日本語版を含む2月5日の世界同時ローンチがいよいよ目前に迫るFiraxisの人気シリーズ最新作「XCOM 2」ですが、今回2Kより日本語化済のプレビュービルドを提供頂き、期待作のゲームプレイを一足先に体験することができました。
ということで、今回は時間が許す限りプレイを重ね(過ぎて実生活に支障をきたすにまで至っ)た期待作のインプレッションをまとめてご紹介します。なお、従来であれば、細かなシステムや仕様関連のディテールを多めにご紹介するところですが、実際にプレイしたところ、細やかな要素が順を追って明らかになる過程も大きな楽しみの1つだったことから、今回はディテールを極力抑え、インプレッションを多めにご紹介させていただきます。
まずは本題に入る前に、結論めいたことを書き記しておくと、“XCOM 2”は見事な傑作に仕上がった前作において、わずかに物足りなかった幾つかの箇所と様々な要素を全方位的に拡張・改善し……うんたらかんたら、というのが予てから海外情報をご紹介してきた筆者が想定していた印象でした。が、実際のところは、思えば20年に渡って酸いも甘いも味わったFiraxis作品の手の内はわかっているぞ!とすっかり思いあがっていた筆者を、予想もしなかった“ある要素”ですっかり打ちのめし、あれこれをそっちのけで夢中にさせる予想を斜め上に超えて進化した作品だった、というのが率直な見解です。
なお、プレビュービルドのプレイスルーには当然ながら一定の制限が設けられており、今回のハンズオンは恐らく序盤の終わりに差し掛かろうかという辺りまでの展開(約15~20時間程度)に基づくもので、一先ず幾つかの難易度やアイアンマン(※ リロードによるやり直しが禁じられるモード)を組み合わせて計40時間ほどプレイしたインプレッションとなっています。
なお、今回のプレビューには、公式な映像としては初出となるインゲームフッテージも数本掲載してありますので、本文と併せてご確認ください。
既に前作を十分にプレイ済みの方や当サイトの“XCOM 2”記事を日ごろからご覧いただいているFiraxisファンの方は、次の見出しまで読み飛ばしていただくとして、まずは初めてシリーズに触れる方や興味は持っているけれども続編だしな……と思いあぐねている方に向けて、改めて新作“XCOM 2”の概要についてご紹介させてください。
“XCOM 2”は、1994年に誕生しカルト的な人気を誇った“X-Com”シリーズの流れを受け継ぐ新作で、一度は潰えたシリーズをCivilizationシリーズで知られるFiraxis Gamesが10年ぶりに全く新しいフランチャイズとしてリブートさせたXCOMシリーズの続編です。
新生XCOMを含め、複数のタイトルが存在するX-Comシリーズは、何れも地球を侵略すべく襲来するエイリアン達と、未知なる存在から地球を守る超国家的組織“XCOM”の攻防を描く作品で、一部のスピンアウトを除けば、基本的に前述した“侵略者であるエイリアンと、これを防衛するXCOM”という伝統的なフォーマットをベースに、街や世界、XCOM基地を運用する戦略パートと、エイリアンとの直接的な戦闘を描くターンベースの戦術パートに分かれるストラテジー作品となっています。(※ また、正式なシリーズ以外にも精神的な後継作品やクローン系の派生も数多く存在しており、やはりこれらもこのフォーマットに準拠してます)
これらは、いわゆる古典落語のような作品で、基本的な型に独自のアレンジや要素を加えながら、タイトル間に直接的なストーリーの繋がりや背景を持たないことが特徴の1つだと言えるでしょう。
まもなく発売を迎えるシリーズ最新作“XCOM 2”は初めてこの伝統的なフォーマットから大きく逸脱する続編で、前作“XCOM: Enemy Unknown”と同じ世界を共有するだけでなく、主要な登場人物たちにも密接な繋がりが存在しています。
ただし、この2作品の関係は、前作のエンディングから続編の冒頭へと繋がる普通の続き物ではなく、前作“XCOM: Enemy Unknown”の開始早々に人類最後の砦であるXCOMがエイリアンの侵略を退けることに失敗してしまったという設定を元に、ここから派生した別の時間軸を描いたもので、XCOMに対する勝利から20年を掛け人類と地球の支配に成功したエイリアンの政府“アドヴェント”に対して、地下へと潜伏したXCOMがゲリラ戦を挑むという、これまでのお約束だった攻守を完全に逆転させた作品となっています。
こういった経緯から、“XCOM 2”は前作と深い関わりを持つ続編である一方で、そもそも前作の物語が始まりさえしなかった世界を描く世にも奇妙な続編であり、(“前作の冒頭で人類が負けたのね”程度の認識さえあれば)“XCOM 2”から突然プレイを始めても全く問題ない作りとなっていることが実際に確認できました。
また、ゲームプレイのメカニクスやシステムについては、後述する様々な洗練に伴い、自然で無理のない優れた導入が用意されただけでなく、プレイ要素の整理と再構成、学習曲線の調整が図られていることから、これからプレイする方は、前作をおさらいするよりも、むしろ“XCOM 2”から始めたほうが導入時の理解はスムースだと言えるでしょう。
