遂に発売を迎える「ボーダーランズ3」レビュー、驚くべき進化と共に新たな冒険の船出を描く人気シリーズの堂々たる最高傑作

2019年9月10日 18:56 by katakori
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「Borderlands 3」

9月13日のローンチを4日後に控える人気シリーズ最新作「ボーダーランズ3」ですが、世界中のファンが待ち望む最新作の発売に先駆けて、2Kより早期アクセスビルドの提供を受け、一足先に期待作の真の姿を実際にこの目で確認することができました。

今回はいよいよ発売を迎える「ボーダーランズ3」のレビューをご紹介しますが、本作は“ボーダーランズ”シリーズのみならず、Gearbox Software史上最大の傑作といって間違いない仕上がりとなっているものの、手触りの良さやシステム的な改善点ではない、本当の魅力について説明しようとすると、それだけでプレイの楽しみをうっかり損ないかねないので、正直なところもう何も書きたくありません。

従来のシリーズが好きだった方、初めてシリーズに興味を抱いている方、或いは購入を迷っている方、「ボーダーランズ3」が今年を代表する傑作の一つであることは間違いありませんので、とにかく発売後各所で盛り上がるであろうSNSやファンコミュニティ、ファンアート経由でキャラクターの関係性やクリティカルなネタバレを知ってしまうその前に、最も新鮮な状態で一先ずキャンペーンを一周クリアしておくことを強くオススメします。(※ 例えば、ストレンジャー・シングスやザ・ボーイズといった人気ドラマを事前情報なしで楽しみ、驚くことができる希有なチャンスに近いと言えばお分かりいただけるでしょうか)

シリーズを一度もプレイしたことがないという方についても心配は無用です。以前に2Kが国内向けに“2分でわかる「ボーダーランズ」の全て!”という映像を公開し、クラップトラップに似た何かが「いきなり3から始めればいいのデス!」と豪語していました。とかくロア偏重気味の筆者は、正直またまたぁと思ったものですが、今はこの感想が全くの間違いであり、クラップトラップの言うとおり、本当に3から始めて何の問題もない内容であることを断言できます。

参考:“いきなり3presents:2分でわかる「ボーダーランズ」の全て!”
参考:『ボーダーランズ3』公式ガイド、初めての方はこの2本を見ておけば問題なし

もちろん、過去作を楽しんだファン向けの畳みかけるような驚きと新たな事実に満ちたお楽しみも十分すぎるほど用意されていますが、具体的に説明するとネタバレが避けられないため、双方のプレイヤーを満足させるさじ加減が実に絶妙であること、そして新規プレイヤーが過去作を遡って楽しむことができる余白をしっかりと残した作品であることを明記しておきます。

同じく、主人公である4人のヴォルト・ハンターについても選択を迷う必要はありません。これまでの作品においては、選んだクラスによって習得の難しさや難易度に一部ばらつきがありましたが、今回のヴォルト・ハンター達は、それぞれが初心者・上級者向けのスキルやビルドを内包していることから、完全に見た目やスタイルの好みだけで選んでしまって大丈夫です。格好いいやつを選んでください。

「ボーダーランズ3」の具体的な改善については、これまで2度のプレビューを通じて細かくご紹介してきました(参考:英語版プレビュー日本語版プレビュー)。シリーズの熱心なファンを自認する筆者の過去作に対する評価として、従来の“ボーダーランズ”シリーズが幾つかの問題点と強烈な魅力を併せ持つ、減点方式で80点、加点方式で5億点というような類いの、つまりある種の雑さをほとばしる魅力で補うような作品であることをお伝えしましたが、製品版をプレイしたことではっきりと確信できたことは、以前に確認できなかった多くの要素(サウンド面や一部のローカライズ、サイドクエスト、ペーシング、プレイアビリティ等)に対しても、驚くべき改善が施されており、文字通り全ての要素を強化した最新作が、従来の魅力をさらに増しつつ、減点方式でほぼ100点に仕上げてきた、極めて丁寧な作りの作品だということです。

