「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII」レビュー、大胆な再構成でシリーズ史上最大の変化をもたらす万人向けの新スタンダード

2025年3月6日 11:49 by katakori
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「Civilization VII」

2016年10月に発売されたシリーズ6作目『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』から、実に8年以上の歳月を経て、シリーズ最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』(Sid Meier’s Civilization VII)が遂に世界的なローンチを果たしました。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、数千年に及ぶ人類と文明の壮大な歴史を描く4X系ターン制ストラテジーゲームの金字塔として、世界的な人気を博してきた『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズの7作目に当たるナンバリングタイトル。開発は伝説的なゲームデザイナー、シド・マイヤー氏率いる名門“Firaxis Games”、対応プラットフォームはPS4とPS5、Xbox One、Xbox Series X|S、Nintendo Switch、PC、Macで、本作はPCとコンソール版の同時ローンチを実現するシリーズ初のナンバリングタイトルでもあります。

本稿では、2Kより製品版に近いビルドの提供を受け、たっぷりと最新作をプレイして分かった本作の魅力と大きな変化に焦点を当てるレビューをご紹介。

とかく専門的になりがちな細部のあれこれは一旦置いておいて、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』には、35年近いシリーズの長い歴史の中で、過去最大級と言っても過言ではない、極めて重大な変化が盛り込まれ、この新基軸によって本作は真の意味で“誰もが楽しめる”シヴィライゼーションへと進化を果たしました。

“時代”と呼ばれる新要素がこのゲームチェンジャーとなるわけですが、まずはこれまで『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズに興味はあれど触れてこなかった方、或いは一度はまったら抜けられない劇薬と聞いて手を出してはみたものの、最後までプレイできず断念してしまった方、過去作が難しいと感じた方など、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズの熱狂的な盛り上がりに乗り切れなかったゲーマーにこそ知って欲しい、最新作のプレイしやすさと変化の背景を先にご紹介していきましょう。

参考:『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のゲームプレイトレーラー

シリーズの新しい遊び方とダイナミックな展開をもたらす「時代」

最初に“誰でも楽しめる”最新作と掲げたことは、実のところ過去作が“必ずしも万人が楽しめるというわけでもなかった”ことの裏返しでもあります。

主な要因は、難しそうな印象に由来するハードルの高さや、ゲームが進むにつれて複雑化するルールと多岐に渡る目標、同じく進行に伴い増大する操作量や管理、対応しなければならない事象の多さ、夥しい量の選択肢あたりでしょうか。(※ 熱心なファンにとっては、これもご褒美の1つではあるのですが)

最新作の新たな柱、文字通りゲームを貫く一本の支柱のような役割を担う“時代”は、こういった積年の課題を付け焼き刃ではなく、根本から見直し、非常に明確で力強い解答を出したもの。これを軸に、多数のメカニクスが最適化・効率化・再構築され、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は非常に遊びやすい、シリーズで最もカジュアルなタイトルに生まれ変わりました。

“時代”システムの概要

「Civilization VII」

まずは、最新作の“時代”とは何なのか、システムの概要をご紹介しておきましょう。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の“時代”は、ゲームの進行/年代を大きく3つの章、文明の基礎が形成される歴史の黎明期「古代」、海を越えて世界が広がる「探検の時代」、科学技術が飛躍的な発展を遂げる産業革命以降の「近代」に分類し、各時代を1つのゲームのようにプレイしながら、時代毎に大きくルールや内容が異なる3つのゲームを順番に進めるようなコンセプトの新要素です。

従来のタイトルは、数千年の歴史を同一の文明・指導者で1つの流れとしてプレイしていましたが、本作は新しい時代を迎える毎に一部の要素を引き継ぎ、新時代の文明を選択した上で、ゲームが仕切り直しとなるため、フレッシュかつ変化に富んだゲームプレイが楽しめます。

