近年しばしば産業の問題として伝えられる開発費の肥大化や、大手パブリッシャーが進める合理化により、注目プロジェクトが頓挫する様子を目にする機会が増えていましたが、本日Whatculture!が“キャンセルされた偉大なビデオゲーム作品10選”と題し、“ダーティ・ハリー”やEAがスピルバーグ監督とタッグを組みDoug Church氏も開発に参加していた“LMNO”、発禁的な意味で明らかに駄目な“Thrill Kill”など、興味深い10本のキャンセルタイトルを紹介しました。
という事で、今回は本当に惜しかったタイトルから、はっきりとダメ臭が漂うぼんくらゲームまで、バリエーション豊かなキャンセル作品が並ぶ10本の映像をまとめてご紹介します。
かつてWarner Bros.の下で、Foundation 9 Entertainmentが開発を進めていた映画“ダーティ・ハリー”1作目と2作目のゲーム化タイトル「Dirty Harry」ですが、2007年の3月に30人規模のレイオフが敢行され、その後結局キャンセルとなってしまいました。
このレイオフは現在のDouble Helix Games設立にあたって発生したThe CollectiveとShiny Entertainment、Foundation 9の合併に絡んだもので、この再編がその後“Silent Hill: Homecoming”や“Front Mission Evolved”、そして今年リリースされた“Battleship”といった災厄を生むことになったと考えると非常に業の深い作品だと言えそうです。
現在、自ら起ち上げたLionhead Studiosを飛び出し、カナダのスタートアップ22Cansでインディー開発に乗り出したお馴染みピーター・モリニュー、PopulousやSyndicate、Black & Whiteといった作品に顕著な強い作家性を特色とするカリスマデザイナーとして、今もなお世界中のファンと開発者から愛されています。
そんな華やかな側面にスポットが当てられる機会の多いモリニューですが、真の魅力は饒舌かつ情熱的で優柔不断、呆れるほどのビッグマウスと大風呂敷を披露した上、作品が思うように仕上がらなかった時にはがっくり落ち込んだ様子をメディアにさえ隠さず、齢50を越えた今、偽モリニューのクリエイティブを羨みスタジオを1人飛び出す、まるでゲームが好きでたまらない中学生のような愛すべき人間性にあると言えます。
という事で、2本目のキャンセルタイトルは、モリニューが2004年頃に大志を抱き開発に望んだアクションアドベンチャー「B.C.」です。今作はリアルな生態系を有する原始時代を舞台にした作品でしたが、LionheadのサテライトであるIntrepid Computerが手掛けた開発のクオリティに満足できず、自らキャンセルを宣言することとなりました。
3本目はかつてParadox Development時代のMidwayが開発を手掛けたPlayStation用の3D格闘タイトル「Thrill Kill」です。血統としてはMortal Kombatシリーズにほど近い、由緒ある出の作品だと言えますが、プレイ映像を見ればキャンセルされた理由は言わずもがなといったところでしょうか。
キャンセルにも関わらずこういったプレイ映像が存在する理由は、本作のキャンセルに反対した開発者がほぼ完成版のデータを流出させ、それが広範囲に拡散したことにあり、現在でも比較的容易にプレイ可能なキャンセルタイトルという珍しいポジションの作品として知られています。
なお、本作のキャラクター達は、かつての殺人鬼が精神病棟に似た世界観の地獄に墜ち、内的な精神の闇が肉体な特徴として具現化された存在で、女神が開催した格闘トーナメントの優勝賞品“輪廻転生”を目指し、夢も希望もない戦いを繰り広げています。
イラク戦争を舞台にしたFPSタイトルとしてAtomic Gamesが開発を担当し、コナミが発売を予定していた「Six Days in Fallujah」ですが、2009年当時まだ世界的にナイーブな問題だったイラク戦争を描くことは好ましくないとの批判がイギリスのメディアから拡がり、その後ひっそりとキャンセルされてしまいました。
詳細が気になる方は以下の過去記事をご確認下さい。
