今年の秋に登場予定のシリーズ最新作「Fallout: New Vegas」、今作はスピンアウトタイトルとしてFallout 3をプレイしていなくとも楽しめる様にデザインされている事が開発を担当するObsidianから報じられています。しかしFalloutシリーズにはその世界観の背景として全ての作品を貫く大きな歴史の流れが存在しており、ストーリー上の繋がりは無いものの、流れを理解しておけばより楽しめるに違いありません。
とは言うものの、Black Isle Studiosが手掛けた旧シリーズはプレイする事自体が比較的簡単ではなく、ハードルも高い事から、今ではその世界観を俯瞰する事はなかなか難しい事と言えます。そんな本シリーズのこれまでの変遷がPC Game紙に紹介され、New Vegasと旧シリーズの関係性が解りやすくまとめられています。
Falloutシリーズに共通するアポカリプスな世界は、Fallout史で言う”資源戦争”(Resource Wars)による核の爪痕として誕生したことが知られています。この資源戦争は、世界的な石油不足により2052年4月に勃発した欧州連邦と中東国家間の大規模戦争で、ここから拡大した戦火や国家間の対立が、世界に終焉をもたらす主な要因となり、米中間の緊張が限界に達した2077年10月23日に大戦争(Great War)が勃発。どちらが最初に発射したかもわからないまま、2時間に渡って互いに核ミサイルを撃ち合い、雨のように降り注いだ核が両国の主要都市を焼き尽くしたことで文明世界が終焉を迎えました。(※ Fallout 1はこの85年後、2161年からスタートします)ざっくりしたタイトルとの時系列は次のようになっています。
■ “Fallout”世界の崩壊とシリーズタイトルの簡単な流れ
- 2052年4月:石油資源の枯渇に伴う資源戦争が欧州連合(European Commonwealth)と中東間で勃発。欧州と中東間の資源戦争は2060年に終結するが、その後アラスカの資源を巡るアメリカと中国の軋轢が新たな戦争を生む。
- 2054年:資源戦争や前年に数万人の犠牲者を出した新型ペストの脅威を背景に、アメリカ政府が“Project: Safehouse”を始動。これによりVault-Tec社がアメリカに122基の“Vault”建設を開始。Vault 13とVault 112を除くほとんどのVaultが2063年までに完成している。
- 2077年10月23日:大戦争(Great War)勃発、核ミサイルにより世界の米中の主要都市が僅か2時間で壊滅。
- 2161年:Fallout1がスタート、翌2162年に終了。
- 2241年7月:Fallout 2が開始、翌2242年にエンクレイブ本体が壊滅し終了。
- 2250年:Van Buren(旧シリーズの3にあたる作品)が開始。
- 2258年:Fallout 3の主人公が生まれる。
- 2277年:Fallout 3終了。
- 2280年:Fallout: New Vegasがスタート。
後期の資源戦争においては、2066年の冬に中国が石油資源獲得を目的にアラスカへと侵攻。これによりアメリカと中国の戦闘が激化するなか、この戦いを通じてアメリカがカナダを無理矢理属国化。2076年2月には遂にカナダを併合し、数ヶ月後にアラスカを平定。こういった衝突が2077年10月23日の大戦争勃発に至る直接的な要因となっています。
しかし、アメリカは核攻撃に備え、”Vault”と呼ばれるシェルター施設を国内に複数建設しており、そこで生き延びた人間達が描き出す、“資源戦争”による世界崩壊後のアメリカを描いた複数の作品群がFalloutシリーズという事になります。
シリーズ1作目のFalloutは、核による世界崩壊から85年後の2161年、南カリフォルニア近辺が舞台として描かれています。Vault 13からスタートするこの1作目は、給水システムの復旧から始まり、途中で明らかになるスーパーミュータントの侵攻を防ぐというもの。本作では、シリーズを通したテイストである50~60年代のアメリカ大衆文化の様子が端々に見られ、落下したUFOなどのモチーフも登場、お馴染み犬肉ことDogmeatくんも1作目から登場しています。
