本日、待望の配信を迎える「ボーダーランズ3」のストーリーミッションDLC第4弾「サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!」ですが、リリースに先駆けて2Kより本DLCの先行アクセスを提供頂き、一足先にクリーグの精神世界を描くカオスな新たなストーリーキャンペーンをプレイすることが出来ました。
今回はシーズンパス含まれる最終DLCとなる“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”のプレイレポートとインプレッションをご紹介しますが、前もって筆者の結論的な印象をご紹介しておくと、本DLCは1つのテーマを全体に渡って奥深く丁寧に掘り下げた、実験的とも言えるほど(極振りに近い)ストーリー重視のコンテンツで、メカニクス周りの新コンテンツやシステム、寄り道はやや抑え気味となっており、プレイヤーがDLCに望む内容によっては評価が二分するかも知れません。
ただし、本DLCのナラティブはシリーズ屈指の仕上がりであり、Gearbox Softwareはこれを最も魅力的かつ十分に見せるためのバランスを臆せずに選択したと感じました。
ということで、“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”の異質さや特殊性について触れる前に、まずはシリーズの第4弾DLCに関するこれまでの流れを振り返ってみましょう。
これまで、プリシークエルを含む“ボーダーランズ”の主要なシリーズタイトルは、(ボーダーランズ2のイレギュラーな“指揮官リリスのサンクチュアリ奪還作戦”を除いて)何れも例外なく発売後に4つの大型DLCをリリースしてきた経緯があり、筆者はそれぞれの第4弾DLCが単なる最終DLCの位置付けを超え、シリーズの重要な役割を担ってきたと考えています。
■ 参考:主要なシリーズタイトルと第4弾DLCのラインアップ
- 「ボーダーランズ」 – Claptrapのロボット新革命
- 「ボーダーランズ2」 – Tiny Tinaとドラゴンの城塞
- 「ボーダーランズ プリシークエル」 – Claptrapのデジタルな決死圏
- 「ボーダーランズ3」 – サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!
初代の第4弾DLC“Claptrapのロボット新革命”は、うざ愛らしいマスコットだったClaptrapを単なるお飾りではなく、シリーズの全体的なプロットの中心へと引きずり込み、シリーズの圧倒的な人気を決定付けた続編への橋渡しとなる非常に重要な役割を果たしました。
続くボーダーランズ2の第4弾DLC“Tiny Tinaとドラゴンの城塞”は、ティナを襲った悲しい別離と喪失を軸に、続編の全体を締めくくる圧倒的な大団円と少女のささやかな成長を描いた素晴らしいコンテンツとして非常に高い評価を獲得しました。
ボーダーランズ プリシークエルの第4弾DLC“Claptrapのデジタルな決死圏”は、最後のClaptrapが如何にして特別な存在となったのか、その謎と出自を通じて運命的な自己犠牲と絶望的な状況に残った一縷の光を描く(こちらが本編と言っても過言ではない)非常に重要なエピソードを描いていました。
このように、過去作の第4弾DLCは、(比較的お気軽で愉快なプロットやギミックそのものを主軸に置くその他のDLCに比べて)シリーズにとって非常に重要な意味を持つトピックや作品全体の総括を扱ってきたわけですが、ここには共通して一見混沌としたシリーズに通底する不変的で強いエモーションが横たわっています。
最新作の第4弾DLCとなる“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”も、やはりこの例に漏れず非常に特殊な内容のコンテンツとなっているわけですが、今回のDLCはこれまでとやや趣が異なり、冒頭でご紹介した通り、従来の第4弾DLCよりもさらにストーリーテリングそのものと人物描写に特化した内容となっています。
具体的な違いは、DLC全体で単一の物語を描いている点にあり、これはストーリーテリングとナラティブの手法が従来と異なることを指しています。
例えば“Tiny Tinaとドラゴンの城塞”や“Claptrapのデジタルな決死圏”には、様々なアクティビティやミッション、サイドストーリーが存在しており、メインのプロットは主に散発的な台詞や幾つかのカットシーン、オープニングとエンディングによって構成され、戦闘や探索を含む全体的なゲームプレイにおいてストーリーテリングが占める割合は(当然ながら)そう多くなく、あくまでゲームプレイの間に挟まれる要素によって断続的に進行する、ストーリー要素を持つシューターRPGとして至極当たり前の構成をとっています。
