圧倒的な作り込みから気になるストーリー要素まで、「サイバーパンク2077」のあれこれを聞いたCD PROJEKT RED開発者インタビュー

2019年9月17日 16:40 by katakori
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「Cyberpunk 2077」

先ほど、TGS会場でお披露目された日本語吹き替え版デモのレポートをご紹介した期待作「サイバーパンク2077」ですが、会場ではCD PROJEKT REDのレベルデザイナーMax Pears氏とジャパン・カントリーマネージャー本間覚氏に話を聞くことができました。

という事で、今回はナイトシティの異様な作り込みをはじめ、デモで非常に印象的だった破壊描写、未だ謎の多いストーリー要素等について、気になるあれこれをたっぷりと聞いた開発者インタビューをご紹介します。

参考:ハンズオンデモのハイライトをまとめたディープダイブビデオ

―― “Cyberpunk 2.0.2.0.”のコアルールを完全に再現するような発表当初の野心的な構想から、本格的なお披露目以降に分かったプレイヤー向けのロールのまとめ方なんかを含めた現在の変化を見るに、現実的で適切なビデオゲームとしての着地点が明らかになってきたように思います。

ところが今回のデモを見ると、恐らくオミットされるだろうなと思っていた多言語社会の表現(参考:2013年3月の過去記事)、全てのキャラクターがそれぞれの母国語で喋りながら、プレイヤーのインプラントで翻訳処理を機能的に行うという演出、ビデオゲームが抱えるビリーバビリティの境界を押しあげるアイデアながら、考えただけで目眩がするような遠大なアイデアを本当に実現したんだ!と、まずそこに驚きました。

さらに数秒考えたあと、今眼前にあるものが、これが多言語環境の複雑な環境を驚くほど自然な形でローカライズしたビルドであることに改めて気が付き、これは大変なものが出てきたぞと、心から驚嘆しました。

マックス・ピアース氏・本間氏:ありがとうございます。

―― 同じように感じたのが、ナイトシティの街そのものですね。ウィッチャー3のノヴィグラドが、タイルセットやモジュール感というか、いわゆるビデオゲーム的なコピペや自動生成っぽさを全く感じさせない生き生きとした街で、本当に驚いたわけですが、今回見たナイトシティはそれどころの話ではない。全く規模が違うと。ノヴィグラドについては、カオス理論的な現実っぽさを出すために全てを手作業で作り上げたと聞きました。ナイトシティについてはどうでしょう。自動生成技術なんかを併用していますか?

マックス氏:確かに、もちろん今回は規模が違うので、そういった要素がないとは言い切れませんが、我々はスタジオの哲学として、ナイトシティを構築していくにあたって、どこにもコピペしたような形跡が見られず、手作り感に溢れるような環境というものを実現するために、技術的にいろいろな取り組みを行っていますね。

そういった工夫を重ねて、ナイトシティが退屈な街に見えないように、異なる6つの地域を作り上げる。背景チームはこれを命題としてやっていると、自信を持って言えます。

―― それは見事に達成されていると感じました。本当に驚くべき仕上がりだと思います。

マックス氏:そう思って頂くことはとてもありがたいです。そう感じてもらうために、開発上でいろいろな苦労をしているんですが、その成果が今回のデモにしっかり出ているのでよかったと思いますね。

―― マックスさんは、“The Division”のレベル環境にも取り組んでいましたよね。Massiveは都市作りに自動生成技術をかなり活用していましたが、レベルデザインのアプローチはやはり大きく違うものですか?

マックス氏:“The Division”については、そもそも我々が開発しているゲームとは大きく方向性が違っていて、“The Division”はどちらかというとMMO的な要素が強く、レベル環境に求められるのは、例えどんな場所であっても、まずシューティングがきっちりと成立することでした。

一方で、我々がナイトシティに求めていることは、例えば路地に入っていったら、なんか新しいクエストが始まったぞみたいな、お話に紐づけること、つまりナラティブ的なモノづくりとしてのアプローチです。

やはりそれぞれのゲーム毎に根本的な違いがあって、それはレベルデザインにも大きく反映されると考えています。

―― 今のナイトシティを見ると、その作業量はとんでもない規模じゃないですか?

