「The Lord of the Rings: Gollum」プレビュー、指輪物語とゴラムの知られざるストーリーを描くステルスアドベンチャー

2022年5月24日 23:01 by katakori
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「The Lord of the Rings: Gollum」

“ホビットの冒険”と“指輪物語”における最重要キャラクターの1人“ゴラム”に焦点を当てる新作として、2019年3月にアナウンスされた「The Lord of the Rings: Gollum」ですが、来る2022年9月1日の発売が迫るなか、先だってDaedalic Entertainmentがメディア向けに実施したハンズオフプレビューに参加することができ、一足先に期待作の本格的なゲームプレイを実際にこの目で確認してきました。

「The Lord of the Rings: Gollum」は、まだ互いの人格がある程度拮抗していた頃のゴラムとスメアゴルに焦点を当てるストーリー重視のステルスアクションアドベンチャーで、時期的には“ホビットの冒険”の終わりから数十年の時と紆余曲折を経て、“指輪物語”が始まる1年前頃までの数年間、つまり“ホビットの冒険”と“指輪物語”の架け橋となる物語を描く作品だと言えます。

本作は、原作小説シリーズの空白と僅かな余白を補間し(それが蛇足かどうかは一旦置いておいて)、あまり広く知られていない同時期のゴラムの動向を掘り下げる一方で、予め決められた結末に向かって過去を綴り直すような性質の作品でもあります。

こういった特殊な背景から、映画“ロード・オブ・ザ・リング”や“ホビット”を観た方には、ゴラムの知られざる旅と数奇な運命の物語が楽しめ、原作の熱心なファンは、既に大筋と足跡、事の顛末が分かっている出来事をDaedalicがどう描写し、どんなツイストを加えるか、その余りに野心的な挑戦をスリリングに味わえる、本作はそんな二つの異なる側面を持つ非常に興味深いタイトルだと言えるでしょう。

参考:昨年末に公開された「The Lord of the Rings: Gollum」の字幕入りTGAトレーラー

ハンズオフプレビューのデモンストレーションについて

今回のプレビューは、予め用意された詳細な解説入りのデモンストレーションをお披露目し、幾つかの質疑応答を行うもので、20分強のゲームプレイは、オーク達が一部のエリアで活動する険しい山中を進み、ゴラムが隠れ家を目指す本編冒頭の展開に加え、(中盤以降のシーンと思われる)エルフの王が住まう洞窟と美しい王の間を探索する2つのパートで構成されていました。

このデモンストレーションは、開発中の英語版ビルドながら高品質なカットシーンやストーリーに影響を与えるモラル選択、基本的なゲームメカニクス、ガンダルフやナズグルを含む著名なキャラクターの登場、未見の新キャラクターの存在が確認できるバーティカルスライスで、作品の全体像を十分に想起させるものでした。

ストーリーや指輪物語作品としてのディテールについては後述するとして、まずはゴラムが主人公となるゲームプレイのシステムを紹介しましょう。

「The Lord of the Rings: Gollum」のゲームプレイについて

「The Lord of the Rings: Gollum」

本作の主人公“ゴラム”は、ご存じの通り身軽で運動能力は高いものの、体は小さく心も不安定な存在であることから、オークやクリーチャーと直接戦って勝てるわけもなく(なにしろ、ゲーム内では一体のオークをスニークアタックで無力化させるだけでぜいぜいと息を切らしてしまうほど)、必然的に暗がりで身を潜め、環境や周囲の物を巧みに利用する狡猾なステルスプレイがゲームプレイの重要な柱となります。

ステルス作品としては、匍匐前進による静かな移動や身を隠すことができる茂み、単独の敵を背後から襲うスニークアタックによるテイクダウン、オブジェクトの投擲よる陽動、光源の無効化、環境オブジェクトを利用する敵の排除、音や声に反応する敵など、典型的なメカニクスを備えたオーソドックスな作りのタイトルだと言えます。

また、ゴラムの感覚を研ぎ澄ませることで、音が聞こえる範囲の敵の位置や隠れられるオブジェクト、ミッション目標への道筋を可視化する透視ビジョン的な能力“ゴラムセンス”を利用することも可能で、デモンストレーション中には、この能力を駆使しながらオークの拠点を上手く進む様子も見られました。

一方、ゴラムの移動については、身軽さを活かした垂直方向のよじ登りやぶら下がったままの横移動、ジャンプ、ウォールラン、泳ぎといったアクションが用意され、かなり高さのあるレベル環境をすいすいと移動することが出来ますが、こういった動作はスタミナゲージを消費するため、スタミナを回復するための足場の確保や体力を意識した移動ルートを考えることが重要になり、これは本作の探索における環境パズルの要にもなっています。

