原作小説の最終巻となる圧巻の“湖の貴婦人”やファン必携の資料本“ワールド・オブ・ウィッチャー”が続けて国内で発売され、来るNetflixのドラマ版も大きな話題となるなど、“グウェント”の意欲的なアップデートを含め、昨今改めて大きな盛り上がりを見せている“ウィッチャー”シリーズですが、8月1日に“グウェント ウィッチャーカードゲーム”の素晴らしいアートワークを多数収録したアート集「グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム」が遂に国内で発売となり、G-NOVELSより本書の見本誌を頂きました。
“グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム”は、海外で2017年9月に発売されたアートブック“Gwent: The Art of The Witcher Card Game”の邦訳で、247ページに渡って、モンスター52枚、北方諸国47枚、スコイア=テル44枚、スケリッジ50枚、ニルフガード帝国48枚、ニュートラル31枚、スペシャルカード40枚、計312枚に及ぶ非常に美しい幻想的なアートワークをフルカラーで収録し、その多くに物語的な出自や描かれたシーンのストーリー的な背景、アーティストのデザイン的なアプローチ、或いはインスピレーションなど、例えば「感謝の印に恩人の手に口づけをする魔術師。この構図は映画『ゴッドファーザー』への明確なオマージュです」といった、単にプレイしているだけでは知り得ない数々の注釈が用意され、眼福なアートワークと併せて、アトランダムにぺらぺらとページをめくっているだけでも楽しい図録となっています。
筆者は、ここのところランクモードを熱心にプレイするほど十分な時間が確保できていないことから、もっぱら愛するイオルヴェスを愛でるためのビルドを組んで、報酬手帳を目当てにのんびりグウェントを楽しんでいますが、今回“グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム”の解説を読んだことで、ずっと存在を忘れていたカード“シアラン”が“The Witcher 2: Assassins of Kings”において重要な役どころを担ったイオルヴェスの部下だったことをようやく思い出し、無事2人をお気に入りのデッキ上で再会させることができました。
このように、本書に記されたカードの出自や解説に目を通していくと、ブロンズカードの名もない民兵が実はヴィズマの農民達だったとか、見覚えのない怪物を描いたあるカードがグウェントのために描かれた全くのオリジナルだったとか、ゲームには登場していない原作小説のキャラクターを描き下ろす際のアプローチや工夫を凝らした肉付けなど、一枚のカードに込められた様々な背景や取り組みを知ることができ、お気に入りのビルドやカードと照らし合わせながら本書を紐解けば、ビルドへの思い入れやプレイ時の盛り上がりがさらに深まることは間違いありません。
ところで、“グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム”にはもう1つ興味深い点として、本書が劇的な変化を遂げながら進化を続けてきた“グウェント ウィッチャーカードゲーム”の失われた記憶、もしくは思い出のように感じられることが挙げられます。
これは、このタイミングで邦訳が発売されたことが主な要因の1つでもありますが、本書に収録された312枚のカードを丁寧に追っていくと、思いのほか多くのカードが現行の“グウェント”には既に存在していないことが分かります。
本書が海外で発売された2017年9月といえば、クローズドベータの開始からおよそ1年、パブリックベータ入りから4ヶ月が経ち、ちょうど“マハカムエール祭”イベントが行われていた時期であり、当時のバージョンと本書の内容にはそれほど大きな違いはありませんでしたが、先日新勢力シンジケートを含む第2弾拡張パック“ノヴィグラド”を導入した現行の“グウェント”は(リーダーカードを含めると)実に730枚強ものカードを擁する巨大な作品に進化を遂げています。
一般的にビデオゲームのアップデートや拡張と言えば、その多くがコンテンツや要素、メカニクスをインクリメンタルに増加させるものですが、“グウェント”という作品については全くこの限りではなく、製品版ローンチ時の大規模アップデート“Homecoming”によって、カードの基本的な分類からコアルール、盤面の列構成にまで至るほぼ全ての要素が刷新され、従来のものとは全く異なる姿に生まれ変わっており、その際に多くの要素やカード、アセットが姿を消しました。
つまり、現行の730枚を超えるカードは、過去のビルドに存在した300枚強のカードから単に純増したわけではなく、“Homecoming”の導入時に失われたカードの分も増えているわけで、前述の全体に及ぶシステム的な再構築も併せて考えると、その労力たるや想像を絶するものと思われますが、こういったある種の過剰な取り組みは、何よりも品質を優先するCD Projekt Redならではの象徴的な出来事とも言えます。本書は(グウェントがオンラインゲームであることから、古いバージョンで遊ぶことも適わない)その貴重な残滓を美しい姿でいつでも振り返ることができる貴重な一冊でもあるわけです。
全くの余談ながら、6月上旬に発売されたウィッチャーファン必携といって間違いない解説本“ワールド・オブ・ウィッチャー”についても、ご紹介する記事の準備を進めていますが、個人的な事情ながらE3開催前から目の回るような忙しさが続いていて、すっかり公開が遅れてしまっています。こちらは、自分で購入したものとG-NOVELSさんから頂いた見本誌が重なって、手元に2冊ありますので、記事の公開時に1冊を読者向けのプレゼントにしたいと思います。発売からすっかり時間が経ってしまい恐縮ですが、もう少々お待ち下さい。
という事で、“グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム”は眺めてよし、読み込んでよし、加えて“グウェント”プレイヤーではない“ウィッチャー”シリーズのファンにも資料として役立つという、極めて有用な一冊となっていますので、気になっている方は今後の“ウィッチャー”ライフをより充実させるためにも1つ手元に置いておいてはいかがでしょうか。
■ 『グウェント アート・オブ・ウィッチャーカードゲーム』について
全世界で累計3300万本突破の大人気ゲーム『ウィッチャー』シリーズから生まれた、『グウェント ウィッチャーカードゲーム』のアート集が邦訳化!
豪華絢爛なカジノにあるエキゾチックなテーブルの上でも、煙と喧騒が渦巻く酒場のゴツゴツしたカウンターの上でも、どこでプレイしても白熱の対戦が楽しめるカードゲーム、それがグウェントです。
カードを彩る美しいイラストが、対戦相手を粉砕する戦略的な楽しさをより一層高め、唯一無二の興奮を味わえます。
本書には、その感動のアートの数々を集めました。スリリングなカードゲームの魅力的な芸術作品をご堪能ください!■ 『グウェント ウィッチャーカードゲーム』とは?
シリーズ最大のヒット作『ウィッチャー3 ワイルドハント』のミニゲームとして登場し、独立したゲームとしてリリースされた基本プレイ無料のオンライン対戦型カードゲーム。
『ウィッチャー』シリーズの魅力的なキャラクターなどが数多く登場し、それらの美しいアートワークと高い戦略性が特長。
※ 本書は2017年9月に発行された英語版『GWENT:ART OF THE WITCHER CARD GAME』を忠実に翻訳しております。そのため、本書出版時点の『グウェント ウィッチャーカードゲーム』と一部内容が異なりますことをご了承ください。
PC | PlayStation 4 | Xbox One | Wii U
PlayStation 3 | Xbox 360 | PS Vita | DS
Mobile | Movie | Rumor
Culture | lolol | Business | Other
RSS feed | About us | Contact us
かたこり( Twitter ):洋ゲー大好きなおっさん。最新FPSから古典RPGまでそつなくこなします。
おこめ( Twitter ):メシが三度のメシより大好きなゲームあんまり知らないおこめ。洋ゲー勉強中。