「ディアブロ IV: 憎悪の器」レビュー、ゲームプレイを全面的に刷新するシリーズ史上最大の拡張パック

2024年10月7日 9:08 by katakori
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「Diablo」

昨年6月のローンチと5つのシーズン運用を通じて、これぞBlizzard品質と言える極めて堅調かつ順調な運用が続いている「ディアブロ IV」ですが、来る10月8日にいよいよ本作初の大型拡張パック「憎悪の器」が発売を迎えます。

「憎悪の器」は、新たな地域や追加のストーリー、新クラス“スピリットボーン”、傭兵など、大量の新要素を導入する拡張パックですが、本拡張のリリース時には、過去最大規模の大幅な仕様変更やバランス調整を含む2.0アップデートも適用され、シーズン6“憎悪蔓延”も始動することから、(2.0 PTRをプレイした方ならご存じの通り)「憎悪の器」の前と後では、もはや別のゲームと呼べるほどの劇的な変化がもたらされます。

今回、「憎悪の器」リリースに先駆けて、製品版に近いレビュービルドを数日に渡ってプレイし、一足先に新ストーリーや新たなエンドコンテンツ、新クラス“スピリットボーン”の手触りを実際に確認してきました。筆者は「憎悪の器」以前の本編がローンチ当初から極めて良好な仕上がりで、野心的なシーズン運用を通じて拡張された現行の状態に、かなり高いレベルで満足していたことから、正直なところ、それほど劇的な変化が必要だとは感じていませんでした。

しかし、数日の先行プレイを通じて「憎悪の器」拡張と2.0の組み合わせがもたらした経験は、筆者の予想を大きく上回る抜本的な改善と進化を伴うもので、今となっては、とても以前の状態には戻れない!とはっきりと認識できる、強烈な体験だったと言えます。

これは、中だるみを排除しエンドゲーム到達までの道のりを充実させたプログレッションから、新クラス“スピリットボーン”の圧倒的な面白さと驚くべき柔軟さ、エンドゲームのさらなる拡充、非常に歯ごたえのある新難易度システム、満足度の高いパワーファンタジー、壮麗な新エリア“ナハントゥ”に至るまで、あらゆる要素が巨大かつ高い品質を保っているだけでなく、これらが総体として奥深いゲームプレイを作り上げたことによるもので、お馴染みRod Fergusson氏率いる“Diablo”チームが、またしても理想的な“Blizzard”品質を備えたコンテンツの確立に成功したと言わざるを得ません。簡単に言えば、“途方もなくでかいのに、どこを食べても美味い”という感じでしょうか。

という事で、今回は数日後の「憎悪の器」リリースに向けて、プレイレポート寄りのレビューを解説多めでご紹介します。

参考:先日公開された“憎悪の器”のゲームプレイローンチトレーラー

「憎悪の器」拡張と2.0アップデートの概要と主要な変更点について

「憎悪の器」は、本編で迎えた衝撃的なエンディングのその後を描くストーリーを軸に、舞台となる新地域“ナハントゥ”、精霊との繋がりを力に変えナハントゥのジャングルを守護する新クラス“スピリットボーン”など、多数の新要素を導入する大型拡張パックで、本編に適用される変更点もかなり広範囲に及ぶことから、まずは全体像が分かりやすく把握できるよう、本編に導入されるコンテンツと、拡張購入者が利用可能となるコンテンツの一覧を国内公式サイトから引用します。

ゲーム本編の新コンテンツ—全プレイヤーが利用可能

  • 新たな最大レベル:60(※ レベル51以上のキャラクターは、本アップデートの開始時にレベル50に設定されます。)
  • 新登場の難易度システム
  • 新たなパラゴン最大レベル:300
  • パラゴンシステムへの変更
  • アイテム品質のリワーク
  • 2つの新たなキャラクタースロット
  • 各クラスの新しいクラススキルとパッシブスキル
  • 新機能「パーティ検索」
  • 新たなシーズン限定コンテンツ
  • 新たなシーズン報酬(シーズン・ジャーニー、バトルパス、名誉のボード)

拡張パック「憎悪の器」—「憎悪の器」の所有者が利用可能

  • ナハントゥ地域:ダンジョン、拠点、サイドクエスト、新たなレギオンイベント、ナハントゥのモンスター系統
  • クラス「スピリットボーン」
  • 「憎悪の器」のストーリー
  • ナハントゥ地域の名声
  • ルーンワード
  • 暗黒の城塞
  • 傭兵
  • クラスト地下都市
  • 「憎悪の器」固有のリソースの取引

