特集 第9回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」に影響を与えた作品について – 後編

2022年8月24日 16:46 by katakori
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「Disco Elysium」

前回の第8回特集は、「ディスコ エリジウム」の舞台となる“マルティネーズ地区”そのものに焦点を当て、絵画的なビジュアルやオープンワールドの開発、ストーリーテリング手法、幾つかの名所等に関する話題をご紹介しました。

第9回となる今回の特集は、「ディスコ エリジウム」に影響を与えた作品をまとめた第3回特集の続きとして、本作に最も大きな影響を与えている美術と文学に焦点を当てる後編のまとめをお届けします。

「ディスコ エリジウム」のアートスタイルについて

第2回の特集において、「ディスコ エリジウム」がビデオゲームの開発経験を全くもっていなかったばかりか、混乱に満ちたエストニア社会からドロップアウトしていた小説家やアーティスト、思想家達の集まりによって作られた経緯をご紹介しました。

本格的なビデオゲームのデベロッパすら存在しないエストニアで、なんの経験もないまま彼らが掲げたのは、壮大な構想と緻密な作品世界を擁するコンピューターRPGの革命であり、結果的に当の本人達ですら実現できないまま頓挫するのだろうと危惧していた予想を裏切り、ビデオゲーム史に残る傑作を作り上げることに成功したわけです。(※ PC版“Disco Elysium”発売前の心境について語ったリードライターHelen Hindpere氏は、「どうせ誰もこんなものは求めてない!みんなバカだし、こんなことなら外科医になればよかった」というニヒリズムに陥っていたと振り返っている)

全てが手探りで作り上げられた「ディスコ エリジウム」ですが、絵画の世界を歩いているような本作の独創的なビジュアルスタイルもまた、何の経験もないところから大変な試行錯誤を繰り返して辿り着いたZA/UM独自の手法によって実現したもので、ここにもまた非常に興味深い開発の歴史が存在しています。

ZA/UMの共同創設者兼アートディレクターで、タリンで行き場を失っていた少年達の(ZA/UMの前身とも言える)グループ“The Overcoats”のメンバーでもあったAleksander Rostov氏は、自身の育った環境がポストアポカリプス世界のような時代で、ソ連の廃墟の中で武器取引が行われ、急速な新自由主義化が進むなか、資本主義者達が広場で殺し合っているような状況だったと振り返り、具象芸術の伝統が途絶えたばかりか、人々がドローイングや絵画そのものを放棄するような状況にあったと説明しています。(そもそも戦渦によって絵画自体がほとんど残っていなかった)

伝統的な芸術が失われ、ローンやアルコール、ポテトチップスといった広告の攻撃的なアートがまるで復讐を果たすかのように様々な真実と芸術を覆い尽くすなかで、絵を描くことに夢中だった少年時代のAleksander Rostov氏は、スケッチブックすら手に入れることができず、父親が作ってくれた手製のスケッチブックを手に、殺伐とした世界を軽蔑していたとのこと。

そんな中、Aleksander Rostov氏が出会ったのが『Age of Empires』や『Halo』シリーズを含む数々のビデオゲームや映画の象徴的なアートワークで知られる著名なコンセプトアーティストCraig Mullins氏で、圧倒的な表現力や本格的な絵画表現に初めて触れたAleksander Rostov氏は、その卓越した技巧を心から渇望し、当時まだダイアルアップ接続だったインターネット経由でCraig Mullins氏のアートをダウンロードし、その技法を見よう見まねの自己流で研究したと伝えています。

「Disco Elysium」
参考:Craig Mullins氏のコンセプトアート
「Disco Elysium」
参考:同じくCraig Mullins氏のコンセプトアート

こういった背景から出発した「ディスコ エリジウム」のアートスタイルは、ライティングと同様に多種多様な作品からインスピレーションを得て、確立されたもので、Aleksander Rostov氏は以下のようなアーティストや作品の影響を挙げ、本作の開発を進めるまさにその過程で文字通り“走りながら学んだ”と説明しています。

「Disco Elysium」

こちらはロシア出身の画家アレックス・カネフスキーの作品で、抽象と具象を行き来するような多層的な肖像画の数々で知られています。

Aleksander Rostov氏は「ディスコ エリジウム」のアートスタイルが、カネフスキーの絵画的な筆致と慎重に配置された色のアクセントに影響を受けていると説明しています。

