昨日に引き続き、PLAYISMでの『Dear Esther』日本語版配信を記念し、本作のプロデューサーでありシナリオを手掛けたthechineseroomのDan氏と、アート、デザインを担当したRob氏に行った特別インタビュー第2弾をお届けします。
今回は、現在開発中である『AMNESIA: A MACHINE FOR PIGS』や『Everybody’s Gone to the Rapture』の話、また先日話題になったあの質問を投げかけてみました。
Dan:うーん、またRobと一緒に仕事ができたらいいなとは思ってはいますけどね。ゲーム開発に関して、意見や趣味が本当によく合うので。それに、今新しいチームと新作を開発しているのですが、チーム内の何人かは以前にRobとMODを開発した人たちなんです。だから、また一緒に仕事ができたらいいなあと……。ねえ、Rob?
Rob:そうだね、今後また一緒に何か開発したいですね。でも、当面は『Dear Esther』ですね。そろそろMac版が出るし、将来的には他のプラットフォームでの展開も考えています。でも、もう次のアイデアをちょっと考え始めてるんですけどね。
Dan:そうですね、オープンワールドというのは、私たちにとって今までにない素晴らしいチャレンジです。コンセプトの一部としても広大な世界をつくり上げるというのが非常に大切なんですが、そうすることでストーリーの緊張感がなくなる。だから、ストーリー・アークのある直線的でないゲームをつくろうと思っています。要するに何をやっても、どこに行っても、ちゃんとドラマチックな要素があるということ。そのバランスは非常に難しくて、プロセスは非常に長くなりそうです。オープンワールドの中にはインタラクティブな仕掛けもたくさんつくろうと思っていますし。
また、『Dear Esther』は夢のような世界を創ったけれど、『Rapture』では、プレイヤーが現実の世界にいると感じてもらいたいので、トーンとしてはかなり違った作品になると思いますね。
Dan:うーん、そうですね……。ストーリーの前提としては、普通の田舎町に住む普通の人が、どのように黙示録に対応するか、ということでしょうか。ほとんどの人は、そういう出来事を把握することさえ難しいと思う。自分の日常生活に集中していますからね。「今日は学校が休みだけど、私は仕事にいかなとだめだから誰かに子どもを預けないと」とかね。
たいていのゲームは、例えば世界の終わりに1人のヒーローが現れるとか、普通あり得ない出来事のことを描きますよね。でも、今回はそういう世界の終わりに直面した時の、日常の勇敢さや愛、小さい物語に集中したいんだと思います。その小さい物語があるからこそ、私たちは人間なんだと思うんです。
あとは……、以前商店街で子どもとはぐれたことがあったのですが、まあそれは洋服のラックに隠れていただけだったんだけど、本当に一瞬、実際に世界が止まったような感じがして。世界が黙り込んで、地球がもう回らなくなって、時間も止まって、その瞬間、全ては動かなくなる。そういう、世界が終わったと感じたことは皆生きている中で一度くらいはあると思いますが、日常と世界の終わりというアイデアの中で、このゲームは単にその瞬間を掴もうとしているんじゃないか、とも感じています。
Dan:元々私が『Amnesia』の前の『Penumbra』 からのファンで、『Amnesia』もすごく期待していた作品でした。それで、Frictionalの方はうちが2009年に作った『Korsakovia』というホラーMODを気に入っていたみたいで。私は全然知らなかったんですけど。それで、ちょうど『Amnesia』が出る前くらいから話をするようになりました。
当時彼らは新作に力注いでいて、次の『Amnesia』を他のスタジオと組んでリリースすることを検討していたんです。それで、ゲームとかホラーとかストーリーに対する考え方が一致して、じゃあ一緒にやろうかという話になりました。私は大ファンだから、ぜひやりたいと即答しましたけどね。私たちにとって大きなチャレンジだし、重圧もあるけれど、でも、いい調子で進んでいますよ!
