昨年10月から続いていた“ZA/UM”とKaur Kender氏の裁判が和解により解決、「ディスコ エリジウム」の父Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏に関する続報も

2023年3月19日 0:28 by katakori
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「Disco Elysium」

先日、ゲーム内の様々なアセットを自在に配置し、独自のシーン作りが楽しめる“コラージュ”モードが導入された傑作CPRG「ディスコ エリジウム」ですが、昨年10月から続いているオリジナルクリエイター2人とスタジオ“ZA/UM”の訴訟問題に関する動向に注目が集まるなか、この問題と平行して生じていたスタジオの元プロデューサー兼製作総指揮Kaur Kender氏と“ZA/UM”の裁判が和解に至ったことが判明。しかし、この和解を報告した“ZA/UM”の声明に問題があり、“ディスコ エリジウム”を生んだRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏がスタジオを非難する声明を発表し話題となっています。

これは、3月14日にKaur Kender氏との裁判が和解に至った旨をアナウンスした“ZA/UM”が、この報告の中で(前述の裁判とは別に進められていた)Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏が“ZA/UM”に対して起こしていた不当解雇に関する訴訟が証拠不十分によって取り下げられたと説明し、続報と確認が待たれていたもの。

3月14日にGamesIndustry.bizが報じた“ZA/UM”とKaur Kender氏の和解に関する発表について、3月16日に声明を発表したRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏は、“ZA/UM”の発表に複数の虚偽が含まれていると非難。訴訟を取り下げた事実はなく、予てから争点となっていた不当解雇はより大きな問題の一部に過ぎず、今後も(スタジオの乗っ取りやIP/アセットの不当な取得、不当解雇、情報へのアクセス制限といった)事態の全体像に応じた法的な選択肢を追求すると強調しています。

さらに、両氏は“ZA/UM”と和解したKaur Kender氏についても言及しており、訴訟を取り下げスタジオと和解したKaur Kender氏には同意できず、現在も進行中の法的な争いの中で(Kaur Kender氏のように)沈黙することはないと強調。現在の“ZA/UM”を率いるIlmar Kompus氏とTõnis Haavel氏は、我々に対して何の影響力も持っていないと伝えています。

これまでの流れ

ざっと、この数日の動きをまとめましたが、“ZA/UM”と今回和解したKaur Kender氏、およびRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏の関係について、(クリエイター2人がかつての盟友であるKaur Kender氏を非難していることを含め)事態が飲み込めない方が少なくないと思いますので、今後の動向を引き続きお伝えするためにも、一旦全体的な流れを整理しておきましょう。

まず、Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏(そして不当解雇されたもう1人の人物Helen Hindpere氏)は、傑作「ディスコ エリジウム」を生んだ中心人物であり、作品の舞台であるエリジウム世界は彼らが文字通り半生をかけて創造したものでした。(※ 詳細は当サイトの特集第2回“「ディスコ エリジウム」誕生の歴史”をご確認ください)

一方、Kaur Kender氏は「ディスコ エリジウム」の父であるRobert Kurvitz氏を見出し、現在の“ZA/UM”設立に貢献した立役者であり、エストニアの著名な小説家としても知られています。(Kaur Kender氏がRobert Kurvitz氏の才能に投資しなければ、“ディスコ エリジウム”は生まれなかったといえます)

この関係性を念頭に置いて、“ZA/UM”と「ディスコ エリジウム」IPを巡る2つの訴訟問題について概要をまとめます。

1つは2021年末にRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏、Helen Hindpere氏が、“ZA/UM”から不当に解雇された問題。これには、“ZA/UM”株を過半数取得した投資家Ilmar Kompus氏とTõnis Haavel氏によるスタジオの計画的な乗っ取りや「ディスコ エリジウム」IPの取得、現在も“ZA/UM”の少数株主であるRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏に対する情報開示の制限といった問題が含まれています。

もう1つが今回和解に至ったKaur Kender氏による“ZA/UM”への訴訟であり、これはRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏が起こしている訴訟とは全く別のものですが、両氏が出した前述の声明を補足するためには、一旦Kaur Kender氏と両氏の関係を説明しておく必要があります。

前述の通り、Kaur Kender氏は“ZA/UM”と「ディスコ エリジウム」の誕生に貢献した立役者でしたが、同時に現在の“ZA/UM”を所有するIlmar Kompus氏とTõnis Haavel氏をスタジオに引き入れ、Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏、Helen Hindpere氏を不当解雇に導いた首謀者であり、端的に言えばKaur Kender氏が「ディスコ エリジウム」の最重要クリエイターを売ったという構図があるわけです。(※ これについては、Ilmar Kompus氏本人がKaur Kender氏の要請で3人を解雇したと明言している)

