広く門戸を開くシリーズの刷新か、それとも羊を装う狼か?発売が迫る「シヴィライゼーション VI」のプレイレポート

2016年10月17日 16:45 by katakori
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「Sid Meier’s Civilization VI」

1991年の初代発売を経て、今年ついに25周年を迎える人気シミュレーション“Sid Meier’s Civilization”シリーズの最新作「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」が、いよいよ2016年10月21日に発売されます。

大航海時代をテーマに生まれ変わった親しみやすいアートスタイルと、都市の成長や拡大をビジュアルと機能の両面から刷新する全く新しいアイデア“区域”を特色とする最新作は、四半世紀に及ぶシリーズの節目に登場する実に6年ぶりのナンバリング作品として大きな期待を集めています。

今回、発売に先駆けて2Kよりプレビュービルドの提供を受け、「シヴィライゼーション VI」の多彩な新要素とゲーム性の変化を実際に確認することができました。

来る「シヴィライゼーション VI」の多彩な新要素と変化は、余りに大規模かつ広範囲に及ぶため、とても一言で説明できるものではありません。しかし、最新作の変化における最大のポイントは、微細にわたる新要素や調整を有機的に結合させることで、(パターン/セオリー化しやすかった従来のプレイヤーによる意思決定ではなく)地形や周辺環境といった様々な状況、特に“マップ”がプレイヤーの思考と選択を駆動するよう刷新された点にあります。

これは決して表面的な変化ではなく、25年続いたシリーズの伝統的なプレイ経験そのものを更新したようにさえ感じられるものでした。

この更新は、シリーズの特徴としてしばしば挙げられる“長期的な中毒性の高さ”を生む要因の1つ、“熟達”の性質をシフトさせてしまう類いの変化ですが、まずはその前提として、過去のシリーズタイトルがどう移り変わったか、その歩みと変化を俯瞰すべく、25年の歴史をざっくりと振り返ってみます。

“Sid Meier’s Civilization”シリーズ25年の大まかな変遷

  • Civilization(1991年9月発売):記念すべきシリーズ第1作。僅か数MBサイズの作品ながら、6,000年近い人類の壮大な歴史を描くシリーズの基本を築いた。アルファ・ケンタウリへの宇宙船打ち上げを含む3種のゴールや、文明の発展を担う技術ツリー、多彩なユニット、複数の都市用施設、七不思議、他文明との外交、複数の政治形態、交易ルートなど、シリーズの中核を担う基本的なメカニクスは既に初代から存在している。スクエアな地形を真上から見た平面ビューとタイル状のユニットで世界を表現した。なお、95年には最大8人のオンライン対戦を実現したCivNetが登場している。
  • Civilization II(1996年2月):初代の平面ビューからアイソメトリックビューに進化した2作目。初代のシステムを踏襲し、各要素のボリュームを大幅に充実させたいわば足し算的な続編。勝ち負けしか存在しなかった戦闘に耐久力と打撃力の要素を導入した。
  • Civilization III(2001年10月):前作のシステムをベースに、“文化”ポイントと文化的勝利を導入した。複数の志向を組み合わせた特性と固有ユニットの導入により文明の差別化が図られ、マップ上の天然資源や偉人の前身であるリーダーの登場など、3作目で現行のアーキタイプがほぼ完成したと言える。
  • Civilization IV(2005年10月):フル3D化を果たし、“宗教”を導入したシリーズ4作目。その他、政治体制や技術ツリー、偉人、戦闘システムの拡張を筆頭に全面的な改善と掘り下げが図られた。
  • Civilization V(2010年9月):大型化と複雑化の一途を辿ったシリーズの進化を一旦見直し、幾つかの要素をオミットしつつ全体的なシステムの刷新と整理を図った。最大の変更点は伝統的なスクエアを置き換えたヘックスの導入とユニットのスタック廃止。新たに都市国家が登場した。
    • Gods & Kings(2012年7月):オミットされた“宗教”と“スパイ”を再導入した第1弾拡張パック。その他多数の改善と新コンテンツの追加を特色とする。
    • Brave New World(2013年7月):Civ 5本編で一部簡略化された“文化”と“外交”を深く掘り下げた第2弾拡張パック。観光や思想、考古学、世界議会といった新要素も導入された。

Firaxis Gamesには、続編開発についてシド・マイヤー氏が掲げた“33/33/33”と呼ばれるデザインルールが存在し、既存の優れた箇所を33%残し、残る33%を改善、ここに33%の新しいメカニクスを加える取り組みが伝統的に進められてきました。(※ ルールの影響は“シヴィライゼーション”のみに留まらず、新生XCOMシリーズやBeyond EarthのRising Tideにも及ぶ)

