特集第1回:日本語版の発売が迫る「バルダーズ・ゲート3」はどんなタイトルなのか、その魅力と海外で絶賛された評価について

2023年10月26日 12:20 by katakori
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「Baldur’s Gate III」

今年8月に海外向けのローンチを果たし、ビデオゲーム史上に残る非常に高い評価を獲得した人気RPGシリーズ最新作“Baldur’s Gate III”の日本語PS5版、「バルダーズ・ゲート3」がいよいよ2023年12月21日に発売されます。

来る発売に先駆けて、スパイク・チュンソフトにご協力いただき、ディスコ エリジウムに続いて「バルダーズ・ゲート3」の魅力を掘り下げる特集をお届けできることになりました。

「バルダーズ・ゲート3」は、25年の歴史を持つ人気ファンタジーRPGシリーズの最新作であると共に、テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の最新ルール第5版を(D&D5eシミュレーターと言っても過言ではないほど)忠実に再現する本格コンピュータRPGであり、そして2017年に傑作RPG“Divinity: Original Sin II”をリリースしたベルギーの人気デベロッパLarian Studiosの集大成でもあるタイトルです。

本作が海外で高く評価されているという話題については、すでに多くの読者がご存じかと思いますが、日本語版の発売を楽しみにされている方には、本作の何がどう評価され、場合によってはビデオゲーム史上最高のRPGとさえ呼ばれる状況に至っているのか、今ひとつピンと来ていない人も多いのではないでしょうか。

参考:海外向けの「バルダーズ・ゲート3」ローンチトレーラー

“ダンジョンズ&ドラゴンズ”世界のフェイルーンと呼ばれる大陸が舞台となる「バルダーズ・ゲート3」は、ひょんなことから脳に禍々しい幼虫を埋め込まれた主人公グループ一行が怪物化する恐怖に抗いながら、この問題をなんとか解決しようと奮闘し冒険するなかで、世界の命運を左右する壮大な戦いに巻き込まれていく物語を描くRPGです。

ゲームとしては、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”の膨大な種族やクラスに基づくキャラクター作成や最大4人プレイ可能なオンライン/ローカル両対応マルチプレイヤー、同じくD&Dを忠実に再現するターン制の戦闘システム、プレイヤーの選択や行動によって柔軟に変化するストーリー、サンドボックス的な環境で楽しめる自由度の高いインタラクション、映画的で高品質なシネマティック、魅力的なコンパニオン達とその関係性に基づく奥深いロマンスといった要素を特色としています。

「Baldur’s Gate III」
主人公の1人レイゼルの脳に迫る幼虫、いやすぎる!

全体的な概要をまとめると、いわゆる伝統的な洋ゲー系のファンタジーRPGを思わせる内容ですが、「バルダーズ・ゲート3」の凄いところは、コンテンツの量と質が端的に言って“異常”なレベルで、かつ奥が深く、やたらとサービス精神旺盛でユーモアに満ちあふれ、文章とストーリーが底抜けに面白く、最先端レベルの映画的な演出とビジュアル、戦闘やダンジョン探索の満足度も非常に高い、文字通りあらゆる要素の完成度が高いことにあります。

しかし、本作の最も革新的で魅力的な達成は、限りなく本物に近いと感じられるテーブルトークRPG的体験にこそあると言えるでしょう。これは、ゲームマスターがキャンペーンの進行を担当し、プレイヤーたちとやりとりをしながら、その場の思いつきやダイスの出目、双方の想像力によって紡がれる、ある種のライブ感のようなものを指していますが、「バルダーズ・ゲート3」を実際にプレイしてみると、テーブルトークRPGの要素をシステムに組み込んだ従来のコンピュータRPGとは全く異なる次元で、本当にゲームマスターを含む友人達と手作りのキャンペーンを楽しんでいるかのような感覚が楽しめるわけです。