「Disco Elysium」

ZA/UMはレンブラントの影響も挙げています。Aleksander Rostov氏によると、レンブラントの作品には、優れた芸術が生む“名状しがたい良さ”の正体と答えがあるとのこと。

「Disco Elysium」

こちらはAleksander Rostov氏が「ディスコ エリジウム」に極めて大きな影響を与えていると紹介したジェニー・サヴィルの絵画。ZA/UMの面々もジェニー・サヴィルの大ファンで、実際に彼女の展覧会にも足を運んでいるとのこと。

「Disco Elysium」

こちらはロシアの著名な彫刻家パヴェル・トルベツコイの作品で、後述する本作の3Dキャラクター造詣に大きな影響を与えています。Aleksander Rostov氏によると、トルベツコイの作品から表情豊かな造詣と抽象的な形のバランスを学んだとのこと。

「ディスコ エリジウム」の3Dキャラクターとポートレートについて

「Disco Elysium」

前回の特集において、絵画的な筆致の2D背景に3Dのキャラクターを違和感なく馴染ませる工夫があったとご紹介しましたが、上のスクリーンショットを見てもらえれば、絵画のようなペイント処理が施された背景と(近年の作品としてはローポリな)主人公、キムが確かに違和感なく収まっている様子が確認できます。

Aleksander Rostov氏によると、前回の特集でご紹介した手塗りの絵画的背景に3次元のリアルなキャラクターを置くと、絵画的な背景がそもそも動くということを想定しておらず、物理法則を無視していることから、物理的に適切な光と影の処理が施された3Dキャラクターと、物理法則を無視した絵画的背景が全く馴染まなかったとのこと。

これを逆手にとったAleksander Rostov氏は、光と影の正しい計算をアーティスト側で絵画的にコントロールするために、ノーマルマップを手描きで用意するという(つまり、光と影の方向を意図的に崩すことが可能となる)、文字通り力業すぎる解決策を考案。実際に主人公とキムを含む幾つかのキャラクターモデルでこの手法を試し、良好な結果が得られたものの、PhotoshopとUnityを延々と切り替えながら細かな調整を行う必要があることから、工数の問題でこれを断念。

これにより、一旦はハイポリキャラクターをスカルプトした上で、ローポリ化したメッシュに差分のノーマルマップをベイクする、一般的な手法に戻ったものの、その後さらなる研究を進めるなかで、先ほどのパオロ・トルベツコイ作品を含む印象派の彫刻にインスパイアされ、キャラクターモデルを意図的にラフな形状でスカルプトし、シンプルでフラットなモデルを用いることで、背景の絵画的なストロークにフィットさせるアプローチに行き着いたとのこと。

「Disco Elysium」
参考:試行錯誤の中で生まれた手描きのノーマルマップ

余談ながら、Aleksander Rostov氏は専用の開発ツールを用意できるような環境があれば、前述の手塗りノーマルマップ手法を活かせる可能性があったかもしれないと語っており、走りながら学んできたZA/UMが次回作以降の開発でどんな試行錯誤を重ねるのか、今から期待が掛かるところです。

なお、これまでの特集において、Aleksander Rostov氏が手がけた素晴らしいキャラクターポートレートに触れていなかったので、この機会に少しご紹介しておきましょう。

「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」に登場するキャラクターやスキルには、絵画的な肖像画がポートレートとして使用されています。

前述した様々な芸術家達の影響は、ポートレートの筆致にも深く現れていて、注意深く見ると様々な工夫が凝らされていることが分かります。例えば、鏡を見る前の主人公は、フランシス・ベーコンの作品をもじったようなおどろおどろしいビジュアルで、港湾労働者組合のメンバーについては(共産主義を示す)“赤”がキーカラーとして用いられています。

「Disco Elysium」

このポートレートは、ゲームの中盤に登場する人物のものですが、彼は酒で体と生活を壊し、人生を無為に過ごしていることから、彼自身の崩壊をストロークを崩すことで視覚的に暗喩しています。(似た例で言うと、四角四面で真面目なある人物には、意図的に退屈な肖像画が用意されている)

