12年の歳月を経て復活を果たす「Six Days in Fallujah」はイラク戦争を政治的に描く作品ではない、オリジナルから計画を率いるPeter Tamte氏が言及

2021年2月16日 12:21 by katakori
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「Six Days in Fallujah」

イラク戦争を扱うシューターとして2009年に大きな論争を生み計画そのものが頓挫したものの、先日12年ぶりにまさかの復活を果たし大きな話題となったVicturaとHighwire Gamesの新作「Six Days in Fallujah」ですが、イラク戦争において最も過酷な戦闘が繰り広げられたファルージャでの戦いをリアルに再現する野心作の復活に注目が集まるなか、2009年のオリジナルから開発を率いていた元Atomic GamesのCEOでパブリッシャーVicturaの創設者Peter Tamte氏がPolygonのインタビューに応じ、イラク戦争の描写に対するアプローチに言及。来る“Six Days in Fallujah”がイラク戦争そのものの是非や政治的な問題を扱う作品ではないと明言しました。

イラク戦争を起こした政治的な動きには触れないと語ったPeter Tamte氏は、本作が都市部における戦闘の複雑さを描くことを重要ししており、政治的な決定によって影響を受ける兵士個人の経験、さらには政治的な判断が戦場で必要とされる選択にどう影響を与えるかを描きたいと説明。政治家の選択を兵士が推測できないことと同じにように、スタジオは戦争の是非に解説を加えようとは思わないと説明しています。

このスタンスには、実際に存在した戦争犯罪や残虐行為の描写を扱わないことも含まれており、氏は例として白リン弾を用いた現地での戦闘を挙げ、センセーショナルな議論で人々を分断するような要素は、スタジオが扱う兵士の物語から人々の注意を反らすことになる可能性があると説明。加えて、インタビューを行った兵士達が語る物語に白リン弾の話題は含まれていなかったと伝えています。

また、氏は本作が戦争の代償を混乱させ、さらなる戦争を求めるような経験を提示しないと明言した上で、イラク戦争に参加した海兵隊員や兵士だけでなく、イラクの民間人もそういったメッセージは望んでいないはずだと強調。皆が戦争の人間的な犠牲を理解する必要があり、本作をプレイすることで、好奇心を抱き、ファルージャで起こったことを知りたいと考えるようになれば、それぞれが自身の考えに結論をもつことに繋がるだろうと語り、過去の出来事を無視すれば、考えるきっかけも生まれないと、本作を復活させた目的について言及しています。

一方、ファルージャの人々が本作についてどう思うかという点について言及したPeter Tamte氏は、現地で被害にあった人達を含め、確かに本作で不快な思いをする人達がいるだろうと前置きした上で、15年以上に渡ってこのプロジェクトに取り組んできた経験や人々とのやりとりを振り返ると、ほぼ全ての人がファルージャで何が起こったかを知ってもらいたいと考え、愛する人を失う犠牲や戦争そのものを忘れて欲しくないという願いを伝えていたと説明。スタジオはそういった思いや経験を描きたいと強調しました。(※ 氏は“ほぼ全ての人”について「イラクの民間人と連合軍兵士のどちらも」と発言しており、ここに戦闘の対象である反米武装勢力は含まれていない)

ゲームが政治的にシリアスなテーマを扱う際に、開発者やパブリッシャーが問題に対するスタンスを表明しないことはままあり、議論を回避する手段として、特定の出来事を架空の物語として描くアプローチもしばしば見られますが、本作は実際にファルージャの民間人や戦闘に参加した兵士達を含む100人以上のインタビューに基づき、現地での出来事をリアルに再現することが判明しています。

そもそもイラク戦争を扱うこと自体が極めて政治的な行為であり、これを政治色抜きで作品として成立させることが理論的に可能なのか、筆者は個人的に甚だ疑問ですが、かつてBungieでHaloの成功を支えたPeter Tamte氏をはじめ、新たに本作の開発を引き継ぐ元Bungieの重鎮Marty O’Donnell氏、HaloとDestinyのリードデザイナーJaime Griesemer氏が“Six Days in Fallujah”でどんな体験を描こうとしているのか、執念とも思える取り組みを経て復活を果たした野心作の動向に改めて大きな注目が集まるところです。

参考:先日公開された“Six Days in Fallujah”のアナウンストレーラー

新生“Six Days in Fallujah”は、当初の構想通り米軍海兵隊2個連隊がファルージャに侵攻した11月9日から6日間の包囲掃討作戦“夜明け”を、現地の兵士や民間人の視点から追体験するタクティカルシューターで、開発に当たって実際にファルージャでの戦闘に参加した100人を超える海兵隊員や兵士、民間人に取材を行い、現地で起こった出来事を事実に基づきリアルに再現する取り組みが報じられていました。

情報元及びイメージ:GameSpot, Polygon

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