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デンマークのデベロッパDeadline Gamesが開発を進めていたカバーベースのCo-op対応TPSアクション「Faith and a .45」は、世界恐慌を舞台にアウトローのカップルを主人公に悪の石油業者と戦うというもので、2008年にひっそりとアナウンスされ、2009年にひっそりとキャンセルされた不幸な作品です。
映像には意外とモダンかつベタベタなシネマティックなTPSが確認でき、パートナーの救出時に人工呼吸を行う本作の仕様に出なくて良かったような、そうでもないような、実に微妙な気持ちにさせるキャンセルタイトル特有のオーラを漂わせています。
当サイトでも何度かご紹介した「Pirates of the Caribbean: Armada of the Damned」は、ディズニー傘下のPropaganda Gamesが開発を手掛けた映画パイレーツ・オブ・カリビアンのオープンワールドゲームで、意欲的なプレイ要素と美しい表現で注目を集めたものの、ディズニーのよる大規模なレイオフの嵐に巻き込まれ、当時並行して開発中だった“Tron: Evolution”に集中するべくキャンセルとなってしまいました。
その後“Tron: Evolution”はセールスも評価も振るわず、Evolutionローンチの翌月にスタジオが閉鎖されるという見るも無惨な結果となったのも記憶に新しいところでしょうか。
「Eight Days」は2006年のE3で発表され大きな話題を呼んだ注目作品でしたが、2008年に残念ながらプロジェクトの中止が発表されお蔵入りとなってしまいました。
モダンでど派手なシネマティクスや当時台頭しつつあったQTEの採用なども話題となった本作ですが、プロジェクトキャンセル後は多くのアートワークやプレイ映像が流出し、キャンセルとその高いクオリティを惜しむ声が度々報じらています。(参考:過去記事)
2009年頃にEAがダンジョン・キーパーやポピュラス、シンジケート(※ 今年Starbreeze Studiosの新作として復活を果たした)、テーマパーク、ウイングコマンダーの商標登録を行い、かつてのクラシックを今に復活させると強調していた時期がありましたが、このリメイク群にはメガドライブ時代のバイオレンスなバイクレース「Road Rash」もその名を連ねていました。
その後、開発初期段階の映像やプロデューサーのインタビューも登場し、モーションキャプチャーの為に1万ドルのドゥカティをクラッシュさせたといった景気の良い話が伝えられましたが、その後徐々に続報が少なくなり、今ではぱったりと情報が途絶える状況となっています。
「Sadness」はポーランドのデベロッパNibrisが4年に渡って開発を進めていたモーションコントロールを多様したWii向けのサバイバルホラー作品で、難航する開発とビジネス的な問題が重なり、2010年2月のスタジオ閉鎖に併せてプロジェクトが中止となりました。
本作は第1次世界大戦以前のウクライナを舞台に、光を失った息子を守りながら次第に悪化する状況とスラブの神話に基づいた敵達に対峙する女性主人公の物語を描いたもので、トレーラー映像には初期モーションコントロール作品特有の恥ずかしいプレイの様子が収録されており、やはりキャンセルタイトル特有の悲哀に満ちた気配をたっぷりと漂わせています。
「LMNO」は、2005年に発表されたEAとスティーブン・スピルバーグ監督の提携に含まれていたSFテーマの大作で、ngmocoの共同創設者でもあるベテランNeil Young氏や、かつてLooking GlassやEidosで活躍し、現在はValveで何らかのプロジェクトを進めているカリスマDoug Church氏などが開発に参加する、ドリームチームに相応しい作品として注目を集めていました。
本作は映像にも姿を見せるAI制御の宇宙人キャラクター“Eve”との逃亡にスポットを当てた作品で、パルクールをフィーチャーしたMirror’s Edge的なゲーム性を特徴としていたことが伝えられてます。
残念ながらスピルバーグ監督との提携で登場したBoom Bloxの不振もあり、日の目を見ることがなかったLMNOですが、Valveに移籍したDoug Church氏絡みのプロジェクトとも噂されるアートワークにはLMNOの遺伝子が感じられるイメージが確認されており、氏の動向と併せて続報が待たれる状況が続いています。(参考:過去記事)
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