「Disco Elysium」

こちらは、我らが相棒キム・キツラギのポートレートで、パッケージや広告等に用いられているキーアートのキムにも共通するポイントとして、キムの額に抽象的な青いタッチが加えられていることが分かります。

これは、キムの額が青いことを示しているのではなく、暖色系のボマージャケットとバランスを取るために冷たい色を意図的に加えたもので、Aleksander Rostov氏はこういった描画によって、とにかく暑苦しい主人公と対照的に、クールで計算高く、爽やかなキムの人物像を視覚的に示しているのだと説明しています。

ということで、美術系の影響と話題に関する紹介はここまで。ここからは、「ディスコ エリジウム」のストーリーに関するモチーフやテーマ、スタイルに大きな影響を与えた代表的な文学作品をご紹介します。

エストニアの詩人Arvi Siig

文学面の影響で最初にご紹介するのは、エストニアの詩人Arvi Siig(1938~1999)です。

残念ながら国内では全く知られておらず、著作を確認することさえできませんでしたが、「ディスコ エリジウム」のビジネス的な成功によって、ZA/UMのRobert Kurvitz氏とAleksander Rostov氏がエストニアのPresident’s Young Cultural Figure賞を受賞した際、Robert Kurvitz氏がArvi Siigの影響について言及しており、「彼のモダニズムがなければ、ゲームの舞台エリジウムは今の半分にも満たなかっただろう」と発言。さらに、Siigが掲げた国際的でラディカルな人間味溢れるエストニア文化のビジョンは、「ディスコ エリジウム」の中で今も息づいていると伝えていました。

また、ZA/UMのリードライターHelen Hindpere氏は、「詩は大衆のものでなければならない」と語ったArvi Siigが自身のヒーローだと話しており、これに深い感銘を受けたHelen Hindpere氏は、「ディスコ エリジウム」がワイルドで奇妙な冒険を描く一方で、できるだけ多くの人にプレイしてもらえる作品作りを心がけたと説明しています。

Robert Kurvitz氏がエストニアで最も偉大な詩人と語ったArvi Siigは、当時の政権を強く批判した共産主義的な詩人で、詩をカメラのような役割で用いるジャーナリスティックな詩や労働者階級の若者達の現実を詠うなど、ビートニクに近い活動を行ったことで知られています。

前述の通り、国内でArvi Siigの作品を入手することは極めて困難ですが、その影響は「ディスコ エリジウム」がエストニアの歴史や文化、そして政治的な闘争を色濃く反映していることの証左だと言えるでしょう。

エミール・ゾラ

第7回の特集において、ストライキに言及した際、エミール・ゾラの歴史的な傑作『ジェルミナール』(1885年刊行)の影響をご紹介しました。

ゾラのライフワークとも言えるシリーズ“ルーゴン=マッカール叢書”に含まれる『ジェルミナール』は、1860年代のフランス北部で起こった炭鉱労働者のストライキをテーマに描く小説で、労働者達がおかれた過酷な環境や労働運動の現実を一切美化することなく描くことにより、ゾラが確立した自然主義文学の代表作の一つとしてだけでなく、優れたプロレタリア小説としても広く知られています。

「ディスコ エリジウム」のマルティネーズ地区で繰り広げられているストライキの攻防や駆け引きは、『ジェルミナール』を直接的に参照していますが、影響はストの設定だけに留まらず、社会主義的な市民運動や共産主義的な革命、階級間闘争など、「ディスコ エリジウム」に通底するモチーフ、そしてフランス二月革命やロシア十月革命の“前夜”に近いマルティネーズ地区の状況にもかなり大きな影響を与えており、ZA/UMの面々も『ジェルミナール』の影響をしばしば口にしています。

ダシール・ハメット

次にご紹介するのは、ハードボイルド小説の始祖ダシール・ハメット。ZA/UMは特に『ガラスの鍵』がお気に入りだと説明しています。

1931年に発売された『ガラスの鍵』は、ハメットの代表作(といっても長編小説は僅か5冊のみ)である『血の収穫』や『マルタの鷹』といった探偵をヒーローとして描く典型的なハードボイルド作品とは大きく方向性が異なる、よりグレーで曖昧なヒーロー不在の探偵小説で、共感を拒むように読者を突き放すミニマルな描写やどこまでも続く閉塞感、虚しさばかりが残る読後感、後のノワール小説へと繋がるような描写は、今も全く古びることがなく、文学的に極めて高い強度を持つ作品として、当時よりも後世で高い評価を得ています。

