特集第3回:「バルダーズ・ゲート」入門その2、2000年前後に訪れた海外CRPGの復活と“ファイナルファンタジーVII”

2023年11月17日 16:11 by katakori
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「Baldur’s Gate III」

先日お届けした第2回の特集では、1998年に発売された初代“Baldur’s Gate”を軸に「バルダーズ・ゲート」が大都市の名前であるというところから、シリーズ全体の基礎となる背景をご紹介しました。

第3回となる今回の特集は、「バルダーズ・ゲート」入門の後編として、2000年9月に発売された続編「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」と旧シリーズ三部作の完結編となる大規模拡張「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」に関連する幾つかのディテールをまとめてご紹介します。

前回に続いて、今回も記事の最後に「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」と「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」のネタバレを含むストーリー周りの情報を用意してありますので、最新作「バルダーズ・ゲート3」の発売に向けて続編をプレイ中の方は十分ご注意ください。

ということで、続編と完結編の詳細に進む前に、もう一度前回ご紹介した地図で主要なロケーションの位置関係を振り返っておきましょう。

「Baldur’s Gate III」

初代の舞台は大都市“バルダーズ・ゲート”とその周辺地域でしたが、続編「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」では、バルダーズ・ゲートとの間で戦争の火種がくすぶっていた南方の商業国家“オームー”(Amn)と、その首都である大都市“アスカトラ”が主な舞台となります。

かつてSEGAが発売したオリジナルの日本語版では、邦題が「バルダーズ・ゲート2 シャドウ オブ アムン」となっており、舞台を“アムン”と記憶している方も多いかと思いますが、ダンジョンズ&ドラゴンズ側では当初から“オームー”と表記されていたため、ここでは原作の表記を使用します。

「Baldur’s Gate」シリーズのマップについて

続編と完結編の話題を掘り下げる前に、シリーズの大きな特徴で魅力の1つでもある“マップ”の話題を簡単にご紹介しておきます。

旧「Baldur’s Gate」シリーズのマップは、主に大都市と周辺地域から構成され、大都市が(当時としては)途方もなくでかい!というのがいわゆる売りの1つでした。

旧シリーズのマップは“オープンワールド”ではなく、中規模サイズのエリアを組み合わせ、移動時にローディングが発生する仕様ですが、一部のエリアは“ちゃんと繋がっている”ように感じられるオープンワールド風のデザインを特色としています。

これは特に初代のマップに顕著で、各マップをパズルのように繋ぎ合わせると、巨大な一枚の地図ができあがるような構成になっていました。

「Baldur’s Gate III」
参考:初代のマップをつなぎ合わせるとこうなる
北部で6つ分のエリアを占有する超でかい都市がバルダーズ・ゲート

また、シリーズの各マップは、ストラテジーのフォグ・オブ・ウォーに近い仕組みで未踏部分が霧に包まれていて視認できないため、これを走破してマップを明らかにする行為そのものにある種の中毒性があるほか、あちこちに様々な遭遇や小さな事件、アクティビティ、小ネタが仕込まれていて、マップを埋める捜索・散策そのものがお楽しみの一つになっていました。

多彩なマップをローラー作戦的に、或いは塗りつぶすように走破し、でかい大都市におののく、この感覚が“Baldur’s Gate”には欠かせないわけですが、この伝統は最新作「バルダーズ・ゲート3」にもしっかり継承されていて、旧シリーズをはるかに超える品質のマップに、これでもかとコンテンツや秘密が詰め込まれています。

「バルダーズ・ゲート3」はプレイヤーの脱線や探索に対して過剰に報いる、掘れば掘るほど新しい何かが出てくるコンピュータRPG史上最高品質のマップを特色としていますが、これは旧シリーズの精神をしっかり受け継いだものだと言えるわけです。

また、周辺地域と超巨大都市というフォーミュラは、“Baldur’s Gate”以降に登場したInfinity Engine系のコンピュータRPGにも広く影響を与え、Obsidian Entertainmentの“Pillars of Eternity”シリーズはこの感覚を見事に再現し、現世代にふさわしい拡張を達成していました。

歴史的な傑作となった続編「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」の概要と「ファイナルファンタジーVII」の影響

参考:Beamdogが2013年にリリースした“Baldur’s Gate II: Enhanced Edition”のトレーラー

「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」は、2000年9月に発売されたナンバリングの続編で、開発は初代に続いて名門BioWare。エンジンも引き続き“Infinity Engine”を採用しています。

続編の全体的なシステムは、概ね初代を踏襲する一方で、アートやグラフィック、外連味のあるストーリーなど、大作然としたエピックな続編として大きな進化を果たしていますが、最も象徴的な革新で、「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」以降の海外(西洋)コンピュータRPGにも多大な影響を与えることになる要素として、これまでになかったレベルの“魅力的なキャラクター”が挙げられます。

この大きな革新によって「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」は、新しいオーディエンスにも波及する前作以上の成功を収め、コンピュータRPGのオールタイムベストやランキングでしばしば最上位に挙げられるような歴史的傑作として、西洋CRPGの復活を実現しました。