本作は、プレイヤーの想像力や選択によって、縦横無尽に変化するテーブルトークRPGのライブ感を確かに実現しているのですが、これを達成するためには膨大なコンテンツが必要で、本作には(あの“ディスコ エリジウム”や“Planescape: Torment”、小説“指輪物語”全3巻の分量を遥かに上回る)200万ワードを超えるテキスト、さらに174時間分のシネマティック、1万7,000種ものバリエーションを持つエンディングを用意していることが報じられていました。

とにかくおもしろい!ただし、ちょっとだけ難しい

「バルダーズ・ゲート3」の面白さは、ゲームプレイを構成する要素の圧倒的な品質の高さ、そして本物に限りなく近いテーブルトークRPG体験にあるわけですが、これを共にプレイする友人達、つまりゲームマスターやパーティメンバー達がつまらなければ、品質の高さも台無しです。しかし、本作で旅を共にするデジタルのゲームマスターとパーティメンバーたちは見事な変人揃いで、Larian Studiosの素晴らしいテキストと演出によって、プレイ中は笑いと驚きが絶えません。

この動画は、PlayStation 5版の発売時に公開された短編アニメーションで、愉快なパーティメンバー達の強烈な個性を如実に表しているのですが、恐ろしいのはこの映像よりもゲームプレイの方が面白いという事実でしょう。大きな話題となったドルイドの熊セックスシーンについても、全く同様のことが言えるのですが、こういったユーモアは“Larian Studios”というスタジオそのものと、これを率いるボスSwen Vincke氏の魅力と面白さ、サービス精神の旺盛さに由来しています。

発売直前のライブ配信でお披露目されたクマセックスシーン、観客の盛り上がりが凄い

こちらは、「バルダーズ・ゲート3」のアナウンス直後に公開された第1弾開発映像ですが、ここでは“Baldur’s Gate”シリーズのライセンスを獲得するために、Swen Vincke氏が自らウィザーズ・オブ・ザ・コーストの本社に乗り込み、プレゼン中に聞いたこともない条件(※ セレモルフォシスの導入、前述した幼虫による脳への寄生のことです)を提示されたことで、“ダンジョンズ&ドラゴンズ”第5版の制作を率いた名クリエイティブディレクターであるマイク・ミアルス氏の魂を誘拐して逃げ帰る愉快な小芝居が描かれています。(※ 映像は海外向けのものですが、自動翻訳字幕でも大まかな意味は分かるので、未見の方は是非ご覧になってください。今改めて見ると、WoTCが提示したD&Dライセンス供与の必須条件を、Larian Studiosが極めて高いレベルで実現していることも非常に興味深いところです)

Larian Studiosは、2013年に実施した“Divinity: Original Sin”向けKickstarterキャンペーンの頃から、実に10年近くに渡って、ことある毎にこういったおもしろ小芝居を続けていて、熱心なファンコミュニティとの密接かつオープンな関係を構築することで、多くのフィードバックを得てゲームの品質を向上させるポジティブな開発サイクルを育んできました。

こういった背景と長年の取り組みを経て誕生した「バルダーズ・ゲート3」は、テキストも平易で物語もさほど複雑ではなく、お使いクエストのような繰り返し・かさ増しのコンテンツも一切存在しないことから、最初から最後までずっと面白さが持続し中だるみのない、非常に遊びやすいタイトルですが、とにかく全ての要素が過剰に巨大で自由度が余りにも高く、ダンジョンズ&ドラゴンズ固有のルールが初心者にはやや難しいこともあって、ゲームに慣れるまでのハードルの高さが数少ない障壁となっています。

「バルダーズ・ゲート3」は前作の発売から23年を経たシリーズ最新作で、そもそも開発スタジオが違うことから(※ 初代と続編の開発は、Mass EffectやDragon Ageシリーズでお馴染み“BioWare”)、過去作をプレイしていなくとも全く問題なく楽しめるタイプの“続編”ではあります。

