「Diablo III」の現役Bot利用者がインタビューに登場、Bot/Gold市場の興味深い現状等について語る

2012年7月23日 13:23 by katakori
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「Diablo III」

古くはUltima Online時代から続くオンラインゲーム運営とゴールドファーミング業者やBot利用を含むRMT市場問題ですが、Blizzardの最新作「Diablo III」では遂に公式にリアルマネートレードをサポートし、Bot利用者と運営のいたちごっこは新しいフェーズを迎える状況となっています。

その性質から多くの情報や関係者達が深く地下に潜っていることから、現実的な“今”の状況や動向がほとんど表面化しない所謂“暗部”となっているこのBot界隈ですが、先日BlizzardがBot利用に対応する為のログイン制限と大規模なアカウントBANを発表した状況の中、海外情報サイトの“Atomic MPC”がDiablo IIIで活動する現役Bot利用者Tonto氏へのメールでのインタビューに成功し、市場の構造などを含む興味深い現況の一角が明らかになりました。

今回はこのインタビューから判明した情報の一部をご紹介しますが、内容にはかなり具体的なツール名や団体/サービス名が記されていることから悪用を防ぐ意味合いも兼ねて詳細は一部割愛してあることに加え、当記事は一連の不正利用を推奨するものでは無く、不透明な暗部の現状を別の側面から見るためのものであることをご了承下さい。

「Diablo III」Bot利用に至るまでの経緯

今回インタビューに応じたTonto氏は、これまで6年間に渡って“World of Warcraft”のBotツールを利用した活動を続けており、これまでに中国産のBotを含む複数のBotツールを利用してきたとのこと。

しかしTonto氏は、現在ではWorld of WarcraftのBot利用を行っていないと説明。辞めた理由として、World of WarcraftのBotツールの多くが月額加入料金を必要としていることに加え、2~300程度のBotを同時に実行させる大規模なBot企業の浸透により、個人で競合することが非常に困難な状況になっていると語っています。

Tonto氏が明かすBot/ゴールド市場のレイヤー構造

氏はさらにBot市場界隈に存在するレイヤーと、その構造/構成組織について言及。市場全体が以下の様なタイプのグループに分けられていると説明。所謂ゴールドファーミングを想像した際に真っ先に思い浮かぶ中国の存在が、実情は少し想像と違う形で関係していることを明らかにしています。

  • バイヤー:Bot産のアイテムやゴールドを購入するゲーマー達、彼らの多くはインゲームアイテムよりもゴールドを好んで購入する。
  • ゴールドファーミングサービス/Webサイト:これらの団体は直接ゴールドをファームする事は無く、売買専用のフロントエンドとして機能しており、実際は納入業者と卸売り業者からゴールドを仕入れている。
  • 卸売り業者:Bot利用者やハッカーからゴールドを市場レートよりも安い金額で実際に直接買い受ける業者。ゲーム内でゴールドを買い入れる為に運び屋的な役割としてゲームへログインする。この役割の多くを中国人が担っている。
  • Bot利用者:1~10クライアント程度を実行する個人から、一度に200を超えるBotを併走させる企業まで様々な規模が存在する。実際のBot利用者の多くは中国人ではない。
  • ハッカー:ゲーマー全ての敵。プレイヤーのアカウントをハックし、インゲームの金品を盗む為にフィッシング用のWebサイト開発したり、アンダーグラウンドなコミュニティなどでユーザー名/パスワードリストなどをやり取りする。Authenticatorsを成功させた“Diablo III”においてはほぼ壊滅的な状況とのこと。

Blizzardは「Diablo III」向けの対Botソフトウェア“Warden”を実行している

ここも細部の詳細は省きますが、氏は“Diablo III”のBot利用に関するリスクについて言及、実際にBot利用にはゲームのライセンスやBotのライセンス、実行するハードウェアと管理の時間、パフォーマンスを最大限に発揮させるための手段などかなりの投資が必要だと語り、さらにBlizzardが使用するアンチBotソフトウェア“Warden”(監視者の意)への理解が必要だと説明しています。

この“Warden”はBot検知を可能にするメモリのスキャンを行い、幾つかの段階を経てBot利用のフラグをアカウントに立てており、現在主流のDiablo III向けの(複数の)Botツールはこの“Warden”のメモリーフックを検知するためのトリップワイヤーと呼ばれるプロトコルを用意し、検知の発見と同時に全てのBotツールをシャットダウンし、開発者にWarden検知のクエリーを送信する早期警報システムを搭載しているとのこと。

また、一旦トリップワイヤーが発動すれば、状況がクリアになるまで全ての(この機能を搭載した)Botの利用が制限されるといった情報も記されています。

ゴールドのRMTが公式に開始された現状におけるゴールドバイヤー達の動向

先日行われたメンテナンスを経て、インゲームゴールドのRMTが公式オークションハウス上で開始されたDiablo IIIですが、現在も本作のインゲームゴールドをBot利用者から買い上げるバイヤー達は活動している様子で、現在100万ゴールドあたりのゴールド相場2.1~2.4ドルに対し、1Mあたり1.65ドル程度で“即時支払い”を売りに買い取りを続けているとのこと。

“Diablo III”Bot利用におけるTonto氏の投資と利益

また、氏はBotを実行するPCの時間あたりの電気料金を含めた損益についても言及しており、8台のBotを併走させる時間あたりの投資に対し8倍程度の利益を挙げていると説明。インゲームゴールドの相場が下がった場合にはこれを単にアイテムファームに路線変更するだけだと語っています。

なお、氏はDiablo IIIのローンチ以降、約3000ドル(約23万5000円)を利益として得たと発言しています。

という事で、身元のはっきりしたBot利用者である氏が語った興味深いBot/ゴールドファーミング界隈の実情ですが、Blizzardの公式RMTサポートはこういったイリーガルなコミュニティや市場に大きな転機をもたらしたことは間違い無いと言え、先日告知された大量アカウントBanと理想のゲーム内経済が今後どのように実現されていくのか、まだまだ不毛ないたちごっこが続くことは間違いない気配が見え隠れしますが、Blizzardの舵取りと今後のMMOタイトルの動向に改めて注目が集まるところです。

情報元:Atomic MPC

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