時代の移行は、初回プレイ時だと思わず驚くほどずばっと仕切り直され、選択可能な文明のラインアップも時代毎に大きく異なるほか、技術と社会制度は時代毎に専用の中規模なツリーが用意され、多くの要素やメカニクスが時代固有のシステムとなることから(※ 宗教を例に挙げると、“古代”はパンテオンの取得のみ、宗教の創始や布教は“探検の時代”のみ利用可能)、ゲームプレイと管理の範囲が大きくなりすぎず、初心者は夥しい量のタスクや情報の渦に圧倒されることなく、目の前の楽しさと国家運用の重要な選択に集中することが出来るわけです。

「Civilization VII」

つまり『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、やるべきことが整理され、後半にさしかかってもゲームが複雑化せず、(後ほどご紹介する幾つかの新要素と併せて)雑務的な細かな管理と作業量、いわゆるマイクロマネジメントを従来のタイトルから大幅に減らすことで、体験を時代毎にぎゅっと凝縮し、プレイの継続性を高めることに成功しているのですが、これはFiraxis Gamesがシリーズの課題に正面から向き合い、「ゲーム後半のプレイがさほど楽しくない」という、長年抱えてきた問題の根本的な解決に挑んだからに他なりません。

最新作がなぜ・どうやって“誰でも楽しめる”変化を果たしたのか、その背景と最新作の新要素を紹介するために、シリーズの概要とこれまでに辿ってきた進化のハイライトをざっと簡単に振り返ってみましょう。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズの進化と歴史

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズは、1991年発売の第1作目以来、ずっと一貫して紀元前数千年の古代から西暦2,100年頃までをカバーする人類の歴史と文明の攻防を描き続けてきました。

ナンバリングの新作や拡張、幾つかのスピンオフを通じて、様々な進化を果たしてきた『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズの歴史は、ビジュアルや技術的な進化だけでなく、人類や科学技術、文明の進化を網羅的にカバーし、リアルかつ有機的に再現する追求の歴史だったとも言えます。

当初は征服と宇宙開発のみに焦点を当て勝利を競っていたこのシリーズは、30年を超える展開を通じて、“文化”や“宗教”の概念、複雑な“外交”の仕組み、国連を含む国際機関や世界会議、多彩な“社会制度”、市民の幸福度や生活の快適さ、気候変動と環境災害、観光、思想、考古学など、様々な要素を盛り込むことで、文字通り“文明”そのものを思いのままに遊ぶ、他に類のないゲームへと進化してきました。