ただ、作品の世界観がダンジョンズ&ドラゴンズの壮大なフォーゴトン・レルム設定と“Baldur’s Gate”の初代/続編によって築き上げられた途方もない規模のロアに基づいていて、シリーズのお約束的な文法や背景が少なからず存在するだけでなく、ゲームプレイ面ではLarian Studiosが開発を手がけた“Divinity: Original Sin”と“Divinity: Original Sin II”の独創的なシステムをベースにした直系的な後継作品でもあるため、いずれか1つでもプレイしていれば、入り口のハードルは大きく下がるのですが、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」も「Baldur’s Gate」も「Divinity: Original Sin II」もプレイしていないとなると、出だしで相当面食らうことになるかと思います。

ということで、当サイトの「バルダーズ・ゲート3」特集は、ネタバレを可能なかぎり避けつつ(※ 発売前に公開済みのオフィシャルな情報やトレーラーで確認できる程度の内容に収まるよう努めます)、前述のハードルを下げることで、初回プレイの楽しさを最大限に支えることを目標にお届けします。

「バルダーズ・ゲート3」に興味を持った方にお願いしたいことがあります。本作最大の魅力は、前述した通り、まるで本物のようなテーブルトークRPG体験、ひいてはプレイヤー1人のためだけに手作りされたような自由度の高いゲームプレイにあるので、(膨大なクラスや魔法、種族、戦闘、システム周りのディテールを調べることはともかくとして)ストーリー上のネタバレやクエストの解決方法を安易に調べてしまうと、初回にだけ味わえる芳醇な果実の味わいを少なからず損なってしまいかねません。

一部取り返しのつかない大変なことも行き当たりばったりで大体なんとかなりますし(失敗が面白い展開を生む場合が少なくないのは“ディスコ エリジウム”と似ています)、戦闘が難しいようであれば、難易度はメニューからいつでも変更可能できます。ネタバレ一切なしでプレイする初周が一番おもしろい!このことだけでも覚えておいていただけると幸いです。

「バルダーズ・ゲート3」の記録的な成功と海外メディアの評価

「Baldur’s Gate III」

まず、データ的なところから簡単にまとめておくと、「バルダーズ・ゲート3」のMetacriticにおける評価はMetascoreが“96”、User Scoreが“8.9”で、同じく今年を代表する傑作の1つである「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(Metascore“96”、User Score“8.2”)を僅差で上回り2023年の同サイトにおける暫定1位を獲得。オールタイムで見た場合、全プラットフォームのランキングは現時点で歴代22位ですが、PS5に限定すると、誰もが認めるフロム・ソフトウェアの歴史的な傑作「ELDEN RING」(Metascore“96”、User Score“7.9”)を抜いて、歴代1位を獲得しています。(※ Metacriticサイトのシステム的な仕様か、ページを開いた際やリロード時にランキングの順位が上下場合があるのでご容赦ください)

一方、レビュースコアの算出方法が異なる“OpenCritic”においては、同じく「バルダーズ・ゲート3」がTop Critic Average“96”、Critics Recommendが“99”で、同じく「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」を僅差で上回り、やはり2023年の暫定首位。2015年にサービスがスタートした同サイトにおけるオールタイムランキングで「バルダーズ・ゲート3」が歴代3位に位置しています。

少し切り口を変えて、Metacriticで本作がカテゴライズされている“Western-RPG”ジャンルのオールタイムランキングを見てみると、「バルダーズ・ゲート3」は首位のお馴染み「ディスコ エリジウム」に次いで、歴代2位。4位にはシリーズの前作「Baldur’s Gate II: Shadows of Amn」が続いていますが、同ジャンルのTOP10を改めて確認すると、なんと10タイトルのうち4本をLarian Studiosの作品が占めていることが分かります。(※ ちなみにBethesda Game Studios作品はTOP10に3本がランク入り)