ぱっと見て、まず目に付くのは、最大レベルが60、パラゴンの最大レベル300、新たな難易度システムの導入あたりでしょうか。これについては、実際にプレイした際も非常に大きな変化が感じられた箇所でした。

まず、最大レベル60、パラゴン最大レベル300というのは、従来の最大100レベルを前半の50レベル(スキル)と後半の50レベル(パラゴン)で二分していたキャラクターのプログレッションを切り離し、独立させたもの。

最大レベルの変更については、スキルポイントが得られるレベルが、以前の実質50から、60に変更されるということで、これにより従来は最大で58ポイント(レベル上昇分と地域の名声報酬の合算)利用できたスキルポイントが、70ポイント近くまで純増し、スキルツリーにより多くのスキルポイントを費やすことが可能になります。

これによって、より柔軟なキャラクタービルド/スキルツリーのカスタマイズが可能になるというわけです。(スキルの細かな仕様変更として、奥義スキルのランクアップが可能になったことも挙げられます。奥義ランクの上昇により、ダメージ増やクールダウン短縮が得られるので、入手できるスキルポイントの増加は奥義ベースの一部ビルドに優れた恩恵をもたらしそうです)

“パラゴン”の大幅な仕様変更について

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パラゴンについては、かなり変更点が多いので、一先ず全体的な概要をまとめておきます。

まず、前述したレベルとパラゴンの進行が分割されたことによる大きな変更として、新たなパラゴンレベルがアカウントの同一領域内で共有されることになります。この新たな仕様によって、セカンド以降のキャラクター育成が格段に楽になる、非常に嬉しい変更だと言えるでしょう。

また、パラゴンレベルの進行は、1レベルで4ポイント獲得できた従来の仕組みから、1レベル上昇につき1ポイント獲得に変更。レベリングの進行速度は従来のポイント獲得とそう変わらない程度のスピードで、今回のプレイ中には、かなりテンポ良くパラゴンポイントが貯まっていく様子が確認できました。

この新仕様により、獲得可能なパラゴンポイントの総数は、従来の225ポイントから、320ポイントに増えることになり、新たなスキルシステムと同じく、より柔軟なプレイスタイルのカスタマイズや強化が可能になります。

パラゴンボードそのものにも様々な変化があり、レジェンダリー・ノードとレア・ノード周りに各ノードの特性に紐付いた、より便利なノードが配置されるレイアウトの調整も印象的でした。

一方、もう1つの大きな仕様変更として、利用可能なパラゴンボードの最大数が5つとなる新たな制限が設けられています。以前の仕組みでは、なるべく多くのパラゴンボードを接続して、強力なレジェンダリー/レア・ノードだけをつまみ食いするような構成が多くなりがちでしたが、この変更によって、有効化するパラゴンボードを厳選して、それぞれにより多くのポイントを費やしていくスタイルに変更を余儀なくされます。

これまで通り、消費したパラゴンポイントの払い戻しも可能なので、ボード厳選の必要性は、ビルド構築の楽しい悩ましさを増す、非常に優れた調整だと感じました。

新しい難易度システムと進行について

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従来の難易度は、4段階のワールドティア(アドベンチャー、ベテラン、ナイトメア、トーメント)で進行していましたが、「憎悪の器」拡張と2.0アップデートでは、この進行が全面的に刷新され、ワールドティアの総称そのものが廃止。段階的なトーメントの復活を含む以下のような構成に変化しました。

  • ノーマル:標準難易度
  • ハード:経験者向け、モンスターを倒した際の獲得経験値/獲得ゴールドが75%増加
  • エキスパート:序章クリアで解禁。獲得経験値/ゴールドが125%増加
  • ペニテント:本編ストーリークリアで解除。獲得経験値/ゴールドが175%増加
  • トーメントI:レベル60に到達し、奈落ティア20クリアで解禁。獲得経験値/ゴールドは300%増加。ここからエンドゲームが始まり、新たなアクティビティや“祖霊”装備が利用可能となるほか、以下のようなステータス低下も適用されます。
    • 防御力250低下、耐性25%減少
  • トーメントII:奈落ティア35クリアで解禁。獲得経験値/ゴールドが400%増加。
    • 防御力500低下、耐性50%減少
  • トーメントIII:奈落ティア50クリアで解禁。獲得経験値/ゴールドが500%増加。
    • 防御力750低下、耐性75%減少
  • トーメントIV:奈落ティア65クリアで解禁。獲得経験値/ゴールドが600%増加。
    • 防御力1,000低下、耐性100%減少

