前回の第9回特集は「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」発売前最後の特集として、本作の誕生に影響を与えたアートや文学系の作品についてご紹介しました。
先日、遂に日本語版の販売とアップデートの配信が開始された「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」ですが、皆さんマルティネーズでの捜査と観光、脱線、キムと過ごす楽しい毎日を満喫してらっしゃるでしょうか。
いよいよ最終回となる第10回の特集は、「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の舞台となる架空の世界「エリジウム」そのものに焦点を当てて、プレイ中だと情報があちこちに分散していることから、今ひとつイメージがまとまりにくい作品世界の地理や歴史の大まかな全体像を少なからず整理できればと思います。
これに加え、今回はオリジナルの完全版である『Disco Elysium – The Final Cut』の新コンテンツとして導入された(本編のタスクとは少々仕組みや趣きが異なる)政治ビジョンクエストについても簡単にご紹介します。
9回に渡ってご紹介したこれまでの特集記事は、いずれも未プレイの方を想定したネタバレなしの内容でしたが、今回は一先ず本作のプレイを始めて、1日目の捜査がそろそろ終わりそうかなという方(もちろんそれ以上進んでいる方も)を想定した、幾つかの軽微なネタバレを含む内容となっています。
ただし、事件の捜査に直接関わる人物や出来事、展開に絡むネタバレはありませんので、プレイ中の方も安心してお読みいただければと思います。
なお、本作の舞台となる“エリジウム”は、ZA/UMの共同創設者でライター兼デザイナーでもあるRobert Kurvitz氏が10代の頃から、実に20年近くあたため続けてきた世界で、8000年に及ぶ歴史、7つの大陸、100を超える国家、200以上の都市、そして本作の象徴的なマジックリアリズム的要素の1つである“識域”を特色としています。
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」において描かれた物語とマルティネーズ地区は、エリジウム世界の中では文字通り砂粒のように小さな出来事に過ぎず、このエリジウム世界が今後さらに登場するであろう“ZA/UM”作品の舞台になる可能性は極めて高いとみられています。
本作の奇妙なタイトル名「ディスコ エリジウム」に隠された意味「エリジウムを学ぶ」(※ 詳細は特集第2回にて)ことに興味がある方は、今回ご紹介するディテールを基に細部の情報を自分なりに補完してみてはいかがでしょうか。
参考:「ディスコ エリジウム」特集のリンク
- 第1回:傑作と謳われた「ディスコ エリジウム」は何が特別だったのか、発売当時の現象を改めて振り返る
- 第2回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の基本的な概要と魅力、日本語版のインプレッション
- 第3回:THE WIRE/ザ・ワイヤーから共産党宣言まで、「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」に影響を与えた作品について – 前編
- 第4回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の基本的なゲームシステムについて
- 第5回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」における“スキル”とは何か?
- 第6回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の最も奇妙なシステム“思考キャビネット”について
- 第7回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」に登場する個性的な登場人物達と主要な勢力
- 第8回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」のオープンワールド環境と名所について
- 第9回:「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」に影響を与えた作品について – 後編