続編「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」のストーリー

「Baldur’s Gate III」

初代の壮絶な戦いと冒険を終えた主人公一行は、ある日ジョン・イレニカスというメイジの待ち伏せにあい、彼が建設した地下の研究所で目を覚まします。

残忍な人体実験と拷問が行われているこの研究施設には、初代の主人公とイモエン、ジャヘイラとカリード夫婦、我らがミンスク、彼が仕える魔女ダイナヘールが捕らえられており、彼らは幾つかの悲劇と別れを経て、地上への脱出に成功するのですが、そこは商人の国オームーの首都アスカトラでした。

この巨大な貿易都市では全ての魔法使用が固く禁じられており、脱出直後の戦闘で魔法を使用してしまったイモエンとイレニカスの2人は、巨大な力を持つカウルド・ウィザードによって逮捕され、共に難攻不落の牢獄スペルホールドに収監されてしまいます……。

ということで、続編の物語は恐ろしいイレニカスと共に投獄されてしまったイモエンの救出を軸に展開し、我らが主人公はイレニカスの出自に関係する壮大な陰謀と計画に巻き込まれることになります。

「ファイナルファンタジーVII」が「Baldur’s Gate II」に与えた影響とその大きさ

参考:“ファイナルファンタジーVII”の公式PV

海外CRPGの熱心なファンならご存じかもしれませんが、「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」の成功と前述したキャラクター面の革新には、1997年に発売されたご存じ「ファイナルファンタジーVII」が多大な影響を与えたことが知られています。

これは、当時の海外ビデオゲーム誌に掲載された幾つかのインタビューや記事にて明言されたもので、筆者もその内容ははっきりと記憶しているのですが、Webでこれが改めて語られる機会がなく出典をどうしようか迷っていたところ、ちょうど10月9日付けでRock Paper Shotgunが公開した名デザイナーJames Ohlen氏のインタビューにて、この件がしっかりと語られていました。

「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」がもたらした決定的な革新というのは、(日本のゲーマーから見ると)もしや“かわいいヒロイン”という概念そのものが存在していないのでは……と疑わざるを得ないほど、分かりやすい“かわいさ”が欠如していた当時の西洋RPGに、文字通り「ファイナルファンタジーVII」に象徴されるJRPG的キャラクターの魅力を取り入れたという点にあります。

もちろん、エアリスやティファのような女性キャラクターの“かわいさ”が最も顕著な例であるわけですが、男性キャラクターについても同様のことが言えます。当時の海外RPGにおける男性キャラクターはJRPGと比べると、ドラマ的な掘り下げや人間的な心理描写には天と地ほどの隔たりがあったと言わざるを得ません。

前述のJames Ohlen氏は、かつてBioWareでゲームデザイナーやリードデザイナーを務めたベテランで、初代“Baldur’s Gate”や続編“Baldur’s Gate II: Shadows of Amn”、初代“Dragon Age”、“Star Wars: Knights of the Old Republic”など、文字通り黄金期のBioWareを支えた中心人物の1人として知られています。(※ James Ohlen氏は2018年にBioWareを退社後、2019年にWizards of the Coastに参加し、新スタジオArchetype Entertainmentを設立。同じくBioWareを象徴するライターDrew Karpyshyn氏やベテランChad Robertson氏と共にオリジナルIPとなるストーリー重視のSci-Fi RPGを開発中。参考:過去記事

元々、“Baldur’s Gate”シリーズに登場する人気キャラクターの一部は、James Ohlen氏がダンジョン・マスターを務め、友人達と楽しんでいたダンジョンズ&ドラゴンズのセッションから流用されたもので、James Ohlen氏が個人的に膨大な設定をまとめていた資料を見つけたBioWareのボスRay Muzyka氏がこれを気に入り、“Baldur’s Gate”への採用を後押ししたことで、我らが愛するミンスクとブーをはじめ、あのやっかい者エドウィン、そして続編の悪役であるジョン・イレニカスが誕生したのです。

さらに余談ながら、前回ご紹介した“Baldur’s Gate”の前身プロジェクトであり、Infinity Engineの由来でもある「Battleground: Infinity」を“ダンジョンズ&ドラゴンズ”作品として開発することが決定した際、BioWare内には“ダンジョンズ&ドラゴンズ”に明るい人物がほぼおらず、めちゃくちゃ詳しいやつがいた!と白羽の矢が立ったのがまさにこのJames Ohlen氏でした。

当時の背景はさておき、「ファイナルファンタジーVII」の影響について言及したJames Ohlen氏によると、初代“Baldur’s Gate”発売後の冬のある日、InterplayのプロデューサーDermot Clarke氏と雑談した際、Clarke氏がこういったそうです。「“Baldur’s Gate”のキャラクターは“ファイナルファンタジーVII”ほど十分には掘り下げられていないね」と。