この新システムに関するインプレッションは後段で改めてご紹介しますが、大きな変更の一つとして、“神聖”装備の廃止が挙げられます。

この変更には、シーズンやゲームプレイを重ねることで、本来の役割が薄れ、旧トーメントに至るつなぎに過ぎなくなっていた“神聖”装備をスキップし、エンドゲームへの到達を早める効果があり、お気に入りの装備を長く使う機会が増えたように感じました。

なお、最新の“祖霊”品はアイテムパワーが常に最高値の800で固定となり、かつ“大いなる特性”が一つ確定で付与されます。

エンドゲーム以降における新難易度システムの見どころは、トーメントIからIVまで、アイテムの品質そのものに変化がないことにあり、違いはドロップ率のみということ。つまり、運が良ければトーメントI入り早々に最終装備が手に入る可能性にあり、筆者がプレイしていた際も、実際にトーメントIで“大いなる特性”が3つ付与された強力な装備を入手したことがありました。

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参考:トーメントIでドロップした祖霊ユニークの3GA品

一方、通常品質装備のパワー最大値は750で、トーメントIにおける祖霊ドロップはかなり低めだったことから、つなぎの“神聖”装備がなくなったことと相まって、装備の厳選や強化により深い意義が生まれ、(750品の名工品強化も可能となったことから、素の祖霊よりも厳選・強化した750品のほうが強力な場合もままあり)お気に入りの装備に対する愛着が増したことも印象的でした。

難易度については、モンスターのレベル表示が廃止されたことが大きな変更点の1つで、同様の変化として、ナイトメア・ダンジョンと獄炎軍団のティアも廃止。これまでのワールドティアでは、各種ティアや召喚方法、一部アクティビティによってモンスターレベルに大きな違いがありましたが、拡張/2.0のゲームプレイにおけるティア進行は“奈落”のみとなり、各難易度を軸に統一感のある戦いが楽しめるように変化しています。

また、各トーメント難易度の解除条件が“奈落”となっていることからも分かる通り、プログレッションの軸が“奈落”のティアに集約され、進行がより分かりやすくなっただけでなく、グリフの強化も“奈落”で行われるよう変更されたため(※ ナイトメアのXPによるランクアップは廃止、クリアした奈落のティアに基づく%アップグレード成否チャレンジに刷新される)、ゲームの進行とグリフの強化がより一体化したことも嬉しい改善だと言えます。

難易度の影響を受ける“防御力”の新たな仕様について

また、防御力についても仕様が大きく変化しているため、スクリーンショットを添えて新しい仕様を確認しておきましょう。

まず、これまで敵から受ける物理ダメージを最大で85%減少させる防御力のソフトキャップは9,230で、難易度による増減はありませんでしたが、拡張/2.0以降の防御力に関する仕組みは、以下のように大きく変化します。

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防御力ソフトキャップが従来の9,230から大幅減の“1,000”に変更

このスクリーンショットの難易度は非トーメントであることから、ソフトキャップを上回る防御力1,013により、85%の物理ダメージをカットできる状態にあります。

これが、トーメント以上の難易度になると、実際の防御力は次のように変化します。(※ 今回のレビューでは、残念ながらトーメントIIIに到達できなかったため、例はT1とT2のみとなっています)

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トーメントIでは、防御力-250の制限が付与され、防御値は先ほどの1,013から“763”に低下
物理ダメージのカット率は56%まで減小しました
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こちらはトーメントIIの防御力、さらに-500の制限が付与され“593”まで低下
物理ダメージのカット率はなんと35%まで落ちています

属性耐性も(従来通り)同様の仕組みで減小するわけですが、防御力の低下は思いのほか顕著な影響があり、防御力が1,000低下するトーメントIVでは、最大のダメージカットに実質2,000の防御力が必要になるわけです。筆者が実際プレイした際も、攻撃力は問題ないものの、防御面を強化しないとダメだと感じる状況に直面するケースがあり、改めて後述しますが、以前よりも防御面の強化が重要になったと感じました。

ここに生じた大きな穴を埋めるのが、まさに先ほどご紹介した追加のスキルポイントやパラゴンの仕様変更だと言えるわけですが、もう一つ顕著な防御面の強化要素として、これまでの“王族”(五角形)品質を上回る“豪奢”(六角形)品質の宝石が挙げられます。“豪奢”品質には、単一属性耐性+60%、全耐性+12%、防御力+240といった非常に優秀な強化が揃っているため、高トーメント入りする際には、まず最優先で揃える必需品になると考えられます。