このことからも、Larian Studiosが知られざる名門であることが分かるのですが、さらにその内容を細かく掘り下げてみると、同ランキングの10位がPC版「Divinity: Original Sin II」(スコア93、PCのみ)、8位がPC版「Divinity: Original Sin Enhanced Edition」(94、PS4とXbox Oneは88)、5位がPC版「Divinity: Original Sin II – Definitive Edition」(95、PS4とXbox Oneは92)、3位がPCとPS5版「バルダーズ・ゲート3」(96、両プラットフォームとも同スコア)となっていて、タイトルリリースを重ねる毎にスコアを少しずつ伸ばしているのですが、ここで興味深いのは新作をリリースする度にコンソール移植の評価を大きく伸ばしていることでしょう。

最新作「バルダーズ・ゲート3」では、これが遂にPCとPS5版のスコアが並ぶ状態にまで品質と体験が均一に高められており、華やかなゲームプレイのおもしろさだけでなく、その裏では非常に複雑で高度なRPG体験を支える技術と経験を着実に積み重ねてきたことが分かります。

「Baldur’s Gate III」

これまでにも本当に素晴らしい傑作を生みだし、十分な評価を得てきた一方で、コアなRPGファン以外の認知度は決して十分とは言えなかった“Larian Studios”作品が、「バルダーズ・ゲート3」でなぜ爆発的な成功を果たしたのか、今年8月のPC製品版ローンチ時における主要な海外メディアのレビューを覗いてみると、レビュアーの興奮や動揺などから、その要因の一端が窺えます。

まずは、お馴染みPC Gamerのレビューから。PC GamerのFraser Brown氏は、「バルダーズ・ゲート3」がRPGジャンルの新たな到達点だと高く評価し、本来であれば混在しえない幾つかの要素を高い品質で1つにまとめあげたと紹介。一方で、プレイそのものの難しさと序盤のハードルについて言及しています。

160時間かけて陰謀を解き明かした今、「バルダーズ・ゲート3」はこれまでにプレイした中で最も偉大なRPGだと自信を持って言える。

これは、UltimaとBaldur’s Gate、Planescape: Torment、Arcanum: Of Steamworks、Magick Obscura、Divinity: Original Sinの最も良いところを組み合わせた私の夢のゲームだ。しかも「バルダーズ・ゲート3」はこれら大ヒット作の枠に留まることなく、映画的なストーリーテリング、無秩序なサンドボックスの狂騒、テーブルトップスタイルのロールプレイングといったそれぞれに相容れない理念を1つにまとめあげる方法を見つけたのだ。

しかもあろうことか、「バルダーズ・ゲート3」は幅の広さに奥深さまで兼ね備える途方もなく巨大な作品だ。本作を構成する3つの章には、精巧なダンジョンや強烈で忘れがたいクエスト、他に類を見ない駆け引きがプレイヤーの自由度をおびえさせるほどのシステムと共にぎっしり詰め込まれていて、それぞれの章がまるで1つの壮大なRPGのようだ。「バルダーズ・ゲート3」は岐路に満ちたゲームでもあり、歩みを進めるたびに多くの道があなたを誘惑するだろう。

この冒険に乗り出すのは、言うまでもなくかなり大変なことだ。D&Dは初心者にとって難しく、「バルダーズ・ゲート3」はそのルールや癖を気軽に紹介できるようなものではない。テーブルトークRPGも楽しむ“Baldur’s Gate”のベテランである私でさえ、かなりの難しさを感じたし、PC Gamerでは多くの人が20時間程度でゲームを最初からやり直すことになった。そのため、序盤は多くの時間をただ物事を理解し、泥沼にはまることに費やさなければならないかもしれない。しかし、ひとたびD&Dの奇妙さを理解すれば、素晴らしく楽しい時間が得られるだろう。

KotakuのKenneth Shepard氏は、「バルダーズ・ゲート3」を絶賛した上で、このプレイ体験を本物のテーブルトークRPGと比べることで、長年に渡ってプレイヤーに真の自由をもたらそうと奮闘してきたコンピュータRPGとビデオゲームの、いわば限界性のようなものについて論じています。