Firaxisがシリーズの復活に挑んだ“XCOM: Enemy Unknown”は、当初多くのファンやメディアがそのリブートにある種の懸念を抱いたものの、ローンチ後にその懸念をすっかり払拭し、誰もが完璧な復活を果たしたと認めざるをえない素晴らしい傑作でした。
今回“XCOM 2”をプレイしてまず驚いたことは、設定の変化や数々の新要素を導入する一方で、ゲームプレイの基本が前作から一切変わっていないことでした。これは、戦闘時における1ターンあたりの2回行動や2段階のカバーシステムといったメカニクスから、操作方法、研究・開発関連のシステム、リソース管理、UIの構成、兵士のアーキタイプなど、ほぼ全域に渡るもので、前作を多少なりとも遊んでいれば、同じプレイフィールを維持したままで全く違和感なく新しいゲームをすいすいと進めることができます。
また、新要素の多くはこういった基本に新しい機能や操作方法、システム、ルールを足し算的に追加するものではなく、あくまでこの基本に収まる形で付与されており、新たな操作方法を覚えるといった面倒さすら存在していません。
これは、前作のリブートが如何に完成されたものであったかを如実に示すもので、“XCOM 2”は慣れ親しんだ確固たるフォーミュラを基盤とし(厳密に言えば、この公式も最適化されブラッシュアップされている)、ここに膨大な新要素や野心的な取り組み、アレンジを加えることによって、新しいXCOM体験を全くストレスのない状態で楽しませることに成功しており、何も変わらないのに、全てが違うと感じさせる驚くべき仕上がりとなっています。
また、UIデザインの洗練は特筆すべき改善の1つであり、膨大な情報はクリアに再構成・整理され、操作やアクションの手数を増やさず、移動経路上の各種アラートやStatsを含む必要十分な情報を分かりやすく提示する明瞭さを実現しています。
これらの要素は通常のゲームプレイにおいて、水や空気のようなものであることから、普段は意識せずに済む目立たない改善だと言えますが、“XCOM 2”の開発にあたってFiraxisはこういった磨き上げを丹念かつ広範囲に重ねています。と言うと、聞こえは良いのですが、これは決してユーザーをぬるめの釜茹でに招待するものではなく、これからご紹介する本作の新展開と野心的な要素をこれでもかと投げつけ、司令官であるプレイヤーに次々と決断を迫り右往左往させ、そして思う存分殺すべくFiraxisが周到に用意した入念な下ごしらえに過ぎないのです。
冒頭で、筆者は“XCOM 2”に打ちのめされたと書きましたが、これは前述したようなFiraxisの入念なブラッシュアップやストイックな取り組み、燃えるゲリラ戦設定によるものではなく、端的に言えば“XCOM 2”がもたらすストーリー体験に起因するもので、これは全く予想だにしていなかったサプライズでした。
Firaxisのファンであればご存じのように、一連のCivilizationシリーズやAlpha Centauri、Beyond Earthといった作品を含むSid Meier作品は、所謂ビデオゲーム的なストーリーテリングを味わうものではなく、やはりゲームが根源的に持ち合わせる競合性やチャレンジ、戦略を楽しむもので、ことストーリーにおいては、遊び場として用意された奥深いシステムとAlpha CentauriやBeyond Earthに顕著な膨大なLore、フレーバーなテキストや背景をベースに、プレイヤーがゲームプレイを能動的にある種のナラティブ風な経験としてとらえ楽しむような体裁のものだと言えます。
これは、良し悪しの問題ではなく、多くはそれぞれにマッチしたストーリー成分の適切な配合に基づくものであり、Beyond Earthの壮大なLoreや、幾つかのツイストを備えたXCOM: Enemy Unknownは注目すべきストーリー要素を持ち合わせており、ゲームプレイを豊かなものにしていました。
ただし、“XCOM 2”のそれはこれまでのFiraxis作品とは全く異なり、(リニアでドラマ性の高い魅力的な)ストーリーを“もたらす”ような受動的なものではなく、攻守が逆転した新しい設定や対立構造、クセのあるNPC達、兵士1人1人の存在感、暗躍する代表、生まれ変わったストラテジーレイヤー、そして前述したFiraxisの殺る気といった要素がまさしく一つとなってプレイヤーの首根っこをひっつかみ、前のめりで無理やり走れ走れ走れとドリブンさせるような類のもので、正直Firaxisがこんなに外連味のあるビデオゲーム的ストーリー体験を作り上げることができるとは夢にも思っていませんでした。
また、このサプライズには、エイリアンの政府に立ち向かうXCOMのゲリラ戦という設定が単なる物語的な背景を超える重要な機能を果たしているほか、物理ベースレンダリングや高精細なキャラクターモデル、過剰に作りこまれたレベル環境、そしてカメラワークや戦闘時に発生するカットシーンといった演出までもが大きく貢献しており、それぞれが単なるアセットのリッチ化にとどまらない意義深い役割を持っています。