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参考:豪奢なルビー、防具用の強化がライフ最大値%上昇ではなくなった

なお、宝石については、一部効果に変更が加えられており、これまでの防御面強化で定番だった防具ソケット用のルビーの効果“ライフ最大値xx%上昇”が主要アトリビュートの“筋力”値強化に置き換えられたことから、ライフを積んで生存性を向上させる手法が以前ほど有効ではなくなっています。(※ 防具のソケットは新要素となるルーンワードに用いるのが吉ということでしょう)

この変更に伴い、これまで筋力増だったアメジストの防具強化が“障壁”の生成量増加に、“障壁”生成量増だったダイヤモンドの防具強化がアトリビュートの“全ステータス”値強化に変更となっているのでご注意ください。

■ 待望の復活を果たす“ルーン”と“ルーンワード”

2019年11月の「ディアブロ IV」正式発表時から導入が明言されていたものの、製品版には実装されなかった“ルーン”と“ルーンワード”システムが「憎悪の器」の新コンテンツとして遂に導入されます。

最新作のルーンとルーンワードは、El>Sol>Dol>LoでFortitudeどん!的なD2仕様ではなく、2タイプの異なるルーンを組み合わせて効果をカスタマイズする全く新しい仕組みを特色としています。

ルーンは大きく“儀式”と“招来”の2タイプに分類され、以下のように組み合わせてソケットにセットすることで、初めてルーンワードの発動が可能になります。

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“儀式”のルーンは、“招来”のルーンに設定された効果を発動するための条件を記載したもの。“招来”は攻守様々な効果を持つルーンで、現在は“儀式”が17種類、“招来”が28種存在しており、“招来”には各クラスの一部スキルなども含まれるため、ソーサラーのフロストノヴァを放つローグや、バーバリアンのウォークライを放つソーサラーなど、他クラスのスキルを使用するビルドの作成も可能になります。

また、ルーンワードの発動には、儀式の実行によって得られる“供物”と呼ばれるリソースを貯め、組み合わせた“招来”のコストを満たす必要があるのですが、まずは実際のルーンを見てみましょう。

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参考:儀式のルーン2種、それぞれに異なる発動条件と供物の獲得数が確認できる
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参考:こちらは招来のルーン2種、供物のコストを満たせば個々の効果が発動する
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ルーンワードを装備すると、招来の効果がアイコンで表示されます
なお装備可能なルーンワードは最大2セット、2スロット装備は頭(New)、胴、脚部、両手武器の4種

分かりやすい例として、儀式のルーン“セム”と招来のルーン“クライ”を組み合わせてみます。この場合、回避行動を1度取ると得られる供物は50。クライの〈渦〉を発動するには、300の供物が必要ですから、回避行動を6回行うことで、クライの〈渦〉が発動します。

一度発動すると供物は0に戻ることから、改めて6回回避すれば、再びクライの〈渦〉が発動するということになります。(注: 日本語版だとボタンやキーで任意に発動できる回避行動[英語版では“Evede”]と、防御ステータスの回避率に基づくパッシブな回避[英語版は“Dodge”]の両方が同じ“回避”と記載されているため、若干ややこしいですが、セムの回避は、アクションの方の回避です)

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装備したルーンワードは紫枠のアイコンで常時表示され、供物の蓄積量がゲージ確認できる

また、本作のルーンワードには、オーバーフローと呼ばれる仕組みがあり、必要な供物の値を供給値が上回った場合、固有のボーナスや強化が適用される場合があります。

今回ご紹介したルーンであれば、回避で50の供物が得られる“セム”(儀式)と、25の供物でソーサラーの隕石を発動する“トン”(招来)を組み合わせると、供物の供給が上回るため、オーバーフローが発生し、隕石の数が以下のように増加します。

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セムでトンの隕石を発動した瞬間、オーバーフローの効果で隕石が2発に増えている

なお、一部オーバーフローの効果は、供給量によって増減します。上掲した儀式のルーン“ザン”(奥義スキル発動で供物150供給)に“トン”を組み合わせた場合は、隕石の落下数が大幅にアップします。

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要25のトンに供物150を供給した場合の隕石落下数、実際は見えていない箇所にもう1発落ちているはず……