「バルダーズ・ゲート3」が実現した自由は驚くべきものだが、いずれこれを何十回も繰り返しプレイした時、あらゆるビデオゲームがそうであるように、「バルダーズ・ゲート3」もまた(技術やシステム、人間が作ったプログラムの制約を受ける)ゲームだったことを知るだろう。イマジネーションがテーブルトークRPGにもたらす自由を真に捉えることはできないのだ。

しかし、「バルダーズ・ゲート3」はLarian StudiosがテーブルトークRPGの精神を理解し、あの感覚を追い求め進化させる方法を知っていることの証明でもある。

他のRPGにこのような基準を課すのは無理だ。ほかでも言われているように、「バルダーズ・ゲート3」は、この規模のゲームを開発する手法として異常と言わざるをえない。これは、スタジオが何年もの開発期間と早期アクセス期間を確保し、熱心に協力するコミュニティとともにビジョンを研ぎ澄ますことで初めて実現できることだ。

ビデオゲームの新たな基準を示すというよりは、むしろビデオゲーム業界が「バルダーズ・ゲート3」のような作品を実現するために、これほど長く1つのゲームをじっくりと煮詰めることは通常ありえないという事実を改めて思い知らせるものであり、我々が知っているビデオゲームの限界と、その可能性の両方を提示する輝かしい手本だと言える。

「バルダーズ・ゲート3」のリードライターAdam Smith氏がかつて副編集長を務めていたRock Paper Shotgunは、本作の出来が素晴らしいという噂は事実だったと掲げ、作品の大きさとコンテンツの相対的な密度について言及。作品世界の広大さと濃密さの両立、そしてプレイヤーのためだけにあつらえたようなエモーショナルな経験を高く評価しています。

「バルダーズ・ゲート3」の広大な世界には、別世界かと思えるほどバラエティに富んだマップが登場する。1つのマップを完全に探索するにはかなりの時間が必要だが、その努力はしっかり報われる。「バルダーズ・ゲート3」の舞台は広大だが、大きすぎることに不満を覚えるようなその他のオープンワールド作品に比べると、はるかに焦点が絞られている。

このゲームに、XPファームのために何度でも復活するイノシシやスケルトンの集団はおらず、逃げた羊たちを捕まえないと死んでしまうと懇願する羊飼いの孤児もいない。

敵との遭遇は予め数が決まっていて、計画的に用意されたものだ。探索すると、そこには飛び移れる秘密の崖の道や隠された出会い、施錠されたエリアへの裏ルートがあり、好奇心を刺激しプレイヤーの行為に報いてくれる。注意を払うこともまた報われる。単に悪い魔女を殺すことはできるが、魔女を倒して子供を救うには、クエストの序盤で目にしたポーションのレシピを思い出す必要があるかもしれない。

「バルダーズ・ゲート3」には、コンテンツのかさを増すために詰め込んだような余りものはないが、たとえジョークやばかばかしい面白要素に見えても、無駄な内容は一切存在していない。親に駄菓子の袋を渡されて、泣き言をむりやり黙らされたような気持ちになるのではなく、様々な種類のカカオ豆から作られ、中にはキャラメルやビターなアーモンドが隠されている極上のトリュフを並べたトレイを渡されたような気分が味わえるのだ。

「バルダーズ・ゲート3」は喜びや驚き、悲しみ、苛立ちといった人間の様々な感情をこれでもかとぶつけてくる。ときには、極端なばかばかしさに笑うこともあるだろう。

GamesRadar+は、本作の面白さがテーブルトークRPGのキャンペーンを忠実に再現したところにあると分析。「バルダーズ・ゲート3」が単なる史上最高のRPGという評価に留まらない、途方もない傑作だと絶賛しています。