本作のゲーム内で実際に歩き回れる小規模なオープンワールド環境は、ご存じの通り“マルティネーズ”ですが、正確には「レヴァショール特別行政地域ジャムロック区マルティネーズ」と呼ばれる地区で、レヴァショールという巨大な都市のジャムロック区にある北端の小さく貧しいエリアを指しています。
以下、便宜的に“市”と呼びますが、レヴァショール市は南北に流れるエスペランス川を境に、大きくレヴァショール東とレヴァショール西、さらにレヴァショール湾に流れ込むエスペランス川下流の三角州“ラ・デルタ”によって大きく分断されています。
「ディスコ エリジウム」がまだ『No Truce With The Furies』と呼ばれていた頃のアートワークに前述したレヴァショール西の大まかな地区やエスペランス川の位置関係が分かるイメージがあったので(※ 特典冊子にも掲載されていました)、少し手を加えてマルティネーズの場所が分かるイメージを作成してみました。
薄い赤で塗った箇所がマルティネーズ地区で、港(大レヴァショール・インダストリアル・ハーバー)やジョイスのヨット、ワーリング・イン・ラグズ等の位置を見てもらえれば、如何にマルティネーズが小さな地区だったのかが分かると思います。
中央の川を挟んで“The Cycle”と記されている箇所に位置するレヴァショール東は、富裕層たちが暮らす緩やかな丘陵地帯で、ル・シャルダンや連合軍侵攻時における上陸地点の1つだったステラ・マリス、薬品の名前でしばしば見かけるサン=バティストといった地区が存在し、特にサン=バティストには世界五大企業の本社が2つあることで知られています。
また、三角州のラ・デルタには、高層ビルが建ち並ぶレヴァショール市の最重要地域で、世界銀行や連合政府のインスリンデ司令部“INSURCOM”といった施設が存在するなど、マルティネーズの貧しい生活とは全く別世界とも言える十分に発展した社会と文化が広がっているわけです。
一方、ジャムロック区を含むレヴァショール西は、治安の悪い大規模なゲットーのような地域で、もちろんマルティネーズよりは随分マシながら、店舗の運営に私兵が必要なほど犯罪率の高い地域として知られています。
地図を見ると、マルティネーズからまっすぐ南に主人公が所属するRCMの41分署があり、その付近がジャムロックの中央区であることが分かります。(ジャムロックの南東には、西側でもまだマシなほうとされるクーロン地区が)
また、質屋の西側にある水路を南に遡ると環状の道路のような図が描かれていますが、これがジョイスやクーノを含む住民との会話にしばしば登場する高速道路8/81号線のインターチェンジになります。
インターチェンジの箇所に描かれている地区“Eminent Domain”(ドメイン)については、同じく『No Truce With The Furies』時代にコンセプトアートが描かれており、貧困にあえぐ現地の暮らしと、非常に巨大で近代的な高速道路の対比が確認できます。
ここで、馴染み深い「ディスコ エリジウム」のコンセプトアートを改めて見てみましょう。
これは、レヴァショール湾側から南向きに見たマルティネーズ地区を描いたものですが、見慣れた建物や港の向こうには、レヴァショール西の豊かな丘陵地やクーロン、街を東西に横断する高速道路が描かれていることが分かります。
という事で、本作はとにかく細かな地名や用語が頻出するので、とりあえずレヴァショール市の東西に関する違い、ジャムロック区の大まかな場所、高速道路や41分署の位置関係だけでも頭に入れておけば、あれこれの展開が把握しやすくなるかと思います。
ちなみに、マルティネーズを含むレヴァショールの地理は、ZA/UMが本作の開発を始めたエストニアの首都タリンを思わせる幾つかの共通点があるので、興味がある方は調べてみてはいかがでしょうか。
レヴァショールだけでもかなり詳細な設定が用意されていますが、レヴァショールは“エリジウム”世界の存在する大都市の一つに過ぎません。
レヴァショールは、インスリンデと呼ばれるイソラ(孤立した大陸)の大都市であり、エリジウム世界には、インスリンデ以外にも、6つの大陸が存在しており、世界人口はなんと36億~46億人規模に達しています。(地球人口の半分程度と考えると、その規模が分かりやすいでしょうか)
これらの大陸は、識域と呼ばれる危険な領域によって隔てられていますが、特殊な技術を用いたイソラ間の移動手段が確立されており、ゲーム内でも他のイソラや都市、地域、文化に関する言及がバンバン登場することから、なるほどこりゃ分からんと地理関係の理解を半ば投げ出している方も少なくないのでは。
