“The Dark Pictures”シリーズや“UNTIL DAWN -惨劇の山荘-”で知られるSupermassive Gamesの新作として、今年4月にアナウンスされ、先日製品版の完成が報じられた期待作「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」ですが、2022年6月10日の発売がいよいよ目前に迫るなか、本作の販売を手がける2Kより本作の序盤1時間程度のコンテンツを収録したデモビルドの提供を受け、悪夢の一夜の始まりを実際に体験することができました。
Supermassive Gamesの新作「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」は、“UNTIL DAWN -惨劇の山荘-”や“The Dark Pictures”シリーズを通じて確立された映画的手法のフォーミュラを踏襲する新作ホラーゲームで、80/90年代のスラッシャー映画にインスパイアされたテーマやハリウッド映画級の超豪華キャスト、膨大な数のエンディングを含む選択と分岐システム、最大8人まで参加できるパーティタイプのオフライン協力プレイと重要な局面で参加者による投票で選択をする*オンラインマルチプレイ、映画として鑑賞できるムービーモードといった要素を特色としています。(*オンラインマルチプレイは、7月8日のアップデートまでに実装される予定です)
という事で、今回は本作のプレビューをご紹介するのですが、「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」の魅力を十分にお伝えするために、まずは非常に変わった作品の出自と強烈な座組について触れさせてください。
この恐ろしい結末を、作ったのは――あなた。
夏の終わり、ニューヨーク州北部の人里離れた森の中、ハケット採石場のキャンプカウンセラーを務めていた若者たちは、サマーキャンプ最後の夜を過ごします。キャンプ場に残されたのは自分たちだけ。彼らを縛る規則はもうありません。この映画のようなスリリングなストーリーの中で、一晩のパーティは先の読めない恐怖の一夜に代わり、9人のキャンプカウンセラーたちの運命はプレイヤーであるあなたの手に委ねられています。あらゆる場面で生死を分ける選択を迫られ、ストーリーはプレイヤーの選択によって様々に分岐していきます。
Supermassive Gamesは、ご存じの通り予てから独創的なホラーアンソロジー“The Dark Pictures”シリーズの開発を継続しており、1年に1本のペースで既に3本のタイトルをリリースし、現在シーズン1の最終章となる第4弾“The Devil in Me”の開発を進めています。
以前に“The Dark Pictures”アンソロジーの展開に言及したSupermassive Gamesは、既に8作分のプロットが存在することを明かしており、スタジオの創設者Pete Samuels氏に至っては、アイデアが全く尽きないことから「誰かが止めるまで新作を作り続ける」と豪語し、今年2月には実際に未発表新作5本分の商標出願が行われ話題となりました。
つまり「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」は、ほぼ1年に1本のペースで思う存分ホラーゲームを作り続けているSupermassive Gamesが、既存のプロジェクトと平行して全く別の完全新作ホラーを手がけるという、どんだけホラー好きなのよ!と驚くほかない、異様な情熱を感じさせるタイトルだと言えます。
しかも「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」は、人里離れた湖畔のサマーキャンプで10代のキャンプカウンセラー達が悪夢の一夜を過ごすという、文字通り絵に描いたような王道の80年代ティーン/スラッシャーホラーであり(※ 本作の舞台自体はスマホが存在する現代です)、幽霊船や魔女裁判、クトゥルフ、古代神話、宇宙人、連続殺人鬼など、様々なサブジャンルを独創的なツイストと共に横断し続けている“The Dark Pictures”アンソロジーとは、はっきりと似て非なる作品でもあります。
また、Supermassiveは「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」が“UNTIL DAWN -惨劇の山荘-”の精神的な後継作品であることも明言しています。つまり、本作は近年の開発を通じて確立した映画的ホラーゲームの手法を活かした集大成的な作品であると同時に、今やすっかりホラーゲームの名門として名を馳せることになったスタジオが満を持して原点回帰を図る、非常に重要な位置づけの1作でもあるわけです。
■ 「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」のキャストが凄い
Supermassiveが得意とするのは、(例えばFrictional作品のように心底肝が冷える実存的/根源的な恐怖ではなく)いわゆるジャンル映画的な、鉄板のお約束でしっかり場を盛り上げる、ある意味で様式美的とも言えるアプローチのホラー表現であり、“The Dark Pictures”と同じく協力プレイや大人数でプレイできるパーティ向けの投票モードなど、みんなでワイワイキャーキャーと楽しめる多彩なモードを用意していることからも分かる通り、ポップコーン片手に惨劇を楽しむ!というのが正しい味わい方でしょう。
そうなると、やはり大事なのが作品そのものの座組とキャスト。本作は、その点でもう半ば勝負が付いているようなもので、(数々の俳優を起用してきた従来の作品に比べても破格と言って間違いない)にわかに信じがたい夢のような豪華キャストが登場します。
“スクリーム”シリーズのデヴィッド・アークエット、みんな大好きランス・ヘンリクセン! 近年は“インシディアス”シリーズのエリーズ役ですっかりお馴染みリン・シェイ、“ツイン・ピークス”のサラ・パーマー役で知られる大女優グレイス・ザブリスキー、極めつけにサム・ライミの実弟テッド・ライミ!
