UPDATE:11月18日12:35
昨晩の記事公開時に漏れていた3つ目の質問とジェイク・ソロモン氏の回答を追記しました。以下、更新後の本文となります。
予てから、本編のプリクエルを描く短編アニメーションや解説映像の公開が続いているFiraxis Gamesの新作「マーベル ミッドナイト・サンズ」ですが、先だってKより製品版に近いプレビュービルドを提供いただき、来る2022年12月2日の発売に先駆けて、多彩なマーベルヒーロー達が集結する野心的なストラテジーRPGを実際にプレイすることができました。
本来であれば、プレビューをご紹介するところですが、筆者のプレイがまだ十分でないことから、もう数日お時間を頂くとして、今回はFiraxis GamesのXCOMチームを率いるフロントマンで、本作のクリエイティブディレクターを務めるお馴染みジェイク・ソロモン氏に直接気になるあれこれを聞いた開発者インタビューをご紹介します。
「マーベル ミッドナイト・サンズ」のゲームプレイに関する具体的なディテールやインプレッションについては、ハンズオンプレビューで改めてご紹介しますが、今回のインタビューはFiraxis Games初の取り組みとなる本格“RPG”の開発に注目していて、その前提には筆者が予てから強く感じていた「XCOM」(特に“XCOM 2 選ばれし者の戦い”)のRPG的要素と「マーベル ミッドナイト・サンズ」が掲げるRPGの類似性があります。
端的に言えば、「マーベル ミッドナイト・サンズ」には「XCOM 2 選ばれし者の戦い」の大小様々なプログレッションやキャラクター/クラスカスタマイズ等を筆頭に、アベンジャー号内部で行われていた、研究や開発プロジェクト、ストラテジーレイヤー、絆システム、秘密工作といったRPG的と呼んで相違ない数々の仕組みが、マーベルユニバースに違和感なくフィットするよう、翻案・拡張・アレンジを施した状態で導入されているわけです。
前々から感じていた「XCOM」シリーズのRPGライクな要素と、今回の「マーベル ミッドナイト・サンズ」がスタジオ初の挑戦として掲げた“RPG”開発のあいだには一体どんな違いがあるのか、今回のインタビューでは、この疑問をジェイク・ソロモン氏に直接ぶつけてみました。
インタビューは前述したプレビュービルドの提供前に行われ、ジェイク・ソロモン氏が語ったRPG開発のテーマやアプローチは、今後ご紹介するプレビューやレビューにも深く影響することになると思いますので、あの「XCOM」チームが開発を手がける本格マーベルRPG「マーベル ミッドナイト・サンズ」が気になっている方は、一先ずインタビューを先にチェックしておいてはいかがでしょうか。
―― 「マーベル ミッドナイト・サンズ」は、Firaxis Games初の本格的なRPGだとお聞きしました。
これまでの「XCOM」シリーズにもRPG的な要素は数多くあり、特に「XCOM 2 選ばれし者の戦い」はストーリー面においてもストラテジー“RPG”と呼んで差し支えないような素晴らしい傑作でした。
「マーベル ミッドナイト・サンズ」は“RPG”であることを前面に打ち出していますが、幾つか事前に頂いたディテールを確認すると、「XCOM 2 選ばれし者の戦い」の研究や開発プロジェクトだけでなく、秘密工作や絆システムに相当する馴染み深い仕組みをアレンジ・強化したような要素も多く見られます。
「マーベル ミッドナイト・サンズ」が掲げる“RPG”と「XCOM 2 選ばれし者の戦い」のRPG的要素を比べたとき、アプローチや経験にどんな違いがあるのか教えていただけますか?