この点については、“ボーダーランズ”シリーズのみならず、Brothers in ArmsシリーズやDuke Nukem Forever、Aliens: Colonial Marinesといった過去作品を含むGearbox Softwareのポートフォリオ全体が、(Bethesda Game StudiosやObsidianにも通底する)ある種のラフさと抗いがたい魅力を兼ね備えたラインアップだったと言えるわけですが、「ボーダーランズ3」の驚くほど丁寧な作り込みはこれまでの印象を完全に払拭するもので、CD Projekt Redが“The Witcher 3: Wild Hunt”を発売した時にも感じた驚き、Naughty DogやBlizzardをも想起させるような品質の丁寧さであると言えば、お分かりいただけるでしょうか。

この丁寧さは、サイドクエストの品質や銃撃戦の手触り、UI/HUDの全体的なフロー、アニメーション、マッチメイキング、オプション設定、レベルデザイン、サウンドのミックスレベル、モデリングなど、あらゆる要素に優れた影響を与えていますが、初心者からハードコアまで、全てのプレイヤーに直接的な恩恵をもたらす“使い勝手の良い”改善として、プレイ中にUIメニューを開くことなく直接キー/方向ボタンで現在アクティブなクエストをサイクルさせる機能(もちろんメニューで詳細を見ながら選択することも可能ですが、本作はクエスト名と目標の内容、目標地点が1キーで簡単にサイクルでき、プレイ中の画面に動的に反映されるため、目から鱗が落ちるほど便利です)をはじめ、搭乗していたビークルとエリア内で訪れた主要なNew-Uステーション、拠点サンクチュアリIIIへのファストトラベル機能(クエスト完了後の帰還や戦利品の整理等を含む無駄な移動時間が大幅に軽減されます)、協力プレイの煩わしさとハードルを軽減するコンテクスチュアルなピン機能といった要素が存在しており、こういった非常に細かな丁寧さと機能の積み重ねが、「ボーダーランズ3」を極めて“プレイしやすい”作品に仕立て上げています。

ただし、こういった改善というのは、あくまで「ボーダーランズ3」そのものの下地であり、最新作の本当の魅力は、この確固たる下地に盛り付けられたストーリーやキャラクター、コンテンツの楽しさにこそあります。筆者はこれまでの公式情報や映像、ビジュアルのトーン、自らプレイしたハンズオンなどから、最新作は過去作よりもややシリアスなタイトルになるのではないかと感じていましたが、よくもまぁこんなバカなことを思いつき実現したものだと心から感心する愉快なあれこれから、シリーズの白眉とも言える生き生きとしたキャラクター達、友情・努力・勝利、出会いと別れ、笑いあり感動の涙ありの素晴らしい体験は、過去作のそれを軽やかに超える包括的な進化を見せています。

「Borderlands 3」
最新作の悪い奴“カリプソ・ツインズ”、ジャックに匹敵する強烈なヴィランがまた誕生した

さらに、GearboxのボスRandy Pitchford氏がお披露目イベントで「たちの悪い、むかつくストリーマーの未来の姿」と評した新しい悪役カリプソ・ツインズは、現在の社会を反映した新しい悪役像を確立し、ハンサム・ジャックに決してひけをとらない強烈な存在感を放っているだけでなく、彼らとの戦いを通じて、Gearboxが(様々な価値観が広く反知性主義的、冷笑的に変容しつつあるこの時代に)とても力強い不変的なメッセージを伝えていることも本作の大きな魅力の一つだと言えるでしょう。

もう1つ驚くべきは、Gearbox Softwareが「ボーダーランズ3」でシリーズのあらゆる要素を強化しつつも、複雑化の一途を辿る近年のAAAルーターシューターに歩み寄ることなく、元祖ルーターシューターとして初代から変わらないシンプルなフォーミュラを見事に貫き通し、現在もこのRADな魔法が色褪せることなく“有効”であることを証明した点にあります。

従来のシリーズをそっくり踏襲した過剰なボリューム(密度の濃さもあって、バニラのBL2以上と感じています)と充実したエンドゲームコンテンツ、可能な限り障壁を取り払った協力プレイ機能の充実、圧倒的なプレイしやすさ、忘れがたいストーリーと魅力的な登場人物達を備えた「ボーダーランズ3」は、ビデオゲームを愛する全てのゲーマーに自信を持ってオススメできる傑作の一つであり、近年の豊作/飽食ぶりや長い拘束と継続を強いる複雑なライブゲームにやや食傷気味なハードコアゲーマーにこそオススメしたい、ゲームの“楽しさ”を改めて再認識させてくれる1本です。

