早くも国内リリースも決まったBethesdaのTESシリーズ最新作「The Elder Scrolls V: Skyrim」、長年のファンにとってTESシリーズの広大なオープンワールドの探索や、一人称と三人称を併用する遠/近戦闘や魔法システム、深い歴史など、多くの側面が馴染み深い要素ですが、今作ではゲームプレイに”dragon shouts”(以下:ドラゴンシャウト)と呼ばれるシステムが新しく盛り込まれます。
このドラゴンシャウトは魔法とは違う別系統のパワフルなエリアエフェクトを持つ複数の能力で、この能力を使うに至る手段を持つ者は世界中で主人公のみとされており、これに到達する方法はゲームの中でそれ自体が1つの大きなクエストとして展開される事となります。ドラゴンシャウトはプレイヤーに復活したドラゴン達と同じ力を、そしてSeptim朝の初代皇帝であるTiber Septimが持つ力と同じ力の源を主人公に与えます。
先日Game Informerにこのドラゴンシャウトの概要が掲載、本作のディレクターを務めるTodd Howard氏も登場し、登場の経緯やドラゴンシャウトの内容だけでなく、その背景やSkyrimの重要や存在となるドラゴンの設定等について興味深い内容を多く明かしています。今回はその概要をまとめてご紹介します。
The Elder Scrolls V: Skyrimのディレクターを務めるBethesdaのTodd Howard氏はドラゴンシャウトが”伝承の中に存在する”と明言、それは古いバーバリアン達のバトルクライ(※ RPGではしばしば登場する咆吼によるアビリティ)に似ていると説明し、この事がRedguardについて記した帝国のガイドに明確に伝えられていると語りました。
このアイデアはNord達がバトルクライの能力を持っていたという内容で、開発チームがThe Elder Scrolls V: Skyrimの開発をスタートした際に、この神話の中の小さなアイデアへの着目が何千年もの間世界に不在だったドラゴン達の復活へと繋がったとのことで、Howard氏はドラゴンシャウトのアイデアが固まって以降、これまでの作品の中でがっちりと固められたTESシリーズの世界背景がドラゴンシャウトを中心に速やかに収束したと明かしています。
主人公が血を継ぐDragonbornは神によってドラゴンと同じパワーを与えられた唯一無二の存在で、彼らはドラゴンシャウトの技を訓練するためにSkyrimの”Throat of the World”と呼ばれる巨大な山へと旅し、その山頂に存在するHigh Hrothgarに住まう、古代のパワフルなバトルクライ能力を持つGreybeard達からその教えを請います。
Howard氏はTESシリーズの伝承においてTiber Septimが最初の主要な皇帝で、”叫ぶ能力”を持ち、その力は世界に匹敵する者がないほどだったと説明、Tiber Septimこそが”Throat of the World”の山頂へと向かうための7000段を超えるともされる”Seven Thousand Steps”を踏破し、Greybeard達に接触した最初の人物であると説明しています。
Tiber Septimがこれを成し遂げた時には、近隣すべての村が荷造りし下山して遠くへ避難した事が氏から語られており、彼らはTiber Septimが何か話すだけでなだれを起こすほどの力を持つ事を知っていたと明らかにしています。
(※ このNordの声による能力については”Thu’um“と呼ばれる伝承の中で実際に記されており、剣から矢尻に至るまであらゆる刃を鋭くする効果や、何百マイルも離れた人との会話能力、さらにはテレポーテーションの能力さえ持ち合わせていたとも伝えられています。また、彼らの声があまりにも大きな破壊を引き起こす可能性が高い事から、普段は猿ぐつわをはめられ、会話ひとつにも気を遣う必要があり、都市攻撃時などにおいて門の破壊などを可能にする包囲武器としても利用されたとのこと。また、伝承にはGreybeard達がTiber Septimに技を授けた事も記載されています。)
ドラゴンシャウトの能力に目覚めたTiber Septimは兵を導き、1つの帝国の下にTamrielを統一する為にその能力を振るいました。それから数百年が過ぎ、Septimの血筋は死に絶え、現在dragonbornの姿は何年も確認されていません。しかしその不在はThe Elder Scrolls V: Skyrimの主人公の登場によって破られる事となります。
Howard氏はドラゴンシャウトを使える他の人々は非常に希少ながら存在していると述べ、その能力は秘密の知識に似ており、Greybeard達が確かにそれを使えるものの、ドラゴンの魂を吸収し、叫ぶ主人公の能力はGreybeard達をはるかに凌ぐ力を持つと説明しています。
ゲームの中でプレイヤーは主人公をよりパワフルなドラゴンシャウトを学ぶ為に導き、その能力でその他の戦闘や魔法のスキルを支援する事になります。ドラゴンを打ち破った主人公はその魂を吸収し、新しい叫びを学ぶためのリソースを入手。その後プレイヤーはドラゴンの言語が記された壁を探し出す必要があります。(※ Game Informer誌のカバーアートに記されたくさび形の文字がこれに近い)
この壁に記された力を持つ文字を正しく学んだ時に、それぞれがパワフルな効果を主人公に与えるとのことで、プレイヤーは冒険の旅と共に得るドラゴンシャウトの数は20種類で、各シャウトに対して3つのワードが存在し、さらにシャウトが3段階の効果を持っており、シャウトボタンを長押しする事でどれだけの言葉が発せられるかが決まるとHoward氏は説明しています。