現段階で発見されているイソラは、レヴァショールが存在するインスリンデをはじめ、イルマラーとカトラ、グラード、サマラ、ソゥル、ムンディの7つで、現段階でこれらの位置関係を正確に描いた公式な地図はゲーム内外を含め存在していませんが、レヴァショールの地域とおなじく、これについてもゲーム内の様々な会話から得られる断片的な情報を組み合わせることで、大体の位置関係を掴むことができます。
特にムンディやグラードに関する言及が頻出するほか、インスリンデについては群島であることから、セメナインを含む他の島が話題に上ることも少なくないため、ざっくりとでも全体像を頭に入れておくと煩雑な断片情報の整理が幾分かでも楽になるかもしれません。
余談ながら、“エリジウム”世界を生んだRobert Kurvitz氏の小説“Püha ja õudne lõhn”には、Aleksander Rostov氏が手がけた数枚のアートワークが掲載されており、英語版の小説が刊行されていないことから、舞台となるイソラや都市は不明ですが、「ディスコ エリジウム」の本編よりも僅かに先の年代とされるエリジウム世界の都市や乗り物を描いた興味深いイメージが公開されています。
これまでの地理的な情報をもとに、次はエリジウム世界の歴史に焦点を当ててみましょう。
プレイした方ならもう存分に面食らっていると思いますが、「ディスコ エリジウム」には作品世界の歴史や地理に関する言及がとにかく多く、これが分散的かつ断片的に伝えられるため、圧倒的な情報の渦に飲みこまれてしまい、当面は(なにしろ主人公も記憶喪失ですから)何が何やら分からないまま捜査を進めるはめになります。
もちろん、本作の面白さの一部は、この過剰な量の情報が徐々に、点と点を繋ぐように結ばれていく過程にあるのですが、少しトリッキーな点として、本作の正確な年代と世紀が分からないということがあります。
本作のオープニングで汚部屋を出てすぐ、カレンダーのオーブをクリックした際の表記「51年の3月」が最も分かりやすい例で、8000年の歴史があるエリジウム世界の中で、本作の舞台が何世紀の出来事なのか、これを明示する情報は今のところ見つかっていません。(※ 8000年前を紀元1年とすれば、恐らく80世紀前後ということになるはずですが詳細は不明です)
ただし、今世紀の○○年代や前世紀、何百年前、○世紀前など、ゲーム内の現時点から時間を遡って表現される情報が相当数あるほか、一部の日付は世紀を省いたyy年mm月dd日といった表記で記されており、パズルのピースを並べていくように整理すると大まかな世界の歴史や流れが浮かび上がってきます。
また、同じ出来事でも人物によって説明が(時には数十年単位で)異なる場合や、世紀は特定できても、年代が分からないものも多数ありますが、現実の日常会話を鑑みれば当然こういった情報はアバウトなほうがリアルなわけで、このあたりを推察していくのも本作の面白いところではないでしょうか。
以下、海外wikiを参考に、筆者が実際に日本語版の文言を含め確認を取った情報のうち、事件の捜査に関わる出来事や人物の情報を排除した上で、幾つか調整・修正・補足を加えた“エリジウム”世界の大まかな(かつゲーム内の語り手やスキル、資料等が概ね正しいことを言っているであろうという前提の、あくまで表面的な)歴史をご紹介します。
■ 先史時代
■ 現在から5世紀前
■ ドロレス世紀
■ 前世紀
■ 現世紀の始まり~10年代
■ 現世紀20年代
■ 現世紀30年代
■ 現世紀40年代
■ 現世紀50年代
特集の最後にご紹介するのが政治ビジョン(Political Vision)クエストです。
なお、ここからご紹介する内容については、基本的にネタバレを伏せていますが、発動条件やクエストそのものの仕様等に関する具体的な内容を幾つか説明していますので、詳細を知りたくない方は一先ずご自身でクエストを解禁し、プレイするまでお読みにならないようご注意ください。
—– それではここから、政治ビジョンクエストの具体的な解説となります。
政治ビジョンクエストは、冒頭でもご紹介した通り、オリジナルの発売から1年半後にリリースされた完全版“Disco Elysium – The Final Cut”向けの新コンテンツとして導入された4つの特殊なクエストを指す名称で、本作に登場する政治的・社会的なイデオロギー“共産主義”と“ファシズム”、“ウルトラリベラル”、“倫理主義”それぞれの具体的な思想に焦点を当て、その詳細や背景、正体を具体的に掘り下げる内容を描いています。