2つの異なる人格が対立する“モラル選択”

もう1つ、ゲームプレイに大きな影響を与える本作ならではの要素として、ゴラムのアンビバレントな内面や葛藤を掘り下げる“モラル選択”が存在しています。

このモラル選択は、一つの体に宿る二つの人格“ゴラム”と“スメアゴル”で異なる意見のどちらかを尊重するもので、今回のプレゼンテーションでは、かろうじて(本来のいとしいしとであった)花や虫を愛でる心を持つ“スメアゴル”がカブトムシをかわいがろうとした際、猜疑心の強い“ゴラム”がカブトムシをサウロンのスパイだと疑い、殺せ、食べてしまえ!と言い合う様子が描かれ、互いに説得しようとする2人の異なる意見のどちらかを選ぶことで、選択に応じた行動と結果をカットシーンで示す様子が確認できました。

今のところ、このモラル選択がどの程度ゲームプレイに変化をもたらすのか、その詳細は不明ですが、選択時には僅かながらゴラムの優しさと険しさを示す表情に変化が生じたように見えたのが印象的でした。ちなみに、Daedalicの開発者によると、本作には異なるエンディングが用意されているとのこと。

「The Lord of the Rings: Gollum」

舞台となる中つ国のレベル環境

「The Lord of the Rings: Gollum」はオープンワールド作品ではないため、チャプター毎に用意された広めのオープン環境が舞台となります。

今回のデモンストレーションでは、2つのレベル環境が提示されましたが、何れも非常に高さのあるマップが特徴的で、前述した多彩な移動能力を駆使して壮観な環境を探索する様子が確認できました。

Daedalicの開発者によると、本作の展開はリニアながら、レベル環境には目標へと向かう複数のパスやアプローチが用意されているとのこと。

「The Lord of the Rings: Gollum」のストーリーについて

「The Lord of the Rings: Gollum」は、“ホビットの冒険”でビルボとなぞかけをして遊び、僅かな親切心を見せる無邪気な一面があったころのゴラムから、指輪物語における狡猾で猜疑心の強いゴラムへと至るまで、広く知られている一般的な“ゴラム”像の誕生とその経緯を描く作品であり、なぜゴラムが極めて危険なモリアの内部でフロド達を発見することになったのか、その知られざる足跡を辿るストーリーこそが本作の最も大きな魅力だと言えるでしょう。

本作は、指輪物語の本編が始まる僅か2年ほど前、スランドゥイルの岩屋に捕らえられていたゴラムがガンダルフに尋問され、自らの過去を回想する形で始まり、ビルボに指輪を奪われたゴラムが“いとしいしと”の行方を追った過酷な旅を追体験することになります。

ゲームプレイ中には、ゴラムとスメアゴルが語り合う独り言の会話だけでなく、尋問中のガンダルフとゴラムのやりとりも聞こえてくるのですが、信頼できない語り手であるゴラムの曖昧な回答やその場しのぎの取り繕いと平行して、実際に過去で起こっていた出来事がゲームプレイを通じて描かれることから、構造的に極めてスリリングなストーリーテリングを実現していることが非常に印象的でした。

また、本作を通じて描かれるゴラムの知られざる旅には、アラゴルンやガンダルフ、森エルフの王スランドゥイル、邪悪な怪物シェロブ、指輪の幽鬼ナズグルなど、数々の著名なキャラクターに加え、中つ国の象徴的なロケーションが登場する(であろう)ことから、中つ国の名所巡りや数々の出会いも本作の大きな見所の一つと言えそうです。

「中つ国」の見事な再現

「The Lord of the Rings: Gollum」
キリス・ウンゴルの高所からバラド=ドゥアを望むゴラム

ここからは、なるべくネタバレを避けつつ、“指輪物語”と“ホビットの冒険”がお好きな原作ファン向けに、幾つか印象深かった見所をご紹介したいと思います。

2レベル分のゲームプレイをざっと見た筆者の第一印象は、かなり入念かつ緻密にロケーションや細部のディテールを作り込んでいるなというものでした。

デモンストレーションの開始から僅か数秒で“ごらむっ、ごらむっ”というのどが詰まるような咳き込みと共にゴラムが姿を見せるだけで、もうすっかり心がわしづかみにされ、ゴラムとスメアゴルのやりとりでは、アンディ・サーキスやチョーさんの見事な名演を思い起こさせるような見事なボイスアクトが披露されます。

レベル環境についても単に高品質なアセットや地形を用意しているだけではありません。序盤のパートでは、南北に延びるモルドール西方の外壁エフェル・ドゥアスの麓からキリス・ウンゴルを昇っていきますが、キリス・ウンゴルの頂上までは1,000m近くあり、ゲーム内ではこれを見事に再現する険しい崖を昇っていくことになります。

