4月25日の日本語版発売日がいよいよ目前に迫る人気シリーズ最新作「バイオショック インフィニット」、国内では先月一足先に発売を迎えた海外での著しい評価の高さと盛り上がりだけでなく、ボーダーランズ2で素晴らしいローカライズを果たしたテイクツー・インタラクティブ・ジャパンが日本語化を手掛ける新作としても大きな注目を集めています。
思えば当サイトの運営を開始した2009年7月、初めてご紹介した記事が本作のプロジェクト始動を知らせたもので、4年に渡って様々な経緯をご紹介してきた思い入れの深い大作がいよいよ発売されるとあって、非常に感慨深いところでもあります。
という事で、doope!では日本語版発売に向け、“バイオショック インフィニット”をより楽しむ為のあれこれにスポットを当てた特集記事を用意し、待ちに待ったゲームプレイへの準備を進めたいと思います。
第1弾の特集となる今回は、とかくシリーズ物の大作が数多くリリースされる昨今、これまで2タイトル+αがリリースされた過去作品を全くプレイしていなくとも十二分に楽しむことが出来る“バイオショック インフィニット”の見所と、しかし同時に避けがたい濃度でシリーズの精神を体現する新作でもある本作の“鍵”となるポイントを、シリーズの簡単な歴史と併せて改めてご紹介します。
■ “バイオショック”シリーズタイトルのリストと概要
- 2007年:「BioShock」(バイオショック)、東西冷戦時代に存在した海底都市ラプチャーを舞台にしたFPS、開発はIrrational Games
- 2010年:「BioShock 2」(バイオショック2)、初代BioShockから10年後のラプチャーを描いた直接的な続編、開発は2K Marinと2K Australia
- 2013年:「BioShock Infinite」(バイオショック インフィニット)、1912年のアメリカを舞台に空中都市コロンビアと主人公2人の物語を描くFPS、開発はIrrational Games
前段でもご紹介した通り、来る“バイオショック インフィニット”は前2作のプレイ経験や一切の予備知識を必要としない完全な新作として開発が進められてきました。これは、前作との直接的な繋がりを持たないストーリーや設定の刷新に拠る物ですが、同時に“バイオショック”の新作としてシリーズを通じて描かれてきたコアとなる精神を完全に受け継いだ作品でもあります。
まず、一定量のストーリーを持つシリーズ物のビデオゲーム作品におけるタイトルの重ね方には、いくつかの手法が存在しており、特殊なキャラクター物や併用を除けば大きく以下の2つに分類されます。
- スタック型:共通する世界観や歴史、人物、或いは大きな事件やイベントを軸に、複数の作品を通じて知識や経験を積み上げる。馴染み深い代表作品として以下の様な人気シリーズが挙げられる。
- 壮大なスペースオペラとして知られる“Halo”や“Mass Effect”
- キャラクター達の濃密なドラマや関係性、成長を描く“Gears of War”
- 予め存在する世界の膨大な歴史を切り取り、プレイヤーの視点を通じて世界を体験、或いは紐解く“The Elder Scrolls”や“Fallout”、“Assassin’s Creed”
- 記憶を無くした魅力的な主人公の壮大な旅を通じ、隠された謎やドラマを追体験する“The Witcher”
- リフレッシュ型:シリーズのコアを形成するゲームプレイ要素を継承した上で、世界観や設定をナンバリング毎に再構築する。代表的な作品は以下。
- クリスタルやドラゴンなど、中心的なモチーフを軸に、魔法やアイテム、キャラクター、各種ルールを始めとする約束事を継承する“ファイナルファンタジー”と“ドラゴンクエスト”
- 広大でオープンワールドな舞台と、プレイヤーの自由な行動を特色とする“Far Cry”
- 綿密にデザインされた都市を軸に、現実世界にほど近い社会的な問題や文化的な背景を特色とする“Grand Theft Auto”
