発売が迫る「マフィア コンプリート・エディション」は歴史的な名作の経験を超えるか、野心的な完全リメイクの先行プレイレポート

2020年9月1日 22:30 by katakori
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「Mafia Trilogy」

今年5月にアナウンスされ、2020年9月25日の発売がいよいよ1ヶ月後に迫る初代“マフィア”の完全リメイク「マフィア コンプリート・エディション」(Mafia: Definitive Edition)ですが、来る発売に先駆けて2Kよりプレビュービルドの提供を受け、一足先に生まれ変わった初代“マフィア”を実際にプレイすることができました。

という事で、今回は冒頭と一部中盤のミッションを実装したプレビューデモのプレイレポートとインプレッションをご紹介します。

歴史的な名作として知られる初代“Mafia”の完全リメイク「マフィア コンプリート・エディション」の概要とシリーズにおける位置付け

参考:“マフィア コンプリート・エディション”の第1弾ストーリー紹介トレーラー“新たな始まり”

「マフィア コンプリート・エディション」(PS4/Xbox One/PC)は、かつてチェコの名門“Illusion Softworks”が開発を手掛け、非常に優れたストーリーテリングで高い評価を獲得した名作「Mafia」(Mafia: The City of Lost Heaven)を現世代向けに復活させる新作で、開発はMafia IIIを生んだ“Hangar 13”が担当しており、最新の内製エンジンを利用し、ゼロから全てを再構築した完全リメイク作品となっています。

このリメイクが“マフィア”シリーズとファンにとってどんな意義を持つのか、まずはカルト的な人気で知られた初代「Mafia」の概要を改めて振り返ってみましょう。

2002年8月にPC版のローンチを果たし、その後2004年にPS2とXbox版が発売となった初代「Mafia」は、大恐慌に荒れる1930年代のアメリカを舞台に、タクシードライバーだった主人公トーマス・アンジェロが思いがけない事件を通じてマフィアの一員となり、暗黒街でのし上がっていく成功と裏切りの物語を描いた三人称視点のオープンワールドクライムアクション・アドベンチャータイトルです。

本作は、他に類を見ない非常に優れたストーリーテリングで高い評価を獲得しましたが、2017年後半にGOGとSteamが再販を開始するまで、長年入手が困難な状態が続き、中でも2003年に発売された日本語版はさらに稀少だったため、多くのファンがシリーズにとって極めて重要な第1作目をプレイできない不遇な状況に陥っていました。

“マフィア”シリーズそのものにとっても、初代は非常に重要な位置付けの作品です。“マフィア”シリーズは、数ある犯罪系オープンワールドジャンルの中でも、一貫して“組織犯罪”をテーマに描く希有なフランチャイズで、3つのナンバリングタイトルが1つの壮大なアークを構成していますが、続編「マフィアII」はアメリカン・ニューシネマ的にアメリカンドリームの光と影を描いた初代のカウンターとも言える作品で、最新作の「マフィア III」はブラックスプロイテーション的なアプローチで組織に復讐する側から逆説的にマフィアを描いており、映画“ゴッドファーザー”や“グッドフェローズ”のような、マフィアそのものを正面から堂々と描いたいわゆる王道のマフィアものは、実のところ初代「マフィア」しか存在していません。

つまり、これまで多くのゲーマーが基本となる王道の初代を知り得ないまま、ここから生まれた極めて難解なカウンター的続編とツイストを加えた重厚な最新作をプレイしていた訳ですが、リメイク「マフィア コンプリート・エディション」の登場は、初代をプレイする機会を逃していた従来のファンや若い世代のゲーマーにとって、ようやくこの状況を打破し、シリーズ全体を通じて経験可能にする重要な作品だと言えます。

「マフィア コンプリート・エディション」のデモビルドと新要素について

参考:中盤の山場となるチャプター“田舎旅行”の公式プレイ映像、プレビューでもこのミッションがプレイできた

今回プレイした「マフィア コンプリート・エディション」のプレビューデモは、製品版とは異なる開発中のPC版ビルドで、オープニングから冒頭の数チャプターに加え、以前にプレイ映像が公開された中盤の山場となるチャプター“田舎旅行”を収録しており、市内のドライブから銃撃戦、カーチェイス、近接戦、レース、本格的な戦闘など、一通りの要素がバランスよく実装されたバーティカルスライスとして、ビジュアル面の強化だけではなく、多数の変更点や改善が確認できました。