また、“The Final Cut”のリリース時には、このクエストによって政治的な掘り下げが僅かに不足していた本編を完全な作品に仕上げたと言われるほど高い評価を獲得していました。
■ 政治ビジョンクエストの仕組みについて
このクエストは、3日目の夜の就寝時に受託可能となり、タスクを引き受ける場合、ゲーム内の4日目朝から既存のタスクやメインの捜査と平行して、各イデオロギーを学ぶための調査を進めることになります。
ただし、3日目の夜にクエストを始動させるためには、各イデオロギー毎に異なる条件を満たしておく必要があり、普通にプレイしていると、一部もしくはクエストの存在そのものを見逃してしまう可能性も十分に考えられます。
また、1度のプレイスルーで選択できる政治ビジョンクエストは1つのみで、全ての政治ビジョンクエストをクリアするには、何度か本編を周回する必要が生じますが、一応4つのクエストの発動条件を全て満たした状態で3日目の夜を迎え、就寝後に引き受けるクエストを4つの中から選択することも可能です。(※ 3日目の夜の就寝前にセーブデータを作成しておけば、4周する必要はないわけです)
具体的な発動条件については、一応ネタバレを防ぐために詳細は伏せますが、条件自体はそれほど厳しいものではなく、主にプレイヤーのイデオロギー的な選択や行動、思考キャビネットに存在する幾つかの象徴的な思考に関係しているとだけご紹介しておきます。(※ 以下にご紹介するイデオロギーの解説が一応簡単なヒントとなっています)
■ 「ディスコ エリジウム」のイデオロギーについて
政治ビジョンクエストの内容をご紹介するまえに、改めて本作のゲーム内に存在する4種のイデオロギーについて簡単に整理しておきましょう。
ある程度プレイを進めている方は、既に各イデオロギーを象徴する人物や思考の存在、そしてプレイヤーの捜査官プロフィールに用意された各種数値の存在に気が付いているかと思いますが、改めて概要をまとめると以下のようになります。
・共産主義
今回の特集を通じて何度もご紹介し、ゲーム内でもしばしば語られることから、もはや詳しい説明は不要でしょう。本作の共産主義は、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの著書『共産党宣言』と幾つかの市民革命をベースにした純粋な共産主義であり、ゲーム内の科学的共産主義を確立したクラス・マゾフは、もちろんカール・マルクスをそのままゲームに持ち込んだキャラクターです。
ゲーム内の共産主義は、ご存じの通り革命に失敗し、実現に至らなかったイデオロギーであり、現実社会と同じく、実現・持続できない理想として、ある種の郷愁と共に描かれています。
「ディスコ エリジウム」における共産主義の面白いところは、純粋な共産主義と社会主義、修正的社会主義、社会民主主義、ポピュリズムをはっきりと描き分けていることで、ストーリー全体を通じてこの違いに焦点を当てているわけですが、政治ビジョンクエストでは、これをさらに掘り下げていじくり回す必見の内容が描かれています。
・ファシズム
「ディスコ エリジウム」におけるファシズムは、いわゆるナチスやムッソリーニのそれとはやや異なり、もう少しプリミティブな民族至上主義や人種論寄りの理論で、むしろアドルフ・ヨーゼフ・ランツの『神聖動物学』や『神智学とアッシリア人の獣人』、或いはヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーの『秘奥の教義』といった仏独近代オカルティズムのパロディをベースに、現代的な女性蔑視やオルトライト、インセルの問題をモチーフとして融合させたイデオロギーとして描かれています。
その尤もたる例がメジャーヘッドの優勢主義的な人種講義で、多くの人が序盤でこの説教に圧倒され、これは大変なゲームに手を出してしまったぞ……と焦ったのではないでしょうか。
メジャーヘッドの論についていえば、これは(英語版のテキスト処理や過剰な冗長さ、論の内容を鑑みれば)ZA/UM流のブラックすぎる壮大なギャグであり、ファシズムの政治ビジョンクエストでは、この理論武装がどういった背景から生まれているのか、思わず椅子からずり落ちてしまうような内容が描かれます。
・ウルトラリベラル
ウルトラリベラルは、レヴァショールの共産主義革命を壊滅させ勝利した資本主義に相当するイデオロギーであり、ジョイスとの会話を通じて、その概要や巨大企業が支配する社会構造について詳しく知ることができます。
もちろん、現実社会の私たちをとりまく資本主義を直接持ち込んでいるため、4つ存在するイデオロギーの中で最も違和感なく、自然に理解できるのではないでしょうか。