重ね重ね本当にだまされたと思ってまずはプレイして、あのアナーキーな“ボーダーランズ”シリーズが初代の発売から10年の時を経て、どう化けたか、その真価を是非その目で確かめて下さい。

という事で、「ボーダーランズ3」の鮮度をできるだけ高く保つために具体的なディテールをできる限り避け、レビューと言うよりはむしろ興奮で早口気味の布教に近い内容でご紹介しましたが、幾つかネタバレに抵触しない改善として、2つの具体的な要素を新たにお伝えしておきます。

1つ目は、サウンドトラックの見事な進化です。筆者が予てから不満に感じていた過去作のラフな要素の1つに、サウンドの全体的なミックス、そしてサウンドトラックとゲームプレイのマッチが挙げられます。これは、個々の楽曲の良し悪しではなく、主張のある楽曲とゲームプレイ、サウンドのバランス、リピートがしばしばミスマッチに感じられたこと、ある種のムラがあったことを指していますが、「ボーダーランズ3」はサウンド全体の品質やエフェクト、臨場感、デザインが(これもやはり丁寧に)向上し、プレイを邪魔しない非常に心地よい仕上がりとなっています。(※ サウンドが十分に機能し、体験を“邪魔をしないこと”について捕捉しておくと、これはプレイヤーにサウンドの存在を意識させないほど自然で、その世界に違和感なく溶け込んでいることこそがデザイン的に極めて困難な勝利だと言えるわけです)

この全体的に落ち着いた改善は、ここぞ!という時のボーカル曲やキメ、ラジオ、気分を上げるサウンド面の演出を相対的に際立たせていますが、本作は単純なBGMではなく、フォーリーサウンド的なアプローチで今そこにある眼前の世界で鳴っている曲を聴かせるアイデアにも長けており、サウンド全体の仕掛けや品質も超一級の作品に進化したと強く感じました。(キメ曲の使い方が憎らしいほど上手い!)

また、本作には従来のシリーズから続投となるJesper Kydに加え、新生Deus Exシリーズや新生XCOMシリーズのコンポーザーMichael McCannやHaloシリーズで活躍したFinishing Moveが、多彩なジャンルを融合したサウンドとテクスチャ感のある楽曲を提供しており、いずれも前述の改善を支える大きな役割を担っていますが、特筆すべき点として新生DOOMシリーズでお馴染みMick Gordonがサポートとして参加し、一部でゴリゴリのサウンドを聞かせてくれることを明記しておきます。

2つ目の大きな要素は、前回のプレビューでも僅かにご紹介した日本語ローカライズです。これについてはネタバレを避けるため具体的な詳細を伏せますが、高品質な通常の日本語化にとどまらず、明らかに翻訳の範疇に収まっていない(逆に英語版がどうなっているのか気になる、現在の日本にしっかり適合する)超ローカライズともいうべき素晴らしいダイアログとボイスアクトの数々で全体が彩られており、一部の特濃キャラクターが登場するだけで、よっ!待ってました!と思わず掛け声を掛けたくなるような、控えめにいっても最高のローカライズが用意されています。

この他にも、幾つかのサプライズやまさかの大物出演、戦闘の楽しさ、武器のバランス、小ネタ、オマージュ、パロディ、キレのあるディス、収集要素、謎の多幸感、愉快なラジオ、アイデアの限りを尽くしたボス戦の数々、中だるみしないプログレッションと報酬、単調な繰り返しを可能な限り廃した見事なミッションデザイン、あれこれの核心に迫るロアの脅威的な充実ぶり、多彩なエンドゲームコンテンツ等々、本作の魅力を挙げていくと全くキリがないので、細かいことは置いておいて、とにもかくにも先ずは「ボーダーランズ3」をプレイ頂いて、一刻も早く皆でこの喜びを分かち合いたいと強く願うばかりです。

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