“Sid Meier’s Civilization”シリーズの大まかな変遷

  • Civilization(1991年9月発売):記念すべきシリーズ第1作。僅か数MBサイズで6,000年近い人類の歴史を描くシリーズの基礎を作り上げた。アルファ・ケンタウリへの宇宙船打ち上げを含む3種のゴールや、文明の発展を担う技術ツリー、多彩なユニット、複数の都市用施設、七不思議、他文明との外交、複数の政治形態、交易ルートなど、シリーズの中核を担う基本メカニクスは初代から存在している。初代は正方形のタイルで構成される地形を真上から見た平面ビューで世界を描いていた。
  • Civilization II(1996年2月):初代の平面ビューからアイソメトリックビューに進化した2作目。初代のシステムを踏襲し、各要素のボリュームを大幅に充実させたいわば足し算的な続編。勝ち負けしか存在しなかった戦闘に耐久力と打撃力の要素を導入したほか、ゲームの詳細な解説を網羅するお馴染み“シヴィロペディア”も登場しました。
  • Civilization III(2001年10月):前作のシステムをベースに、“文化”ポイントと文化的勝利を導入した。複数の志向を組み合わせた特性と固有ユニットの導入による文明の差別化が図られ、マップ上の天然資源や偉人の前身であるリーダーの登場など、3作目で現行の枠組みがほぼ完成している。
  • Civilization IV(2005年10月):フル3D化を果たし、“宗教”を導入したシリーズ4作目。その他、政治体制や技術ツリー、偉人、戦闘システムの拡張、AIの強化を筆頭に全面的な改善と掘り下げが図られた。
  • Civilization V(2010年9月):大型化と複雑化の一途を辿ったシリーズの進化を一旦見直し、幾つかの要素をオミットしつつ全体的なシステムの刷新と整理を図った。最大の変更点は伝統的なスクエアを置き換えたヘックスの導入とユニットのスタック廃止。新要素として都市国家が登場。
    • Gods & Kings(2012年7月):オミットされた“宗教”と“スパイ”を再導入した第1弾拡張パック。その他多数の改善と新コンテンツの追加を特色とする。
    • Brave New World(2013年7月):Civ 5本編で一部簡略化された“文化”と“外交”を深く掘り下げた第2弾拡張パック。観光や思想、考古学、世界議会といった新要素も導入された。
  • シヴィライゼーション VI(2016年10月):都市の運用を戦略的に拡張する“区域”をはじめ、多彩な効果を持つカードでカスタマイズできる“政府”システム、文明の進化を科学力と文化力で分割する“技術ツリー”と“社会制度”ツリーなどが登場。労働者を消費型のユニットに変更する新たな仕様やユニットのスタックを限定的に復活させる“軍団化”も導入された。過去作の多彩な要素をオミットせずに網羅した集大成的な作品でもある。
    • 文明の興亡(2018年2月):黄金時代と暗黒時代、歴史年表を含む“時代”システムを導入し、国家のダイナミックな栄枯盛衰をプレイヤーの物語として描くことで、リニアなナラティブをもたらした第1弾拡張パック。固有のスキルツリーと特性を備えた“総督”や都市毎の帰属意識を示す“忠誠心”も導入された。
    • 嵐の訪れ(2019年2月):嵐や水害、火山といった自然災害を含む環境問題を深く掘り下げた第2弾拡張パック。世界会議や外交要素の強化に伴う外交勝利も導入された。

“あともう1ターン……”のミームに象徴される通り、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズは強烈な中毒性の高さで知られ、熱狂的なファンたちを魅了し続けてきたわけですが、一方で、前述したシリーズの進化を一望すれば分かる通り、本作には人類の文明にまつわる数多くの要素が盛り込まれているため、多くのことが一度に楽しめる代わりに、やれることが多すぎるというジレンマも同時に抱えているわけです。

また、古代から近代まで時代が進む展開の必然として、ゲームの進行(文明や技術の進化)に伴いプレイの要素が段階的に増加・複雑化し、考えることが増え、操作量も多くなる、初心者にはなかなか厳しいハードルが存在するのですが、Firaxis Gamesは最新作の開発に当たって、シリーズがこれまでに抱えてきた問題点を徹底的に洗い出し、ゲームの後半が徐々に楽しいものではなくなるシチュエーションとその要因を分析していたので、少し引用してみましょう。

  • 雪だるま効果:対戦相手との進歩の差が急速に拡がり、追いつけないほど進んだ・或いは遅れている場合、どちらの状況でもプレイヤーの決定は最終的な結果にほとんど影響を与えない。
  • 増加するマイクロマネジメント:数多の4Xゲームと同じく、“シヴィライゼーション”は時間の経過に伴い実行する行動の数が増加していく。少数の都市とユニットを扱う最初の数時間は管理と把握が容易だが、プレイするほど国家は巨大化し、いずれ10を超える都市の意思決定を行い、数十体のユニットを1つずつ移動することになる。これは端的に退屈で、全ての決定の重要性を低下させてしまう。
  • 文明のバランス:シリーズのデザインは歴史的な出来事や文化からインスピレーションを得ているため、文明の能力やユニット、建築物は、それぞれのアイデンティティを保ちつつ、歴史全体を通じて進行するゲーム内のバランスを取る必要がある。これにより、全ての文明はどこかの時点で強く、その他の時点では平凡である可能性が等しくあるわけだが、前述の雪だるま効果のために、競争力を求めるプレイヤーがゲーム後半で強みを発揮する文明を選択する機会はほとんどない。