特筆すべきはリベラルに付与された“ウルトラ”の文言で、これが何を指しているのかについては、当イデオロギーの政治ビジョンクエストを通じて、嫌というほど味わうことができます。
「ディスコ エリジウム」における資本主義/リベラルは、実体経済や信用、架空資本といった概念をしっかり考慮に入れており、潜在的・本質的な問いとして、(しばしば持続・実現不可能だったと揶揄される共産主義に対して)資本主義そのものの持続性にも目を向けるような視点があり、非常に興味深い問題提起を行っていると言えます。
・倫理主義
「ディスコ エリジウム」に登場するイデオロギーのなかで、最も捉えがたいのがこの“倫理主義”でしょう。
分かりやすく言えば善良さを重んじる中道主義といったところですが、難しいところは、レヴァショールにおける共産主義革命とこれを壊滅させた資本主義という極端に振れ幅の大きい2つの運動、そして識域というある種の絶対的存在が混在する世界における“中道”とはなにか?という点にあり、単なる思想の左右だけではなく、ものごとの前進や変化、過去への回帰といった時間的・空間的なダイナミズムに対して、モラルを対決させるZA/UMのアプローチは倫理について非常に興味深い内容を描いています。
倫理主義に対するZA/UMのアプローチは、アイロニカルなユーモアが半分、残りをシニカルさとシリアスさ、ある種の諦念で構成するような描き方で、本作のエンディングにも深く関わるため言及は避けますが、一部のプレイヤーにとって、今後長く後を引くような爪痕を残すことになるのではないでしょうか。
■ “政治ビジョンクエスト”について
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」にて導入された件の“政治ビジョンクエスト”は、先ほどご紹介した4種のイデオロギー毎に異なるストーリーを用意した大規模なタスクとなっています。
クエストの具体的な内容については、ネタバレを避けるために伏せておきますが、クエストにはそれぞれ以下のような名称が用意されています。
何やら奇妙なタイトルが用意されていますが、“政治ビジョンクエスト”はその多くがサウスパークの政治ネタ回に匹敵するような、全方位に喧嘩を売っていくスタイルの超ブラックなコンテンツで、メジャーヘッドの講義さえ可愛く思えるほど、全てのイデオロギーを(もちろん共産主義も標的です)執拗にこき下ろすZA/UMの真骨頂と言える見事な暴れっぷりは、確かに“政治ビジョンクエスト”を以て「ディスコ エリジウム」が完全な作品に仕上がったと言わしめるだけの内容に仕上がっています。
また、一部のクエストには固有の報酬が用意されているほか、中にはエンディングに大きな影響を与えるものが含まれているため、「ディスコ エリジウム」を味わいつくしたい方にとっては、どうしても避けては通れないコンテンツと言えるでしょう。
そして、“政治ビジョンクエスト”の特筆すべき点は、思わず爆笑してしまうような内容であるにも関わらず、実は全く笑えない、痛烈なブラックコメディでコーティングした様々な問題提起や批判、諦念の空恐ろしさにこそあり、「ディスコ エリジウム」の奥深さを象徴するようなコンテンツだと断言できます。
ということで、10回にも及ぶ特集にお付き合い頂きありがとうございました。まだまだご紹介が足りていないトピックやコンテンツが残されているのですが、概ね作品のシルエットを詳らかにする包括的な特集に仕上がったと自負しています。特に影響を与えた作品特集の後半は、「ディスコ エリジウム」を理解するための入り口に過ぎません。今回ご紹介した“政治ビジョンクエスト”や本編のエンディングに何かの引っかかりを感じた方は、ゾラやジジェク、(ネタバレの関係でご紹介できなかった)ストルガツキー兄弟の作品などを起点に興味の方向を拡げてみてはいかがでしょうか。
当サイトの「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」特集はこれで終了となりますが、一旦時間をおいて、多くの方が1周目をクリアしたであろう頃合いを見計らって、当サイトのレビューをご紹介したいと思います。特集の第9回まで、ほぼネタバレなしでご紹介してきたことから、レビューについては政治ビジョンクエストや識域、事件の関係者、エンディングの詳細にも遠慮なく言及する完全ネタバレのレビューを考えているのでお楽しみに。
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