「ディスコ エリジウム」の主人公像は、間違いなく『ガラスの鍵』の主人公ネッド・ボーモントに影響を受けているのでしょう。具体的に影響のある箇所を挙げるとネタバレに触れてしまうため、ここでは言及は避けます。さらに、もう一つ色濃く感じられる影響があるのですが、これは“影響を与えている”というだけでネタバレになってしまう本質的なものなので、こちらも言及は避けますが、一先ず『ガラスの鍵』の影響は決して少なくないと理解してもらえればことは足りるはずです。

また、前述したゾラの『ジェルミナール』とハメットの『ガラスの鍵』を改めて読み直してみたところ、自然主義文学とハードボイルドを代表するこの2冊の間にははっきりと共通するスタイルがあり、このタッチが「ディスコ エリジウム」の全体的なライティングにも大きな影響を与えたのだろうと容易に想像が付きます。

ハメットが最も気に入っていた自作として知られる『ガラスの鍵』は、ただの古典として見逃すには非常にもったいない傑作です。「ディスコ エリジウム」をクリアして、独特な読後感のようなものが気になる方は是非本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

チャイナ・ミエヴィル

次は第3回の特集において『共産党宣言』をご紹介した際に少し触れた小説家チャイナ・ミエヴィルです。

筆者がオリジナルの「ディスコ エリジウム」をプレイした際、当初はなんかピンチョンみたい!と無邪気に楽しんでいたのですが、数日でその印象は全く間違いだったことが分かり、代わりに強くなってきたのが、うっかり大変なものに手を出してしまったという思いと、まるでミエヴィルの小説をビデオゲーム化したような作品だという感想でした。

これは、ミエヴィルの象徴的な都市描写に加え、独特な造語を含む異常な密度の異世界構築ぶりが「ディスコ エリジウム」のそれと酷似していたことから感じたもので、やはりZA/UMの面々もミエヴィル作品の影響が色濃くあることを紹介しています。

殺人事件の捜査と自分探しの物語をプレイしていると思ったら、都市や国家の緻密な描写に驚かされる点で「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」は非常に『都市と都市』的な作品であると言えますし、8000年に及ぶ極めて複雑な歴史や複数の国家、独自の文化・人種・言語・政治システム・科学技術・宗教など、過剰なまでに作り込まれた“エリジウム”世界は、『ペルディード・ストリート・ステーション』に始まる三部作(残念ながら2作目と3作目は未訳)の舞台である“バス=ラグ”に匹敵するような規模で、作品全体からミエヴィルの影響を感じることができます。

一方、「ディスコ エリジウム」とミエヴィル作品の間には社会主義への傾倒を含め多くの共通項があるものの、一つ決定的な違いがあり、「ディスコ エリジウム」は現実世界の政治や歴史を色濃く反映した批評的作品ですが、ミエヴィルは自身の作品から意図的に政治的な寓意性を排しています。

このことから、「ディスコ エリジウム」は細部の緻密なディテールもさることながら、特に物語の入れ物となる作品世界の構築において、ミエヴィルの影響を強く受けていると言えるでしょう。

余談ながら、ミエヴィルの作品で言うと、ロシア革命史における1917年という激動の一年を小説として物語化した『オクトーバー:物語ロシア革命』が、「ディスコ エリジウム」世界の共産主義革命を理解するための副読本として非常に有用です。また、今年5月に発売されたミエヴィルの新作『A Spectre, Haunting: On the Communist Manifesto』は、オクトーバーのスタイルでマルクスとエンゲルスの『共産党宣言』を現代向けに分解し物語として再構築してみせ、あまつさえ歴史的な背景まで解説する究極の“共産党宣言”入門本です。オクトーバーと同じく「ディスコ エリジウム」に直接的な影響を与えたわけではありませんが、その背景を理解するための優れた教科書として読めますので、気になる方は邦訳が出るまで頭の片隅に置いておいてはいかがでしょうか。

