ウィル・ライト氏の新プロジェクト「Bar Karma」は”コミュニティで作るTV番組”、その不思議な魅力を紹介

2010年11月27日 18:16 by katakori
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The SimsやSimCityの開発で知られるウィル・ライト氏、2009年にはシムシリーズを手掛けてきたMaxisを去り、自ら新しいスタジオStupid Fun Clubを立ち上げ、ロボット研究や視聴者参加型のリアリティ番組(アメリカンアイドルやオズボーンズ、国内では電波少年等がこれにあたる)のプロジェクトを進めている事が知られていました。

これまでリアリティ番組プロジェクトは”The Creation Project”と呼ばれ、ウィル・ライト氏自ら開発したエディタ”StoryMaker Engine”を利用して視聴者がストーリーを投稿し、ソーシャル要素も持ち合わせたかなり直接的な参加が可能なTV番組になる事が明らかにされていました。

先日、遂にこの新プロジェクトのタイトルが「Bar Karma」に決定、Creation Studiosが開発したTVプラットフォーム”Current TV“上で正式に運用が開始されました。

Bar Karmaの概要とテーマ

Bar Karmaは30分のエピソード形式で配信されるTV番組で、次の様な昔から不変的に存在する1つの問いをテーマに設定しています。

「あなたが運命を変える事が出来たなら、一体そこで何が起こるのか」

前述の様に視聴者が物語の展開に影響を与える事が出来る訳ですが、一応このテーマと共にお題となる世界設定も用意されています。Bar Karmaとは所謂バーの名前を指しており、このバー”カルマ”はあるミステリアスな組織”Karma, Inc.”(カルマ社)によって運営され、任意のタイムトラベルが可能という特殊なバー。各エピソードではバーに毎週やってくる新しい客について、彼らの運命、命、或いは世界の運命を決める様々な”決定”を視聴者が決定/選択する事となります。

世界の前提と幾人かのキャラクター

既に公式サイトでは前述の概要やテーマに併せて、幾人かの登場キャラクターについて”Bar Karma”の背景となる前提説明と共に掲載されています。メインの登場人物はバー”カルマ”の店員3人から構成されており、以下の様なキャラクターの成り立ちが解説されています。

Doug JonesDoug Jones:Matthew Humphreysが演じるこの物語の主人公がDoug Jonesです。彼はインターネット企業で大きな成功を収めた億万長者だが、強情で女性に対して慇懃無礼ないわゆる”嫌な男”。自身の商才を指し”最も幸運な男”と賞賛するが、猛烈な運と悪い行動の組み合わせは結局の所大多数の人間にとってアンバランスで危険な物で、彼は低いモラルに結びつけられた物か、空間と時間の構造を脅かすウィルスのソースとなってしまいます。

彼のアンバランスな力の感染が拡がれば世界は悪い人々がますます幸運になり、良い人々は衝突を始め、善行は問題だけをもたらす世界になってしまいます。

物語を編む視聴者は、時間と空間を移動する事でこの黒いカルマの拡散を防ぎ、不安定な起動に傾く宇宙のバランスの維持を行わなくてはなりません。

ただし、現実世界とは別に並行して存在するバー”カルマ”ではDoug Jonesはただの見習いバーテンで、彼が現実世界の成功を自慢してもこのバーでは誰もそれを気には留めません。

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James AnonJames Anon:自らをバーのマネジャーと称するヴィンテージのスリーピースを着込んだ、古い計算機を持つ年配の紳士。

彼はこれまで500回以上の死を迎え、その度に曖昧な記憶と共に復活する事で2万年以上を生きており、この不思議なキャラクターをX-FilesやLOST、ブレードランナーなどにも出演したベテラン俳優William Sandersonが演じています。

彼はこのバーで飲み物を作り、客に2万年の経験に基づいた謎に満ちた賢明な忠告を提示する事で宇宙に存在する幸せの数を調整しています。この忠告はトランプによって行われ、アドバイスやガイダンス、そして凶兆が神託として提示されます。

