先日、見事な高評価が並ぶ海外メディアのレビューが解禁され、日本語版を含む2月5日の世界同時ローンチに大きな注目が集まる状況となっている人気シリーズ最新作「XCOM 2」ですが、前回ご紹介したプレビュービルドのハンズオンに続いて、2Kより進行に制限のない製品版に近い日本語版のレビュー用ビルドを提供頂き、一先ず本編を終えるまでプレイすることが出来ました。
前回は、初めてシリーズに触れる方に向けた作品の成り立ちをはじめ、最新作の洗練されたゲームシステムや荒々しい駆動力、高い没入感など、主に全体的なインプレッションとその魅力についてご紹介しましたが、今回は発売直前のレビューとして、幾つかのスクリーンショットや動画を交え、顕著な改善の具体例やゲームプレイのディテール、そして前作の成功から見た“XCOM 2”の挑戦にまつわる総評をお届けします。
来る新作の具体的な改善やディテールをご紹介する前に、まずはオリジナルである傑作“UFO: Enemy Unknown”(X-COM: UFO Defense)の成功と“XCOM: Enemy Unknown”によるリブートを今一度振り返る必要があります。
これは、“XCOM 2”の改善や新要素、調整、挑戦が余りに膨大且つ全方位的で、個々の要素に見られる変化をいくらかいつまんでみても決して全体像の輪郭を結ばないからです。
“XCOM 2”は膨大な数の改善や洗練、要素が恐ろしく複雑に絡み合うことで1つの大きな経験を作り上げることに成功しており、言うなれば細部に神が宿ったような状態にある作品でした。
この正体は何なのか、その答えはしばしば“歴史的な名シリーズ”と呼ばれる“X-COM”と前作“XCOM: Enemy Unknown”の関係にあると言えます。
かつて2Kが“X-COM”シリーズを“XCOM”フランチャイズとしてリブートさせようとした際、世界中で多くのファンが懸念を露わにしました。これには、“XCOM”シューターから難産を極めた“The Bureau: XCOM Declassified”へと至る複雑な平行作品の変遷が背景にあったものの、もっと根源的な要因には、そもそも本家“X-COM”シリーズそのものが不毛な作品展開に汚されつつ、RTSブームの巨大な波に呑まれて死んでいった暗い歴史が存在しています。
今なお不朽の名作と呼ばれる“X-COM”の栄光は、(僅かにApocalypseを除けば)シリーズ全体の成功ではなく、実際のところ初代“UFO: Enemy Unknown”が達成した革新と完成されたデザインを指すものだと言っても過言ではありません。
結局のところ、“X-COM”が歴史的な名作となった要因は、有り体に言えば初代を生んだベテランJulian Gollop氏の強固な“作家性”に依拠したものであり、2011年の傑作“Tom Clancy’s Ghost Recon: Shadow Wars”、そして昨年末に製品版ローンチを果たした氏の新作“Chaos Reborn”がその“作家性”を雄弁に語り証明していると言えます。
RPGやキャラクターアクションならばともかく、ストラテジーに果たして作家性が存在するのか、疑わしく感じる方も少なくないと思いますが、我々ゲーマーはこれを強烈に体現する人物として、まさにFiraxisのボスでもある巨人Sid Meier氏の名を胸に刻んでいるではありませんか。
そして、Julian Gollop氏の作家性を誰よりも深く掘り下げ、その本質を研究することによって、世界中のファンが疑いの目で静観したリブートを見事なX-COM体験で納得させたのが、“XCOM: Enemy Unknown”のクリエイティブディレクターJake Solomon氏でした。
“XCOM”のFPS化が進むなか、“XCOM: Enemy Unknown”が発表された2012年1月当初、Julian Gollop氏もやはりシリーズのリブートに懸念を表し、FPS化が過去の過ちを繰り返す“大きな不名誉”だと発言。“XCOM: Enemy Unknown”についても予算的な面から安全策を優先する手堅い作品になるだろうと説明していました。
しかし、その後“XCOM: Enemy Unknown”の開発を率いたJake Solomon氏は、自身のヒーローと崇めるJulian Gollop氏と連絡を取り合い、リブートについて様々な意見を交わしたことが知られており、Julian Gollop氏もその後2012年10月にローンチを果たした“XCOM: Enemy Unknown”がオリジナルの精神をはっきりと受け継いだ見事な作品だと高く評価した経緯が知られています。
この映像は、2013年3月にGDC会場で行われたJulian Gollop氏とJake Solomon氏の(今は亡きRev3による)インタビューですが、ここには2人が非常に深いレベルでX-COMの本質と精神を共有していることがはっきりと確認できるだけでなく、X-COM/XCOM経験の本質が(単一ではない)選択と決定の連なりにあることや、失敗と喪失、兵士のカスタマイズといった要素に宿されていることが語られています。