Firaxis Gamesは、こういった分析を裏付ける何より決定的なデータとして、前作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』のプレイヤーのうち、なんと半数以上が一度もキャンペーンを完了したことがないという、衝撃的なデータを提示しており、シリーズのプレイが最も楽しくエキサイティングな、ゲーム開始から数時間の体験を最後まで持続させるためのアイデアとして、章立ての新しい“時代”システムを考案したことを明言しています。

シリーズの熱心なファンであれば、Firaxis Gamesが掲げた問題点は、深くうなずけるもっともなトピックで、思い当たる節も多いかと思いますが、念のため“雪だるま効果”について少し言及しておきましょう。これは、ほとんどの4x/ターンベースシミュレーションやRTSにも当てはまる課題で、プレイを重ね上達し、ある種のセオリーが出来上がれば、いわゆる“勝ち確”が生じやすく(もしくは、勝ちが分かってしまう)、一般的には後半の、早ければ中盤以降、極端な例を言えば特定の条件を勝ち取った序盤でさえ勝負がほぼ決まってしまうケースもあり、以降のプレイが消化試合化してしまうというもの。

これは、プレイヤーの行動や選択・準備が、次の行動の結果を良好に増幅させる、正のフィードバックループが(ゲームに熟達すればするほど)早いペースでインクリメンタルに発生することから、プレイヤーと競合相手のリソースや戦力差が時間を追って比例的に大きくなっていくことが直接的な要因であり、初心者の場合は全く逆のことが発生しているということになります。

プレイに慣れてしまうと、こと勝敗という側面に限っては、勝ちが決まるまでが面白いわけで、先に挙げたシリーズの歴史では、ここに中~後半戦のダイナミックな要素や勝敗だけに捕らわれない体験の面白さ、プレイヤーが自ら創出するナラティブだけに頼らない物語的体験、複雑さを増すゲームの進行をボトムアップ的に支援するチュートリアルやガイドの充実など、様々な取り組みを対処療法的に進めてきましたが、やはり根本的な改善には至っていませんでした。

しかし、Firaxis Gamesが課題に正面から向き合い誕生した最新作の“時代”システムは、長年の課題を解消するという点において、遂に見事な勝利を収め、フレッシュな体験と最も楽しい瞬間を維持させることに成功しています。

この“時代”システムは、後半のゲームを楽しくするという目標から生まれたものでしたが、この抜本的な改善と進化は、熱心なファンだけのものではなく、結果的にむしろ初心者にこそフレンドリーな要素として際立っていて、以下にご紹介する幾つかの新要素と有意義なシナジーを生むことで、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』を“誰もが楽しめる”ゲームへと生まれ変わらせているのです。

伝統的な“3分の1の法則”にも新たな変化が

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズとFiraxis Gamesには、続編開発に関するデザインルール“3分の1の法則”が存在しており、MicroProse時代から続く伝統として広く知られています。

シド・マイヤー氏が掲げたこの法則は、既存の優れた箇所を33%維持し、33%はこれまでの機能の改善に、残る33%に新しいメカニクスを導入するというもの。

上掲したシリーズの歴史は、まさしくこのルールを忠実に守ってきた、進化と最適化の歩みであり、最新作を含むシリーズタイトルが共通のプレイフィールを維持していることは、名店が継ぎ足しながら何十年も使い続けている秘伝のタレが醸し出す伝統の味わいみたいなもので、数多の野心的な“Civ-like”があと1歩で本家の味に及ばない不思議な現象は、この辺りの背景が色濃く影響しているのではないかと考えています。

最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』にも当然ながら、この“3分の1の法則”が適用されているわけですが、本作に限っては、これまでのシリーズタイトルよりも遥かに大きな(3分の1の新規要素と3分の1の改善に留まらない)変化が生じているように感じられるのが非常に不思議なところ。