スラヴォイ・ジジェク

最後にご紹介するのが、スロベニアの著名な哲学者スラヴォイ・ジジェクです。

ZA/UMの面々はジジェクのファンであることを度々伝えていて、本作に登場する幾つか具体的な要素への影響を明言していますが、筆者は「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」最大のテーマがジジェク的なヘーゲル哲学の再評価にあると強く確信しています。

筆者は専門家ではないので、ジジェクの論を深く掘り下げることはできませんが、「ディスコ エリジウム」のみに焦点を絞って言えば、(見たこともない呪文のように聞こえたら面目ない)ジジェクは現代的なグローバル資本主義の限界を問題として掲げ、ヘーゲル哲学をラカンの視点から再評価し、弁証法的唯物論によって共産主義的な変革を謳っている人物だと言えます。

残念ながら、「ディスコ エリジウム」に大きな影響を与えているジジェクの主著『Less Than Nothing: Hegel And The Shadow Of Dialectical Materialism』(2012)は邦訳が出版されておらず、ボリュームと難解さからおいそれと原書をすすめられるものではありませんが、(メイヤスーや相対主義への言及など、色々新しいことはあるものの)前述したジジェクのテーマ自体は一貫して変わっていません。今回の特集にあたって“Less Than Nothing”をある程度読んだ上で、国内で入手できるジジェクの邦訳を網羅的にチェックしなおしたところ、『ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』を入門として、『イデオロギーの崇高な対象』を読めば、概ね「ディスコ エリジウム」に対する影響はカバーできることが確認できました。

ジジェクのヘーゲル論が「ディスコ エリジウム」にどう影響しているのか、具体的に言及すると酷いネタバレになってしまうことからここでは伏せますが、「ディスコ エリジウム」の誕生とストーリー、深い絶望とニヒリズム、“ZA/UM”の出自はいずれも不可分であり、第2回特集におけるタイトル誕生の歴史や第3回特集の『Planescape: Torment』項でご紹介したスタジオの出自がジジェクの影響と非常に深い関係にありますので、気になる方は当該箇所を改めて踏まえた上で、ジジェクの滅法面白い著書に手を出してもらえたらと思います。(さらに興味があれば、ジジェクのヘーゲル論を支えるラカン論の入門『ラカンはこう読め!』、さらに『斜めから見る』、仕上げに『もっとも崇高なヒステリー者 – ラカンと読むヘーゲル』もディスコ エリジウム的な観点でおすすめです。が、ヘーゲルにしろラカンにしろ、ジジェクの論はめちゃくちゃ面白いものの、決してスタンダードというわけではないので不慣れな方は十分ご注意ください)

余談ながら、第6回の特集においてご紹介したAnton Vill氏のコンセプチュアルなアートワーク“CRÈME BRÛLÉE”に描かれていた変なおじさんは、まさにジジェクその人であり、あの場所に一人佇んでいるということ自体が「ディスコ エリジウム」とジジェクの深い関係を如実に反映していると言えます。

「Disco Elysium」
参考:“クレームブリュレ”と名付けられたAnton Vill氏のアートワーク
周りの惨劇などまるで意に介さず佇むジジェクの姿が印象的

ということで第9回の特集はここまで。次回の特集はいよいよ最終回となりますが、「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」発売前の特集は今回が最後になります。

発売前に一つお伝えしておくと、9回に渡ってあれこれとお届けしてきた内容は全て「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の単なる背景や前提になる情報に過ぎません。

今回の特集にあたって、筆者は「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」が余りに驚きに満ちた作品であることから、初回のプレイ体験を損なわないよう、(既にプレイ済みの方なら一読してお分かりいただけると思いますが)ゲームの内容に関する具体的なネタバレを限界まで避けてきました。

つまり、これまでの前置きを踏まえた上で、じゃあ「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」がどんな物語を描いているのか?という点についてはほぼ触れていないわけです。

「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」が描く物語と体験は、これまでご紹介してきた“前置き”など、単なる入り口に過ぎなかったと感じられる圧倒的なものです。是非、実際に本作をプレイして、この驚きから広がる知的体験を満喫してください。

という事で、発売後の特集となる次回の第10回は、最序盤をプレイした方向けに作品世界“エリジウム”の文化や歴史について、少しネタバレを含むディテールをご紹介します。

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