Larian Studiosは「バルダーズ・ゲート3」で不可能を可能にしたようだ。これは、何年もかけてペンと紙で作り上げたロールプレイングのキャンペーンを完全な忠実さで再現したものであり、単にルールセットを借用したのではなく、D&Dの真髄を細部に至るまで理解した何百人ものスタッフが長い期間をかけて作り上げた、原作に対する真摯な情熱の結晶なのだ。

ダンジョンズ&ドラゴンズが50年に及ぶ歴史の中でかつてない人気を誇っている今、「バルダーズ・ゲート3」は「Curse of Strahd」(※1)や「Critical Role」(※2)、多くのファンに愛されたシリーズの過去作と肩を並べる、ベスト中のベストになるだろう。「バルダーズ・ゲート3」は、あらゆる側面から見て最高のD&Dゲームや史上最高のRPGの1つといった評価を上回る、全てのジャンルを対象とするような新しいゴールドスタンダードだ。

(※1 未訳のD&Dアドベンチャーブック、“レイブンロフト”設定をベースにストラード伯爵率いる吸血鬼たちとの戦いを描き人気を博した)

(※2 マシュー・マーサーやアシュレー・ジョンソン、ローラ・ベイリーといったお馴染みのボイスアクター達がD&Dキャンペーンをライブプレイする超人気Webシリーズ。コミックや設定ガイド等もあり、2022年には最初のキャンペーンをアニメ化した“ヴォクス・マキナの伝説”が公開。第2弾キャンペーン“Mighty Nein”のアニメ化も決定している)

DestructoidのEric Van Allen氏は、テーブルトークRPG経験のデジタル化を試みたLarian Studiosの功績に着目し、その挑戦を評価。また、本作が成功を収めた背景についても分析しています。

テーブルトークRPGをデジタル経験に置き換えることは、永遠の難問のように感じられる。卓上のイマジネーション空間を捉え、高度に演出したシングルプレイヤーでもてなす体験を生み出すことは、実現不可能な夢のように感じられるかもしれない。しかし、「バルダーズ・ゲート3」はこれに限りなく近づいている。

「バルダーズ・ゲート3」は、かつてBioWareが手がけたダンジョンズ&ドラゴンズCRPGシリーズの3作目だが、これと同じくらい重要なのは、本作が「Divinity: Original Sin」と「Divinity: Original Sin II」で立て続けに傑作を作り上げたLarian Studiosの最新作であることだ。

すでに語り尽くされているように、「バルダーズ・ゲート3」の成功には多くの異なる要因が絡んでいる。Larian Studiosが確立した開発の歴史、比較的自由な開発期間と早期アクセス、近年急増したテーブルトークRPGの人気、やりがいのあるCRPGとBioWare系タイトルの両方に対するプレイヤーの飢えなどだ。

しかし、出来上がった「バルダーズ・ゲート3」はこういった要求を上回るものだった。非常に巨大だが、焦点は絞られている。大小さまざまな選択肢があり、ストーリーに影響を与える。このジャンルで最高品質のコンパニオン、挑戦的で忘れがたい戦いの数々、D&Dの壮大な伝承の上に構築されたような独自の作品世界。「バルダーズ・ゲート3」はまさに今遊べる最高のRPGの1つだ。

最後にご紹介するIGNのLeana Hafer氏は、満足度の高い戦闘と優れたテキストによって「バルダーズ・ゲート3」がコンピュータRPGの新たな高みに到達したと評価し、その位置付けについて興味深い見解を提示しています。

今後、全てのCRPGが「バルダーズ・ゲート3」のような品質を目指すべきだとは言いたくない。全てがこれほど大規模で野心的である必要はないし、ここまで濃密である必要もない。しかし、このジャンルにおける歴史的な瞬間で、他のCRPGを手がける人達にインスピレーションを得て欲しい模範的な例を一つ挙げるとすれば、間違いなく「バルダーズ・ゲート3」だ。