しかし、(Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏の言葉を借りれば)スタジオの乗っ取りに荷担した当のKaur Kender氏は、自ら招き入れたIlmar Kompus氏とTõnis Haavel氏によって健康上の理由で2022年8月から休暇扱いとされ、休職期間中に“ZA/UM”を解雇されることになります。

“ZA/UM”に対するKaur Kender氏の訴訟

Kaur Kender氏が起こした“ZA/UM”に対する訴訟は、この休職と解雇、さらにIlmar Kompus氏がZA/UMの資金を流用しZA/UM株の過半数を取得するために用いた(とされる)480万ユーロの返還を求めるもので、2022年10月25日にKaur Kender氏は自身の会社Chromed Investing OÜを通じてIlmar Kompus氏のコンサルティング会社OÜ Tütrekeに対する訴訟を起こし、OÜ Tütrekeが持つ“ZA/UM”株の差し押さえを要求。10月29日には、エストニアの裁判所が実際にOÜ Tütrekeの株式を差し押さえ話題となりました。

その後、Ilmar Kompus氏とOÜ Tütrekeは11月4日に前述した480万ユーロのうち、400万ユーロを“ZA/UM”に返還。続いて11月11日には残る80万ユーロの支払いを済ませたことで、Kaur Kender氏はOÜ Tütrekeに対する提訴の目的を果たしたとして、裁判手続きを終了していました。(余談ながら、Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏が争点の1つとしている“Disco Elysium 2”のものとされるコンセプトアートは、Ilmar Kompus氏のペーパーカンパニーに僅か1ポンドで売却されており、これによってRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏によるアセットへのアクセスを制限していたが、前述した480万ユーロ支払いに合わせて“ZA/UM”に返還済み。しかし、“Disco Elysium”IPの一部は既にTõnis Haavel氏が関与する“ZA/UM”の子会社Yessirnosirに移されたことが判明している)

今回、3月14日に“ZA/UM”がアナウンスしたのは、Kaur Kender氏が起こした前述の訴訟と裁判手続きの終了時に、“ZA/UM”(つまりIlmar Kompus氏側)とKaur Kender氏の間で交わされた和解の条件である、Ilmar Kompus氏が支払った裁判・弁護士費用の返済、及びKaur Kender氏が保有する全ZA/UM株の売却が終了したことを示すもので、Kaur Kender氏は“常勤としてZA/UMを離れたあと、訴訟を起こしたものの、事実を知ったことで訴えが見当違いだったことを理解した”とコメントしています。

一方、Ilmar Kompus氏はこの和解が示す通り、誤解や意見の食い違いを解消するには、オープンな話し合いこそが最良の方法であり、皆がZA/UMの全体的な利益を念頭に置いて問題に取り組んだことで、完全な解決に至ることができたと強調。しかし、元従業員(つまりRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏)による根拠のない一連の主張は今も続いていると前置きした上で、これについても法的な対応および事実の精査によって彼らの主張が破綻することを期待していると伝えています。

という事で、3月16日にRobert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏が発表した声明は、現“ZA/UM”が掲げたKaur Kender氏との和解がIlmar Kompus氏とTõnis Haavel氏の両氏による“ZA/UM”株の取得を正当化するものではないと非難するものであり、Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏は、例え盗んだ金銭を返したとしても、犯罪そのものが帳消しになるわけではないと強く主張しているわけです。(※ これも余談ながら、“ZA/UM”乗っ取りの当事者であるTõnis Haavel氏は、2015年に1,200万ユーロ規模の投資詐欺事件で有罪となり、7ヶ月の執行猶予付きで実刑判決を受け、その後破産している)

全く出口の見えない“ZA/UM”と「ディスコ エリジウム」IPを巡る問題ですが、先だってリリースされた“コラージュ”モードは、新“ZA/UM”の方向性とアプローチを示す試金石とも言えるコンテンツだと感じています。もちろん、今回の新コンテンツはファンコミュニティの二次創作を文字通り“はかどらせる”とても楽しいものですが、数々のアセットが丸裸で置かれている様子を目の当たりにすると、キャラクターの関係性や世界のあり方を決して即物的に扱わなかった(だからこそ、決して他には無いある種の魔法が生まれたわけです)Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏、特にHelen Hindpere氏がこれをどう考えているか、もし一連の問題が起こらなければ、果たしてこのモードはリリースされていただろうかと、非常に複雑な思いを抱かずにはいられません。

今後、傑作「ディスコ エリジウム」を巡る問題が、クリエイターとファンにとって十分に受け入れられる着地を見る時は来るのか、Robert Kurvitz氏とAlexsander Rostov氏、及び現“ZA/UM”のさらなる動向に改めて注目が集まるところです。

情報元及びイメージ:GamesIndustry

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