マックス氏:そうですね。もちろん作業量は途方もない規模ですが、幸い素晴らしい人材が集まるチームに恵まれています。大きなチャレンジの1つをご紹介すると、先ほどのデモの中に登場したショッピングモールの跡地には、ゲームプレイのアプローチが沢山存在していて、移動についてもプレイによってルートが全然違っていたりするわけですが、どのルートを進んでも、きちんと話が繋がるようにデザインしないといけない、もしくはそもそもショッピングモールに入らないという選択肢もありうるわけです。そういった選択を全て破綻することなく実現可能にするために、チームが一丸となってデザインに取り組んでいます。

―― レベルデザインといえば、今日のデモを見ると思いのほか環境の破壊要素が大きいですね。

マックス氏:やはり我々はナイトシティを生きた都市として描きたいと思っているので、その中でプレイヤーがそこを訪れたという形跡が残ったほうがよりリアルに感じられるだろうという考え方から、柱や建物の破損、小さなオブジェクトの破壊といった要素を実装しています。

昨年のE3デモに登場したロイスとの戦闘シーンは、廃工場が舞台となっていて、車が落ちてきたりと、環境を活用して戦うシーンがありましたが、そういった要素もよりリアルを追求するためにレベルデザイン的な観点から取り組んでいる仕掛けの1つですね。

―― そこもレベルデザインの範疇に入るわけですか。

マックス氏:基本的にはレベルデザインの範疇なんですが、もちろんクエストデザイナーからこういった演出をしたいと要望があった場合に、じゃあこういうものを用意して、ここに配置してという協議を重ねて進めていくようなアプローチを取っています。

―― デモの破壊表現は、パーティクルでエフェクト的に済ますような処理ではなく、ジオメトリが動的に壊れているように見えました。例えばショッピングモールの広間にイルカの像があって、大型の銃を掃射した際に、イルカが壊れて内側の作りが露出していましたね。サスカッチ戦では、ばらばらになったパネルの欠片が落ちていましたが、あれはパーシステンス(状態を維持するよう)なものなんですか。

マックス氏:現時点で確実な答えを出すことはできませんが、あくまで我々の目標として、例えば一度全てを破壊した後、再びそこを訪れた際に、何もなかったように全ての物が復活しているというのは、ストーリーとして成立しませんし、そういった影響がなるべく破綻のないように維持できればと考えています。ただ、これがどこまで再現されるかどうか、現時点ではわかりません。

―― もう1つ、レベルデザイン的な側面でお伺いします。先日、ゲームのほぼ全てを一人称視点で表現する決定が報じられました。膨大な検証や検討を重ねた結果として下されたであろう野心的な決定とその成果をとても楽しみにしていて、今日はその成果の一端と非常に高い没入感をはっきりと感じることができましたが、レベルデザイン的に三人称と一人称で大きく違う点はありますか。

マックス氏:これは本作に限った話ではありませんが、例えば“The Division”と本作を比較したとき、サードパーソンの時はカメラの向きを変えるとより多くの情報が得られますが、一人称視点では情報量がかなり絞られます。同じカメラの移動においても、三人称と一人称で見えてくる情報が全く違うので、一人称で見た場合に必要な情報がきちんと存在し、最低限しっかり表示されることが重要になります。

これは、UIやオブジェクトの配置だけに限らず、三人称と一人称ではゲーム中のあらゆる要素をレベルデザイン的な観点から、見方を変えていかないといけない、そういう所が非常に面白いところですね。

―― 一人称といえば、“サイバーパンク2077”の性的なシーンはどうでしょうか。

マックス氏:これを具体的にどう演出するか、ということを現時点で話すことはちょっと難しいです。楽しみにしておいてください。

―― では、話を1度ストーリーの方に戻したいと思います。最初に発表されたティザートレーラーにサイバーサイコシスの女性とMAX-TACのエージェントが出てきましたが、彼らの要素は現在も残っていますか?

マックス氏:かなり前のティザーなので、あの要素が完全に直結するとは明確に答えられませんが、大きく変化した点もあり、現在も残っている部分もあって、全てがそのままというわけではありません。

―― そういえば、いよいよオルト・カニンガムが重要な人物として登場してきましたが、前述のティザーには街中にオルトのポスターが貼られていましたね。ジョニーは“Cyberpunk”世界において誰もが知る超有名人なわけですが、かつて凄腕のハッカーだった彼女は作品の中で広く知られている存在なんでしょうか。

マックス氏:よく見つけましたね(笑)。オルト・カニンガムは、この東京ゲームショウ実機デモでも言及されるキャラクターで、非常に重要な存在です。なので、私から又聞きした話よりも、実際にゲームの中で確認してもらったほうがいいですね。

―― わかりました!ところで今日のデモで、デショーンが企業警察の事を喋っていました。NCPD、ナイトシティ市警察は2077年にも存在していますか?