自分が生みだしたキャラクター達に自信があったJames Ohlen氏は、そんなはずはないと思いながら実際に“ファイナルファンタジーVII”をプレイしたところ、「なんてことだ……彼らに比べれば、自分達のキャラクターなんてまるで段ボールの切り抜きだ。これは酷すぎる」と衝撃を受け、一念発起したことで、従来の西洋RPGとは一線を画する、人間的魅力に溢れるキャラクター達と、彼らが繰り広げるドラマ、そしてそこに面白さを見出す“新しいオーディエンス”が誕生することになるのです。

「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」をプレイした方ならご存じの通り、本作には後のBioWareを象徴する要素となる本格的なロマンスの原型が存在するのですが、こういったキャラクター間の関係性もまさに“ファイナルファンタジーVII”の影響によるものであり、“ファイナルファンタジーVII”がなければ、或いはBioWareの目にとまっていなければ、“Mass Effect”や“Dragon Age”の忘れがたいロマンス、ひいては「バルダーズ・ゲート3」も生まれていなかった可能性さえあるわけです。

また「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」には、キャラクター以外にも「ファイナルファンタジーVII」の影響を受けた箇所があり、最初にどーんと敵(イレニカス)の存在をはっきりと描いた続編の構成は、冒頭から新羅の存在を強烈に印象づけることでストーリーの駆動力を強めた“ファイナルファンタジーVII”の手法に影響を受けたものだったことが知られています。

こういった多大な影響があった一方で、西洋RPGとJRPGがその後も全く異なる進化を遂げていくことはご存じの通りですが、スクウェア・エニックス作品の海外RPGやBioWare作品に対する影響はその後も大きく、例えば1999年の“クロノ・クロス”は、スター・ウォーズゲームの傑作“Knights Of The Old Republic”に影響を与えていました。

トリロジーの完結編「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」

「Baldur’s Gate III」

初代から続いた主人公の物語とフェイルーンの危機を救う戦いに終止符を打つ「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」(※ SEGAが発売した日本語版の邦題は“バルダーズ・ゲート2 完結編 スロウン オブ バール”)は、“Baldur’s Gate II: Shadows of Amn”の大型拡張パックとして、2001年6月に発売されました。

邦題にある“バール”は、前回ご紹介した殺人の神“ベハル”の表記違いで、先ほどのアムン/オームーと同様に当サイトの特集では“ダンジョンズ&ドラゴンズ”に準拠する“ベハル”表記でご紹介します。

「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」の舞台は、オームーとアスカトラからさらに南下したテシル地方。物語は「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」の最終章である第7章から直接続く第8章としてスタートします。

邦題“スロウン オブ バール”からも分かる通り、シリーズの最終章は殺人の神“ベハル”とその落とし子達を巡る壮大な戦いを描くことになります。

拡張としての新コンテンツとして、特大のサプライズを伴う新たな登場人物や最大レベル40に達する経験値上限の増加、レベル上限の増加に伴う新たな特性や技能、新クラス“ワイルドメイジ”、7章以前の本編からもアクセスできる追加の大型ダンジョン“ウォッチャーズ・キープ”、プレイヤーの拠点としてどこからでもアクセスできる便利な異次元空間“ポケットプレーン”といった要素を特色としています。

「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」のストーリー

“Shadows of Amn”本編の戦いを通じてイレニカスに勝利した直後、オームーの南方に拡がるテシルの大地で、強大な力を持つ5人の“ベハルの子”が台頭し、それぞれが大規模な軍勢を率いる大規模な戦争がテシル全域で勃発。ベハルの座を巡る戦いが再び本格化します。

彼らは同胞(はらから)である他の“ベハルの子”を殺すことで力を得ており、“ベハルの子”と疑われたものが社会から迫害される事態となっていますが、テシルの街サラドゥーシュでメリッサンと名乗る巫女と出会い、彼女がベハルの復活を阻止するために、戦いや力を望まない無実のベハルの子たちを保護していることが判明。主人公はメリッサンに協力し、台頭する5人の強大な“ベハルの子”と対峙することになるのですが……。

これが「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」の冒頭で描かれるプロットの大枠ですが、ここでなぜ落とし子達がやっきになってお互いを殺しあっているのか、ベハルと呼ばれる神の復活を巡る争いの仕組み、そして先ほど新要素として名称をご紹介した“ポケットプレーン”に代表される異次元空間について、ダンジョンズ&ドラゴンズ世界の基本的な背景をネタバレなしでご紹介しておきましょう。

ダンジョンズ&ドラゴンズ世界における神たちと多彩な次元に関連する構造や仕組みは、最新作「バルダーズ・ゲート3」にも共通して登場する設定の一部ですので、ざっくりとでも頭のすみに置いておくと事態の把握が幾分か楽になると思います。

殺戮の神“ベハル”について

殺戮の神で“死せる三者”の一柱として恐れられる“ベハル”については、特集第2回のネタバレ解説にて、細かい背景をご紹介しましたが、ここではネタバレを避け、ベハルが復活を果たそうとしている仕組みのみ簡単にご紹介しておきます。