ちなみにルーンには3段階(マジック、レア、レジェンダリー)のレアリティがあり、街の宝石職人にて、同一ルーン3つを上位のランダムルーン1つと交換することが可能です。

この他にも大量の変更点や新要素が用意されているのですが、とても網羅できる量ではないので、そろそろ「憎悪の器」拡張の目玉である新クラス“スピリットボーン”や本編に続く新ストーリーに焦点を当ててみましょう。

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霊界と繋がり守護精霊の力を得て戦う新クラス「スピリットボーン」

参考:スピリットボーンの出自やゲームプレイが確認できるトレーラー

“スピリットボーン”は、「憎悪の器」拡張を導入することで利用できる6番目のプレイアブルクラスで、機動力の高い戦闘や柔軟なビルド構築、4体の守護精霊ジャガーとゴリラ、イーグル、センティピードがもたらす、それぞれに全く異なる個性を持つ多彩なプレイスタイルを特色としています。

新たな地域として導入される“ナハントゥ”の歴史や設定、霊界、ザカラム教団の教祖でもあるアカラットとの関係、現地で使われている独自の言語に至るまで、“スピリットボーン”には膨大かつ綿密なロアが構築されていて、本編でもそのあたりの背景が様々な形で描かれ、非常に面白いのですが、幸い国内公式サイトに“スピリットボーン”の背景が分かりやすくまとめられていますので、気になる方はそちらをご確認いただくとして、今回のレポートでは、ゲームプレイのインプレッションに絞って“スピリットボーン”のディテールをご紹介したいと思います。

それぞれに異なる特性を持つ四体の守護精霊

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“スピリットボーン”は、3連コンボの基礎攻撃を持ち、近~中距離戦に秀でる近接型の戦士で、両手武器のグレイヴや杖を奮う機動力の高い戦闘スタイルを特色としていますが、最大の特徴は霊界を通じて繋がる四体の守護精霊がもたらす汎用性・適応力の高さとそれぞれに全く異なるプレイスタイルにあると言えるでしょう。

それぞれの特徴は、ジャガーは目にも止まらぬ速さで猛攻を繰り出す非常に俊敏な炎系近接特化、ゴリラは生存性の高さと反撃に秀でるタンク型、イーグルは高速な移動と回避力の高い電撃系の中距離戦特化、センティピードは継続ダメージとクラウドコントロールを得意とする毒タイプのシャーマン系能力者といったところですが、“スピリットボーン”の面白さは、このどれか1つをスタイルとして選択するのではなく、各スキルタイプ毎に自由に組み合わせられる柔軟なビルド構築にあります。

以下のスキルツリーを見てもらえれば一目瞭然かと思いますが、“スピリットボーン”のスキルツリーには、基本やコア、奥義、重要パッシブといった各ノードのカテゴリに、それぞれ4つの守護精霊と紐付いた4色のスキルが用意されていて、従来のクラスと同じくこれらを自由に組み合わせて使用することが可能です。

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スピリットボーンのスキルツリー、4種の守護精霊が4色のアイコンで色分けされている

もちろん、同じ守護精霊を示す同一色のスキル間には、しばしば非常に強力なシナジーやリソースで紐付くような密接な関係があり、同じ系統のスキルを揃えて方向性を集中させるか、それとも守護精霊に捕らわれず好みのスキルを組み合わせるか、全てはプレイヤーの自由です。

またバーバリアンの“専門知識”やネクロマンサーの“死者の書”などと同様に、スピリットボーンにもクラス専用の強化システム“精霊の広間”が用意されており、守護精霊の何れかを選択することで最大2つの強力なパッシブ・スキルを獲得できます。ここでもパッシブ2種の選択は自由で、同一色によるさらなる特化、そして異なる色の組み合わせを選ぶことも出来るわけです。

“猛威”と“決意”について

同じ守護精霊を選ぶ際のシナジーの一つに、他のクラスにはないスピリットボーン固有のメカニクスである、“猛威”と“決意”というキーワードが存在するので、少し具体的なディテールを紹介しておきましょう。

スピリットボーンのスキル使用に用いられる主要なリソースは“活力”と呼ばれるものですが、この“猛威”と“決意”というのは、第2のリソースのようなもので、“猛威”は主にジャガーと、“決意”は主にゴリラのスキルに紐付いています。