“XCOM 2”は、人類とエイリアンの立場が逆転したものの、XCOM的体験の本質を全く逸脱していないばかりか、この本質的な体験をより強固なものにすべく、膨大な調整と改善を加えた作品です。
2012年1月にある種の懸念をもって“XCOM: Enemy Unknown”に言及したJulian Gollop氏は、手堅い作品になるであろう“XCOM: Enemy Unknown”が及第点を超える傑作になるためには、プロシージャルな環境生成や環境の破壊要素が必要だとまるで予言のように指摘していました。
誰もが到底無理だろうと考えた傑作のリブートを成功させた“XCOM: Enemy Unknown”を経て、まもなく発売を迎える“XCOM 2”は、手堅いという表現からはほど遠い、前作の冒頭以降の展開がそもそも無かったとする冒険的な逆転を採用し、レベル環境のみに留まらないとんでもない規模のプロシージャルシステムを携え、(まるでJulian Gollop氏の提言に呼応し凌駕するかのような振る舞いで)登場します。
“XCOM 2”に加えられた大胆なアレンジと数え切れない規模の調整や改善の細部には、Jake Solomon氏がJulian Gollop氏と共有する傑作の精神と本質が隅々まで宿っており、これら無数の要素が1つの大きなうねりとなって、かつてないXCOM体験を実現しているのです。
前回ご紹介したハンズオンプレビューにて、筆者は“XCOM 2”のストーリーが最大のサプライズだったとして、ゲーム側が無理矢理プレイヤーを駆動させるような力強い物語をもたらしたとお伝えしました。
前回のデモビルドはプレイが中盤に差し掛かる辺りで制限され、前作でやや停滞した中盤~後半頃の展開が確認できない状況にありましたが、最新のレビュービルドで一先ず最後までプレイし、前回の驚きを上回る力強さで、最後まで暴走する忘れがたい体験をしっかり用意していることが確認できました。
“XCOM 2”のストーリーテリングは、前述したXCOMの本質がゲームシステムとコンテンツ全体を用いて駆動させるもので、ダイアログや演出で進行する従来のリニアな物語とは根本的に異なります。
これは、兵士のカスタマイズや成長、独自に人類の支配計画を進めるエイリアン達、多彩な作戦と戦闘、ストラテジーレイヤー(ジオスケープ)における様々な選択、拠点アヴェンジャーズの強化、研究、開発に至るまで、微細な要素が互いに影響しあいながら謎の物語的体験をプレイヤーにぶつけるという荒々しいもので、本質の1つとして挙げられた“連続する選択と決定”が、絶体絶命の状況にあるXCOM勢力の絶望的な戦いを見事に際立たせています。
この“XCOM 2”が提示する物語的ゲーム体験は、昨年末から続く“The Witcher 3: Wild Hunt”や“Fallout 4”、“Undertale”、“The Witness”といった注目作に堂々と並ぶ仕上がりであり、これをターンベースストラテジー作品として達成した“XCOM 2”がオリジナルを含むシリーズの最高傑作であることはもはや疑いようもありません。
なお、特筆すべき点として、“XCOM 2”が決して高尚なテーマや複雑なストーリーを描かず、むしろ今時珍しいほどにド直球で外連味溢れる熱い物語を繰り広げることが挙げられます。これまでご紹介したような要素や深淵な本質をベースに、まるで少年漫画や熱血ロボットアニメかと見紛うような、例えば「ちっ……しょうがねえな、ここはまかせろ。お前は行け!お前がそれをやるんだ!」的な“成分”(※ 実際にこんな台詞が存在するわけではなく、あくまで例えです)を素で織り交ぜてくる“XCOM 2”のてらいのなさは本当に素晴らしく、道中ではFiraxisが本作でシリーズを完結させるつもりじゃなかろうかとさえ感じるほどの展開に、思わず声を上げることもあったほどです。
余談ながら、XCOMの本質として挙げた“連続する選択と決定”、そして“失敗と喪失”は、本作の体験を構成する非常に重要な要素であり、戦闘や任務の失敗はゲームデザインの一部としてはっきりと組み込まれていることが確認できました。予てからJake Solomon氏はXCOMの完全な体験が安易なやり直しを制限するアイアンマンモードにあると強調しており、“XCOM 2”においてはこの要素をさらに色濃く反映した調整が数多く施されています。
“XCOM 2”が前作以上に何度も繰り返しプレイする作品となることは間違いありませんが、初回のプレイスルーはやはり如何なるゲームであっても特別な宝だと言えます。既に前作をプレイ済みであれば、最も簡単な難易度“ルーキー”のアイアンマンあたりから始めて(※ ルーキーでも相当歯ごたえがあるはずです)、本作の忘れがたい体験を骨の髄まで味わってみてはいかがでしょうか。