ある事情で自身の死を予見した神ベハルは、自ら定命の存在となって多くの子を遺し、落とし子たちに自身の神性である精髄を少しずつ分散させ、自身の死に備えました。

つまり、子供達に神たる力が薄まった状態で分散しているわけですが、殺しの衝動を持つベハルの子が別の同胞を殺せば、相手の精髄を得て、より父の血が濃くなる。落とし子の中には、要塞図書館キャンドルキープに収蔵された門外不出の予言の中身を知る者も現れ、父の血をより多く得て、最後の1人になれば薄まった神性が全て我が物となり、新たなベハルになる、或いは神の座が得られると考えたのです。(それが真実かどうかはまた別の話ですが)

完結編で台頭してきた5人の強大な“ベハルの子”たちは、まさに他の同胞を倒すことで強大な力を宿した存在であり、戦いを望まない落とし子達をどう守り(※ 前述した仕組み上、戦う気のない落とし子を保護しておけば、薄まった精髄が全て集まることはない)、強大な5人の戦いをどう調停するか、というのが完結編の大きなポイントとなるわけです。

設定として、定命の存在や“神になること”をさらっと書いて済ませてきましたが、そもそも“ダンジョンズ&ドラゴンズ”世界における神とはどんな存在なのか、最新作「バルダーズ・ゲート3」を含め、シリーズには様々な神の存在や信仰に関する話題が登場するので、続いて“ダンジョンズ&ドラゴンズ”の神々について、さわりの部分を簡単にまとめてみます。

“ダンジョンズ&ドラゴンズ”に登場する神々と世界の構造について

前回の特集にて、シリーズの代表的な舞台であるバルダーズ・ゲートやその他周辺地域が、アイビア=トリルと呼ばれる惑星に存在するフェイルーン大陸の一地方であること、この作品世界を指す名称が“フォーゴトン・レルム”であること、そして多元宇宙と呼ばれるマルチバース設定が存在し、“フォーゴトン・レルム”以外にも多数の作品世界が存在することをご紹介しました。

多元宇宙である“フォーゴトン・レルム”や“ドラゴンランス”、“グレイホーク”といった作品世界は、何れも(細かいことはさておき)一般的な物理法則が通用し、命ある存在が暮らす物質的な世界ですが、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”の世界には、物質界を丸く取り囲むように、エーテルの層や四元素の世界、さらにその外周には思念や神話、神秘、夢の領域である16種の主要な次元界(プレイン)と、次元界のすきまを埋める宇宙空間のようなアストラル界が拡がっており、個々の次元界は有力な神々が住まう場所としても機能しています。

神々が住まう16種の次元界は、善良な神たちが住まう天上の次元界、悪魔的な存在によって統治される冥府の次元界に大きく二分され、多くの神がそれぞれの支配力や領地、善悪のバランス等を巡り永遠とも思えるような権力闘争を繰り広げているのです。

物質界を取り巻く様々な次元界や神々については、概要をまとめるだけでも相当な規模になってしまうため、当サイトの特集ではビデオゲームに関係するポイントに絞ってご紹介しますが、いわゆる“地獄”も代表的な次元界の一つであり、旧シリーズのストーリーや最新作「バルダーズ・ゲート3」にも深く、かつ直接的に関わってくることになります。

さらに、古い神が新しい神を生んだり、強力な定命の存在が神になったり、或いは定命の存在が神位を継ぐ代替わりのケースもあるほか、神にとって物質界に暮らす定命の存在の信仰や信者は力の源泉の一つでもあることから、神々の権力闘争に定命の存在がまきこまれてしまうような事態もしばしば発生するわけです。

ちなみに次元間の移動は、定命の存在がおいそれと気軽に行えるようなものではなく、ある種のデバイスや高レベルの呪文、次元間移動用のポータルなど、希少な機会や強大な力が必要になるわけですが、最新作「バルダーズ・ゲート3」のオープニングシネマティックでは、ドラゴンに乗った戦士に追われるマインド・フレイヤーが宇宙船ノーチロイドで次元間移動を行い、逃走する様子が描かれていました。

参考:バルダーズ・ゲート3のオープニング映像、ドラゴンと宇宙船ノーチロイドによる次元間移動が数回確認できる

ここでようやく話を先ほどの“ポケットプレーン”に戻すと、これは強大な力によって作られた、文字通り泡のように小さな規模の次元界“プレイン”であり、旧シリーズや最新作には(主要な次元界に含まれない)こういった異次元空間が何度か登場することになります。

なお、フェイルーンには信仰対象となる多種多様な神が存在していますが、シリーズのゲームプレイ中に名前を耳にしたり、場合によっては関わり合いをもつ神もいますので、主な神の名前と概要を簡単にまとめておきましょう。