しかし、彼は直接バーを管理している訳では無く、人間の経験全体をデータベースとして集中化させたキャラクターとして機能し、2万年の体験により柔軟な思考を持たざるを得なかった経験豊かな人物として描かれています。Jamesはこのバーの仕事を”ごろつきベンチャー”と評しており、正体不明のボスから命令を受けている事が記されています。

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Dayna RollinsDayna Rollins:オーストラリア出身の女優/ダンサーのCassie Howarthが演じるDaynaはバーでウエートレスを務める美しい女性で、やっかいな男性客を苦もなくいなす技術を身につけています。

彼女はバーにあるジュークボックスを操作する事で、バーにやってくる顧客を引き寄せるプロセスをコントロールしています。

彼女はDougとの間に大きな秘密を有しており、この秘密をDougが解明していく過程で視聴者はバー”カルマ”がどのような活動を行っているのか知っていく事になります。この詳細はファーストシーズンの間に解析されるだろうとの事。また彼女は元々バーの客であった事が記されています。

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Miss Tierra del Fuego(ミスフエゴ島):美人コンテストで2位に入賞した女性。※ フエゴ島は南米国の南端に位置するアルゼンチンとチリにより分割統治される島で、世界最南端として知られる都市ウシュアイアは人口6万人程度。

以下、これらの登場人物の解説と共に現在明らかにされている物語設定の概要となります。

  • Dougの人生はバーにやって来た事で時間と空間から引き抜かれており、かつての生活を取り戻すか否かは世界がどのように安息に向かうかに依存する
  • 現実世界でのDougの人生は殺人で告発される結末に向かって進んでおり、バーの客達の謎を解き明かせず、助ける事ができなければ彼は現実世界の運命に戻る事を強いられるかもしれない
  • 時折JamesとDoug或いはDaynaが互いの話を共有する時、視聴者はTV画面の中でフラッシュバックとして彼らの展開を見る事になる
  • バー”カルマ”のチームが客の運命をリードするために現実世界を訪れる必要が有る場合、バーの正面玄関がそれらの必要な場所へ直接接続される(例:病室のドア、重役会議室、ガソリンスタンド)
  • Dougは、DaynaとJamesがバーに呼び込むそれぞれの顧客を支援しなければならず、生まれつきのナルシストのDougが会話で人々と打ち解ける方法を学ぶ事は困難だが、これにより彼は良い方向に向かう
  • Dougが客の伝票についてJamesに意見を求める事は店の規則であり、DougはJamesがブックマッチやメモを記したノート、名刺、或いはトランプのカードから取り出したオブジェクトと客の関連性を見つける必要がある
  • あるエピソードではDougと直接関係のあるキャラクターが登場、これにより物語はDougの過去に鋭いフォーカスを合わせる
  • DougとDaynaの関係には一定の(好意を含むと思われる)ふざけを維持しているが、Dougは女性に慎重に優しく接する事を学ぶ
  • Jamesがバーを去る事は最高レベルの非常事態で、Daynaがバーを去る事は彼女の現実世界での運命に介在するための最後の手段を選択した時でDougは彼女を守らねばならない
  • Jamesが扱うトランプはある種の通信装置であり神託、これ以外にもJamesとボスの間にコミュニケーション方法が存在するが、それらの大部分は画面外で行われる
  • Jamesがどこから命令を得ているか知っていながら明かしていない事は明白だが、Daynaがバー”カルマ”を動かす大きな力についてDougよりも知っているかは不明

なお、蛇足ではありますが上に掲載したトレーラーや前述の概要、そしてキャラクター解説と世界設定を読んで頂ければ判る通り、物語は非常に複雑怪奇な物となっており、言ってしまえばウィル・ライト本人も映像で紹介している通り、ツイン・ピークスやブルーベルベット、そしてインランド・エンパイア等で知られるデヴィッド・リンチの作風に似た構造や映像のテイストにインスパイアされている事がよく判ります。

