1972年のアメリカでマグナボックス社からリリースされた世界初の家庭用ゲーム機「オデッセイ」、その発売以来ファミコンやアタリショックを招いた名機Atari 2600、そしてプレイステーションの登場など、爆発的な普及を遂げたシェア戦争の勝者達によってゲーム業界は大きく牽引されてきました。しかしその栄光はやはり一握りの勝者以外全ての敗者達で築かれた死屍累々たる(ハードウェアの)山の上に輝いている物と言えるでしょう。
さて、優等生も素敵ですが、頑張ったけど駄目だった子って可愛くないですか?と言うことで本日は死屍累々の中でもとびっきり残念な可愛い子達TOP10をお届けいたします!
1996年:(NINTENDO64がリリース、デスクリムゾンがリリースされたのもこの年です。)
ピピンアットマークはアップルが設計し、当時のバンダイとKatz Mediaが販売を担当したMacintosh互換のマルチメディア機です。家庭用ゲーム機では世界で初めてインターネットに接続出来た志の高い子でした。しかし残念な事にブラウジング・ネットワーク・そして本体性能の全てが中途半端で発売翌年には65億円の赤字を叩きだし、1年2ヶ月で製造中止されるという暴れん坊でした。アップル製品のワースト記事などでは必ず顔を出し、ニュートンと並んでアップルの鉄砲玉として位置づけされています。
アップルの愛すべき失敗作の一つですね。出荷台数は4万2千台ですが、実際に売れたのは2万台程度だった模様。ピピンの白い子はとっても可愛いと思います。さらにコントローラーは中央にトラックボールがちょこんと配置されたこれまた可愛らしい物でした。
1997年(クーロンズゲートや偽典・女神転生、そしてDiabloがリリースされた年です!)
Tiger Game.comはTiger Electronics社が当時すでに隆盛を極めていたゲームボーイに対抗する為に生み出された携帯ゲーム機で、ゲームボーイよりも上の年齢層にアピールするためにタッチスクリーンとスタイラスペンを標準装備!なんとネット接続も可能!という意欲的なハードウェアでした。
しかし言うは安しというもので、現実には弁当箱大のダイヤルアップの外部モデムに太いシリアルケーブルを繋いでネット接続するという、そもそものアイデンティティーがぶれぶれというか、マッチョすぎて少しカッコ良くも思える男気溢れるもの。発売後、出荷は30万台で止まり、音速で花散ったその生き様はまさに泡沫ハード!といえる残念っぷりです。
本体にソリティアが内蔵されている事がGame.comの数少ない良い所です。
2003年(残念ゲーの金字塔Big Rigsがリリースされた年です。)
Nokiaが開発した携帯電話とゲーム機のハイブリッドがN-Gageです。いかにもNokia!っぽい近未来デザインの筐体にSymbian OSを搭載しPDAとしても利用可能、Bluetoothにも対応し、FMラジオ機能を搭載、音楽プレイヤーにもなります。そして動画再生にRealメディアプレイヤーも搭載というてんこ盛りぶり。
しかしリリースされた実物はなんというか機能がどうとか以前の問題で、ゲームを交換するのに本体の蓋(というかハード裏全面が蓋……)を開けバッテリー外さないといけないという意味不明なハード設計、当然ホットスワップもできません。さらにディスプレイが小さすぎて満足にゲームが出来ないという悲惨な物でした。翌年に若干改善された後継機が出ますが時既に遅し。
NokiaはこのN-Gageの失敗で一時撤退を余儀なくされますが、後継機のN81で復活、現在ではiPhoneの大成功に対抗してN97やNokia 5530 XpressMusicで頑張っています。
2006年(PS3、DS lite、Wiiがリリースされました。)
HyperScanはバービー人形を販売しているMattel社が開発したもので、ビデオゲームとトレーディングカードを融合させるためにRFID(ICチップ等の埋め込みによる個体識別の技術)を取り入れたかなり斜め上なハードウェアです。ゲームタイトルとは別途トレーディングカードが必要になります。
そもそもMattel社の志や意気込みが低く、リリースから散り際までずっと地味だったという総合的に可哀想な子です。
1983年(ファミコンがリリースされた年で、リブルラブル!惑星メフィウス!ポートピア連続殺人事件!スペランカー!等のゲームがリリースされました。)
学研から8,800円で発売されたハードウェア。ファミコンの大成功でほぼ即死。
駄目すぎて本当にラブリーとしか言いようがありません。可愛い!数少ない対応ソフトの1本「市街戦200X年」の200Xの文字を見てさらに切ない気持ちになりました。
1985年(セガ・マークIIIが発売、ザナドゥ、グラディウス、そしてスクウェアがデス・トラップIIをリリースした年でもあります。)
RDI社から発売されたレーザーディスクプレイヤーとゲーム機を融合させたハードウェア。なんと音声認識と合成音声を発する事が可能で、リリース時には2001年宇宙の旅に登場するHALと比較されました……というか自己申告で比較しました。その実体は高価なドラゴンズ・レア専用機です。