昨今では中期以降のCall of Dutyなど、両方の形式を同時に採用する作品も存在しますが、“バイオショック”シリーズは開発スタジオが異なる2作目を除外すると完全なリフレッシュ型であり、“バイオショック”とは何か?というポイントさえ理解しておけば、ストーリーの理解においては前作のプレイを必要としない作品だと言えます。
ただし、来るインフィニットを通じて3作品しか存在しないシリーズのうち、2作目がスタック型であるにも関わらず、完全なリフレッシュ型と断じることに違和感を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここで、予てから“バイオショック”の歴史を少々ややこしくしている要因の1つとして、シリーズの前身となった1999年の作品“System Shock 2”(※ 閉ざされた宇宙船を舞台に人工AIとエイリアンが人類に牙を剥く一人称視点のホラーアクションRPG)の存在が挙げられます。
“バイオショック”シリーズは、時に“Shock”シリーズとも呼ばれるケースがままあり、この場合はこの“System Shock 2”と“バイオショック”シリーズを含んだ一連のタイトル群として語られていることを指します。
もうこの語感でお気付きかと思いますが、ベタながらSystem Shockはシステムがショックな作品で、バイオショックはバイオがショック(※ なぜ“バイオ”か?については後述)なタイトルであり、これらの作品は、閉ざされた宇宙船、海底都市ラプチャー、空中都市コロンビアと、都度エクストリームな舞台と設定を変えながら、のっぴきならない事態に否応なく放り込まれる主人公の物語を描いてきました。
Shockシリーズの開発を手掛けてきたIrrational GamesのボスKen Levine氏は、以前に“バイオショック”の定義について、次のように語っていました。(※ ここではリフレッシュ型としてファイナルファンタジーとの共通点も氏の口から直接語られました)
“バイオショック”とは、驚くような場所を舞台に、歴史と関係深いIrrational Gamesのアイデアに基づいた全体像を通じて描かれるストーリーを伴うFPSタイトルだ。
これらを総合すると、“バイオショック”シリーズとは、“Shock”シリーズを形作るコアな要素をベースに、Irrational特有の入念な歴史的考証を伴う特濃のストーリーを加えたものだと言えます。
さらに、初代“バイオショック”を含め、“バイオショック インフィニット”はこういった特質上、ストーリーの楽しさが作品の重要な部分を多く占めていることから、発売にあたってゲーム体験への驚きを新鮮に保つため、それぞれの舞台が誕生したいきさつや主人公達の基本情報、ゲームプレイに関する基本システム以外、登場人物の詳細やストーリーに絡む相関関係など、多くのゲームタイトルで報じられる機会の多いディテールがほとんどと言って良い程に明かされていません。
結論として、前作と直接的な繋がりを持っていない“バイオショック インフィニット”は、作品のコンセプトを軽く踏まえ、良くあるシリーズ固有の予備知識や事前情報を持たずに、用意された驚くような世界へと身を投じ主人公の物語を楽しむ!というのが美味しい頂き方と言えるのではないでしょうか。(※ 本作の物語やテーマをさらに深く理解するための歴史や哲学の話題については今後の特集にて改めてご紹介します)
という事で、これらシリーズの概要を踏まえた上で、次は“バイオショック”がどのように進化してきたのか、幾つかの小ネタを交えて簡単にふり返りたいと思います。
初代「バイオショック」は、アメリカ合衆国とソビエト連邦に代表される資本主義と共産主義の対立が激化した東西冷戦時代に、厭世的な理想郷として海中に建設された都市ラプチャーの内部で繰り広げられるイデオロギーの対立を描いた作品でした。
異様なクオリティで構築されたラプチャーと世界観、海底都市を建設したアンドリュー・ライアンと呼ばれる謎の人物、反吐が出る程に悪辣な敵、ビデオゲーム文化のアイコンにもなったビッグダディとリトルシスター、ゲーム史上に名を残す狂人、そして驚くような大どんでん返しなど、ビデオゲーム史における重要な1本として広く知られています。