2作目になるFallout 2は前作から80年が経過した2241年7月、同じVault 13からスタートし、干ばつに見舞われたカリフォルニアを舞台に楽園(エデンの園)を作るためのツール(G.E.C.K.)を探す為にクラマス川に沿って北上、オレゴン州との境付近までが含まれ、合衆国の復活を目標とする武装組織エンクレイブとの戦いが描かれています。
なお、エンクレイブ本体は今作で壊滅しており、Fallout 3に登場するエンクレイブは東海岸に逃れていた残存勢力という事になっています。そして今作からFallout: New Vegasでスポットが当てられる事になった”ニューカリフォルニア共和国”とその勢力NCR(New California Rangers)が登場、 Shady・Los Angeles・Maxson・the Hub・Dayglowの5つの州から構成されており、70万人を越える人達が暮らしています。ニューカリフォルニア共和国はFallouの世界では最大の勢力で、同時にNCRも最大の軍事勢力とされています。
Micro Forteが開発したFallout Tacticsはシリーズ初のシミュレーションタイトルです。今作は正史との関連が低いとされていますが、年代は2277年以前である事が判っており、西海岸から追いやられたスーパーミュータントがロッキー山脈を横断し東海岸へ逃げる途中のカンザス、シカゴ、セントルイス周辺の中央アメリカが舞台となっています。
オリジナルを開発したBlack Isle Studiosによって進められていた”Fallout 3″にあたるタイトルがVan Burenです。本作がリリースされる事は結局叶いませんでしたが、開発はほぼ完了に近い所まで進められており、テストクライアントや膨大な資料が残されています。
それによると本作は2250年のユタ州とコロラド州が主な舞台として描かれており、物語はニューカリフォルニア共和国に深く関わる物だったようです。さらに舞台はデンバーやメサ・ヴェルデ国立公園、グランドキャニオン、そしてNew Vegasでも登場が予定されているフーバーダムも含まれており、Fallout: New Vegasにかなり近い作品に感じられます。
物語はニューカリフォルニア共和国の科学者Victor Presperが軌道衛星上に残存していた核兵器を掌握、博士がもくろむ2度目の核による世界の浄化(大虐殺)を食い止めるという物で、一見ありがちな物語に思えるこのお話ですが、実際にはミサイル発射の全てを食い止める事が出来ず、プレイヤーが止められなかった核ミサイルが落とされる場所を決定するという、ある意味究極の選択を問われる内容になる予定だったそうです。
ここまでのタイトルが旧シリーズとされており、ここからはFalloutフランチャイズを買い取ったBethesdaによるシリーズが展開されます。Bethesdaの旧シリーズへの深い理解とオマージュ、そしてリスペクトにより生まれ変わった新シリーズは、ワシントンDCを舞台に2258年7月のVault 101から始められます。
本作ではシリーズの歴史を見事に踏襲し、水の浄化システムやこれまでに登場した勢力達の争いを軸に東海岸のアメリカが描かれています。
そして秋登場の予定の最新作Fallout: New Vegas、今作は旧シリーズの大きな鍵を握っていたニューカリフォルニア共和国が軸となり、西海岸が舞台として描かれる予定です。時代設定は2280年、Fallout 3の終了から3年後、そして西海岸にスポットを当てるならFallout 2のエンクレイブ本体壊滅から38年が経った世界という事になります。
こうして並べて見ると、シリーズを通してプレイしているファンにとってNew Vegasはなかなか感慨深いタイトルになりそうな香りが漂っていると言えそうです。また、シリーズ未経験の方とっては骨太なFallout 3を始めとする正史に繋がるきっかけとして、良い入門タイトルになり得るかもしれません。
ちなみに今回の情報には掲載されていませんが、上記のタイトルの他にアクションRPGのスピンアウトタイトル「Fallout: Brotherhood of Steel」が存在します。これはFallout 1と2の間に起こったBrotherhood of Steelの物語を描いた物……ですが、こちらはバルダーズゲート・ダークアライアンスシリーズのシステムをまんま利用した物で、正史との関連性はあまり見られない様です。
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