Netflixアニメ「サイバーパンク エッジランナーズ」プレビュー、都市にのみこまれる人間の落ちかたと境界を描く傑作

2022年9月13日 16:00 by katakori
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「Cyberpunk Edgerunners」

『サイバーパンク2077』の世界が舞台となるNetflixのオリジナルアニメとして、2020年6月にアナウンスされ、今年5月のお披露目以来トレーラーや制作舞台裏映像の公開が続いていたファン待望のアニメ「サイバーパンク エッジランナーズ」が本日いよいよ公開されます。

本作の配信開始にあたって、先日Netflixにて3話分のオフライン試写会に参加できたほか、その後全10話を視聴する機会が得られたので、今回は本作がどんな作品に仕上がっていたのか、ネタバレを含まないプレビューをご紹介します。

「サイバーパンク エッジランナーズ」は、『サイバーパンク2077』の本編よりも少し前のナイトシティを舞台に、サイバーパンクの道を歩むことになった少年デイビッド・マルティネスとその仲間達の生きざまを描く全10話のアニメシリーズ。アニメーションの制作は『キルラキル』や『リトルウィッチアカデミア』、『プロメア』でお馴染みTRIGGERが担当していますが、スタジオのファンにとっては、今石洋之氏が監督を、吉成曜氏がキャラクターデザインを務める、ありそうで実はこれまでになかった驚きの座組、そして15歳以上を対象とする大人向けのレーティングによって暴力や性的な描写に歯止めが掛からない、アクセル全開のアプローチが必見の作品となっています。

これについては、言葉であれこれ説明するよりも、先日公開されたハイテンションすぎる最終予告編を見てもらうのが最もわかりやすいでしょう。

参考:「サイバーパンク エッジランナーズ」の最終予告編

一方、『サイバーパンク2077』や原作TRPGの熱心なファンにとっては、「サイバーパンク エッジランナーズ」が本当に“サイバーパンク”な作品に仕上がっているのか?というのがやはり気になるところでしょう。(※ 当記事における“サイバーパンク”とは、ジャンルとしてのサイバーパンクではなく、マイク・ポンスミス氏が生んだテーブルトークRPGで、2077の原作にあたる“サイバーパンク”シリーズを指しています)

筆者は日頃から2077と原作TRPGのことばかり考えているハードコア寄りの“サイバーパンク”ファンだと自認していますが、「サイバーパンク エッジランナーズ」を見てまず驚いたのは、本作が『サイバーパンク2077』どころか、原作の『サイバーパンク2.0.2.0.』にまで踏み込む本物の“サイバーパンク”作品だったことです。

筆者は当サイトの運営にあたって、予てからビデオゲーム原作のアニメや実写化作品をほぼ網羅的にチェックしていますが、「サイバーパンク エッジランナーズ」は今も世にあふれかえる添え物のような、ゲーム原作のなまぬるい映像作品ではなく、TRIGGERの、ひいては今石監督の極めて挑戦的な新作であると同時に、“サイバーパンク”シリーズの本質とエッジを見事に、しかも容赦なく捉えることに成功した傑作といって間違いありません。

ここから、ネタバレを含まない本作の見所を幾つかご紹介しますが、まだ『サイバーパンク2077』をプレイしていない方に向けて一つお伝えしておくと、「サイバーパンク エッジランナーズ」は『サイバーパンク2077』と“サイバーパンク”シリーズの入門にも最適なアニメで、ゲームをプレイしておく全く必要はありません。

むしろ、「サイバーパンク エッジランナーズ」を見て『サイバーパンク2077』をプレイすれば、ここがアニメに描かれたいたあそこか!○○のアレがこんなところに!、こいつがあの!!と、既存のプレイヤーでは決して味わえない新鮮な体験が待ち受けていることうけあいです。(正直かなりうらやましい……)

CD PROJEKT REDとTRIGGERの激突が生んだマジック、あるいは異常な化学反応から生じたアノマリー

「Cyberpunk Edgerunners」

2020年6月にTRIGGERとの提携を含むアニメ化がアナウンスされた際は、驚きと期待、喜びのほうが勝っていたのですが、初のティザー映像がお披露目された今年6月以降は、TRIGGERのアニメーションと“サイバーパンク”がどう融合するのか、正直なところ全く予想が付かず、僅かな懸念を抱いていました。

端的に言えば、これはグレンラガンやキルラキル、プロメアに象徴される今石監督作品ならではのほとばしるアッパー系のポジティブさや、力で理屈をねじ伏せる圧倒的な多幸感と、絶対に事態が改善したり希望が生まれたりはしない“サイバーパンク”世界の恒久的な地獄が、水と油のように反発しあうのではないかという懸念です。

もちろん、これは無事杞憂に終わったわけですが、ただ上手い落としどころが見つかって良かったとう類いの着地ではなく、結果的に「サイバーパンク エッジランナーズ」にはこんな懸念を軽く蹴っ飛ばす、とんでもないマジックが宿る作品に仕上がっています。

つまり、前述した今石監督/TRIGGER作品の魅力が全く減じられないまま、(とんでもなくダークなものを要求したであろう)CD PROJEKT REDと“サイバーパンク”世界が互いにアクセル全開で正面衝突することによって、アッパーさと外連味溢れるアクション、見事なスタイリッシュさを維持したまま、新しい地獄が生まれてしまっているのですが、これが全く予想外の味わいで、なんというか、怖いものを単に怖いものとして描くよりもはるかに恐ろしい、本当にヤバい何かに変異しているのです。

『サイバーパンク2077』のファンであれば、すでにご存じの通り、本編のアフターライフにはアニメの主人公デイビッドの名を冠したカクテルが存在していますし、アニメの予告編では「どう生きるかじゃない、どう死ぬかだ」というコピーが大写しになることからも分かる通り、当然本作の展開がろくな事にならないのはもう確定的に決まっているわけです。