Bethesdaタイトルはシリーズ間のタイトルを貫く強い内部の整合性を持っている事で知られています。今作で新たに登場するDragonbornと彼らのドラゴンシャウトはThe Elder Scrolls V: Skyrimのゲーム体験の中心に位置していますが、それだけにこの新システムがTESシリーズタイトルとして本物だと感じさせる豊かな背景を持つ必要がありました。
この難題に対してBethesdaが出した答えはドラゴン達が話し、記した、古代のドラゴン語の生成でした。この壮大な計画はBethesdaのシニアデザイナーEmil Pagliarulo氏によって進められました。Morrowindの拡張パック”Bloodmoon”の開発からTESシリーズに携わるPagliarulo氏は、バイキング文化の研究を進めており今回のドラゴン言語の生成にあたって、8世紀から9世紀ごろに書かれたとされる古英語の叙事詩”ベオウルフ”から大きくインスパイアされたと語っています。
Pagliarulo氏はdragonbornがドラゴンシャウトを学ぶ為の世界に散在する古代の廃墟に聳える壁に、これまで描かれてきたTamriel世界の神話と伝承全体に存在しない新たな支流を作り上げただけでなく、ティザー映像で使用されたテーマ曲にドラゴン語を使用するとの開発チームからのアイデアを実現する為に、実際に発音した際に英語でもドラゴン語でも韻を踏み、両言語で叙事詩の内容がしっかり説明でき、そしてゲームにおけるデバイスとしても利用可能な言語に仕上げるという大きなチャレンジに取り組んでいます。
この象形文字をベースにした新言語作成のチャレンジについて氏は、過去・現在・未来の時制をどう扱うか、動詞は変化するか、アルファベットはどのような物であるか等を考慮しつつ、単語が相互に干渉する際の特定のルールを作り始めました。氏は”王”の文字を”息子”と”リーダー”を組み合わせて表現するといった例を挙げながら、しかしこの生成を進める程に、その内容が複雑/巨大化し、いずれ崩壊する事を予見、ゲームプレイへの組み込みを考慮し、シンプルな構造に維持する旨を決定したと語っています。
最終的にドラゴン語は時制と動詞の変化、大/小文字を廃止、そしてGame Informer誌の背表紙には以下の様な単語が登場しました。
- “fundein”は”unfurled(開かれた)”、”unfurl(開く)”を示す(※ 時制の廃止)
- “prodah”は”foretell(予告する)”或いは”foretold(予告された)”
- “Dova”はdragon
- “Kiin”はchild
- この2つを組み合わせた”Dovahkiin”はドラゴンの子供を意味する
また、これらの発音はゲルマン民族或いは北欧語の響きを持つ様に生成されており、起伏が激しく厳しいSkyrim地方の家でくつろいでいるかの様に感じられる、荒々しくも奇妙な美しさを感じる音となっています。ゲームではこの失われて久しいドラゴン語はドラゴンとGreybeard達が発音するだけでなく、古代Nordの戦士が蘇ったUndead Draugrがプレイヤーを彼らの仲間に引き入れる為に発音するなど、他のクリーチャーによっても使用される事が明記されています。
さらにBethesdaはこのドラゴン語を完成させる為にドラゴン語におけるアルファベットまで作成しました。Todd Howard氏はまずドラゴン達がどのようにこの言語を石や地面に記すだろうかと考えたと述べ、全てを3つのツメを使って引っ掻きや短点によって刻めるよう、Bethesdaでフォントデザインを手掛けていたコンセプトアーティストのAdamowicz氏がこれを実現した事を明かしています。
Adamowicz氏はこのツメのコンセプトを基に34種類のユニークな文字を作成、いくつかのローマンアルファベットに対応しない文字が存在するものの、ゲームへのドラゴン語の組み込みを容易な物にする為に、最終的なフォントはなんとMicrosoft Wordといったワードプロセッサでも利用可能になっているとのこと。
数ヶ月に渡る開発を経てドラゴン語の生成は実現し、ゲームへの組み込みが始まっているそうですが、現在も社内Wikiにはdragonbornとドラゴンシャウトをサポートする為に新しい単語とフレーズが続々と加え続けられているとのこと。
これらのプロセスを経て登場するゲーム内のドラゴン語は全てが実際に翻訳可能な状態で登場、主人公にドラゴンシャウトの能力をもたらす全ての壁には古代の伝説をプレイヤーに示しており、ゲームに登場するドラゴンが語る言葉もやはり実際に翻訳可能な内容を発音しているとのこと。
そして、主人公が使用する各ドラゴンシャウトが内包する3つ単語もそれぞれに意味を持っており、例として”Fus, Ro, Dah!”というドラゴンシャウトが紹介され、その構成ワード”Fus”が(力)、”Ro”が(バランス)、そして”Dah”が(押す)を意味する事が記されています。また、ゲーム内に登場するいくつかのシャウトが持つ効果も説明されており、周囲の敵へのスロー効果や、敵にステルス状態で瞬時に接近するような物が用意されている事が明かされています。
という事で、随分と長くなってしまいましたが、The Elder Scrolls V: Skyrimの中心を貫く重要な新要素”ドラゴンシャウト”には、20種60ワードというコレクタブルな要素も強く感じられ、新たな世界の散策をより楽しい物にしてくれるに違いありません。
それにしても重要な新要素とはいえ、1つの要素にこのボリュームを盛り込んでくるBethesda特有の過剰さは良い意味でパーフェクトな変態ぶりを発揮しており、今後登場するであろう戦闘やら団体やら歴史やら神達に関連する内容など、一体どんな物量になってしまうのか……発表早々モンスターぶりを遺憾なく発揮するThe Elder Scrolls V: Skyrimの続報がますます楽しみです。
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