グレイス・ザブリスキーはただ画面に映ってるだけで怖いし、テッド・ライミは怪演ぶりが凄すぎで、もうベテランキャストだけで5万点超えです。
さらに、プレイアブルなキャラクターである9人のティーン達も実にいいですね。モダン・ファミリーのアリエル・ウィンターや名探偵ピカチュウのジャスティス・スミス、イライジャ・ウッド製作のサイコスリラー“ダニエル”で見事に主演を果たしたマイルズ・ロビンス(なんとティム・ロビンスとスーザン・サランドンの息子です)を含む存在感のある豪華キャストもさることながら、性に奔放なクイーンビーや見かけ倒しのイキリ系ジョック、実はモテるナード君、ちょっと背伸びしたいワナビー/ゴス系女子、近年よくみる面倒見の良いアジア人女子など、スクールカーストの縮図のようなティーン同士の関係性やそれぞれの個性が入念に作り上げられていて、お約束の描写をこれでもかと盛り上げてくれます。
なお、本作の日本語版は、日本語字幕・吹き替え音声ありで、相変わらず2Kのローカライズも素晴らしく、洋画の吹き替え感が楽しめるのも嬉しいところ。
本作には、シングルプレイヤーや協力モードを含む様々なゲームモードやリプレイ性を高める多彩な機能、カスタマイズ要素などが用意されているのですが、基本的なゲームプレイは簡単な選択やクイックタイムイベント、一部のパートで利用できる射撃や移動といった、非常にシンプルな要素で構成され、アクセシビリティ周りのオプションも充実していることから、ゲームが苦手な方でも安心して楽しめます。
一方で本作にシビアな操作やアクションはなく、映画的な展開を観ながら、たまにポチポチと選択を行い、パートによってはエリアを探索したり、銃を撃ったりする程度の操作を行うという点で、一見ゲームプレイが退屈なものに思えるかもしれません。
Supermassiveが確立した映画的ホラーゲームのフォーミュラとゲームプレイは、この点で実に絶妙なバランスを作り上げていて、映画では絶対に実現できない、ホラービデオゲームならではの非常にスリリングな体験をもたらしてくれます。
これは、端的に言えば眼前の惨劇にプレイヤーが自ら関与できるというものですが、これがなかなかの曲者で、三人称視点で動く画面内のキャラクターの生殺与奪をプレイヤーが握り、ときおり直接関与する奇妙な一体感が、一人称視点ゲームの主観ともまた異なる(TPSとFPSの中間に位置するような)Supermassive作品ならではの奇妙な没入感を生んでいます。
画面内のキャラクターを常に直接操作しているわけではないので、半ば自律的に行動しているようなキャラクターの生殺与奪を握ることは、小さな罪悪感みたいなものを生じさせ、ちょっとしたクイックタイムイベントや選択でも、思わず酷いことが起こらないよう気をつけたり、入力に失敗しようものなら、ごめんごめんごめん!という、ある種の感情移入や共感性が生まれるのですが(Sawシリーズなんかで、被害者が2人一組にされ、一方の失敗で相手が酷い目にあうような状況と似てますね)、ゲームに慣れてくると途端に意地悪な好奇心が鎌首をもたげ、このクイックタイムイベントに失敗したらどうなるかな……とか、こっちに逃げると危なそうだなとか、まるで自分自身をミルグラム実験にでも掛けているような、操作量の低さや直接介入の少なさが逆説的に生み出す非常にスリリングな心理体験/ゲームプレイは、今のところSupermassive作品ならではの贅沢な体験といって間違いありません。
■ 日本語版の表現規制について
話は変わりますが、ホラーゲームや暴力をテーマに描く作品の経験に大きく影響を与える制限として、表現規制の有無を気にしている方はかなり多いのではないでしょうか。特に本作については、前身である“UNTIL DAWN -惨劇の山荘-”の日本語版が残虐描写を画面全体を暗転させることで制限し、ゲーム性そのものを大きく毀損してしまったことから、「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」についても同様の懸念を抱いている方は少なくないと思います。