歯ごたえのあるタクティカルなオールドスクールRPGの戦闘、複雑なキャラクターと意味のある選択肢を用意した壮大で練り込まれたストーリー、登場人物達が闇に包まれるときに汗と悲しみの表情を浮かべる洗練さと映画的演出が理想的に混じり合う作品が再び訪れるのを14年待った。このリストを部分的に完成させるゲームは多く存在するが、最後にこれらが全て揃ったのは2009年の「Dragon Age: Origins」だった。このゲームとInfinity Engineを用いた偉大な過去作に匹敵するだけでなく、遂にこれらを凌駕する価値のある後継作が登場したと言えるときが来た。「バルダーズ・ゲート3」は求めていた全てを詰め込んだ作品だ。

「バルダーズ・ゲート3」とコンピュータRPGの新たな基準を巡る議論について

「Baldur’s Gate III」

上掲の海外レビュー抜粋を見ても分かる通り、本作が歴史的な傑作で、しかも現時点におけるコンピュータRPGの到達点の1つだとする評価がずらりと並んでいるわけですが、「バルダーズ・ゲート3」はゲーマー側の評価も極めて高く、Steamのユーザーレビューでは、33万人を超えるプレイヤーの実に96%が好評を付ける圧倒的好評作品となっています。

このこと自体は全てのゲーマーにとって喜ばしい出来事だと言えますが、本作の製品版が発売される際、海外の開発者コミュニティで「バルダーズ・ゲート3」の品質と評価について、本作の異質とも言える特殊性を象徴するような議論が巻き起こり、大きな話題となったので、第1回特集の最後にご紹介しておきたいと思います。

これは、宇宙Sci-Fi臓器売買シム“Space Warlord Organ Trading Simulator”や“South Park: Snow Day”、“It’s Fulfillment!”といった作品で知られるライターで、スタジオStrange ScaffoldのボスでもあるXalavier Nelson Jr.氏の問題提起が発端となったもの。

Xalavier Nelson Jr.氏は、「バルダーズ・ゲート3」が成し遂げた偉業を賞賛する一方で、今後登場する新たなRPGや品質の基準に対して、本作がもたらした興奮を照らし合わせようとするプレイヤーの行為について言及。成果品であるゲームとその開発プロセスは切り離せないとして、「バルダーズ・ゲート3」の誕生と成功は、長期の開発期間や“Divinity: Original Sin”と続編の開発を通じて得た技術的・組織的知識の蓄積、3年に渡って行われた早期アクセスの大きな成功とユーザーのフィードバック、世界7箇所のオフィスに400人以上の開発者を抱えるスタジオの規模、世界最大級のエンターテインメントIPである“ダンジョンズ&ドラゴンズ”のブランドと世界観、こういった複数の要素が複雑に絡み合って実現した特別な成果であり、かつビデオゲーム業界における最大級の挑戦だったと強調し、「バルダーズ・ゲート3」はRPGの新たな基準ではなく、“異常”な作品だとして、誰かが同じ試みをすればスタジオそのものが潰れかねないと説明。

ビデオゲーム産業は崖から象をぶら下げているような業界であり、自重で落ちない象の成功が落ちゆく象に対する告発として用いられると語った氏は、誰かが「今後全てのRPGがこうあるべきであり、開発者に弁明する余地はない」と叫んでしまえば、クリエイターは2度と(叫んだ人達が)愛するものを提供できないかもしれない事態を招く危険性があると警鐘を鳴らしています。

Xalavier Nelson Jr.氏の発言には、Obsidian EntertainmentのJosh Sawyer氏やBlizzard EntertainmentのChris Balser氏、BG2の開発にも参加したセダス/Dragon Ageの父David Gaider氏、傑作アドベンチャー“Night in the Woods”のクリエイターScott Benson氏、Insomniac GamesのデザインマネジャーRyan McCabe氏など、多くの著名な開発者が反応し、様々な建設的意見や「バルダーズ・ゲート3」の成果に関する見解が交わされましたが、一方で一部のメディアがこれを指し、“開発者たちがバルダーズ・ゲート3の成功でパニックに陥り、RPGの基準を引き上げないよう求めている”と喧伝。議論の焦点をマイクロトランザクションに基づくバトルパスやキャラクター衣装、ライブ運用ゲームのローンチ時に顕著なバグといったトピックにすり替え、Larian Studiosが古き良きやり方でプレイヤーを尊重し、ビデオゲーム産業の悪しきトレンドに勝利した、というような見出しで新たな対立構造を演出し、これを煽るような状況となっていました。