ジェイク・ソロモン氏:指摘についてはその通りです。実際のところ、「XCOM」はRPGと呼んでもかまわないと思うんです。ただ、遊び方に着目してみると幾つかの違いがありますね。
具体的には、ロールプレイをプレイヤーがどのように経験できるのか、そこに違いがあります。私たちも実は「XCOM」が少しRPG的なゲームだという認識を持ってきました。ただ、これまでの「XCOM」には、プレイヤーが直接動かすことができる、プレイヤーが本当の意味でプレイできる“キャラクター”というものは存在しなかったんです。
つまり、これまでの「XCOM」には、主人公であるコマンダーを(ターンベースストラテジーのユニットとしてではなく)プレイヤーが自分で操作するようなRPG的アプローチはなかったわけです。
質問のなかで、「マーベル ミッドナイト・サンズ」のRPG要素は、「XCOM」のRPG的な要素を強化しているようだとおっしゃってました。これについては、確かにその通りですが、RPGとして見たときに最も大きな違いは、マーベルと共に作り上げた主人公ヒーロー“ハンター”にあるんです。
ハンターを自分の意のままにプレイする。例えば、ハンターで散策したり、他のヒーロー達と交流したり、会話する際にはどんな風に話しかけるのか、プレイヤーが自ら決める。そして、戦闘ミッションに誰をどう動員していくのか、すべてにおいてプレイヤーがハンターという新しいヒーローを自分の手で動かしながら決めることができる。そこに大きな経験の違いがありますね。
マーベルには、たくさんのヒーローがいて、それぞれにしっかりと背景のストーリーがあり、個々の人物像やヒーロー性は既に確立されています。マーベルを愛する人達、「マーベル ミッドナイト・サンズ」をプレイしてくれる人達の多くが既に背景のストーリーを知っていて、皆さんそれぞれマーベルヒーローと精神的な繋がりを持っていると思います。その中心に、従来の「XCOM」では採用してこなかったような、自分で実際にプレイできるキャラクターを導入する、このアプローチが大きく異なる点だと言えます。
―― なるほど!プレイヤーの視点で比較すると、確かに大きな違いがありますね。
では、「XCOM」の俯瞰的な視点とは全く異なる、三人称視点の近い距離で主人公をプレイする典型的な“RPG”の開発にあたって、何か困難なチャレンジはありましたか?
ジェイク・ソロモン氏:まさに視点の違いですね。「マーベル ミッドナイト・サンズ」の戦闘時における主人公ハンターは、他のヒーローと共に(戦闘ユニットの1人として)戦いに臨むことになるわけですが、戦いを終えてヒーロー達の拠点である大聖院に戻った際には、ハンターを操作し、ハンターの視点で誰と会話するか、あるいは余暇を楽しむか、研究や開発はどうするか、プレイヤーが自ら決めることになります。
「XCOM」ではコマンダーの俯瞰的な視野で行っていた様々な戦略的決定を、「マーベル ミッドナイト・サンズ」ではよりプレイヤーに近いハンターの視点で行えるようにする必要があり、この変更がまさに新しい挑戦だったと言えます。
拠点を歩き回ったり、次はこの研究をしよう、このアイテムを作ろう、次はこのミッションをプレイしようといった決定を、ハンターの視点を通じて行うことで、プレイヤーがゲームの世界に入り込むような体験を作り上げているわけですが、実のところプレイヤーが下す意思決定の量自体は「XCOM」よりも多いんです。
例えば、他のヒーロー達とどんな人間関係を構築するのか、この点だけを見ても、これまでに以上に多くの選択が用意されています。今回は“友情”が大きな柱の1つになっていて、他のヒーローと拠点をぶらぶら散策したり、交流したりすることで友情を育むことになるのですが、こういったアクティビティも(XCOMに比べて)より主人公の中に入りこんだような視点で描かれます。
実は、個人的に「ペルソナ」や「ファイアーエムブレム」といった日本のゲームが大好きで、こういったアプローチはいわゆるJRPGに強い影響を受けて導入したものなんです。日本のRPGは、キャラクターの関係性をどう構築するのか、そしてその関係性をどう戦術に活かしてゲームを面白くということにかけては、本当に世界一の技術を持っていると思います。