まず“猛威”は、ジャガーの一部スキルの使用や特定のパッシブ等によって得られるポイントで、“猛威”の蓄積1に対して、攻撃速度が5%上昇し、最大4回まで累積するほか、それぞれの効果が4秒間持続すいるというもの。この仕組みをベースに、ジャガーの一部スキルには蓄積した“猛威”を消費、或いは“猛威”を保持していることで固有の追加ボーナスを得るような効果があるのですが、当然ながら、“猛威”を蓄積するスキルと“猛威”を利用するスキル(どちらもジャガー)を組み合わせないとシナジーは得られません。

一方の“決意”は、特定のゴリラスキルで攻撃した際に蓄積するポイントで、“決意”を得ているとダメージ減少率が20%上昇する防御系の能力。こちらは最大で8まで蓄積しますが(効力は変化なし)、敵の攻撃を受けると“決意”が1減少するという仕組みとなっています。これも“猛威”と同様に、“決意”の保持や消費により得られる追加のボーナスが複数存在していることから、効力を最大化するためには、やはり“決意”を供給するスキルと利用するスキルを適切に組み合わせる必要があります。

もちろん、“猛威”と“決意”を蓄積するだけに留め、素のボーナスを恒常的に獲得するのもアリなわけで、ビルドの可能性を大きく広げる要素の一つとなっています。

“スピリットボーン”のインプレッション

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“スピリットボーン”固有のスキルやパッシブ、レジェンダリー、ユニーク等に関するディテールは、実際にプレイして確認していただくとして、今回は“スピリットボーン”のゲームプレイに関するインプレッションをご紹介しておきます。

参考までに、今回の先行プレイでは、(新スキルやパッシブが実装された)旧クラスをプレイする時間が確保できず、“スピリットボーン”のみをプレイし、トーメントIIまで到達しました。獲得したパラゴンは最終的に160ポイント程度で、4枚のパラゴンボードを有効化し、それなりの強化を得た状態で、各種エンドゲームを楽しんだ、という(ハイエンドではない)状況での感想になります。

“スピリットボーン”がどんなクラスなのか、シリーズのファン向けにざっくり説明すると、D3のモンクをベースにデーモンハンター、ウィッチドクターをごちゃ混ぜにして強化したようなクラスというのが手っ取り早く、モンクを最新作に適合するよう徹底的にリファインしたような印象を受けました。敵を散らしたり、吸い込んでまとめたり、瞬間移動系のスキルで場を荒らしたり、逃亡させたり、CCもDoTも単一攻撃も、遠隔攻撃もできる、文字通りの万能型で、これまでにも重ねてお伝えしている通り、カスタマイズの柔軟さとバリエーションの多さは“ディアブロ IV”随一と言って間違いなく、従来のクラスにはなかったスタイルのゲームプレイが存分に楽しめます。

では、実際のプレイがどうだったかと言うと、パラゴンに入る前の序盤から中盤頃までは、かなり広範囲にビルドを模索したものの、従来のクラスに比べて、今ひとつ決定打に欠ける器用貧乏タイプという印象がしばらくぬぐえませんでした。

今回は、同一守護精霊間のシナジーや無料トリガー/Proc系のスキルに着目してビルドを構築し、それなりの手応えはあったものの、生存力を高めると殲滅力が、与ダメージに特化すると防御が心許ないような状況が続いていたところ、レジェンダリーと化身がある程度揃い始めた辺りから、この傾向が一変。有効なシナジーやProcの組み合わせ、選択肢の幅が突如として増え始め、驚くような強さを発揮するようになりました。

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筆者のビルドを激変させた2つの化身

最終的に落ち着いたのは、機動力スキルと回避で“嵐羽”と呼ばれる電撃ダメージソースを複数発生させる、イーグル主体の高速移動・遠距離攻撃型ビルド。“嵐羽”に関係するシナジーとProcを積みあげて、回避と瞬間移動系スキルを併用しながら“嵐羽”を無限に射出するというスタイルですが、回避から放たれる複数の“嵐羽”が何れも敵をめがけて射出されるだけでなく、これがクールダウン短縮系のProcまでトリガーさせることから、攻守に優れたビルドが出来上がり、トーメントIのワールドボスやレギオンイベントをソロで問題なくクリアできる強さにまで成長しました。

これをわざわざ紹介したのは、拡張/2.0以降のトーメント“x”難易度について驚かされたプレイ感を伝えるためです。

正直なところ、拡張/2.0以前の感覚で“この嵐羽ビルドならOP過ぎて余裕だろう”(なんならT3入りもすぐでは)とナメていたT2の解除条件“奈落ティア35”に挑戦したところ、ボスに全く歯が立たず敗退。その後、少し調整を加えて挑戦したものの、制限時間内にボスを倒せない負けが3度ほど続きました。