  • エイオー:超越神、神々の神で、神や次元界を含む宇宙そのものを創造した神。全ての神々に対して絶対的な力を持ち、神の追放や降格、滅ぼすこともできる。定命の存在が神になる場合も必ずエイオーの承認が必要となる。
  • ケレンヴォー(死者の神):かつては定命の存在だった男神。死にまつわる神だが邪悪な存在ではなく、死を公平かつ適切に扱う神。
  • シャー(闇と喪失の女神):エイオーが世界を創造した何もない原初の宇宙から誕生した双子の女神の1人、憎悪や嫉妬、悪、復讐、忘却、秘密といった権能を司る。姉妹のセルーネイと共に天体や次元界も存在しなかった無の宇宙に光と闇の概念とその対立を生んだ。シャーは闇の神で、光の神である姉妹セルーネイとは対局に位置する不倶戴天の敵として対立しており、シャー信者はセルーネイ信仰を目の敵にしている。
  • セルーネイ(月の女神):シャーと同じく原初の宇宙から最初に誕生した光の神。惑星トリルの月がまさにセルーネイと呼ばれ、明るい月の光でトリルを見守り、生命の輝きを祝福している。
  • シルヴァナス(荒ぶる自然の神):自然の調和を司る男神。樫の葉がシンボルで、ドルイドや狩人に広く信仰されている。
  • ミストラ(魔法の女神):魔法の源泉“織(ウィーブ)”そのものでもある善の女神。定命の存在が使用する全ての魔法は、彼女が織の導管となって媒介することでのみ利用できる。現在のミストラは三代目。
  • ジャーガル(万物の終わりを司る神):かつては専制や死者、殺戮を統べる強大な古代の神だったが、永い年月を経て権力に飽き、定命の存在だった頃のベインとマークール、ベハルと運任せのゲームで賭けを行い、自身の権能のほとんどをこの3人に分割して継承させ、神位を譲った。現在は死を扱う書記としてケレンヴォーに仕え、全ての死者の経歴を記録している。
  • ベハル(殺戮の神、“死せる三者”の1人):長年に渡ってバルダーズ・ゲートに混沌をもたらしてきた殺戮の王。血に飢える殺人者や暗殺者、狂信者の間にベハル崇拝が拡がっている。また、現在ではサレヴォクの悪行と共にベハルの落とし子の存在も広く知られており、バルダーズ・ゲートの街そのものが彼らを強く引き寄せている。
  • ベイン(専制の神、“死せる三者”の1人):完全なる悪の専制君主で、憎悪と紛争を楽しむ半神。フェイルーンと神々の支配を目論み、一度は正義の神トームによって殺害されたが、その後復活を果たし恐怖の権能を得て、さらなる上級神となった。バルダーズ・ゲートでは圧政や権力を望む非道な貴族や犯罪組織のリーダーなどがベインを信仰している。
  • マークール(死者の神、“死せる三者”の1人):かつては強力な死霊術士だったが、ジャーガルとの賭けに勝ち“死者”の権能を譲り受け、ベインとベハルと共に神格となった半神。さらに神となった後もベインと共謀し、エイオーから運命の書冊を盗み出し、神々の戦い“災厄の時”を引き起こした。バルダーズ・ゲートにおける信仰の基盤は“死せる三者”の中で最も小さい。

シリーズに登場する主な勢力について

神々や次元界と同じく旧シリーズや最新作には、“フォーゴトン・レルム”特有の著名な組織が登場する場合があります。

多彩な宗教やカルト勢力、小規模な犯罪組織等も含めるとかなり数は多いのですが、代表的なものはそれほど多くないので、これについても簡単にご紹介しておきましょう。

  • ハーパー:エルミンスターをはじめ、旧シリーズの養父ゴライオンやジャヘイラも有力メンバーの1人で、映画「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」の主人公エドガンも所属していた正義の秘密結社。フェイルーンのおせっかい屋とも呼ばれ、人々や町を様々な脅威から守り、常に自然と文明の調和を維持しようと活動している。主要な拠点はもたず、個人や小規模なグループによる秘密裏の活動が主体。ハーパーは“ハープを奏でる者”を指しており、特にバードやレンジャー、エルフに人気が高い。シンボルは(映画でもエドガンが胸にピンを挿していた)竪琴と三日月を組み合わせたもの。
  • ゼンタリム:ソード・コーストの裏社会を支配しようと暗躍する悪の組織で、しばしばハーパーと対立している。ブラック・ネットワークと呼ばれることも。活動は様々で、軍事的組織もあり、スパイ活動や重犯罪、窃盗、傭兵業といったものから、長期間に渡って特定の地域に溶け込み生活するスリーパー的なエージェントも存在する。
  • “燃える拳”団:バルダーズ・ゲートを統治する四公会議から資金援助を得て、街を守る傭兵団。「バルダーズ・ゲート3」の時代には団長アルダー・レイヴンガードが大公爵の地位を得て、街と軍の両方を統括している。
  • ギルド:バルダーズ・ゲートでただ“ギルド”とだけ言う場合、これはあらゆる種類の犯罪者をまとめるバルダーズ・ゲートの大規模な犯罪組織を指す。犯罪組織としての活動は非常に広範囲で、詐欺や窃盗、高利貸し、脅迫といったものから、賭博や密輸、格闘大会の興業、政治への関与など、様々。市内の各地域に縄張りを束ねる幹部がいるほか、“九本指”と呼ばれる見るからに平凡な中年女性が地域のリーダー達をまとめるギルド長を務めている。