公式サイトのFAQにも記載がありますが、念のため2Kに確認を取ったところ、本作には規制表現が確かに存在しており、描写や処理の調整が加えられているものの、前述した長い暗転のような処理はないとのこと。
また、PC版についてもコンソールと同様の調整を適用することが判明しています。
筆者が実際にプレイしてゴア表現を確認したところ、序盤だったこともあり、ゴア描写自体がそう多くなく、規制の有無が気になるようなシーンはありませんでした。ただ、キャラクターが血まみれになるような一部のシーンでは、相当な量の流血が見られ、景気のいい残虐描写が確認できたことを明記しておきます。
本作は一晩の出来事を描いていることから、多くの出来事が夜の暗闇で発生するので、暗転のような極端な処理さえなければ、それほど体験を損なうことなくプレイを楽しむことができるかもしれません。これについては、製品版のレビューをお届けする機会があれば、改めてご紹介したいと思います。
■ 「クアリー ~悪夢のサマーキャンプ」のビジュアルについて
本作は文字通り“プレイする映画”のような作品であるため、ビジュアルの品質が経験の豊かさにかなり影響します。近年のSupermassive作品は、映画的体験を十分に実現する優れたグラフィックスを実現していますが、本作は破格のキャストが象徴する通りAAA規模の完全新作で、過去作に比べてビジュアルがさらに劇的な進化を遂げています。
特に(俳優自身が演じたフルモーションキャプチャーによるものであろう)フェイシャルアニメーションやリッチなスキンシェーダー、オブジェクトやキャラクターモデルの品質、自然な影、恐ろしい夜の暗闇を引き立たせる見事なライティングは何れも極めて高い品質を実現しています。
特にキャラクター開発には数々のマーベル映画で世界最高峰のVFXを提供し続けているプロダクションDigital Domainが参加しており、息を呑むような圧倒的なビジュアルは、それだけでも楽しめる本作の白眉と言えるでしょう。
■ 先行プレイのインプレッション
少々前置きが長くなってしまいましたが、冒頭でもご紹介した通り、今回のデモは冒頭1時間程度のゲームプレイを収録したもの。具体的にはチャプター2とチャプター3がプレイできる日本語版ビルドで、内容的にはいよいよ本格的に酷いことがおこるかな!というあたりまでを楽しむことができました。
ネタバレを避けるため、展開に関する具体的なディテールは伏せますが、前述した通り本作は思わず待ってました!と合いの手を入れたくなるほど、しっかりとしたお約束で楽しませてくれるわけですが、どうやら単なるティーンスラッシャーというわけでもなさそうな気配もあり、今から中盤以降の展開が気になってしょうがありません。
作品のテンションは、決して恐怖一辺倒ではなく、由緒正しい80/90年代ティーンスラッシャーとして、しっかりユーモアも用意されているのが印象的でした。プチNTR鬱展開とか選曲の巧みさとか、色々ご紹介したい面白要素があるんですが、極めつけは、そんなとこで使うなよ!でもちょっと気持ちは分かる……と大爆笑してしまったエイミー・マンの超名曲“Wise Up”のカバーの天才的な使いどころで、豪華キャストと魅力的なキャラクター、幾つかの面白要素だけで余りに取れ高が凄すぎて本当に最高の体験を楽しむことができました。
9人のティーン達がメインの序盤でここまで楽しめたら、ランス・ヘンリクセンやテッド・ライミ、グレイス・ザブリスキー、リン・シェイの出番が本格化したら一体どうなってしまうのか、たぶん嬉しくて卒倒しそうなので、早く製品版をリリースしてくれないでしょうかという気持ちでいっぱいです。6月10日が待ち遠しい!
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