これはしっかりビルドを底上げしないとダメだとようやく気付き、改めて見直しを図ってみると、強化と改善の余地がまだまだ広範囲に残されていることが分かっただけでなく、これを実現するための選択肢(アクティビティ)が眼前に多く広がっていて、あの手この手でビルドを強化するプレイそのものがとても楽しく、従来の感覚では通過点に過ぎなかった“最高ランクではない難易度”の経験が大きく刷新されたと感じると同時に、最高ランクのトーメントIVへの期待も一層高まる、以前にも増して非常に良好なプレイ感を得ることができたわけです。

最後に、身も蓋もない感想ですが、やはり新クラスというだけで、プレイの楽しさが倍増しますね。先行レビューでプレイした進行は、当然ワイプされるので、今はもう一秒でも早くスピリットボーンのあれこれをもっと試したい!という渇望で一杯。そして、新クラスが楽しすぎると無邪気に思える状況こそ、余計なノイズを感じさせない「憎悪の器」拡張と2.0アップデートの見事な完成度の高さを示していると感じ入った次第です。

個性的な能力を持つ4人の“傭兵”たち

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「憎悪の器」の導入後に利用可能となるさらなる新要素の1つとして、プレイヤーと共に戦ってくれる“傭兵”が遂に復活を果たします。

今回の傭兵たちは“青白き手”と呼ばれる寄せ集めのチームで、ストーリー的な設定や背景がしっかり用意されており、頼りになる隻腕の縦持ち“ラヘア”をはじめ、とにかく物騒なカニバリズム系婆さんバーサーカー“ヴァリアナ”、半人半悪魔の可愛い男の子“オルドキン”など、超個性的な面々が揃い、独自の拠点まで用意された、豪華な作りとなっています。

今回の傭兵達には、それぞれに固有の能力と独自のスキルツリーが用意されており、ビルドの足りないところをしっかり補足してくれる、ビルドにさらなる柔軟性をもたらす存在として活躍するだけでなく、プレイの目的に応じた支援まで提供する非常に頼りになる存在に進化しています。

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分かりやすい例は、傭兵の1人アーチャーの“スーボ”が持つ固有のパッシブ能力で、彼を雇用すると、ミニマップとマップに一定範囲内の敵と一部素材(植物と鉱石)の位置が全て表示されます。

今回のビルドでは、エンジェルブレスと鉄の塊がかなり不足し、装備の強化に苦戦する場面が多かったのですが、“スーボ”を雇用することで、細々と素材を貯めてピンチを乗り切ることが出来ました。(※ これは、どうやら先行アクセス時の問題で、製品版はクラフト素材のドロップや入手性がかなり改善しているようです)

また、4人の傭兵それぞれに固有の報酬まで用意されていて、共に戦っているだけでXPが貯まり、様々な報酬が入手可能となります。この報酬には、傭兵の根城で使用できる固有の通貨が含まれていて、根城に店を構えるかわいい女の子が様々なアイテムと通貨の交換取引に応じてくれます。

このお店の商品には、化身の素材に使える箱が含まれるほか、筆者が覗いた際には、祖霊の3GA品がとんでもない安値で売られていて、トーメントIのプレイ中だったこともあり、とても驚かされました。

ナハントゥの地で繰り広げられる「憎悪の器」のストーリー

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「憎悪の器」とアップデート2.0のゲームプレイは、最高!と言える素晴らしい品質に達していますが、ストーリーはどうでしょうか。

筆者は、「ディアブロ IV」本編のストーリーを高く評価していて、初代を彷彿とさせるようなダークな世界観と運命論・決定論的な預言に対する人間の“自由意志”を、極めて繊細な機微と抑圧したトーンで描いた、新サーガの始まりに相応しい船出を果たしたと考えています。

今回のレビューにおいて、初回の楽しみを損なうネタバレは一切しませんが、一つ明白な点として、「憎悪の器」を含む「ディアブロ IV」の物語は、(天界も地獄も全くのだんまりで、こと本尊に至ってはなんとやらという)まだサーガの序章に過ぎないことを挙げておきます。

「憎悪の器」のストーリーは、衝撃的な展開で本編を終えたクリフハンガーのその後を描くもので、本編のダークさや非常に繊細なアプローチとはやや赴きが異なるトーンの、新章に相応しいボリュームと大きな展開が用意されています。