「Baldur’s Gate」シリーズと90年代のコンピュータRPG

「Baldur’s Gate III」

今回の特集にて、スクウェア・エニックスが生んだ傑作「ファイナルファンタジーVII」を大きく取り上げ、「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」と“BioWare”への影響について言及しました。

海外では「Baldur’s Gate」シリーズの大きな功績として、長年低迷していたアクションを伴わないクラシックなコンピュータRPGの復活を実現したことがしばしば挙げられます。

「Baldur’s Gate」シリーズがどんな復権を果たしたのか、今ひとつピンとこない方も多いかと思います。同時期のいわゆる西洋CRPGとビデオゲームの全体的な潮流、日本のビデオゲーム産業、世界のテック関連情勢を改めて整理してみると、「Baldur’s Gate」シリーズの功績がよく分かるだけでなく、23年ぶりの最新作「バルダーズ・ゲート3」がとてつもない人気を得ていることについても、興味深い背景や共通点が見えてくるので、この機会に少し振り返ってみましょう。

90年代のビデオゲームを取り巻く状況を大きく俯瞰してみると、90年にWorld Wide Web初のWebページが公開され、同年11月にはスーパーファミコンが発売。93年にはあの「DOOM」が誕生し海外ビデオゲームの歴史を変え、94年に初代PlayStationとセガサターンがリリース。96年にはNINTENDO64と「スーパーマリオ64」が登場し、翌97年に「ファイナルファンタジーVII」が登場しています。

この同時期に「メタルギアソリッド」や初代「バイオハザード」、初代「グランツーリスモ」、初代「Tomb Raider」、「Quake」、「Half-Life」といった作品が登場している状況からも分かる通り、90年代前半に芽吹いた3Dゲームの波が、90年代後半にはまさに本流となって世界を席巻するわけです。

90年代は、ハードウェアとソフトウェアの両面で日本が文字通りビデオゲーム文化を牽引していて、幾つかのドラクエとファイナルファンタジー、ストリートファイター、鉄拳、バーチャファイター、タクティクスオウガ、クロノ・トリガー、ロマンシング サ・ガ、ソニック、ゼルダ、ロックマン、バーチャロン、真・女神転生、ペルソナ、悪魔城ドラキュラ、ポケモンなど、JRPGや格闘ゲーム、アーケード、アクションなどジャンルを問わず、90年代に誕生した傑作を挙げていくと本当にキリがありません。

一方で、90年代の西洋コンピュータRPGを振り返ってみると、当時から海外RPGを好んでプレイしていた筆者から見ても、いくつかカルト的な傑作がありはしたものの、どんどんニッチ化していく先細りをひしひしと感じていたことを今でもはっきりと思い出します。

なお、90年代後半は「Diablo」と「Diablo II」、「Ultima Online」、「EverQuest」に代表されるモダンなオンラインRPGの台頭が象徴的な出来事だったと言えますが、その背景には“DOOM”や“Quake”、“WarCraft II”、“Age of Empires”、“StarCraft”といったオンラインFPSとRTSジャンルの大きな成功がありました。同時期に起こった3D化の波と合流した当時の熱量は凄まじく、95年に発売された3Dアクセラレータ“3dfx Voodoo”が文字通り一世を風靡したことを覚えている方も多いのでは。

ということで、分かりやすい例として、筆者が独断と偏見で選ぶ90年代の西洋コンピュータRPGで人気の高かった代表的な作品を挙げてみましょう。

  • 1990年:「Ultima VI: The False Prophet」、「Wizardry VI: Bane of the Cosmic Forge」
  • 1991年:「Eye of the Beholder」、「Might and Magic III: Isles of Terra」
  • 1992年:「Ultima Underworld: The Stygian Abyss」、「Ultima VII: The Black Gate」、「Wizardry VII: Crusaders of the Dark Savant」
  • 1993年:「Ultima Underworld II: Labyrinth of Worlds」、「ShadowCaster」
  • 1994年:「Ultima VIII: Pagan」、「The Elder Scrolls: Arena」
  • 1995年:「Stonekeep」、「Anvil of Dawn」
  • 1996年:「The Elder Scrolls II: Daggerfall」、「Odyssey: The Legend of Nemesis」
  • 1997年:「Diablo」、「Fallout」
  • 1998年:「Baldur’s Gate」、「Might and Magic VI: The Mandate of Heaven」
  • 1999年:「Planescape: Torment」、「Ultima IX: Ascension」
  • 2000年:「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」、「Diablo II」

改めて振り返ると、90年代には初代“Fallout”と“The Elder Scrolls”が誕生しているわけですが、当時から高く評価されつつもカルト的ヒットを超えることはなく、ビジネス的な成功はやはり「Diablo」と「Baldur’s Gate」、「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」が最も顕著でした。一方で、90年代は“Ultima”や“Wizardry”、“Might and Magic”など、ゆっくりと終わりつつあった歴史的な名シリーズの晩年とその盛衰を目の当たりにする時代でもありました。