従来のタイトルは、何れも進行がリニアだったことから、“3分の1”ルールによる旧作の解体と新作の再構築はいわば平面的な並び替えだったと言えます。しかし、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、ゲームを3つの時代に分解・独立させ、コアとなる柱を軸に、様々な要素を異なる時代に独立して配置する、これまでにはなかったアプローチをとっているため、従来の平面的な再構築に対して、時代の進行とゲームのリセットによりゲーム全体を時間・空間的に捉え直した、(“3分の1”ルールを踏襲しつつ)全く新しい試みに挑戦した作品だとも言えます。

シリーズを熱心にプレイしてきた方には、ときおり本作のスコープが小さく感じられる瞬間があるかもしれませんが、これを空間的に見てみると新しい発見があるかもしれません。

反復作業やマイクロマネジメントの負担を軽減する多彩な新要素

「都市」と「町」の関係、「労働者」は廃止

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の大きな変化の1つに、都市の管理方法や成長の仕組みがあります。

最初に建設される“首都”は、従来通りユニットや建造物の生産が可能な拠点となる「都市」ですが、首都の建設以降、開拓者ユニットが建設する居住地は、前述の都市よりも管理が簡単な「町」になります。

「町」はユニットや建築物の生産機能を持たず、ゴールドによるユニットと建築物の購入のみ可能。各“町”の生産力は全てゴールドに変換され、国家に経済的利益をもたらします。

さらに、“町”の人口が7に達すると“町の専業”が解禁され、ユニットの回復力や防壁を強化する“要塞”の町や、食料の収穫を増やす“農業”の町、生産力を強化する(ゴールドが増える)“鉱業”の町など、様々な特化によって恒久的な利益を得ることができるほか、ゴールドを消費することで“町”を“都市”にアップグレードすることも可能です。

この仕組みにより、“町”はほぼ自動で国家に利益をもたらしてくれるだけでなく、国家全体の生産管理量が減るため、新しい都市が増える度に雑務が増加していた管理の手間と負担が大幅に軽減されます。(“都市”と“町”の数のバランスは任意ですが、それぞれ同数、或いは“町”の方が1~2つほど多いバランスがほどよい管理量だと感じました)

また、都市・町タイルの増加が(従来の文化力ではなく)食料生産数に基づくよう変更となったのも非常に分かりやすいのですが、さらに大きな仕様変更として、従来の労働者ユニットが廃止となり、プレイヤーは都市・町タイル増加時に任意のタイルを指定するだけで、自動的に当該タイルの特性に応じた開発が完了することになります。(※ ちなみに本作の“文化力”は社会制度ツリーの進展に用いられます)

“都市”と“町”には、前作の複雑さを大幅に軽減し、柔軟な運用を可能にする新たな“区域”システムや非常に分かりやすくなった“専門家”など、様々な仕組みが用意されているのですが、労働者の廃止と“町”の自動運営は無駄なマイクロマネジメントを驚くほど省いてくれるため、正直なところ快適すぎて以前の仕組みにはもはや戻れない、(そして初心者にも優しい)非常に魅力的な進化だと言えます。

ユニット運用を変える「軍団司令官」の登場

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズの歴史において、ユニットの運用は長らく悩みの種でした。『Civilization V』でユニットを大量に重ねるスタックは廃止されたものの、1タイル1ユニットの運用は手間も多く、しばしば交通渋滞を引き起こしていました。

前作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』は、軍団化による限定的なスタックの復活でこの整理を試みましたが、繁雑なマイクロマネジメントの軽減という点において、その効果は限定的だったと言えます。

最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』には、新しいタイプのユニット「軍団司令官」が登場し、長年スタジオを悩ませてきた課題の飛躍的な合理化に成功しています。

「Civilization VII」

“軍団司令官”は、文字通り軍事行動のリーダー的ユニットで、司令官そのものは戦闘能力を持っていませんが、周囲の戦闘ユニットを集合させ、1タイル分の軍団にまとめることで、1つの軍団を1ユニットとして扱うことができます。