特筆すべき要素は、XCOM兵士のカスタマイズにも見られ(参考:過去記事)、当初はよくあるおまけ要素だろうと高を括っていたものの、実際のゲームプレイやリザルトはそれぞれの兵士を1人の人間として描写する物言わぬ演出とカメラワークで満たされており、ようやく中尉あたりまで育ち頭ひとつ抜けた兵士をプレイヤーが固体として認識しはじめる頃には、彼らが俺を、私を見ろとばかりに個を主張し、装備の整理やプレイを合理化すべくアーマーや武器の色をいじろうものなら、あっという間に愛着が沸き、アイアンマンの1手1手に一喜一憂するだけでなく、新要素である傷ついた兵士を背負い脱出させる運搬システムで彼らを救い出せば思わず声をあげて喜び、死亡すれば得も言われぬ前作以上の喪失感を味わわされるはめになってしまいます。
このパーソナライズは、恐らくFiraxisが意図的に狙い撃ちしたものであり、兵士の昇進に併せて外観カスタマイズのさらに幅が広がるだけでなく、新要素としてメインメニューに導入された“キャラクタープール”を利用すれば、カスタマイズした兵士達の保存やエクスポート、インポートも可能で、今後何度となくプレイするであろうニューゲーム毎にお気に入りの兵士の誰かが雇用されて登場するといった嬉しい機会が得られます。
さらに、刷新されたストラテジーレイヤーは、ゲーム開始時に加盟国が全て揃っていた前作に対し、全く0の状態から徐々にXCOM活動を支援する賛同地域が増える形で拡大化することから、初期の運用が煩雑化し対応に追われる形式ではなく、選択の幅がプレイと共に広がる非常に分かりやすい構成に改善されました。
ただし、こちらも分かりやすくなったのはあくまでUIやシステム、要素の再構成であり、前作とは全く異なるペーシングで、毎日迫られる何らかの決断や次々と発生する事件、評議会からの打診、世界中に散らばったレジスタンスとの接触、スタッフの雇用、そして非常に重要な新要素で全てを食い止めることはできない“陰謀”の阻止(2~3種発見される陰謀の種類から1つを選択し阻止することから、残りの陰謀は発動してしまう)など、比較的中だるみするケースが多かった前作のストラテジーレイヤーに比べて、圧倒的に自分がコマンダーとして抵抗戦を主導しているんだという心持ちにさせるだけでなく、現時点ではお伝えできない幾つかの大きな要素も相まって、ゲーム全体の予測不可能性を増大させ、全く先の読めない戦いにプレイヤーを没入させてくれます。
国内のプレイヤーが気になるであろう日本語化のクオリティについては、今回英語版のクライアントでプレイする時間が得られなかったことから、直接比較することはできませんでしたが、全体的にとても素晴らしい仕上がりで、特に細かなニュアンスや雰囲気系のテキストについても前作以上の品質に仕上がっていたと感じられました。ただし、1つだけ注意を要する点として、新たに導入されたリソース“情報”の存在が挙げられます。“情報”は、獲得することでアイテムの入手や本拠地ボーナスの適用、伏せられた陰謀のアンロック等、様々な用途に使えるゲーム内通貨のような新リソースですが、ゲーム内においていわゆる一般的な表現として“情報”が用いられる文章と、リソースとしての“情報”を指す場合の2種類が存在しており、どっちだっけ?となるケースが見られました。慣れれば問題なさそうですが、ひとまず発売後、ストラテジーレイヤーのレジスタンス本拠地において得られる“情報”は、リソースの方だと覚えておけばよさそうです。
システムからビジュアルに至るまで、美しくエレガントに進化した“XCOM 2”ですが、非常に強く印象に残った新しい要素として、エイリアンの政府アドヴェントが用いるアートワークのビジュアルスタイルが挙げられます。これは、主にローディング画面で繰り返し見られるものですが、ソ連時代を思わせるようなプロパガンダ系のデザインと東南アジア的でエキゾチックなどぎつい配色、スキャンライン風のエフェクトは、かつて初代X-Comが持ち合わせていたある種のいかがわしさや外連味、仰々しさを思い起こさせるもので、非常に奇妙なコントラストを生み、なぜか強くXCOM(X-Com)をプレイしているんだと思わせるアクセントとなっていました。
ミッションオブジェクティブどころか大陸ボーナスまで変化させる大規模なプロシージャル要素や、デフォルトで部隊視界付きとなった狙撃兵のピストルビルド、一部装備の購入が容易なシステムに改善された件、新たに導入されたLoot要素の大変な面白さ、兵士の新たな能力スロット、既存クラスの刷新とビルド、シナジーの多様さ、Jake Solomon氏の功績、MOD対応に対する並々ならぬ意欲など、細かなディテールの改善や見るべき個所がまだまだ山のように残されている“XCOM 2”ですが、高い評価を獲得した前作を超える可能性を十分に秘めた野心作のお楽しみはコマンダーに就任したご自身の手で確かめてみてはいかがでしょうか。
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