な自由主義)が色濃く影を落とすなど、成人向けのテーマが描かれました。

バイオショック インフィニットでは、前作に見られた殺害と保護を選ぶモラル選択がその影を潜めましたが、新たに現在のアメリカにも深い影響を与えている“アメリカ合衆国が他の先進国とは根本的に異なる”という優位性の源流となっている“アメリカ例外主義”や、宗教的な狂信、人種差別の問題などにスポットが当てられています。

1900年代初頭、強いアメリカを象徴する、或いは体現しなければならない存在として作られた都市コロンビアの理想郷的な表層を一枚めくった奥に、どんな闇やイデオロギーの対立が潜んでいるのか、この辺りも本作のプレイにおける楽しみの1つだと言えそうです。

装備品の登場やスカイライン、戦闘システムの改善

「バイオショック インフィニット」

これまでのバイオショック作品では、武器の選択と強化、超能力的なスキルの組み合わせ、体力や能力ソースの増強がプレイヤーに用意された強化の幅でしたが、今作では新たに“帽子”と“シャツ”、“パンツ”、“ブーツ”に割り当て可能な装備品が登場し、より柔軟なカスタマイズが実現されています。

装備品は軽く50種を超える数が用意されており、これらを組み合わせることによって、ブッカーの近接攻撃や射撃能力、防御、移動、ビガーといった様々な要素をプレイスタイルに併せて強化することが可能となっています。

疾走感溢れる移動を実現するコロンビアのスカイライン

また、今作では空中都市コロンビアを印象づける新しいシステムとして、浮島のような都市ユニットを繋ぐコロンビアの移動/輸送手段としてスカイラインと呼ばれるシステムが登場しました。

プレイヤーはこのスカイラインと左手に装備したスカイフックを利用することで、前作の閉塞的な空間と廊下で構成されたラプチャーから、開放感溢れるオープンな環境へと解き放たれ、まるでジェットコースターに乗っているかのようなスピーディな移動とアクロバティックなシューティングを楽しむことが出来ます。

この他、バイオショック インフィニットではHaloシリーズに似たシールド制が新たに採用され、各種UIの改善や射撃感の向上、武器の所持数やビガーとの併用など、プレイフィールに関する様々な改善が施されています。

さらに、一度に登場する敵の数を含め、戦闘自体のウェイトも増量されており、凶悪な難易度を誇る1999モードなど、シューターとしての楽しみもたっぷりと用意されています。

プレイヤーの眼前で繰り広げられるリアルタイムなストーリー展開

最初の項目でも少し触れたように、今作のストーリーはその多くが主人公ブッカーとエリザベスの関係性や会話、それぞれの動機によって駆動されるチャレンジングな取り組みが見所の1つだと言えますが、同時にプレイヤーはブッカーの目となり、エリザベスや舞台となるコロンビアに纏わる物語の展開を眼前で体験することになります。

本作の開発を率いたKen Levine氏は、この一人称視点による体験がビデオゲームにおける作品への没入感と一体感を最も効果的にもたらす手法だと考えており、カットシーンを多様せず、物語が常にリアルタイムかつインタラクティブな状態で進行する本作と、近年台頭するTPSによるストーリーテリングとの差異も見所の1つとなりそうです。

また、近年では“ビデオゲームは芸術か?”といった議論が海外で多く交わされていますが、その一因としてやはり成熟したテーマや複雑なストーリーテリングを擁する作品が増えてきたことが挙げられます。

昨年、シュータージャンルにおけるストーリーテリングという点において、バイオショック インフィニットと同じく、主人公が饒舌に喋る2つの作品が大きな注目を集めました。1本はUbisoftの人気シリーズ最新作“Far Cry 3”、もう1本はバイオショックと同じく2K Gamesが発売した10年ぶりのシリーズ最新作“Spec Ops: The Line”です。

両タイトルの概要やストーリーについてここでは深く言及しませんが、“不思議の国のアリス”と“鏡の国のアリス”を隠れたテーマとして持つ“Far Cry 3”と、映画“地獄の黙示録”に強い影響を受け、TPSでしか実現し得ないトリックで極限状態におけるある種の“構築”を描き切った“Spec Ops: The Line”は、多くのビデオゲームを楽しんできたプレイヤーに対し、ゲームをプレイするというその行為自体をメタ的かつ暴力的に叩きつけるという荒技をインディーではなくAAA市場で成し遂げました。

作品のテーマ自体に外部の体系的な知識や作品との直接的な関係を潜ませ、ジャンルそのものをメタ的なテーマとしてプレイヤーに投げかけるメジャーな作品の登場は、かつて映画や音楽が辿ってきた歴史からも明らかな通り、ビデオゲームが文化としてある程度の成熟を迎えたことを指し示す象徴と言えるのではないでしょうか。

アメリカン・ニューシネマに顕著なように、カウンターカルチャーとして機能するオルタナティブは、本来強力な(或いは肥大化した)メインストリームが存在してこそ輝くジャンルの1つですが、深い歴史や哲学を背景に持ちながらも、まるでディズニー作品のようなポップさを併せ持ち、体系的な知識を必要としない1本の作品として立つ“バイオショック インフィニット”は、前述した2作品の対極に位置する王道のストーリーテリングに正面切って望む希有な作品だと言えます。

ヒロイン“エリザベス”という存在

これまでのAIとは一線を画するエリザベスの豊かな挙動

長々と本作の背景や改善点などをご紹介してきましたが、何はともあれ本作の最も大きな見所の1つはヒロインの“エリザベス”にあると言えます。

これまでに説明してきた主人公2人によるストーリーの駆動や、王道のストーリーテリング(驚くような舞台と、強大な敵、そして幽閉された少女!)は、やはりこの“エリザベス”という存在が持つ推進力に拠る所が大きく、物語とゲームシステムの両方を支える重要な“鍵”として、常にプレイヤーの側で歩みを共に進めます。

ビデオゲームにおけるNPCのエスコート要素は、子守のようなゲームプレイが課されるケースが多いなか、エリザベスは常に戦闘の邪魔をせず、プレイヤーを支援し、時にはプレイヤーの前を進む様子すら見せる非常に優れたAIとして高い完成を見ており、海外メディアによるレビューにおいても、その優秀さが高く評価されました。

元々の出自がリトルシスターとビッグダディであることや、環境オブジェクトとの膨大なインタラクション、デザイン的な変遷など、エリザベスについては山ほどご紹介したい情報がありますので、細かなディテールは後の特集で改めて紹介しますので、こちらもお楽しみに。

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