一方で、“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”は、サイドストーリーや収集要素、探索、アクティビティの量を極力抑え、オープニングからエンディングまで、(前述の断続的な点を繋いで進行する物語とは異なり)かなり流動的かつ連続的に一続きの大きな物語を丁寧に掘り下げています。
“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”は、この流動的で連続的なストーリーテリングを実現するために、レベルデザインも大きく変化しており、多数の探索要素を持つ従来のオープンなレベル環境ではなく、非常にリニアなデザインを採用することで、まるで遊園地のライドアトラクションのように、それ自体が物語の装置としてストーリーテリングとナラティブをスムースに進行させる極めて重要な役割を担っています。
このアプローチは全体を通じて驚くほど徹底していて、サイドミッションは文字通りほぼ見ているだけで終わるようなシンプルなものが多く、クルー・チャレンジに至ってはなんと1種類しか存在していません。
Gearbox Softwareは、ここまで徹底した手法を採用した“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”を通じて、一体何を描いているのでしょうか。
前述した従来の第4弾DLCは、次回作やシリーズの根幹に関わるような大きなトピックを扱っていますが、“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”は、この点において従来の第4弾DLCと大きく異なり、(※ サイコ達を蝕む狂った精神の謎に迫るというお題目は比較的大きなトピックではあります。シリーズを象徴する狂信的なバンディット達は、元々パンドラに送られた犯罪者だったとはいえ、本来はダールの労働者階級だった訳ですから、あそこまでトライバルで狂気に満ちながら共通したビジョンで画一化された暴徒と化す背景は確かに不思議だと言えますが……)あくまでクリーグという人物の内面と過去をひたすらえぐり出しながら掘り下げる、シリーズ史上最もプライベートな物語を紡いでいるのです。
「サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!」は、すべてのヴォルト・ハンターにこう問いかけます― 「ボーダーランズ」の血に飢えたサイコたちは、どうして揃いも揃ってイカレているのか? 天才科学者であるパトリシア・タニスは、サイコを狂気に駆り立てているのはある場所の知識であるという仮説を立て、そこを「ヴォルトハラ」と名づけました。謎に満ちたこの場所を見つけ出す鍵は、最凶最悪のサイコ・クリーグの精神に隠されています。当然の成り行きとして、タニスの依頼を受けたヴォルト・ハンターたちが、手がかりを求めてクリーグのカオスな“頭”の中へと入り込むことになるわけですが、彼の歪んだ内面世界は危険で満ち溢れており、生き延びないことにはヴォルトハラの手がかりをつかむどころではありません。
本DLCは、このプロットが示す通り“ボーダーランズ2”のプレイアブルキャラクターだったサイコバンディット“クリーグ”の脳内と精神を具現化した惑星に降り立ち、サイコ達を狂気に駆り立てる“ヴォルトハラ”の謎に迫ります。
過去作をプレイしたファンならご存じの通り、クリーグは狂ったサイコと人間性を維持した内面の男からなる二重人格者で、本DLCには遂にこの2つの人格を分離したキャラクター“サイコ・クリーグ”(従来のサイコ人格)と“セイン・クリーグ”(人間だったころの人格)として登場します。
“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”が描くストーリーの具体的なディテールについては、ネタバレを避けるために言及を控えますが、本DLCは人間がどれほど他者と分かり合えないか、時には自分自身のことさえ見失う、その絶望的に深い断絶とそれでも決して止むことのない他者を拠りどころとする実存的な希求を、ただひたすら丁寧に紡いでいます。
本DLCは、この不変的な単一のテーマを軸に、言葉に依存するコミュニケーションの本質的な不全性や無関心、孤独、諦念、期待、自己防衛、分かり合えないことを踏まえた他者への思いやりや尊重、歩み寄り、言語としての暴力と非暴力といった要素を掘り下げながら、その一つ一つを積み重ね、奇跡のような、しかし確かに存在する運命的な理解者との関係性といったところにまで肉迫する、非常に挑戦的なアプローチを特色としています。