でっかい心意気に力強い価格設定、手の込んだエクストリーム罰ゲームか、或いは何か陰謀にでも巻き込まれたのか……自社の運命も巻き込んだの壮大なセルフ爆死、ハナから判っててやってるとしか思えない素晴らしい散り際、そこに美があると思います。
1985年(PCエンジンDuo、メガCDが発売、ストリートファイターII、アウターワールド!、そしてDuke Nukemがリリースされました。)
CD-iは正確にはハードウェアでは無く、Philips社がSonyと共同で開発したコンパクトディスクの拡張規格です。その拡張規格で実装されたインタラクティブなシステムを利用してゲーム機器として発売されました。Philips社はCD-iをプラットフォームとして提供、様々な会社からCD-iプレイヤーが発売されました。
コントローラがリモコンの上部に見える貧弱な十字スティックというかなりストレスフルなもので、ゲーミングに耐える様な物ではなかったようです。ちなみにCD-i版ゼルダは現在はコアなファン達の間でかなりの高値で取引されているようです。
1992年(真・女神転生、重装機兵ヴァルケン、弟切草などがリリースされた年です。)
Memorex VISはTandy社が当時のマルチメディア再生機のブームに乗じて開発したハードウェアです。Video Information System(VIS)というハードウェアにMicrosoftのWindows 3.1をカスタマイズしたModular Windowsという聞いたこともないOSを搭載(Modular Windowsは結局このVISにおいて採用されたのみで開発を終了)、当時既にレミングスの群れと化していた多くのマルチメディア再生機と共に専用ソフトが一つもリリースされないままその短い命を終えました。
どのような修羅場や大人の都合の中でこのハードがリリースにたどり着いたのか、まったく想像が及びません。げにおそろしや。
2005年(Xbox 360がリリースされました。)
GizmondoはイギリスのTiger Electronics社が開発した携帯ゲーム機です。小さな筐体にGPS機能、デジタルカメラ、携帯電話、Bluetooth対応、mp3・wmv・mpeg4再生に対応したメディアプレーヤ、さらにコンテンツ配信まで盛り込んだ夢のような機能で話題になりました。
通信方式がGSMしか用意されず販売可能な国が限られてしまい販売に苦戦、出荷台数は25,000台とされていますが、売れたのは5000台程度で幻の携帯ゲーム機となりました。
Gizmondoは通常版と廉価版の2タイプが用意され、廉価版ではゲームにCMがダウンロードされるという怪しい仕様。さらにリリース時期にTiger Electronics社の証券犯罪への組織的な関与が明らかになり、Tiger Electronics社は再建手続きに突入、EUでの販売を担当していたGizmondo Europeは債務超過のまま倒産。
トドメに当時の本社CEOを務めていたStefan Eriksson氏がエンツォ フェラーリ(フェラーリが創業55周年に発売した一億円を超えるスーパーカー)を真っ二つにする事故を引き起こして飲酒運転で逮捕、そのまま芋づる式に色々な罪が発覚、業務上の横領>複数の窃盗罪>無免許運転>ひき逃げが発覚という夢のような超絶目押しロマンコンボを叩きだし、欧州マフィアとの関係なども明らかになりフィニッシュ。
もうなんというか壮大すぎて笑うしかありません。
1977年(Atari 2600がリリースされ、アドベンチャーの祖ゾークが発売されました。)
RCA
Studio IIはアメリカのRCA社が開発したROMカートリッジを交換可能な世界で二つ目のハードウェアです。ちなみにStudio Iは存在しません。同じくROMカートリッジを採用したFairchild semiconductor社のFairchild Channel FとAtari社が発売したAtari 2600の二強との戦いに惨敗し消えてしまいました。
国内では東芝のVISICOM(ビジコン)の名で兄弟機が発売されたので、記憶に残っている方もいらっしゃるでしょうか。
77年当時から熾烈なハードウェア戦争があったのかと思うと、なんとも言えない不思議な気分になります。この後サードパーティへの開発支援に成功したAtariが栄華を極め、ゲーム市場を30億ドル規模にまで牽引、82年のアタリショックで歴史に名を残す爆死を遂げることになります。
以上、最低なビデオゲームハードウェアTOP10いかがでしたでしょうか。書き終えてあまりの非現実的な状況にちょっと頭がくらくらしています。今後も続くシェア争いの中で多くのドラマが生まれるかと思うと怖いような楽しみなような……いや楽しみです。
最後までお付き合い頂いた方、本当にお疲れ様でした。
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