本作は前述した“Shock”シリーズの続編として開発が始まったもので、当初は海底都市ではなく、ナチスが遺伝子操作を含む人体実験を進めていた南海の孤島を舞台に開発が進められており、この出自がシステムのショックに続くバイオロジカルなショックとしてバイオショックのベースを作り上げました。
余談ながら、この人体実験に伴う遺伝子の切り貼り(splice)がバイオショックに登場する主要な敵キャラクター達“スプライサー”の語源となっています。(※ ゲーム内のスプライサーはウミウシから発見されたAdamと呼ばれる化学物質の過剰摂取により精神や肉体に異常をきたした市民達とされている)
先に舞台のアイデアをあれやこれやと考え、その後歴史的な背景や哲学を注入していくスタイルの開発は本シリーズの特徴でもあり、特殊な舞台そのものが作品の重要なキャラクターだと評される理由もこの辺りに起因するものと言えそうです。
2K MarinとAustraliaチームが開発を手掛け、2010年に発売された「バイオショック 2」は、初代のエンディングから10年が経過した海底都市ラプチャーを描いた作品で、新たに対戦型のマルチプレイヤーモードが導入されました。
Irrationalが開発に関与していない前作の直接的な続編という事で、やや評価が分かれる作品ですが、エリザベスとも重なる存在である少女エレノアや、隠れた傑作として知られるDLC“Minerva’s Den”の存在など、シリーズにとって重要な箇所も多く見られ、Minerva’s Denを手掛けたSteve Gaynor氏(現Fullbright Company)はバイオショック インフィニットの開発にも参加していました。
という事で、4月25日の日本語版発売がいよいよ目前に迫る「バイオショック インフィニット」ですが、既に海外では3月26日にローンチを迎えており、大手海外情報サイトのレビューで次々と満点を獲得、海外ゲームの最もメジャーな評価サイトとして知られるMetacriticでは95点という高いスコアと8.7のユーザースコア(※ 3プラットフォームの平均)を獲得し、現時点でPS3とXbox 360、PC版がそれぞれ2013年のトップ3を独占するなど、異様な高評価で大きな注目を集めました。
また、Metacriticにおけるスコアは昨年のビデオゲーム文化を席捲した“Journey”(風ノ旅ビト)やTelltaleの人気アドベンチャー“The Walking Dead”を超えており、オールタイムのランキングにおいても上位に食い込む健闘ぶりを見せつけ、イギリスの販売チャートでは3週連続で1位を獲得するなど、セールスも好調な状況が続いています。
これまで、ほとんど喋らない寡黙な主人公達を描いてきたバイオショックシリーズですが、今回の主人公ブッカーと可憐なヒロイン“エリザベス”は、FPSジャンルにおいて類を見ないほど多くを喋り会話を交わすキャラクター達で、本シリーズの特徴である強力なストーリーが様々な舞台装置を利用した巻き込み型の駆動ではなく、主人公とヒロイン自らが物語を切り開く真に映画的なストーリードリブンを実現しています。
また、リニアで暗く閉塞的な舞台だったラプチャーから、開放的で美しい空中都市コロンビアへと舞台を移し、よりオープンな環境でのゲームプレイが導入され、前シリーズの短所でもあった射撃感の弱さやギアカスタマイズの幅、やや没入感を削いでいた敵の体力表示を含むインターフェースも改善されるなど、あらゆる箇所に円熟した現世代向けの強化が施されています。
という事で、シリーズを未プレイでも迷わず空中都市コロンビアとエリザベスの下に突撃して問題ない“バイオショック インフィニット”ですが、残念ながら今回の記事ではシリーズの出自と流れを追ったのみで、本作固有の数在る魅力については、まだほとんど触れることが出来ていません。本作がいかに特別な作品であるのか、前作をプレイ済みの方も気になるであろう魅力については次回の特集記事で改めてご紹介します。
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