「Activision Blizzard」のハラスメント問題が再燃、多くの従業員や一部株主がBobby Kotick氏の退陣を求める事態に

2021年11月19日 0:09 by katakori
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「Activision Blizzard」

先日、“Blizzard Entertainment”の悪質なハラスメント問題の責任を取る形で辞任したCEO兼社長J. Allen Brack氏の後任として、ベテランMike Ybarra氏と共に共同経営者となったVicarious Visionsの元スタジオヘッドJennifer Oneal氏が、就任から僅か3ヶ月でBlizzard Entertainmentを退社した話題をご紹介しましたが(参考:過去記事)、昨日Wall Street Journalが当初円満な形で報じられたJennifer Oneal氏退社の背景を含むActivision Blizzardのハラスメント問題やCEO Bobby Kotick氏に関する非常にショッキングな内部情報を公開。これがきっかけとなり、150名を超えるActivision Blizzardの従業員グループがBobby Kotick氏の退陣を求めるウォークアウトを開始したほか、計480万株を保有する株主グループが同様にBobby Kotick氏の退陣を要求。さらに、SIEのボスJim Ryan氏が社内メールで今回の問題について懸念を表明するなど、再び大きな注目を集める事態となっています。

昨日から今日に掛けて、この件に関する多くの情報が浮上していますので、今回は主な内容を個別に要約してご紹介します。

Blizzard初の女性共同経営者Jennifer Oneal氏が僅か2ヶ月で退社を決断した背景について

  • Jennifer Oneal氏がBlizzard Entertainmentを退社した件については、当サイトでもご紹介した通り、当初はJennifer Oneal氏がハラスメント問題を巡るスタジオの状況改善に取り組むなかで、自身に多様性や公平性、インクルーシブに対する大きな情熱を見いだしたことから、Blizzard Entertainmentだけではなくビデオゲーム産業全体に多様性をもたらす活動や女性従業員達の支援に全てを捧げる決断を下したことで、円満に退社したと報じられていた。
  • この退社について、新たにWall Street Journalが実際は前述のような状況ではなく、Jennifer Oneal氏がActivision Blizzardの多様性を表面的に取り繕う飾りとして選ばれ、ビジネス的には阻害され、アジア系アメリカ人の同性愛者として差別されたため退社を決めたと報道。
  • Jennifer Oneal氏は、問題となっているスタジオ文化の改善について、9月にActivisionの法務部にメールを送り、「Activision Blizzardが適切な方法で従業員を尊重するつもりがないことは明白だ」と辞職の意思を伝えており、そもそもActivisionの経営陣にスタジオ文化を改善するつもりはないと公言していた。
  • Jennifer Oneal氏とMike Ybarra氏は、同じ役割の共同経営者として選出されたものの、Mike Ybarra氏の報酬はJennifer Oneal氏よりも高額だった。これについてJennifer Oneal氏は報酬を同等にするよう繰り返し要求したものの、全て却下された。これについては、Jennifer Oneal氏本人が事実として説明している。
  • この件についてBlizzard Entertainmentの現責任者Mike Ybarra氏が社内メールで釈明しており、報酬の差が事実だったことを認め、この差が以前の契約に基づくものだったと説明。共同経営者に選ばれた際の契約では、2人の役割が同じことから、もともと報酬額は同じになる予定であり、Mike Ybarra氏自身も同じ待遇を望んでいたと語り、現在は同額の報酬を得ていると発言している。
  • Mike Ybarra氏の発言について、Jennifer Oneal氏自身が説明しており、前述の通り報酬の問題と要求は何度も却下され、当初Mike Ybarra氏が言うような申し出はなかったと説明。実際は辞表の提出前に検討中である旨が伝えられ、その後辞表の提出後に初めて同額の報酬を支払うオファーを受けたとのこと。Jennifer Oneal氏は、自身の発言について、Blizzardが同等の報酬を提示した時期について誤解が生じないよう、この点を明確にしたと強調している。なお、Jennifer Oneal氏の退職は年末予定。(つまり、Jennifer Oneal氏が辞任したことで事後的に問題を回避したとも受け取れるが、本当に当初から同額の報酬を予定していたのか、このタイミングに関する質問についてBlizzard側は回答していない)
  • 今回の告発により、Jennifer Oneal氏自身がキャリアの初期にBobby Kotick氏が同席する場で性的な嫌がらせを受けた被害者だったことが判明している。

