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昨年末にシリーズ誕生25周年を迎え、初期シリーズや現行のクリエイター達が出演する様々なレトロスペクティブ映像が公開された「Fallout」シリーズですが、存在のみ明言されている次回作の動向や前述のアニバーサリーで再び急接近したObsidianとの関係に期待が掛かるなか、新たに本シリーズを生んだ最重要人物の1人Tim Cain氏（※ フランチャイズの共同クリエイターであり、初代のプロデューサー兼リードデザイナー兼リードプログラマ、Fallout世界の壮大な物語の全体像を構築した人物。Troika Gamesで幾つかの傑作を手がけ、現在はObsidianで活躍中。氏の最新作は“The Outer Worlds”）が自身のYouTubeを更新し、「Fallout」を象徴する核シェルター“Vault”が誕生した真の目的を明かし話題となっています。

Falloutの“Vault”は、Vault-Tec社が核戦争に備えてアメリカ各地に建設した地下核シェルターとして知られていますが、これは表向きの建前で、実際はアメリカ政府が個々の“Vault”に固有の条件付けや目的を用意し極秘裏に運用していた壮大な実験施設である、というのは、シリーズのプレイヤーであればご存じの通りかと思います。

（建設された施設の総数や計画の背景を含め）未だ多くの謎が包まれたままの“Vault”ですが、Tim Cain氏によると、“Vault”は戻るべき地上を失った人類が、居住可能な惑星を目指すための恒星間移動技術と宇宙船建造の実現を目的に作られたものとのこと。

Tim Cain氏は、現在のシリーズを手がけるBethesda Game Studiosのことは分からないと前置きした上で、このアイデアが初代“Fallout”の完成直前に思いついたアイデアだと明言。Tim Cain氏によると、このアイデアは初代のリードデザイナーChris Taylor氏（※ 初期シリーズの中心人物の1人、Dungeon SiegeやSupreme Commanderを生んだGas Powered GamesのChris Taylor氏は同姓同名の別人）との会話から生まれたもので、氏は以下のようなディテールを伝えています。

• ある日、Chris Taylor氏が1つの“Vault”には1,000人の住民しか受け入れられず、政府は当初最も楽観的な予測として1,000基のシェルター建造を考えていた。つまり、1,000基のシェルターでは最大で100万人しか救えず、2～3億のアメリカ国民が全て助かるわけではなかった。
• 50年代の科学者たちが考えていた国際協力は気が滅入るようなもので、核戦争と放射能によって地球環境が完全に崩壊してしまう“戻るべき地球がない”という本質的な背景が誕生した。
• この背景を元に、エンクレイヴのトップとアメリカ政府高官が「宇宙船を作る」構想を発案。太陽系内の惑星や近い居住可能な惑星への移住を計画するが、それには何世代もの時間とそれに耐えうる宇宙船が必要であり、大戦前の“Fallout”世界でこれを可能にする唯一の技術は原子力だった。
• ただ、数百年の航行を可能にする宇宙船の原子炉が出来たとしても、これに乗る人間達をどう生きながらえさせるか、具体的な解決策がなかった。
• この難題について、Vault-Tec社のディレクターが“Vault”を実験的に活用する提案を行ったことで、宇宙船の閉ざされた環境でクルーがどう活動するか、どうやって食料を確保するのか、どう植物を育てるべきか、水はどう循環させるのか、コールドスリープは実現可能か、こういった課題を様々な“Vault”の実験で解決しようと試みたとのこと。
• Tim Cain氏は、これが当初の目的に過ぎず、その後計画がどうデザインされ発展したか、その詳細は分からないと発言。実際に出来上がった“Vault”の実験を見て、これが宇宙船の建造に役立つのか！と思ったことはないと振り返り、当初の目的が失われたことで（結果的に）エンクレイヴの狂気や異常さを自由に考えることができるんだと伝えている。

“Vault”誕生の真の目的がシリーズの中心人物によって直接的に語られたのは、知る限りこれが初めてのことだと思いますが、熱心なシリーズのファンであれば、この設定はその後もひっそりと生き続け、Joshua Sawyer氏とChris Avellone氏が開発を率いていた“Van Buren”（本来は“Fallout 3”となるはずだったBlack Isle Studiosの未発表タイトル）に受け継がれていたことをご存じかと思います。

現行のシリーズを手がけるBethesda Game Studiosがどの程度オリジナルのロアを継承しているのか、その詳細は今も謎に包まれたままですが、どこかでこの設定が今も息を潜めているのか、Tim Cain氏が所属するObsidianの動向を含めシリーズの今後に改めて注目が集まるところです。