“Ultima IX: Ascension”開発の酷い難航ぶりを覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、当時幾つかの著名な西洋RPGシリーズは3D化の波に乗ることができず、Ultima(※ UOを除く)やKing’s Quest、Quest for Gloryといった歴史的な名フランチャイズが何れも酷い3D化で完全に潰えてしまったのもこの時期です。

有り体に言えば、当時のアクションを伴わない西洋コンピュータRPGは、ジャンルのコアな愛好家、実際にプレイを楽しむユーザーのための領域として徐々に狭まりつつあったわけですが、「Baldur’s Gate」のスマッシュヒットを経て、“ファイナルファンタジー”的JRPGのエッセンスを取り入れた「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」は、好事家だけのものになりつつあったクラシックなコンピュータRPGに“新しいオーディエンス”を呼び込むことに成功し、“Infinity Engine”タイトルと数多くの亜種を生むことで、廃れつつあったジャンルを復興させたのでした。

2000年以降の動向と「バルダーズ・ゲート3」がもたらした新しいルネサンス

参考:「バルダーズ・ゲート3」の海外版ローンチトレーラー

もちろんこの復興がその後ずっと続いたわけではありません。2000年以降は、3D関連の描画やオープンワールド、キャラクター表現、リアルなアニメーション等を含む様々な技術的革新に伴い、モダンなアクションやオープンフィールド、オープンワールド要素を持つ高度なコンピュータRPGが実現可能となったことで、(Baldur’s Gateが西洋RPGに浸透させたキャラクター描写の深みを継承する)オープンワールド系アクションRPGの時代がやってくるわけです。

“Baldur’s Gate”が実現したアクションを伴わないコンピュータRPGの復興は、2009年の傑作「Dragon Age: Origins」で頂点に達しましたが、オープンワールド系アクションRPGの品質や規模、華やかな人気は右肩上がりで、クラシックなコンピュータRPGは再び緩やかな衰退の時期を迎えることになります。

2010年以降も「Pillars of Eternity」、Owlcat Gamesの「Pathfinder」、そしてLarian Studiosの「Divinity」シリーズを筆頭に、アクションを伴わないクラシックなコンピュータRPGの血脈はしっかりと受け継がれ、モダンな進化を果たしつつ、素晴らしい傑作も登場しましたが、やはりジャンルそのものを復活させるような成功を収めることはできませんでした。

しかし、“Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal”から22年の歳月を経て登場したシリーズ最新作「バルダーズ・ゲート3」は、2010年以降も脈々と、しかし静かに生き延びてきたジャンルにAAA規模の品質と大きな話題性を携え登場し、文字通り世界中のゲーマーとメディアが「バルダーズ・ゲート3」について口々に語り合う状況、つまり再び(愛好家だけではない)“新しいオーディエンス”を呼び込むことに成功し、奇しくも旧シリーズと同じく“アクションを伴わないクラシックなコンピュータRPG”の新しいルネサンスとも言うべき素晴らしい復興を実現したのです。

同じLarian Studiosの作品でありながら、あれほど高く評価された「Divinity: Original Sin 2」と最新作「バルダーズ・ゲート3」の間にどんな違いや革新があり、こんな成功を収めることになったのか、その要因をゲームの内側から特定することは余りに複雑で困難ですが、翻って“オーディエンスの規模”から省みれば、そこには驚くほど明白な差があることが分かります。

なぜ「バルダーズ・ゲート」がジャンルの復興を担うような役割を持つに至ったのか、そこは是非「バルダーズ・ゲート3」をプレイして、皆が口々にこの作品について語らずにいられないような魅力の正体を自分の目で確かめてみてください。

ちなみに余談ですが、「バルダーズ・ゲート」という存在は、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”の歴史から見ても面白いもので、1998年当時フォーゴトン・レルムのゲームが出ると知り、舞台である「バルダーズ・ゲート」の名を耳にしたTRPGファンを含む多くのゲーマーの反応は、“え……、どこ?”というものでした。

「バルダーズ・ゲート」という都市は、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”初版の頃から確かに存在していましたが、人気のアドベンチャーや小説に登場する機会は非常に少なく、前述の反応は端的に言えば、著名なウォーターディープやネヴァーウィンター、シャドウデイルあたりじゃないんかい!というつっこみだったわけです。

この辺りの背景には、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”の販売と権利がTSRからWizards of the Coastへ移行する時期だった頃の複雑な事情や、それほどビデオゲーム化に乗り気ではなかったTSRの思惑などが関係しているのですが、それはさておき、「Baldur’s Gate」と「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」、「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」の成功は“ダンジョンズ&ドラゴンズ”そのものにも逆輸入的な影響をもたらし、第4版以降はビデオゲームの“Baldur’s Gate”シリーズで起こった出来事の多くがしっかり正史として扱われ、「バルダーズ・ゲート」の設定が驚くほど充実するなど、人気都市の仲間入りを果たすことになるのでした。