参考:Firaxis Gamesの33%ルールに触れた開発映像

上掲したシリーズの歴史は、MicroProse時代を含めこのルールに概ね従っており、25年に及ぶ“シヴィライゼーション”シリーズの変遷は、初代で既に完成していたコンセプトとシステムを基本に、新システムの追加とコンテンツの拡大を重ねながら歩んだ最適化の歴史とも言えます。

来る「シヴィライゼーション VI」もやはりこのルールに則った続編ながら、33%の変更と33%の新要素はその多くが(従来の加算的な拡張ではなく)プレイスルーや都市毎に異なる進行と管理をもたらすことにフォーカスしており、文化や宗教に匹敵する規模の新規メカニクスは用意されていません。

ただし、従来の都市管理を大きく拡張した新システム“区域”に象徴される新要素と変更点の数々は、多大に有機的なシナジーを生み、インパクトの高いゲーム性の変化を生じさせています。

「シヴィライゼーション VI」の新要素と変更点のハイライト

  • 前作“シヴィライゼーション V”は、後に拡張パックで補われる幾つかの要素を省略したが、「シヴィライゼーション VI」はこれまでの要素をほとんどオミットしておらず、文化や宗教、外交、スパイ、都市国家、偉人、社会制度、政府、観光、考古学など、主立った過去の追加要素はほぼ網羅されている。ただし、外交が僅かに簡略化され、世界議会と外交勝利が削られた。勝利条件は従来の制覇と科学、文化、スコアに加え、新たに“宗教による勝利”が追加されている。
  • “拡大する都市”を実現する新システム“区域”:これまで1タイルに集約されていた都市の多彩な建造物が、“都心”と複数の“区域”に分類され、単一の区域が土地タイルを1つ占有するよう変更された。それぞれの“区域”には、隣接するタイルに種類によって異なるボーナスや一部固有の設置条件が設定されており、都市単位で“区域”の設置数に応じて次の“区域”を設置するために必要な人口数が上昇する。これに加え、幸福度にあたる要素が文明全体から都市単位に細分化されたこともあり、都市とタイル管理、ひいてはゲームプレイ全体に(パターン/セオリー化を阻む)流動的なパズル要素をもたらした。
  • 科学力をリソースとする“技術ツリー”と、文化力で発展する“社会制度ツリー”:従来の包括的な“技術ツリー”が、科学力によって科学と技術を駆動する“技術ツリー”と、文化力によって文化と社会制度を駆動する“社会制度ツリー”の2つに分けられ、より文脈に応じた再整理がなされた。
  • “技術ツリー”と“社会制度ツリー”それぞれに用意されたブーストシステム:各ツリーに属する固有の研究や社会制度には、それぞれの文脈に応じたチャレンジ要素が存在し、これを満たすことで進行を瞬間的に早めるブーストが用意されている(例:通貨 – 交易路を1つ建設、軍事工学 – 用水路を建築)。技術ツリーのブーストは“ひらめき”、社会制度ツリーのブーストは“天啓”と呼ばれ、時代の進化に伴いブーストの難易度・重要性が増すため、ゲームの進行を左右するケースも珍しくない。
  • 幸福度システムの刷新と新しい人口制限:文明全体で共有していた幸福度が、都市毎の管理に細分化され、市民の満足度を左右する“設備”と呼ばれるシステムに刷新された。さらに、都市の人口増加に必要な“住宅”要素が設けられた。今回の都市は、設備と住宅、余剰食糧の組み合わせによって市民の数が成長する。
    • “設備”の数によって、市民の成長やリソースの産出に影響を与えるボーナスやペナルティが発生する。“設備”は、高級資源や社会制度、娯楽、宗教等によってまかなわれる。
    • 余剰食糧と設備が十分であっても、“住宅”が足りなければ人口の増加は大きく鈍化する。“住宅”は、幾つかの建造物や社会制度、区域、土地タイルの改善等によってまかなわれる。
  • 多彩なカードとスロットでカスタマイズ可能な“政府”と“政策”:前作の社会制度が大幅に刷新され、固有のボーナスと政策用のスロットを持つ“政府”と、3種のカテゴリに分類された細かな“政策”によって構成される“政府”システムとなった。これは、政治形態毎に異なる政策用のスロットに、手持ちの政策カードを割り当てることで、任意のボーナスを発動させるもので、マップや幾つかのランダム性に左右されることが増えた最新作においては極めて貴重な“コントローラブルなパッシブBuff”となっている。
    • 政府:首長制にはじまり、時代と社会制度ツリーの進行に併せて、各時代に3種の政治形態が用意されている。時代と共に政策用の空きスロットが増えるが、長期的な運用にはレガシーボーナスと呼ばれるBuffが適用される。
    • 政策:政策スロットは、軍事政策と経済政策、外交政策、自由に設定可能なワイルドカード政策に分類される。政策スロットは少額のゴールドを支払うことで、任意に入れ替え可能となっている。これらのカードにはタイルやユニットの購入コスト減や、区域もしくは施設からの略奪量増といった効果が存在することから、計画的で細かな運用が功を奏する。
  • 労働者の仕様変更と道路システムの刷新:タイル改善用の施設や森の除去といった作業を担う労働者が、新たに3度の建築/除去作業で消滅する有限のリソースに近い存在に刷新された。これに伴い道路の敷設がほぼ自動化され、交易路を開設した際に、“交易商”ユニットが目的の都市へと進みながら道路を敷設するシステムが導入された。戦術的に道路が必要な場合は工兵が手動で敷設可能だが、2度の作業でユニットが失われる。
  • ユニットのスタックを限定的に復活させる“軍団”化:前作でユニットのスタックが廃止されたが、新たに2体の同一ユニットを組み合わせ強力な“軍団”、3体の同一ユニットを組み合わせることでさらに強力な“大軍団”の編成が可能となり、ユニット運用の幅が増えた。
  • “支援ユニット”の登場:隣接するユニットを回復する衛生兵や砲撃ユニットの攻撃範囲を伸ばす観測気球、要塞や滑走路を建設する工兵、対都市戦用の攻城塔や破壊槌、自走式の地対空ミサイルなど、特殊な役割を持つ“支援ユニット”が新たに登場する。
  • 固有の能力を持った“偉人”達:偉人の基本的なシステムは概ね以前のままだが、大預言者を除く全ての偉人に対して史実に基づく固有の能力や傑作が付与された(例:アラン・チューリング – コンピューターとランダムな現代技術の1つに技術ブーストを発動、アダム・スミス – 政府の経済政策スロット+1)。偉人のカテゴリは大音楽家と大科学者、大技術者、大芸術家、大商人、大将軍、大著述家、大提督、大預言者の9種で、各カテゴリ毎に固有の偉人獲得ポイントが集計されている。ゴールドもしくは信仰力、現行の偉人ポイントを消費することで各カテゴリの偉人をすぐに獲得可能。
「YouTube Gaming」
参考:“技術ツリー”画面、それぞれの技術に異なるブースト条件が用意されている
※ 以下、4枚の画像は原寸大のイメージにリンクしてあります
「YouTube Gaming」
参考:法典や神秘主義といった項目が並ぶ“社会制度ツリー”、こちらも固有のブースト条件が確認できる
「YouTube Gaming」
参考:“商業共和制”固有のボーナスと政策スロットが確認できる“政府”画面
商業共和制は軍事1枚と経済が2枚、外交1枚、ワイルドカード2枚を割り当て可能
「YouTube Gaming」
参考:“政府”の政策スロットに適用可能なカード型の政策が多数確認できる
これらの政策は社会制度ツリーの進行に伴い解除される