但し、この作品がこれまで万物の法則を理論的に、技術によって再現する事に注力してきたウィル・ライトの作品である事を鑑みれば、妄想的(という一般的な認識)でインスピレーションに重きを置き、瞑想で神託を得る類のリンチ作品に対してウィル・ライトは最も相見えないタイプのクリエイターとも言え、今作は氏の新境地として大きく注目を集めるのでは無いでしょうか。

視聴者はこの物語にどう介在するのか

ここまで解説してきた世界背景を元に、視聴者が自分で考えたストーリーラインのアイデアとストーリーボードを投稿する事で物語が進められる事になるわけですが、この投稿は公式サイトに用意されたウィル・ライト氏が開発した専用の”StoryMaker Engine”上で行われる事となります。

視聴者によるストーリーの変化はいくつかのフェーズに分けて行われ、まず”Pitch”と名付けられたシノプシス(プロット以下の小さなアイデア)的な小さなアイデアの投稿が行われます。Pitchはシーンをイメージした画像の追加などと共にその説明を記す事が可能な以下の様な専用のインタフェース上で行われ、出来上がった物は公式サイト上に同じく以下に掲載したイメージの様に公開される事となります。

Bar Karma
Pitchの作成画面
Bar Karma
実際に出来上がりサイトで公開中のPitch

1つのプロットは22の”Pitch”から構成されており、多くのPitchを元にインキュベーターによる”Pitch”の時系列への組み込みを経てエピソードのプロット候補が出来上がります。これら出来上がった複数のプロットを元に、”投票”フェーズに移行、視聴者の”投票”によるプロットの採用が行われる事になります。

こうして視聴者による投票で選ばれたストーリーラインをプロデューサーが実際の物語に反映させ、次のエピソードを作成、公開に至るという流れとなります。

現在ユーザーによるストーリー開発が進められている3つのエピソード

既に公式サイトでは登録ユーザーによって3つのエピソード”The Author and His Radical Manifesto“(小説家と彼の基となる宣言)、”The Failing Businessman“(失敗したビジネスマン)、”The Man in the Hospital Gown“(診察着を着た男)のストーリー開発が進められています。

例えば”The Man in the Hospital Gown”(診察着を着た男)では、一人の死と手術を間近に控えた男(或いは女性)が病院の診察着を着たままバー”カルマ”に導かれ、死への恐れを抱いたまま中をバーをうろうろしている状況が伝えられています。

彼/彼女は外科医と看護婦とカルマ的な関係を持っているかもしれない、彼/彼女はベッドの中で明晰夢(夢である事を自覚しない夢)を見ているかもしれない、或いはもう彼/彼女の魂は既に死んでしまった事でバーにやって来たのかもしれない、こういった可能性を踏まえ、Pitchでは”この人は誰なのか”、”なぜ彼/彼女は手術を必要としたのか”を作成する事が求められています。

果たしてBar Karmaはユーザークリエイトコンテンツのイノベーションを実現するか

以上、ウィル・ライト氏が取り組んできた新プロジェクト”Bar Karma”の概要とシステムの一部を紹介してきた訳ですが、これまでゲームデザイナーとして神格化されてきたライト氏の新作とは思えない様な不可思議な作品となっている”Bar Karma”、言ってみれば恐ろしく手の込んだストーリー重視のTRPG的な物だとも言え、ゲーム作品では無いながらも氏がこれまでゲーム開発で培ってきたインタラクティブやダイナミックな技術を存分に活かし、クリエイティブが古来より持ち合わせる”ある種の楽しさ”がソーシャルと近代技術により迎えた新しい昇華のプロセスとも感じられるエキサイティングな試みだと言えないでしょうか。

この作品が実際に出来上がり物語がユーザーにより編まれる中で、本当に”面白い作品”が出来上がるという楽園的な結果を生む事が出来るのか、それともプロセッシングの面白さやシステムの充実がコンテンツのクオリティを左右させるといった夢物語は実現し得ないのか、これまでコンテンツとしては詰まるところメインコンテンツの周辺要素でしか無かったユーザークリエイトコンテンツが、新たなフェーズを迎える為のポテンシャルを備える事となった”Bar Karma”、本編スタートが今から楽しみです。

情報元:Current TV

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