Bobby Kotick氏に関する新たな疑惑

  • これまで、Bobby Kotick氏は一連の性的/パワーハラスメントについて周知していなかったと伝えていたが、今回Wall Street Journalが行った告発は、Bobby Kotick氏がかなり以前から知っていたことを示しているだけでなく、Bobby Kotick氏自身がハラスメント事件に関与していたと報じている。
  • 2006年にBobby Kotick氏がアシスタントに電話に「殺してやる」という脅迫的なボイスメールを残した。アシスタントの苦情に対し、Bobby Kotick氏は示談でこの問題を解決したとのこと。WSJの確認に応じたActivisionの広報Helaine Klasky氏は、この件についてBobby Kotick氏が明らかに誇張した不適切な発言をすぐに謝罪し、今でもこの軽はずみな発言と口調を深く反省していると伝えている。
  • もう一つの疑惑は、Treyarchの共同責任者の一人だったDan Bunting氏が同スタジオを退社した際のセクシャルハラスメント問題にBobby Kotick氏が介入したというもの。
  • Dan Bunting氏は2017年にセクハラ行為で女性従業員に告発され、2019年にActivisionが内部調査を開始。これに伴いActivisionはDan Bunting氏に解雇勧告を行ったが、これにBobby Kotick氏が介入。Dan Bunting氏にカウンセラーを付け、氏を引き留めたとのこと。しかし、Dan Bunting氏はその後Activisionを退社している。
  • さらに、Sledgehammer Gamesのスーパーバイザーを務めたJavier Panameno氏に対するレイプ疑惑も報じられており、被害者の弁護士はJavier Panameno氏が新たな女性にさらなる性的嫌がらせを行っていると説明。最初の被害者は警察に通報したが起訴に至らなかったものの、この事件が2018年にActivisionの知るところとなり、Javier Panameno氏はその2ヶ月後に解雇された。また、Bobby Kotick氏はこの事件についても示談で被害者と和解しており、レイプ疑惑や和解について取締役会に報告をしなかったとのこと。
  • Blizzard Entertainmentの元技術責任者Ben Kilgore氏は、数年に渡って複数のセクシャルハラスメント疑惑に直面しており、部下の従業員との関係について内部調査で嘘をついたとされている。この問題に関して、Ben Kilgore氏はBobby Kotick氏の承認により解雇された。
  • 今回の報道が行われた直後、Bobby Kotick氏は従業員に向けて次のような声明を発表。「本日の記事では、当社と私個人、および私のリーダーシップに関する不正確で誤解を招く見解が伝えられている。この件について二つの重要なことを伝えておきたい。1つ目は業界で最も優秀な人材が常に向上心を持って働いており、私もこれを共有していること。2つ目は誰もが尊重され包括的な職場を目指す私の信念を疑う人は、このことが私にとってどれほど重要なことであるか理解していないということです。」
  • なお、今回の報道に対する確認に応じたActivision Blizzardの広報は、当社および当社のCEOについて誤解を招く報道を行ったWall Street Journalの記事に失望していると説明。Bobby Kotick氏が関知する不正行為については、既に対処済みだと続けている。

Activision Blizzardの従業員がBobby Kotick氏の退陣を求めるウォークアウトを実施

  • 今回の報道に伴い、本日Activision Blizzardの従業員グループABK Workers AllianceがBobby Kotick氏の辞任を求める要求を発表し、従業員に呼びかけウォークアウトを実施した。
  • ABK Workers Allianceは、一切の妥協を許さないポリシーを制定したと報告し、Bobby Kotick氏がCEOを退くまで声を上げ続け、従業員達が選出する第三者による調査を求める要求を継続すると伝えている。
  • 今年7月以来2度目となる今回のウォークアウトには、最終的に150人を超える従業員が参加したとのこと。
  • このほか、ミネソタ州のBlizzard QAオフィスでも小規模な抗議活動が行われたほか、多くの従業員が抗議の一環としてリモートでの業務を中止している。
  • また、従業員グループはJennifer Oneal氏の処遇についても言及しており、皆がJennifer Oneal氏のリーダーシップに期待していたこと、そしてJennifer Oneal氏がいかに軽んじられていたかを知り、胸が張り裂けるような思いを抱いていると伝えている。

一部の株主グループがBobby Kotick氏の辞任を要求

  • 今回の告発に伴い、Strategic Organizing Centerが主導する株主グループが連名でActivision Blizzardに対しBobby Kotick氏の辞任を求める書簡を送付した。
  • このグループはActivision Blizzard株の0.6%に相当する計480万株を保有しており、取締役会に対して従来の声明とは全く異なるBobby Kotick氏の行動や関与について、全く適切な対処を取れていないと糾弾している。
  • また、同グループは企業文化を変革するための専門知識やスキル、信念を持つ新たなCEOが必要だと主張しており、Bobby Kotick氏と取締役会の議長Brian Kelly氏、同じく取締役会のRobert Morgado氏が年内に退任しない場合、取締役の再選に投票しないと明言している。

Activision Blizzardの取締役会はBobby Kotick氏を支持

  • Wall Street Journalの報道を受け、本日Activision Blizzardが全社ミーティングを実施。(Bobby Kotick氏本人もメンバーの一人である)同社の取締役会は、Bobby Kotick氏が職場の問題に対して適切な対処を行っていると主張しており、Bobby Kotick氏のリーダーシップとコミットメント、目標の達成力に多大な自信を持っていると説明している。
  • さらに取締役会は、「Bobby Kotick氏のもとでActivision Blizzardは既にハラスメントを一切許容しない方針に加え、従業員に占める女性とノンバイナリの割合を大幅に増加させる取り組み、多種多様な人材に機会を提供するための社内外に対する大規模な投資など、ビデオゲーム業界をリードする変革を実施している」との声明を発表した。
  • また、取締役会は従業員が事前に提出した質問にも答えており、前述した例外を一切許容しない新たな対処方針(いわゆるゼロトラレンスポリシー)について、Bobby Kotick氏が過去に行った行動についてはこれを適用しないと明言している。

SIEのCEO Jim Ryan氏が新たな疑惑に対する懸念を表明

  • 本日SIEのCEO Jim Ryan氏が従業員宛のメールを通じてWall Street Journalの告発について言及。今回の問題に落胆し、唖然としたと伝えているほか、記事の公開後ほどなくActivisionと連絡を取り、深い懸念を表明すると共に、WSJの主張にどう対処する予定なのか訊ねたと説明。さらに、Jim Ryan氏はActivisionから得た回答について、この状況に対して適切に対処しているように思えないと伝えている。
情報元及びイメージ:GameSpot, Eurogamer, BNN Bloomberg, PC Gamer

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