都市管理にパズル要素とランダム性をもたらす新要素「区域」の概要

「Sid Meier’s Civilization VI」
参考:都市“マドリード”の外観、区域と建造物は全て3Dモデルとして描かれる
都市管理のサイズは従来通り、最大で36タイル+都心となる
「Sid Meier’s Civilization VI」
参考:都市全体はこのように複数の区域で構成され、区域毎に固有の建造物が格納される
例:キャンパス区域は、図書館と大学、研究所が、工業地帯区域には工場と発電所が建築済み

前述した通り「シヴィライゼーション VI」における最大の変化は、文字通りタイルを超えて“拡大する都市”を実現した「区域」システムにあります。1都市あたりの管理サイズは、これまで通り中心の都心含め最大で37タイルですが、各“区域”や“遺産”がそれぞれタイル1つを占有することから、従来のタイル改善と各タイルの産出量、“区域”と“遺産”の一部に設定された固有の設置条件、都市毎に異なる周辺の状況といった様々な要素が複合的に絡みあう有限なタイルの悩ましいパズルが生じるわけです。

また、幸福度(今作は設備)の一元管理が廃止されたこともあり、このタイル管理パズルは都市毎に全く異なる性格を持ち、“区域”の設置数制限が思いのほか厳しいことも相まって、これまで以上に都市毎の役割が重要となっています。また、単純にマネジメントの手数と要素が増したため、結果として広範囲な情報や選択の候補を見渡すべく、詳細画面とにらめっこする時間が格段に増えたように感じました。