Dan:うん、『Amnesia』のMODは実際にいくつかプレイしてみましたよ。でも、ゲーム開発をしていると、ゲームを遊ぶ時間が本当になくって……。もっとやりたいんですけどね。でも、長い長いホラーゲームの歴史があって、それをずっと調べたり学んだりしてきましたから、新しい発見やアイデアはその蓄積から生まれてきますね。
Dan:私が思うのは、何よりその質問自体が少し誤解を招くものだということですね。というのは、最近の日本のゲームをひとまとめにして話す、なんてこと自体がそもそもできないですから。モバイルもあれば、カジュアルゲームもあるし、アプリだってある。一方でAAAの大作ゲームがあって、それはインディーズ系のゲームともまた全く違うでしょう?だから、「最近の日本のゲームは……」なんて発言自体がおかしいと思う。自分の分野はサバイバルゲームとホラーゲームだから、その範囲以外のことについては何も言えないですね。(例の開発者とは違ってね)
それで、そのホラーゲームについて話すなら、日本の昔のホラーゲームが私は本当に大好きなんですが、海外でのシェアを拡大するために、最近は何か大切なものがなくなっているようにも感じます。それは、日本と海外、まあ、はっきり言うとアメリカなんだけど、そことのトーンの違い、文化の相違、ですね。それがあったからこそ、面白かったのになと思います。それが、本当に残念。
私が東ヨーロッパを愛している理由は、まったく異なる文化から生み出された、どことも違うものがあるから。日本にも何回か行ったことがあって、すばらしい国でおもしろい文化と世界観をもっていると思う。開発者はそういうものをゲームの中核に保つべき。例え世界の市場が狙いでもね。
ただ、最近のすべての日本のゲームは、海外のゲームと競争できないというなんて考えは、大雑把すぎて馬鹿げた発言だと思いますね。
Rob:Danと同じですね。「最近の日本のすべてのゲームはこう」っていうのは、了見の狭い発言だと思う。それに、欧米のAAAゲーム業界が続編とシリーズばかりつくっている今、日本のゲームがどうこう、という発言はおかしいと思う。海外のゲームが日本より多彩とも思えないし。
Danが言った通り、それぞれの地域ごとのユニークな要素は、ゲーム作りに活かせると思います。日本のサバイバルホラーは、欧米やハリウッドの典型から外れたところにあるから、大好きですね。確かに、巨大な欧米のゲーム市場でシェアを広げたいという思いはわかるけど、西洋のゲームをまねる必要はない。
Dan:やはり昔のサバイバルホラーゲームですね。全部が全部、本当にすごかった。短いし、完成度が高く、妥協は一切ない。ゲームプレイとストーリーのバランスも最高で、半分くらいはわからないようなものもあるんだけど、それでもとにかくものすごく怖くて心を引きつけられる。そうそう、先日、中古の『バイオハザード2』を見つけたんですよ!急いで家に帰って、PS1を引っ張り出して、一気にクリアしましたよ。あれは本当に素晴らしいゲームです。
これって、日本のゲーム全般にとっておもしろいことだと思う。ハリウッドは、まだまだ日本のホラー映画から影響を受けていますしね。日本は本当にすごいホラーをつくる。どうしてだろうね?もしかしたら、島国だからかもしれないですね。イギリスも伝統的なホラーをつくるのが上手い。
日本から、ハードコアのホラーがもっと出てきてほしいですね。真っ先に買いますよ。
Rob:私は昔の格闘ゲームが大好きです。一番好きなのは1987年にテクノスジャパンがつくった『ダブルドラゴン』。あと、『ファイナルファイト』『ストリートファイター2』などですね。もうちょっと最近の作品だと、やっぱり『バイオハザード2』ですね。なぜかわからないけど、あのゲームはものすごく響く作品で、いつでもプレイできるように、未だに机の中に置いてありますよ。
Dan:恥ずかしながら、初めて知りました……(本当に開発で手いっぱい)。だけど、今から探してみます!
Rob:私も知らなかったから、さっきYouTubeで見てきたよ。好きなタイプのゲームだね、プレイしてみます!
Dan:見たことはあります。でも、私たちが重視しているのはファーストパーソンゲームならではの、直接ゲームの世界に投げ込まれて、その世界に完全に没頭する体験なんですね。プレイヤーは、その世界の空気感の真ん中に立ってほしい。だから、枠の中に入ったゲームというのはあまり好きじゃないんです。ゲーム内のムービーとかもそう。プレイ中に、これは現実とは違う世界だなと少しも感じたくないのです。だから、私たちも没頭できる世界を創り上げたいのですね。
Dan:皆さんありがとう!ゲームをつくったこと、そして今後もつくり続けること、すべては皆さんのためです。今回の『Dear Esther』を楽しんでもらえると、とてもうれしいです。次の作品にもぜひ期待してください。
Rob:この作品が日本の人たちにも楽しんでもらえるなんて、本当にワクワクしています。風の吹きすさぶ孤島での探索を、ぜひ楽しんでください!
■ Dear Esther(日本語字幕版) 本日よりMAC版配信開始
- 開発:thechineseroom
- Windows・MAC用ゲーム
- ジャンル:アドベンチャー
- 配信価格:980円(税込み)
なお、PLAYISMの一周年記念は本日で終了いたします。iPadプレゼントキャンペーンは、本日中に会員登録するだけですので、ぜひこの機会にPLAYISMへお越しください。
doope!読者の皆さま、一週間ありがとうございました!
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