「バルダーズ・ゲート3」も同じく“フォーゴトン・レルム”の歴史に影響を与えることになるのか、この辺りも今後の楽しみの1つだと言えますが、「バルダーズ・ゲート」が果たしたジャンルの復活や本家への影響を考えると、この魔法のような成功は“バルダーズ・ゲート”という都市そのものが持つ魔力、あるいはベハルの呪いによるものなのかもしれません。(冗談です)

最後に続編と完結編のストーリーをネタバレありでご紹介しますので、旧シリーズを通じて振り返った「バルダーズ・ゲート」入門はこれにて終了。長々と書いてきましたが、読み物系の情報は一先ずここまでとして、次回以降の特集では、これまでの話題をベースに、いよいよ最新作の具体的な内容を掘り下げていきます。

次の第4回は「バルダーズ・ゲート3」の魅力的なキャラクターたちと主人公選択のシステムについてご紹介しますので、お楽しみに!

ネタバレ注意:続編「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」と完結編「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」のストーリーについて

前回に続いて、最後に「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」と「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」がどんな物語を描いていたのか、その内容をネタバレ有りでご紹介します。

来る「バルダーズ・ゲート3」に向けて「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」以降のプレイを進めている方は、ここまでで終わりにして頂いて、旧シリーズをプレイする予定がない方、昔プレイしたけど一応おさらいしておきたいという方だけお進みください。

「Baldur’s Gate III」
「Baldur’s Gate III」

まずは「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」についてですが、実のところ“Shadows of Amn”のストーリーは三部作の中でもやや独立した内容になっていますので、今回は簡単な概要紹介に留めます。

“Shadows of Amn”のストーリーは、先ほどご紹介した神々の解説にもあった“強大な力を持つ定命の存在が神になろうとする”物語をテーマに描くものでした。

かつてエルフの都サルダネッセラーで活躍した有力な魔法使いだったイレカニスとその妹ボーディは、権力に対する強い野心から神になろうと画策するも失敗。都を追放され、エルフとの繋がりを断つ呪いにより寿命が大幅に縮んだことで、ボーディは生き残るために吸血鬼となることを選択し、一方のイレカニスは妹を救うためにも神の座をあきらめず、アスカトラの地下に巨大な研究施設を建設し、魂を回復するための実験と研究を始めます。

初代の冒険を経て台頭した、強力な魂を持つ“ベハルの子”である主人公とイモエンの存在は、イレカニスにとってまさに好機でした。2人を捕らえ研究することで、神に匹敵する力を得て、サルダネッセラーへの復讐も果たす、というのがイレニカスの計画でしたが、これは主人公との戦いを通じて阻止されました。

完結編「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」について

前半の概要でご紹介した通り「Baldur’s Gate II: Throne of Bhaal」では新たに5人の“ベハルの落とし子”が台頭し、彼らとの戦いが描かれるわけですが、主人公が持つ“ベハルの落とし子”の力が想像以上に強まっていたことから、自身の死を予見したベハルが次元界“アビス”の内部に作ってあった小さな異次元空間“ポケットプレーン”の内部で、サレヴォクの魂が顕現。主人公に取引を持ちかけ、ベハルの血を失った状態で物質界に復活し、パーティメンバーの1人として共闘することになります。(※ もちろんプレイヤーの選択によってはサレヴォクと合流しないことも可能です)

テシルの地で新たに台頭した落とし子は、疾風の“イラセラ”(エルフ)と不死身と思われた炎の巨人“ヤガ=シュラ”、ドラウのクレリック/メイジ“センダイ”、強大なブルードラゴン“アバジガル”、アムケスラン修道院の長で自己犠牲的な善の心を持つモンク“バルサザール”の5人。

主人公は見事この5人衆を滅ぼしますが、冒頭で“ベハルの落とし子”を保護する善意の巫女と思われたメリッサンの正体は、ベハルの巫女アメリッサンであり、彼女は5人衆と主人公一行をだまし、ベハルの神たる精髄をほぼ全て手中に収めました。遂には、ベハルをも裏切り、自身が新たな殺戮の神となるため、最後に残った最強の落とし子である主人公と戦い、そして敗れたのです。

この勝利によって壮大なトリロジーの物語は完結。その後主人公はフェイルーンの危機を三度救ったバルダーズ・ゲートの英雄として称えられ、燃える拳団と四公会議の頂点にまで登り詰め、街の最高責任者を務めました。

一方、ベハルの血を失って復活を果たしたサレヴォクは、生前に唯一愛した女性タモコを埋葬するために、フェイルーン大陸から遥か東方の地カラ=トゥアへと旅立ち、二度とソード・コーストへ姿を見せることはなく、行方知れずに。しかし、落とし子としての悪行はバルダーズ・ゲートで伝説的に語られることになります。

出典および参考資料

MobyGames
MobyGames
reddit
Rock Paper Shotgun
Forgotten Realms Campaign Set
Elminster’s Forgotten Realms
バルダーズ・ゲート:地獄の戦場アヴェルヌス
フォーゴトン・レルム・ワールドガイド
ソード・コースト冒険者ガイド
ダンジョン・マスターズ・ガイド

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