サーガの序章であるということを念頭に置いて、「ディアブロ IV」本編と「憎悪の器」拡張の物語を俯瞰した際、そこで閉合的に浮かび上がるのは、現在の“Diablo”チームが構築している壮大な計画の存在であり、提示される一部の物語の善し悪しとは別に、眼前で展開し描かれる出来事が極めて綿密かつ周到に、理想的な“Blizzard”品質で構築された、堅固な“氷山の一角”だと強く確信できること、そのこと自体が驚くべき完成度の高さを示していると感じます。

また、“Diablo”シリーズにおける「ディアブロ IV」のストーリーは、(天界と地獄の人智を超えた対立、そこに否応なく巻き込まれる人類の些末さのコントラストから生じる大きなスケール感や絶望を扱ってきた、ロア偏重の)過去作に比べて、(少なくとも現在の序章は)人間そのものに大きくフォーカスしています。

その象徴たる存在がまさにネイレルであり、戦闘や身体的な強さではなく、知識と決意、強固な意思、彼女が持つ善性のみを以てメフィストに抗うその姿と孤独は、不滅の存在である神々が抱えるある種の限界、定命の存在にすぎない人間(ひいてはネファレム)が持つ根源的な強ささえ示しているような印象を受け、物語の中心的な人物として、これまでのシリーズには見られなかった素晴らしい魅力を発しています。

肉体的にも精神的にも限界ぎりぎりの状態で歩みを進めるネイレルが、邪悪なトリックスターであるメフィストの奸計にどう立ち向かい、どんな展開を迎えるのか、最新のストーリーは是非自分の手で確かめてください。

なお、今回の新ストーリーでは、あちこちで1,000年近く前に活躍した歴史上の偉人アカラット(※ 霊界を発見したナハントゥ出身の預言者、パラディンやクルセイダーが所属していたザカラム教団の聖人・教祖として知られる)の話題が出てきますが、先日Blizzardがアカラットの人物像を紹介するロア映像を公開しているので、ネイレルのロア映像と併せて事前にチェックしておけば、ストーリーの理解がより進みやすいかと思います。

参考:ネイレルのロア映像、彼女のかわいそう物語はどうなる
参考:アカラットのロア映像、聖人としての人物像や功績、ある獣との関係が描かれている

「憎悪の器」は、あの“Lord of Destruction”を遥かに上回る、シリーズ史上最大規模の拡張パックであり、安定したシーズン運用や本編のアップデートを1年以上に渡って継続してきた“Diablo”チームの新たな集大成として、今後も続くサーガを推進させる力強い一歩です。

毎回大量の新要素を用意するシーズンの展開と運用、ライブサービスを続けながら、1年強で既に完成度の高かった経験をネクストレベルに刷新する大規模拡張の開発を並行し、これを破綻無く(延期もない!)やり遂げた“Diablo”チームの力量と堅固な開発基盤はもはや驚異的という他ありません。

個々の調整やコンテンツにいささかの不満はあったとしても、作品全体の完成度の高さは他に類を見ない折り紙付きで、目立った欠点やアラが全く見当たらない、しいて言えば、優等生過ぎて荒々しさに欠ける程度しか重箱の隅がつつけない「ディアブロ IV」は、抜群の安定感と満足度の高さを備えた、“誰でも遊べるカジュアルな”作品として、日々進化を続けています。

また、「憎悪の器」と2.0アップデートは、以前にも増してMO要素の存在感を増していて、再び新しい“Diablo-like”のスタンダードを定義するターニングポイントのようにも感じられます。

今回詳細はご紹介できませんでしたが、プレイ経験の新たな改善の1つに、ストーリーと上手く絡めた(エンドコンテンツを含む)多彩なアクティビティの自然な導入やガイド、フローの改善があり、ここから新規に「ディアブロ IV」を始めるプレイヤーにもしっかりした案内が用意されています。

「憎悪の器」拡張と2.0アップデートを備えた「ディアブロ IV」は、数年失われて久しかった“Blizzard”品質を取り戻した本編の仕上がりを、さらに更新する素晴らしい進化を果たしています。新規プレイヤーやしばらく離れていた方も、気になっている方には今が最高の機会だと言えますので、是非最新の「ディアブロ IV」をプレイしてみてください。

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おこめの「The Elder Scrolls V: Skyrim」記!

skyrim記リターンズその136
「4コマ:攻撃しようにも」
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