■ “マフィア コンプリート・エディション”の主な改善と新要素

  • 戦闘システムの刷新:オリジナルは、カバーのない三人称視点のオーソドックスなシューターだったが、オリジナルの回避方法を廃止し、新たにマフィア IIIと同等のエイムとカバーシステムを導入。また、テイクダウンを含むステルスが可能となり、近接格闘攻撃もシステムそのものが刷新された。体力の自動回復はなく、一介のタクシードライバーだった主人公の技量をリアルに再現する射撃の意図的なゆるさが、モダンなシステムを導入しながらも初代の“やるかやられるか”という緊張感を上手く残している。
  • 難易度選択の導入:オリジナルは難易度選択が存在しない鬼のような難しさで知られたが、新たにイージーとノーマル、ハード、クラシックからなる4段階の難易度を導入。これによりシューターが不得手なプレイヤーでも十分にストーリーが堪能できるほか、クラシックを選択すれば、一部理不尽な箇所を調整した初代に近い高難易度が楽しめる。さらに、警察の反応やドライブモード(レギュラー/シミュレーション)、トランスミッション(オートマチック/マニュアル)といった項目も個別に設定可能。車両のマニュアル操作にはオリジナルと同じくクラッチも健在。
  • 車両タイプの追加:50種を超える従来の車両に加え、新たに搭乗可能なバイクが追加された。車には変更可能なラジオ局もあり、進行に併せてニュースなども流れる。
  • 追加の収集要素:オリジナルにも存在した車両のコレクションに加え、新たに収集可能な大衆雑誌4種、コミックス、タバコカード、ハガキが多数導入された。特に、タバコカードは本編の登場人物達を描いたカードで、主要キャラクター達の人物像が記載されている。なお、車両のコレクションについては、オリジナルと同様、収集した車両をじっくり閲覧できる“カー・サイクロペディア”モードが実装される(※ デモ版はメニューの文言のみ存在し、利用不可)。また、雑誌のカバーやカードといった収集物は、プレイスルー毎にリセットされず、新規でプレイをやり直す場合も既存の収集分が継承される。
  • ビジュアル面の強化:スクリーンショットやトレーラーからも一目瞭然だが、カットシーンを含むビジュアルの品質は“マフィア III”と比べても格段に向上している。特に“マフィア III”はセルフシャドウやブラー、一部ライティングにアーティファクト的なノイズが目立つケースがあったが、エンジンの拡張によりこれが大幅に軽減された。物理ベースのマテリアルや高品質なフェイシャルキャプチャ、スキンシェーダーの改善、オブジェクトの破壊表現、車両ダメージのジオメトリ、暗い夜が非常に印象的な昼夜のライティング、高品質なボリューメトリックフォグ、反射表現など、“マフィア III”からさらなる向上とパフォーマンス改善を果たしており、前作に幾つか残っていた低解像度の甘いテクスチャーも全く見当たらなかった。

「マフィア コンプリート・エディション」は、歴史的な名作の経験を再現できるか

参考:開発を率いるHaden Blackman氏がリメイクのコンセプトやアプローチについて語るインタビュー映像
今回のプレビューデモに収録されたコンテンツのハイライトも確認できる

前述の通り、来る「マフィア コンプリート・エディション」はオリジナルのあらゆる要素を全方位的に強化した文字通りの完全リメイクですが、この成功を左右する最も重要な点は、表面的な進化ではなく、こういった刷新と改善の積み重ねが総体としてオリジナルの経験を十分に再現するか、或いは(本作に限らず)とかく美化されがちなオリジナルの思い出を凌駕する価値を提示するに至るか、その一点に集約されるといって相違ありません。

今回は、これを実際に確かめるため、最新のデモと平行して2017年に販売が再開された初代“Mafia”を改めてプレイし、オリジナルとリマスター両方の経験を比較してみました。