ここからは、本作の多々ある改善の中でも、特に顕著でゲームプレイに直接関係する一部のディテールや設定についてご紹介します。
昨年6月、“XCOM 2”の開発にあたってFiraxisが最も得意とするPCに特化したことについて言及したJake Solomon氏は、最も大きな変更点の1つとして、キーボードとマウスによるプレイに適したインターフェースの最適化を進めていると語り、UI要素の移動やグルーピングに加え、PCモニタ向けにより小さなテキストを利用することで、インターフェースに戦略的な情報をより多く表示可能にすると語っていました。
氏の言葉どおり、“XCOM 2”のUIやHUDは前作と全く同じ操作方法と感覚を提示する一方で、文字通りPC向けに最適化された状態となっており、“XCOM: Enemy Unknown”において画面下部に大きくまとめられていたHUD要素は、それぞれが小さくリサイズされ、四隅のエリアへと機能別にグループ化された状態で再配置され、情報量自体を増やしつつ、ゲームプレイを全く阻害しないデザインを実現しています。
こういったUIデザイン面の改善は本作の経験を大きくボトムアップしており、数百時間に渡って何度も繰り返し遊ぶことになるであろうゲームプレイの快適さを十分確保することに成功しています。
※ 以下にご紹介する参考用の比較画像は全て原寸大のイメージにリンクしてあります
こういった改善は戦闘の発砲時にも顕著で、“XCOM 2”においては命中率とクリティカル率といった情報が一望できるよう改善されており、戦闘時だけでなく兵士の育成や武器のカスタマイズ時にもキャラクターのStatsを思い浮かべさせることに成功しています。
インターフェースの変更に伴うゲームプレイの改善は全域に渡って行われ、キャラクターの移動時におけるナビゲーションも前作から格段に使いやすいものに変化しています。前作では、移動フェーズにおいて進路上の毒や炎といった危険物を意図せず踏んでしまうケースがあり、注意が必要でした。
今回は、毒や炎、敵からの発見など、各兵士を危険にさらす要素が移動経路上に存在する場合、動的にアラートがアイコンとして表示され、ミスを未然に防ぐ、もしくは意図して敵に発見されるといった行動が容易に選択可能となりました。
また、このアラートは“XCOM 2”の新要素である“潜伏”にも大きく関係しており、前述したアラートがあくまで視認済みの部隊視界内にのみ適用されることが、移動や索敵により意義のある新しい戦術性をもたらしています。
本作の新要素である“潜伏”は、プレイヤーがエイリアンを襲撃する“XCOM 2”のゲリラ戦設定を上手くゲームプレイに反映させたシステムで、敵の視界外でエリアの探索と索敵を進め、敵を待ち伏せ不意を突くことで戦闘を有利に運ぶことができる重要なフェーズとなっています。
また、この“潜伏”システムは、従来の“監視”をより意義深いスキルに進化させており、インタビュー時にご紹介した監視システムの刷新(※ 監視状態の兵士が同時に敵を攻撃しないよう改善された)も相まって、“XCOM 2”に全く新しい戦闘フェーズをもたらしました。
ほぼ全ての要素において否定的な要素が見当たらない“XCOM 2”ですが、前回のプレビュービルドと今回のレビュービルド共に、唯一の問題点としてビジュアル関連の細かなバグやパフォーマンスの問題が見られました。
ビジュアル関連のバグは、銃撃が明らかに壁をすり抜けるものや、カメラの位置、オブジェクトの表示など、主に見た目や表示に絡むもので、ゲームプレイに直接的な影響を与えるバグはほとんど確認できず、クリティカルな問題は発生しませんでした。
一方、パフォーマンスについては最大設定で非常に重く感じる場合があり、Win8/64bit、i7/4Ghz、GTX970、DDR4/16GB、SSDといった構成で10~15fpsまで落ち込むケースがたびたび見られました。
なお、カスタマイズ済みのUE3.5を使用する“XCOM 2”のビジュアルは、PBRの採用を含め非常に美しく、低~中程度の設定でも十分な見た目が確保されています。
製品版でどの程度改善されているか、発売が待ち遠しいところですが、前述した環境では被写界深度のボケDoFや影の品質が比較的高コストだった様子で、最大プリセットの被写界深度をシンプルに、影のクオリティを高、AAをMSAA 4x程度に落とすことでプレイに問題無いパフォーマンスを得ることができました。
という事で、今回は参考までにメインメニューと拠点アヴェンジャーの内部、ミッションのスクリーンショットをそれぞれ5種のプリセットで撮影したPNGを用意しました。
中以上の設定はともすれば間違い探しレベルの違いに収まりますので、ローンチ直後のパフォーマンスが心配な方はプリセット別の変化を1度確認しておいてはいかがでしょうか。
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