「シヴィライゼーション VI」には、文明の固有区域を除いて12種の“区域”カテゴリが用意されており、各カテゴリの建造物が単一の区域内に複数建設される仕組みとなっています。

■ “区域”のラインアップと概要

  • キャンパス:科学力を産出し、主に隣接する山岳地形からボーナスが得られる。大科学者ポイント+1/ターン。キャンパス区域に建築可能な建造物には、研究所と図書館、大学が含まれる。
  • 劇場広場:文化力を算出し、隣接する移籍と区域タイルからボーナスが得られる。大著述家/大芸術家/大音楽家ポイント+1/ターン。建築物には映画スタジオと円形競技場、考古博物館、美術館、放送センターが含まれる。
  • 工業地帯:生産力を産出し、隣接する鉱山や採石場、区域からボーナスが得られる。大技術者ポイント+1/ターン。建築物にはエレクトロニクス工場、工場、工房、発電所が含まれる。
  • :隣接する区域タイルと沿岸資源からゴールドのボーナスが得られる。大提督ポイント+1/ターン。建築物には港湾都市/港湾、造船所、灯台が含まれる。
  • 商業ハブ:ゴールドを産出し、隣接する川や港、区域タイルからボーナスが得られる。大商人ポイント+1/ターン。建築物には銀行、市場、証券取引所が含まれる。
  • 聖地:信仰力を産出し、主に自然遺産や山岳地形、森、区域タイルからボーナスが得られる。大預言者ポイント+1/ターン。建築物にはガードワラ、シナゴーグ、スターヴ教会、パゴダ、モスク、ワット、公会堂、社、神殿、大聖堂が含まれる。
  • 総合娯楽施設:市民の満足度に影響する設備を増加させる。建築物にはアリーナ、スタジアム、動物園が含まれる。
  • 都心:都市の中心。建築物にはモニュメント、ルネサンス時代の防壁、下水道、宮殿、穀物庫、水車小屋、太古の防壁、中世の防壁が含まれる。
  • 飛行場:航空機の建造と格納を担う。配置パネルに制限有り。建築物には格納庫、空港が含まれる。
  • 兵営:軍事ユニットの訓練や一部ユニットの生産に必要となる。都心の隣には設置できない。建築物には厩舎、士官学校、武器庫、兵舎が含まれる。
  • 用水路:隣接する川や湖、オアシスから真水を供給し、住宅数を増やす。配置パネルに制限有り。
  • 近郊部:タイルのアピール度に応じて住宅数を増加させる。
  • 宇宙船基地:宇宙船の製造と打ち上げに必要となる区域。

今回プレイしたデモビルドは、難易度が王子のみ、プレイ可能な文明も10種/10人の指導者に制限されており、製品版の高難易度を見ずして判断を下すことはできませんが、印象としては設備やユニット購入に用いるゴールドがどの時代も常に有用で、数ある区域の中でも“商業ハブ”の重要性が非常に高く、次いで生産を支える“工業地帯”が優先すべき区域だと感じられました。

“区域”の設置制限や設置の優先順位、遺跡の選択、食糧や施設、高級資源の確保に関わる都市タイルのパズルは非常に悩ましく、従来のセオリー化を形骸化させる最新作の抜本的な変化は、非常に本質的で濃厚な“シヴィライゼーション”体験を生み出すことにはっきりと成功しています。

一方では、考える時間と手数・操作量、マイクロ管理が増えたことによるプレイスルーあたりのプレイ時間増と(特に高難易度において)常に本気のプレイを要求するであろう油断ならないハードコアさが、複雑な奥深さと面白さ故に高い障壁とハードルを生じさせるのではないかという懸念もやはり感じられます。

とはいえ、今回のビルドは前述した通り制限が多く設けられており、中核のシステムと基本的なプレイスルーに必要なコンテンツのみ用意したバーティカルスライスにほど近い印象のプレビュービルドだったと言えます。

「シヴィライゼーション VI」のアナウンス当初、Firaxis Gamesは1度のセッションを2~3時間に収めるマルチプレイヤーや、初めてのプレイヤーに向けた新しいチュートリアルシステムの実装を含む“誰もが楽しめるシヴィライゼーション”を大きく掲げていました。シリーズ誕生25周年の節目にふさわしい本質的なゲームプレイの更新を果たした「シヴィライゼーション VI」が、どんなアプローチで幅広いユーザー層にリーチするか、数日後に迫る世界同時ローンチと製品版の仕上がりに大きな期待が掛かるところです。

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