こういったテーマと構成は、ある意味でインディー的でもあり、リニアなレベルデザインやゲームプレイそのものを通じて、物語を点ではなく一つの線として流動的に描く様は、やや例えが乱暴ながら、ボーダーランズ版“Gone Home”と言っても過言ではない内容だと感じられました。
余談ながら、本DLCをプレイするにあたって、もう1人の重要キャラクターであるマヤとクリーグの関係を改めて確認しておけば、DLCのストーリーをより深く楽しめるかと思います。
さらに、本DLCにおいて非常に印象的だったモチーフが本作の大きな謎の一つである“ヴォルトハラ”でした。
これは、もちろん北欧神話におけるヴァルハラとヴォルトを掛けているわけですが、実のところ単なる言葉遊びに終わる文言ではなく、本作のストーリーやテーマと密接に結び付いています。
つまりクリーグにとって、マヤは文字通り導き手となる女神ヴァルキリアであり、本DLCは過酷な世界と悲劇的な状況下で全てを見失い彷徨う狂った魂の行方を描いているのです。
また、まるでスカボロー・フェアのような、とある表現も非常に美しく、“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”は数あるシリーズのエピソードの中でも非常に忘れがたい、胸を打つストーリー経験を与えてくれました。
という事で、“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”はストーリー極振りの非常に珍しいアプローチのDLCだったわけですが、ゲームプレイもなかなか楽しい仕上がりでした。
本DLCの展開は前述の通り非常にリニアな構成を特色としていますが、その分濃密でメリハリの利いたエンカウントが多く、戦闘やパズルがライドなアトラクション的経験の一部として組み込まれているほか、複数登場する個性的なボス達には工夫を凝らしたギミックが用意されています。
今回の先行プレイは、確保できる時間に限りがあったことから、手持ちのキャラクターとビルドの中では比較的手数が少なく楽に戦えるモズを選択。グリーン・モンスターと真珠でフリッパーを撃ち続けるお手軽ビルドでメイヘム10をクリアしました。
ドロップは本編とDLC分が混在するグローバルなテーブルで、新装備の入手性はやや渋めな印象でしたが、1度のプレイスルーと数回のボスファームで以下のような新装備を確認することができました。
なお、ガーディアンランクの150報酬は残念ながら導入されていませんが、DLC3に無かった新種のクラスMODが(恐らく)1種ずつ追加されており、何れも非常に興味深い効果を持っています。
今回、モズの新MOD“フレア”を利用したビルドをしっかり詰めるまでには至りませんでしたが、アクションスキルの発動中に武器ダメージが増加する聖別と“知識の真珠”、アクションスキルのクールダウンを早める新シールド“プラス・ウルトラ”を組み合わせたビルドをざっくりと試したところ、生存性にやや問題があり、細部を詰める必要があるものの、戦闘はなかなか楽しいものでした。
また、気になる点として、先行プレイで一先ず惑星全体の進捗を100%まで完了させたものの、“あからさまな”謎が2つほど残っており、とある大量のメッセージの解読とさらなる探索が必要な状況となっています。
このほか、クリーグの脳内に登場する馴染み深いキャラクター達に用意された数多くの楽しい台詞、サイコ・クリーグの愛らしいあれこれなど、本DLCには前述の謎を含め第4弾DLCに相応しい多くのお楽しみが用意されています。
とはいえ、本DLCが実験的で非常に変わったアプローチのコンテンツであることは間違い無く、シリーズの第4弾DLCとしてはいささかプライベートな内容すぎるようにも感じられます(最高ですが)。
先日ご紹介した通り、日本時間の9月13日午前4時45分に放送がスタートするPAX OnlineのGearboxショーケースにて、“ボーダーランズ3”の今後に関する最新情報が解禁される予定となっています。
“サイコ・クリーグのカオスな脳内で大暴れ!”に続くさらなるストーリーDLCが用意されているのか、それとも次世代機対応か、はたまた新たなライブイベントか、“ボーダーランズ3”にはまだまだ語られるべきトピックが残されているはずで(BチームとかBチームとかエヴァとか、リリスとか)、数日後のショーケースで一体何が解禁されるのか、来るお楽しみに向けてクリーグのカオスな脳内をじっくり探索しておいてはいかがでしょうか。
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