「サイバーパンク エッジランナーズ」は、ナイトシティで暮らす特別ではない人間たちがどう落ちていくのか、どうやって人間性の境界を踏み越えるのか、そしてどう街にのみこまれてしまうのか、そのさまを丹念に描くことで(前述のコピーとは)逆説的に“どう生きるのか”を鮮烈に描いているのですが、本作のマジックは、まさにこの落ちていくこととアッパーさの融合に宿っていて、今まさに落下しているのか、それとも事態が上向いているのか全く分からないままの全力疾走が続く大変な体験は、ある種の事故とも言えるような驚きの連続に充ち満ちています。

筆者は、これがTRIGGERと今石監督の新境地と呼べるのか、それとも互いに相容れない成分が強い圧力によって引き起こした異常な化学反応なのか、今も判断が付かないままですが、CD PROJEKT REDがアニメーション製作のパートナーにTRIGGERを選んだことは驚くべき慧眼だったと言わざるを得ません。

やっぱり「ナイトシティ」の存在感が凄い

「Cyberpunk Edgerunners」

前述の魅力とはまた別の驚きとして、ゲームで慣れ親しんだ大都市“ナイトシティ”が文字通り“そのまま”アニメに登場することが挙げられます。

これは、「サイバーパンク エッジランナーズ」の制作にあたって、CD PROJEKT REDが移動可能なナイトシティの3D環境を用意し、TRIGGERがゲーム内でロケハンを行ったことによるものですが、何度も行き来した馴染み深いロケーションでアニメの出来事が進行していくさまは、これまでのゲーム原作アニメや映画、実写ドラマには見られなかった非常に高い没入間を与えてくれます。

また、ゲームで使われたものと同じサウンドやUI、HUDがアニメの各所で使用されている効果も絶大で、『サイバーパンク2077』をプレイした感覚のままアニメが見られるのもファンにとっては嬉しいところ。

こういった効果は、『サイバーパンク2077』における“ナイトシティ”の圧倒的な作り込みがあってこそ実現したもので、「サイバーパンク エッジランナーズ」においても、やはり“ナイトシティ”がもう一人の主人公なんだと十分に納得させるだけの存在感と魔力を存分に発揮しています。

「サイバーパンク」的ディテールが凄い

「Cyberpunk Edgerunners」

さきほどもちらりと言及しましたが、「サイバーパンク エッジランナーズ」のさらなる驚きに、単なるうわべだけの飾りではない『サイバーパンク2077』と原作TRPG『サイバーパンク2.0.2.0.』の説得力に満ちたディテールの数々があります。

“鋼(メタル)は肉(ミート)に優る”や“パンクにサイバーをたたきこめ”、“エッジを踏み越える”、“機装化精神病”といった2020準拠のパワーワードが踊るトレーラーにもその片鱗は見えていたのですが、フタをあけてみれば、マックス・タックとサイバーサイコが死闘を繰り広げ、トラウマ・チームが救う命の選別を淡々と行い、インプラントによってサイバーサイコシスが進行し、決して越えられない格差が眼前に立ちはだかる本物のサイバーパンク世界が「サイバーパンク エッジランナーズ」には息づいています。

参考:「サイバーパンク エッジランナーズ」のTRIGGER編集版トレーラー

加えて、アニメならではのサイバーパンク的見所も多くあります。サイバーサイコ化やサイバーサイコシスにとてもフレッシュなビジュアル的解釈と描写が用意されていて、サイバーサイコのヤバさが一目で直感的に分かりすぎる必見の演出を筆頭に、サイバーサイコシスが進むサイバーパンクの心象風景、境界を越えるその瞬間、人間性コストの抑え方、キャラクター毎に異なるEMP値の解釈、サンデヴィスタンの発動時などに顕著なビデオゲームのフィニッシュムーブ的リプレイ演出、位相ベースのネット空間に関する解釈と描写、装着者のプロポーションを劇的に変化させるようなインプラントの存在などなど、本作にはこれまで想像で補っていた原作やゲームの知識をビジュアルで拡張・補足してくれるような素晴らしいディテールが数多く存在しています。TRIGGER恐るべし!

こういったアニメならではの演出には、ゲーム側にも導入されないかなとさえ思わせるもの幾つかあり、勝手ながら今回のアニメ化が今後のビデオゲームシリーズに新しいシナジーをもたらしはしないかと心から期待せずにはいられません。

TRIGGERのキャラクター力が凄い

「Cyberpunk Edgerunners」
本作のMVPキャラクター“レベッカ”ちゃん

そして、「サイバーパンク エッジランナーズ」を忘れがたい経験へと昇華させているのが、やはり吉成曜氏がデザインを手がけた魅力的なキャラクターたちでしょう。

主人公チームの愛すべき面々はいわずもがな、本当に素晴らしい登場人物たちが熱いドラマを見せてくれるわけですが、脇役にも見事な存在感の特濃キャラクターたちが揃っています。とりわけ、安原義人氏がボイスを担当しているとある変人やジャンカルロ・エスポジートが海外版の吹き替えを担当したファラデー(英語音声・日本語字幕もおすすめ!)が強烈なオーラを放っていて必見です。

地獄のボーイミーツガールが一体どんな結末を迎えるのか、『サイバーパンク2077』ファンは是非Netflixで「サイバーパンク エッジランナーズ」をチェックしてください。

また、本作の制作と誕生について、CD PROJEKT REDのお馴染み本間覚氏とエルダー爽氏にねほりはほり聞いたインタビューを後日改めてご紹介しますので、こちらもお楽しみに。

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