司令官は、まとめた戦闘ユニットを任意で再展開できるほか、最大で6つの戦闘ユニットを1つの軍団として扱えるため、戦闘や防衛、部隊運用の手間が驚くほど楽になります。

また、戦闘ユニット単体の経験値とレベルアップシステムも廃止となり、経験値を得て成長するユニットは、この“司令官”のみとなっています。

「Civilization VII」

“司令官”には、XPベースの昇格システムが用意され、幾つかのシンプルなスキルツリーによって様々な能力強化が可能。この仕組みで様々な運用スタイルと特化が選べるわけですが、簡単に取得できる便利な強化には、陸上移動力+1かつ地形の移動制限を受けない“機動力”、さらにスタックした戦闘ユニットが再展開後すぐに行動できる“イニシアチブ”といった能力があり、部隊運用の全体的な手間を驚異的に軽減してくれます。

先ほどの都市と町の新たな仕様に続いて、この“軍団司令官”も余りに快適すぎて、もはや以前の仕組みには戻れない、(恐らく新しいフォーミュラの1つになるであろう)非常に優れた進化の1つだと言えるでしょう。

リソース管理システムを導入する新たな「外交」、従来の都市国家と蛮族を刷新する「独立国家」

他の国家との様々な交流を図り、ときには対立を深める伝統的な「外交」にも、新たな仕組みが導入され、かなり分かりやすいリソースベースのシステムに生まれ変わっています。

過去作における提案ベースの“外交”は、(協定や資源など)扱う物の価値に基づく、いわば物々交換に近い、やや不透明な仕組みでしたが、最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の外交は、“影響力”と呼ばれる新たなリソースを消費することで、条約や外交努力、制裁、スパイ活動といった外交行動を行うことになります。

“影響力”は、ゴールドや食料、科学力、文化力、幸福度といったその他のリソースと同じく、建築物や指導者、文明固有の能力、遺産などから算出されるため、(複雑なシステムが絡み合うことで生まれるある種のファジーさを持っていた前作に比べて)外交行動そのものが都市の成長や国家運用と直結する戦術的な“技”のような扱いになっている点も分かりやすさが増しています。

また、この“影響力”リソースに関係する要素の1つとして、過去作では別の存在だった“蛮族”と“都市国家”が統合され、「独立国家」と呼ばれる新システムが登場しました。

これにより、これまでの“蛮族”に相当する“村”との外交的な交流が可能となり、これを支援することで“村”を大きな“都市国家”へと成長させ、“宗主国”となることで様々な恩恵が得られるわけですが、ここでも“影響力”がリソースとして影響するため、序盤から様々な取捨選択が生じるのも最新作の面白いところだと言えるでしょう。

総評

ここまで、新たな“時代”システムによる大きな変革を軸に、シリーズが抱えてきた課題と『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の関係に焦点を当て、最新作が長年の問題に新しいアプローチで本質的な解決を図ってきたこと、そしてこれが見事に功を奏している旨をご紹介してきました。

労働者の廃止や都市の新たな仕組み、軍団司令官による極めて快適なユニット運用、資源の扱いを含む各種リソース周りの分かりやすさなど、もう以前の仕様には戻れないと感じさせる魅力的な新要素も多数用意されています。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、従来の『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』らしさをしっかりと担保した上で、意義深い変革を成し遂げた非常に興味深い作品ですが、残念ながら現時点の本作がシリーズ最高傑作、というワケではありません。

4Xストラテジージャンルの旗手である『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズに求められる極めて高い期待値と必要な完成度を考慮し、総合的に判断すれば、シリーズの最高傑作は今も(10年近い運用を通じて改善と拡張を重ねてきた)前作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』だと言えるでしょう。

現状の『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、品質が十分でない箇所が散見される状態で、残念ながら品質不足の要素がゲームプレイ体験の足を引っ張る状況となっています。

また、幾つかの要素は合理化と単純化による洗練が行き過ぎたことで、相対的に奥深さやある種の曖昧さ、豊かな複雑さが失われ、かえって味気なく感じられる部分が目に付くことも無視できません。

最大の問題は、UIとUXのデザイン/フローにあり、インフォメーションや各種情報の構成と一覧性、クリッカブルな要素を含むインタラクションの分かりにくさ、必要な情報を得るためのガイド・フィードバック不足、これらの問題に起因する全体的な可読性の低さでしょうか。