予め断っておくと、筆者は“マフィア”シリーズ全体の熱心なファンで、かつ初代に特別な思い入れを持っているタイプのゲーマーであり、リメイクに歓喜する一方で、初代の特別な感覚やトーンは、当時の時代性や制限によってのみ存在しえた(つまり表面的な改善だけでは真の魅力をカバーできない)のではないかという懸念も確かに持ちあわせていました。

しかし、実際にオリジナルとリメイクの“マフィア”をプレイしたところ、この懸念は全く無駄な杞憂に終わったことがはっきりと確認できました。

「Mafia Trilogy」

初代の白眉は“映画的なストーリーと体験”であり、リメイクにおいて生まれ変わったキャラクターや入念に作り込まれた表情豊かなロスト・ヘヴンの街並み、フェイシャルを含むリアルなアニメーション、美しい乗り物たち、完全に撮り直された(特にグッドフェローズを思わせるような)カットシーンの数々、現代的なUI/UXといった個々の要素が、全てにおいて本作の映画的な体験を直接的に底上げしているだけでなく、難易度選択や細かなオプションを含むQoLの向上やシステム面の刷新、操作周りの改善は、(近年のPCゲームと比較して初代の操作性がかなり劣悪であることも相まって)オリジナルと比較にならないほどスムースなプレイをもたらしています。

また、特筆すべき点として、2002年当時の品質から格段に進化したボイスアクトとサウンドエフェクト、サウンドトラックが驚くほど映画的な体験の向上に貢献しており、正直なところ初代をこよなく愛した筆者でさえ、直接的にオリジナルとリメイクを比較してしまうと、(敢えての選択でなければ)もはや2002年の初代には戻れないと思うほどの大きな変化がひしひしと感じられました。

加えて、初代“マフィア”の現代的なリメイクは、“マフィア II”と“マフィア III”には無かった、意外な相乗効果を生んでいます。

これは、ビデオゲーム的な遊びの多様さと“映画的なストーリー経験”が相反することに起因するもので、少々説明が必要かと思います。

筆者は、今でも「マフィア III」がPS4/Xbox One世代において最も優れたストーリーを描いた作品の1つだと考えています。ただし、全体的なストーリーテリングやビデオゲームとしてのフローを鑑みれば、(マフィア IIIに限った話ではなく)サイドミッションや付加的なアクティビティ、オープンワールドに基づくサンドボックス性が、“映画的なストーリー経験”を減じてしまうケースがまま見られます。

極端な例を挙げると、これは“The Elder Scrolls V: Skyrim”や“Grand Theft Auto V”で目の前の気になるあれこれに寄り道しすぎて、あれ?元々何してたんだっけ……という、よくある状況を指すものですが、“映画的な経験”はリニアであればあるほどフローやペーシングを制御しやすく、強固でタイトなストーリーテリングが実現できる一方で、付加的な寄り道が多くなればなるほどリニアな経験や物語の連続性は減衰し、本流となる物語そのものの出力が薄まってしまいます。

「マフィア コンプリート・エディション」は、オープンワールド環境がまだ添え物に近かった当時のタイトな進行をほぼそのまま正確に再現していることから、シリーズの最も大きな魅力である“優れたストーリー”をテンポよく存分に味わうことができ、サンドボックス的な要素の少なさが結果的に“映画的な経験”を最大限に引き出す、“マフィア II”や“マフィア III”には無かったシナジーが生まれているわけです。

今回のデモは、前述の通り限定的なバーティカルスライスで、後半のストーリーや展開は未確認ですが、本作は予め初代のストーリーを完全再現することが明言されていることから、来るリメイクがオリジナル最大の魅力であるストーリーとリニアな経験を最大限に引き出すことは、(よほど酷いバグやクリティカルな問題がなければ)既に確定的だと言えます。

つまり、本作は歴史的な名作の魅力を全く減じない完全な上位リメイクとなり、初めてプレイする全てのファンにオリジナルを超える楽しさを提供するポテンシャルを現段階で十二分に持っていると考えられます。

この野心的なリメイクが最終的にどんな品質に仕上がるか、初代の熱心なファンには、シリーズ全体を繋ぐ“あれ”をどう描き直すかというお楽しみも残されており、2020年9月25日の発売がますます待ち遠しい限りです。

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