この話題がやや炎上気味に拡散したことで、最終的にはLarian StudiosのボスSwen Vincke氏もこの件について言及。氏は、「バルダーズ・ゲート3」が特定の状況下でのみ生まれ得る作品だったことに同意したうえで、“基準”という考え方そのものに問題があるのではないかと疑問を呈し、スタンダードは日々潰え、新しい物事が再発明されており、常に新しいものが登場していると説明。かつて“Assassin’s Creed”がこういった基準と見なされたものの、(Ubisoft以外に)誰も“Assassin’s Creed”のようなゲームは作れなかったと振り返った氏は、ビデオゲームのクリエイティブな樹形図には今も新しい要素が見つかる自由なスペースが多く残っていると伝えています。

さらに、Swen Vincke氏はジャンルの変革に開発規模の巨大さはさほど必要ないと語り、傑作「ディスコ エリジウム」は小規模チームで今とは全く異なるレベルのスタンダードを実現したと説明。ビデオゲームというメディアでは、常に技術的な進化が大きな部分を占めていて、そこに可能性が眠っているものの、クレイジーでクールな、他の誰とも違うことをするために、大規模な技術革新は必ずしも必要ではないんだと強調しています。

(※ そもそも、「バルダーズ・ゲート3」の異様とも言える成功はLarian Studiosにとって予想外のものでした。前作“Divinity: Original Sin II”の同時接続者数が最高で9万人強だったことから、当初Larian Studiosは「バルダーズ・ゲート3」発売初日のプレイヤー数を10万人程度と見積もっており、のちにSwen Vincke氏は初日の同接50万人が全く想定外の出来事だったと振り返っているほか、売上げについても250万本を販売した早期アクセスの成功がピークになるのではないかと懸念していたことが知られています。筆者も全く同じ感想ですが、体感としては製品版の発売1ヶ月前に愉快な熊セックスシーンをお披露目したその時、潮目が大きく変化したと感じています)

余談ながら、この議論と騒動については、DishonoredシリーズやDeathloopの開発を率いたArkane LyonのクリエイティブディレクターDinga Bakaba氏が、「バルダーズ・ゲート3」と共に“ELDEN RING”や“ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド”、“NieR:Automata”、“Red Dead Redemption 2”といった歴史的な傑作を引き合いに出し、非常に冷静な分析と併せて、時間経過の重要性やハードワークな開発者が陥りやすいインポスター症候群への配慮、クリエイティブに対するアプローチ、プレイヤーが取り得る健全な態度について、前述の議論をさらに掘り下げる素晴らしい意見をまとめているので、興味がある方は氏が公開したスレッドもチェックしてみてください。

話が長くなりました。この議論に関する是々非々はともかくとして、「バルダーズ・ゲート3」には、現役のトップ開発者達がこぞってその功績や開発手法、達成した品質について、喧々諤々と熱く語り合わずにはいられないような“魔法”が存在するわけです。

「バルダーズ・ゲート3」がなぜ、ここまでファンやメディア、開発者を熱く魅了するのか、その答えは本作をプレイし、クリアすれば自ずと理解できるはず。

当サイトの特集では、「バルダーズ・ゲート3」のプレイに役立つ背景と共に、序盤でつまずきやすいシステムやD&D固有のルール等について詳しくご紹介していきますので、是非自分だけの「バルダーズ・ゲート3」体験と冒険を満喫して、前述の問いに対する答えを、その目で見つけてみてください。

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