高級感のある最新作のビジュアルアイデンティティやビジュアルは過去最高の仕上がりですが、異なる解像度におけるフォントやUI/HUDのスケーリング、各種インターフェースの不統一なデザイン、全体的な情報の一覧性を鑑みると、コンソールとPC版の同時ローンチやクロスプレイ対応を前提とする、コントローラーとキーボード+マウスの同時対応を図る操作スキームの設計に問題があるように感じられますが、一方でこれらの問題はそれほど深刻なものではなく、ローンチ時特有の些細な品質不足に過ぎないとも言えます。

現に筆者の体調不良でレビューの執筆が遅れに遅れている間(すいません)、既に3度の小規模パッチが配信され、バグ修正がメインながらも僅かに改善が進み、Firaxis Games自身も今後の課題として、UIの抜本的な改良を掲げています。

一方で、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』がもたらした遊びやすさの進化と大胆な合理化は、シリーズ史上もっともドラスティックな変化であり、Firaxisが導き出したアプローチとコアプレイの骨格は、今後新しいフォーミュラとなり得るポテンシャルを十二分に秘めていると言えます。

最新作のコンセプトやコア設計は非常に力強く、足りないのは細かな箇所のブラッシュアップや最適化、そぎ落とし過ぎた要素の肉付けです。コア部分のデザインが不十分なまま肥大化した製品を改善することは極めて困難ですが、コンテンツの肉付けや拡張、ブラッシュアップはFiraxis Gamesの十八番であり、今後の改善に期待したいところ。

筆者は最新作の真価がシリーズ最大かつドラスティックな“変化”にこそあると考えています。初の試みとなったPCとコンソールの同時ローンチ、クロスプレイとコントローラー対応、Firaxisの伝統“3分の1の法則”に対するアプローチの変化、前作が集大成的な傑作だったことを踏まえ、翻ってシリーズの歴史を振り返ってみると、初代(1991)から3作目(2001)がフランチャイズの基盤とフォーミュラを確立したクラシック期、4作目(2005)から6作目(2018)が現代的な『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』の模索と追求に邁進したモダン期、それぞれがひとまとまりの時代のように感じられ、前作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』の網羅的に最大化された極めて高い完成度は、まさに時代の区切りとなる文字通りの集大成だったと思えます。

こういった観点から見ると、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』はまさに“変化”によってシリーズの新しい時代を切り開く、Firaxis Games史上最大の野心作だと言えるでしょう。

集大成的傑作だった前作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』は、奥深い複雑さと最大化の追求の末に辿り着いた美しい結晶であり、2つの大規模拡張“文明の興亡”と“嵐の訪れ”を統合して出来上がった最終的な全体像は、4Xストラテジーの枠を超えて、ある種のサンドボックス性さえ感じさせるような圧倒的作品でした。

新時代の到来を告げる『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、この最大化の流れを一旦断ち、シリーズの根幹に立ち返り、本質的な面白さを問い直した作品で、極限までそぎ落とされた要素と軽やかなペーシング、文明と指導者の分離、時代毎にリセットされるゲーム、都市管理やリソース運用に感じられるパズル性、メタ進行にスキルツリー的な指導者属性など、最新作が採用した数々の要素から浮かび上がるゲーム性は、まるでローグライク・ローグライトゲームのようですらあり、サンドボックス的要素を宿した前作とは真逆の方向へ向かう、楽しさの捉え方そのものが大きく異なる作品だと言えるわけです。(※ 既に実装が決まっているシングル・ダブル時代のゲームプレイが実装されれば、この傾向はさらに高まるでしょう)

つまり、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』はシリーズの全く新しいスタンダードを提示するナンバリングタイトルであり、これまでのシリーズタイトル全てがそうであったように、本作もいずれ幾つかの改善とブラッシュアップを経て、最高かつ最新の“シヴィライゼーション”的体験を提供するプラットフォームになるはずです。

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