また、外壁のモルドール側を昇っていく途中には、東部に広がる暗黒の高原や不気味なオロドルイン、そしてゴラムが恐れる“目”を備えたバラド=ドゥアが見え隠れします。さらに、キリス・ウンゴルで活動するオーク達は、東部で(後半の展開に直接影響すると容易に予想できる)何らかの準備が進められている様子について語りあい、一部で暗黒語を使用するなど(実際に暗黒語やオーク語で会話しているわけではありませんが、暗黒語由来の呼称を用いる会話が確認済み)、ゴラムとシェロブ、オークの関係性など、僅か10数分のパートながら、文字通り無数の見所がありました。

「The Lord of the Rings: Gollum」
闇の森の北東部に存在するスランドゥイルの岩屋、本作では王の間が外部から視認できる

一方後半パートの舞台となる、闇の森とスランドゥイルの岩屋では、地下の巨大な広間を支える岩作りの巨大な構造や柱が並び立ち、内部には森の川から流れ込んだ美しい水が湛えられ、上部にはかつての緑森の繁栄を想起させるような、非常に精緻な森エルフの装飾や細工が所狭しと並ぶ王の間が登場します。

この王の間は、地下の仄暗い玉座ではなく、眩しい日の光が差し込むフレッシュな解釈で描かれていて、スランドゥイルが本来持ち合わせている威光を誇るような素晴らしい仕上がりでした。

また、このパートではゴラムと友好的な関係にあるメルと呼ばれるエルフの存在が明らかになります。彼女はかつてトーリン達が捕らえられたのと同じ地下の牢獄に閉じ込められており、姿こそ見えないものの、彼女の特殊な能力によって岩屋に湛えられた水を通じてコミュニケーションをとることができます。

こういったオリジナルキャラクターがゴラムの運命にどう絡むのか、(メルの場合は、ゴラムがなぜ“ある混乱”に乗じて岩屋を脱出できたのか、その詳細を掘り下げる役割を果たすと思われますが)Daedalicのアプローチや掘り下げも本作の見所の一つになるのではないでしょうか。

「The Lord of the Rings: Gollum」

独Middle-earth Enterprisesのライセンスを取得している「The Lord of the Rings: Gollum」は、従来の映画や現行の映像化作品、過去のゲームとは直接的な関係を持たない独立した作品ですが、大部分の外観的なデザインは広く知られている映画版から大きく逸脱することなく独自の解釈や新しいアプローチを上手く組み合わせ、ある種の懐かしさや馴染み深さを維持しつつ、挑戦的な新鮮さを共存させることに成功しているように見えました。

「The Lord of the Rings: Gollum」が、多くのファンを満足させる素晴らしい作品に仕上がるのか、この難しい問いは決して2レベル分のバーティカルスライスで判断できるようなものではなく、そこかしこに多くの可能性を感じはするものの、今のところ未知数だと言わざるを得ません。

本作が完成した際、その成否を分けるのは何か、筆者は予め決められた結末へと進む「ゴラムの知られざる旅と物語」を描くこと自体が大いなる蛇足となるか否か、ほぼその一点に集約されるのではないかと考えています。

これは、極めて難しい挑戦にほかなりませんが、本作の開発を手がけるDaedalic Entertainmentは(残念ながら、国内でその功績は広く知られていませんが)非常に巧みなストーリーテラーであり、愛すべき“Deponia”シリーズやケン・フォレットの代表作“大聖堂”のビデオゲーム化、Chains of SatinavやMemoria、Blackguardsを含むダークアイ関連の逸品など、素晴らしいストーリーを物語る数々の名作を残しており、筆者はDaedalicならば、いぶし銀の魅力を持つオリジナルストーリーや意義ある余白の補間を実現してくれるのではないかと大いに期待しています。

2022年9月1日にはいよいよ「The Lord of the Rings: Gollum」が発売され、その翌日には待望の「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」シーズン1の放送が始まるわけですが、この9月始めが指輪物語ファンにとって忘れがたい祭りとなるか、「The Lord of the Rings: Gollum」の仕上がりと完成に改めて期待が掛かるところです。

■ 「The Lord of the Rings: Gollum」の商品情報

  • 開発:Daedalic Entertainment
  • パブリッシャー:Daedalic Entertainment 及び NACON
  • プラットフォーム:PC, PS5, PS4, Xbox One, Xbox Series X/S, Nintendo Switch
  • 発売⽇:2022年9⽉1⽇ (Switchは未定)
  • ジャンル:シネマティック・ステルス・アドベンチャー
  • レーティング:未定
「The Lord of the Rings: Gollum」
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