従来の「XCOM」には無かった、こういった要素を新しい試みとして掲げ、「マーベル ミッドナイト・サンズ」に取り入れました。
つまり、「XCOM」に全く新しい視点を組み合わせた上で、「XCOM」と同等の多種多様な決定を主人公の目線で行う。さらに、プラスアルファでキャラクター間の関係性を構築しながら、友情を育むこともできるという点では、まさに「XCOM」以上のものができあがったと思っています。
―― では、ストーリー開発について少しお伺いします。
Firaxis GamesのXCOMチームと言えば、硬派なターンベースストラテジーで知られていますが、個人的には非常に優れたストーリーテラーでもあると考えているんです。
ひねりのある壮大なプロットもさることながら、「XCOM 2 選ばれし者の戦い」の手強い3人の敵ウォーロックとハンター、アサシンは、決して単純な善悪では計れない最高のヴィランでしたし、「XCOM: チーム・キメラ」の個性豊かな主人公達が繰り広げるドラマも素晴らしいものでした。
マーベル作品をベースにした「マーベル ミッドナイト・サンズ」は、これまで以上にストーリーやキャラクターを重視した作品だと思いますが、RPG向けのストーリーやキャラクター開発にあたって顕著な変化はありましたか?
ジェイク・ソロモン氏:実は、「マーベル ミッドナイト・サンズ」全体のストーリーと、ゲームに登場する個々のヒーロー達が抱えているストーリーの一部には、どうしても上手く合致せず、少し対立が起こってしまう部分もありました。
「マーベル ミッドナイト・サンズ」に登場するキャラクター達には、こっちがヒーローであちらが悪魔の軍団だといった分かりやすい善悪の位置づけが存在する一方で、実は個々のキャラクターの視点に立ってみると、ヒーローとヴィランの立ち位置にかかわらず、それぞれが正しいと考えていることに基づいて行動しているんです。
その典型的な例が今回のヴィランとなるリリスです。彼女が悪役であることは明白で、彼女を倒すことができる唯一の存在が、リリスのたった一人の子供である主人公ハンターだという関係性があるわけですが、リリス側の視点に立ってみると、彼女は別に自分のことを悪だとは思っていません。彼女がとる様々な行動は、我が子を愛する気持ち、その愛する子を救うためのものであり、母を止めようと戦う主人公と、互いの絆を取り戻し愛する子を救いたいと考えている(そして我が子が敵だとは考えていない)リリスの軋轢は、交わりようのない非対称な敵意と愛によって構成されている背景があり、ここが本作の大変に面白いところです。
また、ハンターと共に立ち上がってリリスを止めようとする複数のヒーロー達には、当然彼らなりの背景とストーリーがあります。例えば、トニー・スタークは天才的な技術を持つ一方で、今回登場するスーパーナチュラルなタイプの敵との戦いにはまだ不慣れなところがあり、トニーが慣れていない敵とどう対峙していくのかという彼自身のストーリーが描かれていくわけですが、これをゲーム全体のストーリーにどう上手く組み込むか、そういったところは非常に工夫を凝らす必要がありました。
多種多様なヴィランやヒーローそれぞれのストーリーを、プレイヤーがゲーム全体を通じて体験する物語の旅に組み合わせる作業は非常に難しい挑戦でしたが、一人一人のストーリーをしっかりと作り上げ、これを全体に組み込んでいく工程はとても楽しいものでした。
PC | PlayStation 4 | Xbox One | Wii U
PlayStation 3 | Xbox 360 | PS Vita | DS
Mobile | Movie | Rumor
Culture | lolol | Business | Other
RSS feed | About us | Contact us
かたこり( Twitter ):洋ゲー大好きなおっさん。最新FPSから古典RPGまでそつなくこなします。
おこめ( Twitter ):メシが三度のメシより大好きなゲームあんまり知らないおこめ。洋ゲー勉強中。