本間:それは自分が答えてしまいますが、もちろんNCPDは存在します。あの場面でどうしてNCPDではなく企業警察が出てきているかは、ゲームをプレイしていただくとわかります。企業がそれぞれにプライベートポリスを持っている一方で、公権力としてのNCPDも存在しています。

―― では、クラスについてお伺いします。発表当初は全てのロールがプレイアブルになるよう計画していたと思いますが、本格的なお披露目以降のデモを見ると、しっかりビデオゲームとして機能するように、各ロールを色々な登場人物に象徴させるような作りにまとめていますね。

ジョニーがロッカーボーイ、デショーンがフィクサー、コーポレートはメレディス、ネットランナー達、街にはリパードクやメドテクの町医者がいて、“V”本人にはテッキーとネットランナーとソロがプレイスタイルに組み込まれています。そうすると、メディアとノーマッド、コップが現時点では見当たりません。

これは今後、ゲームプレイ的な要素として“V”のプレイスタイルに盛り込まれるのか、それともこれらを象徴する新たなキャラクターがでてくるのか、どうでしょうか。

マックス氏:現状で発表されていない、もしくはゲームの中にまだ登場していないロールのことを忘れているわけではもちろんありません。1つ例を挙げると、ノーマッドはライフパスの1つに含まれていることから、自ずとその出自に絡んでノーマッドに関係する話が描かれるかもしれません。

―― ノーマッド達が暮らすバッドランズでプレイできるという話も聞いています。

マックス氏:今回はノーマッドとバッドランズの関係を明確にすることは避けておきましょう。これもいずれ自ずと関わってくることになるでしょうね。

―― そういえば、ブレインダンスについてはどうでしょうか。以前のトレーラーでは子供が遊んでいたようですが。

本間氏:あれはブレインダンスじゃないんです。あれは確か原作の“Cyberpunk 2020”に出てくるセガタリのVRシステムですね。

マックス氏:なので、まだブレインダンスはお見せしてないんです。当初の計画通りゲームには登場する予定で、一緒に来ている開発者がBDに詳しいんですが、ここにいないですね。

(注記:セガタリ/SegAtariは東京に本社を置く世界最大のゲームメーカーで、兵器メーカー向けのVRシステムや制御用ソフトウェアも提供している。2026年以降は“Segotari”に社名を改め新型のVRゲームシステムを販売している。一方のブレインダンスは、匂いや感覚まで他者の経験を神経レベルで体感できる没入型の完全な仮想現実で、中毒性の高いエンターテインメントとして様々なコンテンツが流通している)

―― ではエンジンについてお伺いします。今日のデモはリアルタイムレイトレーシングが適用済みで、見事なライティングが印象的でした。オブジェクトの数も同じ世代のウィッチャー3からかなり増えているように見えます。この他にREDengine 4で大きく改善された点があれば教えて下さい。

マックス氏:大きく分けて2つあります。1つ目はやはりライティングですね。2つ目はシーンを構築するためのスクリプティングです。

例えば、本作に銃が置いてあれば、拾って撃てないといけません。ウィッチャーとは違って、インタラクティブな要素がより強くなっているので、単に話を聞いていて、選択肢を選ぶだけではなく、そのシーンで色々なルートを進み、それぞれのアプローチでしっかり終わりに近づけるようなスクリプティング、シーン構成、そういった要素の取り回しがREDengine 4でより改善されました。

―― パフォーマンス的な最適化についてはどうでしょう。

マックス氏:CD PROJEKT REDは、3本のウィッチャー開発を通じて、特にコンソール版を擁したウィッチャー2以降は複数のプラットフォームで最適化の経験を重ねてきました。この全てがREDengine 4に集約されています。

当然のことですが、我々は全てのプラットフォームできちんとしたパフォーマンスが出るように最大限の努力をしています。

―― 個人的にCD PROJEKT RED作品の大好きな要素の1つに、初代ウィッチャーの合コンやエロシーン、愛しいイオルヴェスの大仰な登場シーンなんかに顕著な、思わず笑ってしまうシーンや独特なユーモアがあります。“サイバーパンク2077”は、以前にも増してダークでシリアスで重い、壮大な物語を描く作品のように見えますが、笑えるところはあるでしょうか。

マックス氏:もちろん、我々もユーモアセンスを忘れたわけではないので、そういった要素を入れていきたいと思っています。

例えば、ウィッチャー3も全体的にとてもダークで重厚な物語だったと思いますが、その中にも面白く笑える要素がいくつかありましたね。我々は、予てからストーリーテリングがもっとも重要だと考えているので、ストーリーテリングを行う上で、そういったユーモアが求められるようなシーンというのも当然でてくると思いますし、そういった機会があればもちろん入れていきたいと考えています。全ては、ストーリー自体の要求を満たすために、必要となる要素を用意していくということになります。

―― なるほど!楽しみにしておきます。ジョニーが面白いことをすれば凄く楽しいことになりそうですね(笑)。

マックス氏:ジョニーは面白い人ですからね(笑)、楽しみですね。

参考:文中に言及のあったティザートレーラー、43秒地点にオルトのポスターが確認できる
人間性を失ったサイバーサイコシスの女性とNCPDの対サイコ部隊“MAX-TAC”に所属するエージェントの対峙が描かれた
「Cyberpunk 2077」
参考:筆者がブレインダンスと勘違いしていたSegotariのVRシステム

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